Author Archive
4要素を軽視して整理解雇を実施した場合について
整理解雇の有効性の判断においては、4要素を中心に判断される点については、これまで本コラムにおいてご紹介してまいりました。
本日は、このような4要素を軽視して整理解雇を実施した場合に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 山田紡織事件(名古屋高判平18・1・17労判909・5)
【判示の概要】
控訴人(会社側のこと)は、本件解雇が、民事再生法に基づく再生手続申立後の解雇であり、控訴人には、紡績業の廃止以外に選択肢はなかったから、選択可能な複数の経営判断が成立する場合の「整理解雇」の概念には該当するものではなく、権利濫用の法理が適用されるべき前提としての「雇用者の専横」が認めらないし、やむを得ない理由に基づいて行われたもので有効であると主張するが、いずれも独自の見解であり、にわかにこれを採用することはできない。
本件解雇は整理解雇であって、整理解雇の有効性を判断するための4要素を具備していない本件解雇は解雇権の濫用として無効である。
控訴人は、再生計画案提出時の経営状況に関して、その実情は破産状態であったし、現時点での経営状態も破産原因を内包していることに変わりはないと主張するが、債務超過や破産状態であるか否かは、整理解雇の効力を判断するに当たり、4要素の一つである「人員削減の必要性」の一事情として考慮されることは当然としても、そのこと自体で、4要素の履践の要否や解雇の正当性の有無の判断を不要としたり、またその判断に直接影響を及ぼす事情ではなく、この点に関する控訴人の主張も採用できない。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
課税価格と買付手数料の関係性について
本日は、課税価格の加算要素から除外される買付手数料について、ご紹介いたします。
貨物の輸入をビジネスとして行っている方の中には、輸出元の国で人に依頼してビジネスに協力してもらっている場合等もあるものと思います。
このような場合、協力者に対して支払う費用が一定の場合には課税価格に加算される可能性がありますので、注意が必要です。
以下、ご説明いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 課税価格と買付手数料の関係性について
関税定率法4条1項の規定により、輸入貨物の「取引価格」によって課税価格を決定する場合、輸入貨物の輸入取引に関して買手により負担される「仲介料その他の手数料(買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるものを除く。)」は課税価格に算入することとなっております。
課税価格の加算要素から除外される買付手数料に該当するか否かの判断は、契約書等における名称のみによるものではなく、手数料を受領する者が輸入取引において果たしている役割及び提供している役務の性質を考慮して行うものとされております。
①手数料を受領する者が「買付けに関し買手を代理して当該買付けに係る業務を行う者」であることが、買付委託契約書等の文書により明らかであること、
②手数料を受領する者が買付に関し買手を代理して当該買付けに係る業務を実際に行っているという実態の存在が文書や記録その他の資料により確認できること。
③税関の要請がある場合には、売手と買手との間の売買契約書、輸入貨物の売手(製造業者等)が買手にあて仕入書等を提示することが可能である。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
解雇権濫用により整理解雇を無効とした裁判例
本日は、解雇権濫用により整理解雇を無効とした裁判例をご紹介いたします。
整理解雇の有効性に関しては、これまでも本らコラムにおいて何度かご紹介してまいりました。
会社側、労働者側いずれにとっても、整理解雇の有効性は非常に重要な問題となりますので、是非ご参照いただけますと幸いです。
1 あさひ保育園事件(最判昭58・10・27労判427・63)
保育園において園児の数が減少したことに伴い、人員を整理するために保母の一部を解雇したことが解雇権濫用に該当し無効であるかどうかが問題となった事案です。
【判示の概要】
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人において、園児の減少に対応し保母二名を人員整理することを決定すると同時に、被上告人ほか一名の保母を指命解雇して右人員整理を実施することを決定し、事前に、被上告人を含む上告人の職員に対し、人員整理がやむをえない事情などを説明して協力を求める努力を一切せず、かつ、希望退職者募集の措置を採ることもなく、解雇日の六日前になって突如通告した本件解雇は、労使間の信義則に反し、解雇権の濫用として無効である、とした原審の判断は、是認することができないものではなく、原判決に所論の違法はない。
以上の裁判例は、整理解雇の有効性を判断する4要素の内の解雇回避努力義務に関するものですが、整理解雇が無効と判断される一つの典型的な事案といえますので、他の事案でも参考となる裁判例といえます。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
従業員が秘密保持義務に違反した場合における懲戒処分
本日は、従業員が秘密保持義務に違反した場合における懲戒処分に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 古川鉱業事件(東京高判昭55・2・18労民31・1・49)
本事案は、従業員が、極秘資料を複写し、社外に漏洩させた行為について、労働協約及び就業規則上の秘密保持義務に違反するかどうかが問題となった事案です。
【判示の概要】
労働者は労働契約にもとづく附随的義務として、信義則上、使用者の利益をことさらに害するような行為を避けるべき責務を負うが、その一つとして使用者の業務上の秘密を洩らさないとの義務を負うものと解せられる。信義則の支配、従つてこの義務は労働者すべてに共通である。もとより使用者の業務上の秘密といつても、その秘密にかかわり合う程度は労働者各人の職務内容により異るが、管理職でないからといつてこの義務を免れることはなく、又自己の担当する職務外の事項であつても、これを秘密と知りながら洩らすことも許されない。
このような義務は、仮に自己の担当する業務についても同様に課されるものであり、秘密を漏洩することは許されない。
以上のとおり、従業員が秘密保持義務に違反した場合には、懲戒処分の対象となりますが、どのような場合でも一律に懲戒処分の対象とすることができるわけではなく、具体的な経緯等を踏まえる必要がありますので、注意が必要です。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
検品費用と課税価格について
本日は、輸入貨物の検品費用と課税価格について、ご紹介いたします。
貨物の品質等は購入者からすると非常に重要な問題ですので、貨物を検品する場合も多いものと思います。
そのため、貨物の輸入をビジネスとして行っている方にとっては、輸入貨物の検品費用と課税価格の関係性について理解することは非常に重要です。
以下、ご参照いただけますと幸いです。
1 検品費用と課税価格について
輸入貨物の検査に要する費用は、買手(買手の依頼を受けた検査機関等の第三者を含みます。)が自己のために行った検査に要した費用で買手が負担する場合は、課税価格に算入しません。
また、売手と買手との合意に基づき検査機関等の第三者が行った検査に要した費用の全部又は一部を買手が負担する場合の当該買手が負担する検査費用も同様に取り扱って差し支えないこととされております。ただし、検査機関等の第三者が行った検査に要した費用の全部又は一部を買手が負担する場合であっても、当該検査が専ら売手のためのものであるときは、当該買手による負担は売手のためにする支払に該当し、当該買手の負担額は現実支払価格を構成します(関税定率法4条1項本文、関税定率法基本通達4-2の3(2)等)。
以上のとおり、貨物の検品費用については、課税価格に加算する必要がある場合と、加算する必要がない場合とがわかれておりますで、十分ご注意ください。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
会社が行う調査を従業員が拒否することができるかどうか
本日は、会社側が従業員に対して調査を実施する場合、従業員側が全面的に調査に協力する義務があるか、それとも従業員側には一定の場合には調査を拒否することが可能か、という点が問題となった裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 富士重工業事件(最判昭52・12・13労判287・7)
【判示の概要】
企業が企業秩序違反事件について調査をすることができるということから直ちに、労働者が、これに対応して、いつ、いかなる場合にも、当然に、企業の行う右調査に協力すべき義務を負つているものと解することはできない。なぜなら、労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによつて、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできないからである。
当該労働者が他の労働者に対する指導、監督ないし企業秩序の維持などを職責とする者であつて、右調査に協力することがその職務の内容となつている場合には、右調査に協力することは労働契約上の基本的義務である労務提供義務の履行そのものであるから、右調査に協力すべき義務を負うものといわなければならないが、右以外の場合には、調査対象である違反行為の性質、内容、当該労働者の右違反行為見聞の機会と職務執行との関連性、より適切な調査方法の有無等諸般の事情から総合的に判断して、右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められない限り、右調査協力義務を負うことはないものと解するのが、相当である。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
契約交渉を中途で破棄した場合の損害賠償義務について
本日は契約交渉を中途で破棄した場合の損害賠償義務に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 最判昭59・9・18判時1137・51
本事件は、マンション売買の交渉過程で、歯科医院とするためのスペースについて注文を出す等した結果、売主側が容量増加のための設計変更および施工をすることを容認しながら、交渉開始6か月後に自らの都合により契約を結ぶに至らなかった点について、買主側の損害賠償義務が問題となったものです。
【判示の概要】
具体的な事実関係のもとにおいては、上告人の契約準備段階における信義則上の注意義務違反を由とする損害賠償責任を肯定した原審の判断は、是認することができる。
以上の裁判例の他にも、契約交渉が途中で破棄された事案において損害賠償義務が認められたものとしては、最判平成19・2・27判時1964・45等があります。
いずれの裁判例においても、契約準備交渉の段階で、自らの言動が相手方に誤解をもたらしているにもかかわらず、誤解を指摘したり、是正する等することなく、相手方の信頼を裏切るような行為をした場合が問題となっており、どの程度の信頼が惹起されていたか、それに対してどのような背信的な行為がなされたかといった点を具体的な事実関係を踏まえて検討されております。
契約の交渉を進めてみた結果、結論として交渉を破棄することももちろんあるものと思いますが、その場合でも、契約を締結する前の段階で有ることから一切責任がない等と考えるのではなく、場合によっては損害賠償義務を負うリスクがある点を認識することが重要です。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、契約書の作成・レビュー、商標や著作権を含む知的財産関連の問題、労働問題、輸出入トラブルへの対応をはじめ、企業法務を幅広く取り扱っております。
日々のビジネスの中でご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
保管料と課税価格について
本日は、貨物の保管料と課税価格の関係性についてご紹介いたします。
これまで本コラムにおいて貨物を輸入した場合の課税価格の考え方について何度かご紹介してまいりました。
輸入貨物の課税価格は、貨物の輸入をビジネスとして行っている方には非常に重要な問題といえますので、是非ご参照いただけますと幸いです。
1 保管料と課税価格について
まず、輸入取引時点において貨物が輸出国の倉庫に保管されており、当該倉庫の保管料を、買手が売手に対して貨物代金の一部として支払った場合、当該保管料は、輸入貨物代金の一部として、現実支払価格の一部を構成し、課税価格に含まれることになります。
また、これは、保管料を、貨物代金とは別に、売手側の指示で、買手に対して支払う場合も同様であり、課税価格に加算することとなります。
他方で、輸入取引に基づき、貨物が、売手から買手に対して引き渡された後、買手の計算で輸出国の倉庫で保管されていたような場合には、買手が売手に対して又は売手のために直接又は間接に支払うものではないので、課税価格には加算されません。
また、日本に運搬後、輸入申告に先立って、買手が、自己の計算で保税蔵置をした場合も同様に、買手が売手に対して又は売手のために直接又は間接に支払うものではないので、当該費用も課税価格には加算されません。
以上のとおり、貨物の保管料についての課税価格の考え方は特別な考え方が採用されておりますので、ご注意ください。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
ヘアドレッサーの著作物性について
本日はヘアドレッサーに著作物性が認められるかどうかが問題となった裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 ファッションショー事件(知財高判平26・8・28判時2238・91)
【判示の概要】
実用に供され、あるいは産業上利用されることが予定されている美的創作物(いわゆる応用美術)が美術の著作物に該当するかどうかについては、著作権法上、美術工芸品が美術の著作物に含まれることは明らかである(著作権法2条2項)ものの、美術工芸品等の鑑賞を目的とするもの以外の応用美術に関しては、著作権法上、明文の規定が存在せず、著作物として保護されるか否かが著作権法の文言上明らかではない。
著作権法2条2項は、単なる例示規定であると解すべきであり、そして、一品制作の美術工芸品と量産される美術工芸品との間に客観的に見た場合の差異は存しないのであるから、著作権法2条1項1号の定義規定からすれば、量産される美術工芸品であっても、全体が美的鑑賞目的のために制作されるものであれば、美術の著作物として保護されると解すべきである。
また、著作権法2条1項1号の上記定義規定からすれば、実用目的の応用美術であっても、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては、上記2条1項1号に含まれることが明らかな「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることができるのであるから、当該部分を上記2条1項1号の美術の著作物として保護すべきであると解すべきである。他方、実用目的の応用美術であっても、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては、上記2条1項1号に含まれる「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることはできないのであるから、これは同号における著作物として保護されないと解すべきである。
以上のとおり、著作物性の判断に関して、あくまでもケースバイケースでの判断となりますので、注意が必要です。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、契約書の作成・レビュー、商標や著作権を含む知的財産関連の問題、労働問題、輸出入トラブルへの対応をはじめ、企業法務を幅広く取り扱っております。
日々のビジネスの中でご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
改正債権法の経過措置
改正債権法は2020年4月1日から施行されております。
もっとも、施行日が到来しても、改正債権法の規定が全て一律に適用されるというわけではありません。いわゆる経過措置という規定が設けられており、一部の改正債権法の規定については、適用の範囲等に関して特別な規律が設けられておりますので注意が必要です。
本日は、このような経過措置のうち、特に注意すべき点をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 改正債権法の経過措置
基本て位には、債権の発生事典や契約の締結日が基準時となっておりますが、以下の点には注意が必要です。
①施行日前に債権が生じた場合における当該債権の消滅時効の期間については、旧民法の規定が適用されます(附則10条4項)。
②不法行為債権について20年の除斥期間が施行日に完成していない場合には、施行日前に生じていた債権についても改正後の規定が適用されますので、①とは異なる対応が必要です(附則35条1項)。
③人の生命または身体を害する不法行為債権について、主観的起算点から3年の消滅時効期間が施行日に経過していない場合には、改正民法の規定が適用され、時効期間が5年になります(附則35条2項)。
④定型約款の規定は、施行日前に締結された契約についても改正後の規定が適用されますが、施行日前に生じた効力は妨げられません(附則33条1項)。
⑤定型約款に関して、当事者の一方が施行日までに書面等によって反対の意思を表示した場合には、施行日前に締結された契約について改正後の規定は適用されません(附則33条2項)。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、契約書の作成・レビュー、商標や著作権を含む知的財産関連の問題、労働問題、輸出入トラブルへの対応をはじめ、企業法務を幅広く取り扱っております。
日々のビジネスの中でご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。