原産地証明書の不備でFTA適用が否認された~形式ミスが命取りに~

FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を活用することで、本来かかる関税をゼロにできる。この魅力から、FTA制度を利用した輸入は年々増加していますが、その一方で「原産地証明書の不備」により特恵関税が適用されず、追徴課税されてしまったという事例も少なくありません。

今回は、形式的な記載ミスでFTA適用が否認された実例をもとに、輸入者が注意すべきポイントを解説いたします。

 

1 実例:日EU・EPAの特恵申請が否認されたケース

ある企業は、EUから輸入した繊維製品について、日EU・EPAに基づく0%関税の適用を受けようとしました。

提出した原産地証明書は、輸出者による自己申告方式の原産地声明(Statement on Origin)でしたが、以下のような形式不備がありました。

①文書に必要な定型文言が一部抜けていた

②日付欄が記入されていなかった

③商品明細と証明書の記載内容にズレがあった

この結果、税関は「証明書としての要件を満たさない」と判断し、特恵関税の適用を否認。通常税率(10.9%)が適用され、加算税付きで追徴課税が行われてしまいました。

 

2 よくある原産地証明の不備例

①日付・署名・文言が欠落している

②証明書とインボイスでHSコードや品目名が一致しない

③原産地基準が記載されていない、または間違っている

④コピーやスキャンデータが不鮮明

こうした形式不備は、「悪意がない」場合でも無効とされる可能性が高く、結果として高額な追徴課税が課される事例もあります。

 

3 輸入者が取るべき実務対応

①仕入先(輸出者)に対して、証明書の記載方法を明確に指示

②受領した証明書は、輸入前に社内での内容チェックを徹底

③商品と証明書の内容(品名・数量・価格)を照合・記録保存

④複数ロット・複数商品に共通の証明書を用いる場合の整合性確認

⑤不明点があれば、税関や専門家へ事前確認を依頼

また、定期的に原産地証明に関する社内研修やチェックリスト整備を行うことも、トラブル予防に有効です。

 

FTA/EPAの活用はコスト削減に直結しますが、原産地証明書の不備によって「制度を使ったつもりが使えていなかった」という事態は決して珍しくありません。

形式ミスひとつで大きな損失につながるからこそ、証明書の確認と社内管理体制の構築が不可欠です。

当事務所では、FTA・EPAの活用支援、原産地証明書のレビュー、税関からの指摘対応まで一貫してご支援しております。ご不安な際はお気軽にご相談ください。

 

 

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