海外から商品を輸入したところ、実はそれが模倣品(偽物)だった、このようなトラブルは、輸入ビジネスにおける重大なリスクのひとつです。
知らずに輸入したとしても、法的責任やブランド権利者からの差止・損害賠償請求に発展する可能性があるため、迅速かつ慎重な対応が求められます。
今回は、模倣品を輸入してしまった場合の法的整理と、現実的な対処法について解説いたします。
このページの目次
1 模倣品・偽物とは何か?
模倣品とは、商標権や意匠権、著作権などの知的財産権を侵害する商品を指します。
特に以下のようなケースが典型例です。
①ブランドロゴを無断使用したバッグや衣類
②キャラクター画像を印刷したグッズ
③有名メーカー品と外観・機能が酷似した家電製品
見た目が「そっくり」でも、正式なライセンスや製造許可を得ていない場合は、権利侵害と判断される可能性が高くなります。
2 税関での差止とその影響
模倣品は、税関での輸入差止の対象となります。
差止が行われると、輸入者には以下の通知が届きます。
①知的財産権侵害物品の確認通知書
②意見書・証拠資料の提出依頼(期限付き)
この段階で何も対応しない場合、商品は没収または廃棄処分となり、関税・消費税も返還されない可能性があります。
3 「知らなかった」では済まされない
輸入者が「偽物とは思わなかった」、「海外では普通に流通していた」と主張しても、法的には通用しない場合がほとんどです。
特に、以下のような状況では、過失があったとされ、損害賠償請求や刑事罰の対象となることもあります。
①著名ブランドと酷似していることが一目で分かる
②サンプル品や画像だけで大量発注した
③異常に安価な価格設定だった
4 実務上の対応フロー
模倣品疑いの通知が届いた場合は、次のように対応します。
①商品の正当性の確認
契約書、インボイス、メーカーの許諾証明などを確認・収集します。
②権利者との連絡
正規品であると主張できる場合は、ブランド権利者やライセンシーと直接連絡を取り、輸入許可や和解交渉を行います。
③税関への意見書提出
弁護士等のサポートを受け、期限内に資料と主張を整えて提出します。
④廃棄・返送の決断
正規性を証明できない場合は、商品を返送または自発的に廃棄する判断も重要です。
模倣品を輸入してしまった場合、「知らなかった」「悪気はなかった」では済まされません。
輸入者としての責任を問われる可能性があるため、初期対応の正確さと、仕入先・契約内容の慎重な管理が極めて重要です。
当事務所では、模倣品差止対応、権利者との交渉、損害対応、契約レビューなどを専門的にサポートしております。お困りの際は、お早めにご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。