税関からの事後調査の結果、追徴課税や申告内容の否認などの処分を受けた場合でも、必ずしもその判断を受け入れる必要はありません。
関税法上、輸入者には「不服申立て」を行う権利が認められており、正当な理由と証拠があれば処分が取り消されることもあります。
今回は、税関の判断に対する不服申立手続と、その戦略的な活用法について解説いたします。
このページの目次
1 不服申立とは何か?
不服申立とは、税関の処分(追徴課税、関税評価の決定など)に対して異議を申し立て、再検討を求める制度です。
関税法に基づき、以下の2つの手続があります。
①異議申立:税関長に対して処分の見直しを求める手続。
②審査請求:財務大臣に対して再度の判断を求める行政審査手続。
なお、異議申立を経ずに直接審査請求をすることも可能です。
2 不服申立の対象となる処分例
①関税評価の否認(価格構成の加算等)
②HSコードの変更(関税率引上げ)
③原産地規則の不適用(FTA特恵税率の否認)
④過少申告加算税・重加算税の賦課
⑤ロイヤルティ・役務提供費用の加算処理
これらについて、合理的な反論が可能な場合には、不服申立によって是正が図られる可能性があります。
3 不服申立で重視されるポイント
不服申立が認められるかどうかは、主に以下の観点から判断されます。
①法令・通達・判例に照らして処分が違法であるか
②実務的な処理との整合性があるか
③具体的な事実・証拠に基づいて主張がなされているか
④税関の評価方法に合理性がないと認められるか
単なる感情的な異議ではなく、論理的・法律的に整理された主張が不可欠です。
4 実務上の戦略:専門家の活用と段階的交渉
不服申立にあたっては、弁護士を代理人とし、主張書面や資料を専門的に整備することで、審理側の印象や理解を大きく左右します。
また、次のような戦略的な対応が有効です。
①処分の前段階で税関と見解を共有し、調整・妥協の余地を探る
②不服申立書に「代替評価案」や「修正スキーム」を提示する
③必要に応じて、国税不服審判所への再審査請求、行政訴訟へのステップを見据える
事前の税関交渉と、後日の不服申立の準備を並行して進める体制が、結果に大きな差を生みます。
税関による処分に納得がいかない場合、正当な根拠があれば不服申立によって判断の見直しを求めることができます。
申立は期限や形式に厳格なルールがあり、内容も法的に精緻であることが求められるため、専門家と連携した対応が効果的です。
当事務所では、税関処分への異議申立・審査請求の書面作成・証拠整理・交渉代理まで、専門的に対応しております。判断に疑問を感じた際は、ぜひ一度ご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。