このページの目次
【2026年最新】税関事後調査の動向と見過ごせない4つの変化
輸出入ビジネスに携わる企業にとって、税関事後調査は決して他人事ではありません。ある日突然、税関から調査の連絡が入り、過去の申告内容について詳細な説明を求められる可能性があります。そして、その対応を誤れば、高額な追徴課税が発生し、資金繰りや経営判断に影響する可能性があります。
2025年後半以降の「税関事後調査」は、従来型の関税評価・申告漏れ確認に加えて、高関税化・原産地規則・サプライチェーン再編に伴う通関リスクの検証色が強まる局面と整理できます。
1. 直近公表結果では、調査件数・申告漏れ・追徴税額がいずれも増加
財務省が2025年11月に公表した令和6事務年度、すなわち2024年7月から2025年6月までの輸入事後調査結果では、全国税関が3,609者に輸入事後調査を実施し、2,690者に申告漏れ等があったとされています。申告漏れ等に係る課税価格は約1,390億7千万円、追徴税額は約157億1千万円で、前事務年度比でも増加しています。
このため、2025年後半以降の実務では、税関側がコロナ後に通常化した調査体制を前提に、引き続き相当数の輸入者を対象に事後確認を進めていると見るべきです。
2. 重点論点は「低価インボイス」「無償提供部材」「別払い」などの関税評価
令和6事務年度の主な申告漏れ事例として、財務省は、①輸出者又は輸入者が作成した低価のインボイス等による輸入申告、②輸出者に無償で提供した部材の申告漏れ、③インボイス価格とは別に支払う貨物代金の申告漏れを挙げています。
これは、税関事後調査の中心が引き続き課税価格の過少申告にあることを示しています。実務上は、特に次のような支払・利益移転が確認対象になりやすいです。
- インボイス外で支払われる追加代金、調整金、補填金
- 無償又は値引きで提供した部材・金型・工具・設計・技術資料等
- ロイヤルティ、ライセンス料
- 売手に帰属するリベート・収益
- 輸入許可後に判明した単価差額や追加請求
関税定率法上も、インボイス価格だけでなく、現実支払価格や加算要素を含めて課税価格を構成するため、追加請求費用や無償提供物品は修正申告・加算税の対象となり得る点が整理されています。この点については、税関事後調査への備えでも詳しく解説しています。
3. 品目面では、電気機器・自動車等・光学機器等・機械類・医療用品が目立つ
令和6事務年度に納付不足税額が多かった品目は、①電気機器、②自動車等、③光学機器等、④機械類、⑤医療用品であり、これら5品目で納付不足税額総額の約67%を占めたとされています。
したがって、これらの分野では、輸入価格・部材提供・金型費用・開発費・ロイヤルティ・原産地・品目分類のいずれについても、社内で説明可能な資料を整備しておく必要性が高いです。
4. 2025年後半以降は、米国関税・原産地規則の影響で「原産地管理」がより重要に
2025年は、米国で相互関税、国別関税、自動車・自動車部品・鉄鋼・アルミ・銅製品等に対する品目別関税が導入・強化され、8月以降には国別税率の発効も進みました。LegalOnナレッジ掲載の解説では、これにより企業のサプライチェーン維持・再編に大きな影響が生じ、関税率だけでなく原産地規則・FTA・各国通商法を踏まえた検討が必要になっていると整理されています。
この流れは日本の税関事後調査にも間接的に影響します。すなわち、企業が高関税回避やFTA/EPA活用のために生産地・調達地・積出地を見直すほど、税関としては次の点を確認しやすくなります。
- 実際の原産地と申告上の原産地が整合しているか
- 単なる積替え・軽微加工をもって原産地を変更していないか
- FTA/EPAの原産品判定資料が保存されているか
- サプライヤー証明や原産地証明の根拠が実態に合っているか
- 原産地変更に伴い価格・ロイヤルティ・部材提供関係が変わっていないか
特に、米国関税対応でサプライチェーンを再編する企業は、日本での輸入申告についても、価格・原産地・品目分類をセットで説明できる体制が必要です。
5. 調査手法は、訪問調査に加えてWeb調査・全国連携型の調査に広がる可能性
日本通関業連合会の解説では、今後の税関事後調査について、重加算税の対象となる輸入者への調査強化、非居住者から委託を受けて輸入されるFS利用貨物等の適正申告確保、主要税関の事後調査部門によるセンター機能、各地税関が連携したプロジェクト調査やWeb調査の全国展開の可能性が指摘されています。
この点から見ると、2025年後半以降は、単に輸入者の帳簿を個別に確認するだけでなく、取引スキーム全体、非居住者関与、EC・フルフィルメント、海外販売者・国内輸入者の役割分担まで踏み込む調査が増える可能性があります。
6. 実務上の備え
輸入者側では、少なくとも次の資料・プロセスを整備しておくことが重要です。
- 輸入申告価格と、契約書・発注書・請求書・送金記録・会計処理の突合
- インボイス外支払、追加請求、値引き、リベートの一覧化
- 無償提供部材・金型・設計・技術支援の有無と評価方法
- ロイヤルティ・ライセンス料が輸入貨物に関連し、輸入取引の条件になっていないかの検討
- HSコード・税率適用の根拠資料
- 原産地証明、サプライヤー宣誓書、製造工程表、部材表の保存
- FTA/EPA適用時の原産品判定資料の保存
- 帳簿・契約書・仕入書・運賃明細書・保険料明細書等の保存体制
なお、輸入に関する帳簿は原則7年間、契約書・仕入書・運賃明細書・保険料明細書等の関係書類や電子取引情報は原則5年間の保存が必要とされています。これらの税関事後調査の事前準備は、追徴課税を回避するために不可欠です。
まとめ
2025年後半以降の税関事後調査の特徴は、次の4点に集約できます。
- 調査件数・申告漏れ・追徴税額が高水準で推移
- 関税評価、特に低価インボイス・無償提供・別払いが引き続き中心論点
- 高関税化とサプライチェーン再編により、原産地規則・FTA/EPA適用の検証が重要化
- 非居住者輸入、FS利用貨物、Web調査、全国連携型調査など、調査対象・手法が広がる可能性
実務対応としては、「インボイスどおりに申告しているか」だけでなく、契約・支払・会計・物流・原産地・製造工程を一体として説明できるかが、事後調査対応の中核になります。
参照:財務省「令和6事務年度の関税等の申告に係る輸入事後調査の結果」
貴社は大丈夫?事後調査で狙われる3大論点と対策
税関事後調査では、特に厳しくチェックされるポイントが存在します。ここでは、特に指摘を受けやすい「関税評価」「原産地管理」「帳簿・書類保存」という3つの論点について、具体的なリスクと今すぐ取り組むべき対策を解説します。自社の体制に穴がないか、ぜひ確認してみてください。
論点1:関税評価|インボイス価格以外の「加算要素」漏れ
税関事後調査で最も多く指摘され、追徴課税につながりやすいのが「関税評価」の誤りです。多くの企業が陥りがちなのが、「インボイスに記載された価格で申告すれば問題ない」という誤解です。
しかし、関税の課税標準となる「課税価格」は、インボイス価格そのものではありません。関税定率法第4条では、買主が売主に対して支払う商品代金だけでなく、輸入貨物のために別途支払われる費用(加算要素)も課税価格に含めるよう定めています。
特に申告漏れが多発する加算要素には、以下のようなものがあります。
- 無償または値引きで提供した物品・役務:日本から海外の製造工場へ無償で提供した金型、部品、あるいは設計図などが該当します。これらの費用は製品コストの一部と見なされ、課税価格に加算しなければなりません。
- ロイヤルティ・ライセンス料:輸入する商品に商標権や特許権などが含まれており、その対価を別途支払っている場合、そのロイヤルティも課税価格の一部となる可能性があります。
- インボイス外での支払い:後日、価格調整金や販売リベート、その他コンサルティング費用などの名目で、インボイスとは別に金銭の支払いがある場合、それが実質的に商品代金の一部であれば申告が必要です。
これらの加算要素の申告漏れは、意図せずとも過少申告と見なされます。対策の基本は、契約書、送金記録、会計帳簿の3つを突き合わせ、インボイス以外の支払いが存在しないか、無償提供しているものがないかを定期的に確認することです。判断に迷う場合は、税関に課税価格の妥当性を事前に相談できる「評価申告制度」の活用も有効な手段といえるでしょう。この輸入申告における現実支払価格の判断基準は非常に複雑なため、専門家による確認が有効な場合があります。
論点2:原産地管理|EPA/FTA適用の証明責任とリスク
経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)を利用すれば、通常よりも低い関税率(特恵関税)の適用を受けられ、コスト削減に繋がります。しかし、このメリットを享受するためには、輸入者側に重い「証明責任」が課されることを忘れてはなりません。
事後調査において、税関は単に「原産地証明書があるか」を見るだけではありません。「その産品が、協定で定められた原産地規則を実質的に満たしていること」を、輸入者が客観的な資料に基づいて立証できるかを精査します。
特にリスクが高いのは、輸出者やサプライヤーから提出された証明書類を鵜呑みにし、その根拠を確認しないまま特恵関税を適用しているケースです。万が一、事後調査でその産品の原産性が認められなかった場合、特恵関税の適用は否認され、過去に遡って本来納めるべきだった関税と通常税率との差額を、加算税と共に追徴されることになります。
このような事態を避けるための対策は以下の通りです。
- サプライヤーへの根拠資料の提出依頼:原産地証明書の基礎となる製造工程表や部品表(BOMリスト)などを入手し、自社でも原産性の確認を行う。
- 定期的な原産性確認プロセスの構築:サプライヤーや部材が変更になった際に、都度、原産性を再確認する社内ルールを設ける。
- 事前教示制度の活用:原産性の判断が難しい複雑なケースでは、税関に事前に照会し、回答を書面で得ておくことが有効な対応策となります。
安易なEPA/FTAの利用は、将来の大きなリスクとなり得ます。特恵関税を適用する際は、その証明責任を全うできるか、慎重に検討する必要があります。迷った際は事前教示制度を活用することで、リスクの把握と対応方針の整理に役立ちます。
論点3:帳簿・書類保存|7年/5年の保存義務と電帳法対応
税関事後調査は、企業が保存している帳簿や書類に基づいて行われます。したがって、これらの書類を法令に従って適切に保存していることは、調査対応の重要な前提条件です。
関税法では、輸入許可に関連する帳簿や書類の保存義務を定めています。保存期間は以下の通りです。
- 帳簿:輸入許可の日から7年間
- 書類(契約書、仕入書、運賃明細書、保険料明細書など):輸入許可の日から5年間
これらの書類が不足していると、申告内容の正当性を説明すること自体が困難になります。税関から疑義を呈された際に反証できず、不利な認定を受けるリスクが高まります。
近年では、紙媒体だけでなく電子データの保存も重要性を増しています。特に、関税関係帳簿書類等の電子データ保存制度の要件に沿ったデータ管理が重要です。メールで授受した請求書やEDI取引のデータなども、法令の要件を満たす形で保存しなければなりません。「印刷して紙で保管しているから大丈夫」という考えは通用しない場合があるため注意が必要です。輸出入実務における電子帳簿保存法への対応は、もはや待ったなしの課題と言えるでしょう。
安易な書類破棄や不適切なデータ管理は、調査対応や追加資料の提出を困難にする可能性があります。今一度、社内の文書管理体制とデータ保存ルールを見直すことを強くお勧めします。
申告漏れ発覚で数千万円の追徴も。放置が招く最悪のシナリオ
「少しぐらいの申告漏れなら、大した金額にはならないだろう」もし、そのように考えているとしたら、それは非常に危険な認識です。
税関事後調査で申告内容の誤りが指摘された場合、その影響は調査対象となった取引だけに留まりません。税関は、同様の誤りが過去にも繰り返されている可能性が高いと判断し、原則として過去5年分(場合によっては最大7年分)に遡って修正を求めます。一件あたりの金額は小さくても、長期間分が積み重なることで、追徴税額はあっという間に数千万円、場合によっては億単位に膨れ上がることも珍しくありません。
さらに、本来納めるべきだった関税・消費税の不足税額に加えて、ペナルティとして以下の付帯税が課されます。
- 過少申告加算税:不足税額に対して、原則として10%(新たに納める税額が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている部分については15%)が課されます。
- 重加算税:事実を隠蔽したり、仮装したりといった悪質なケースと判断された場合に課され、税率は35%(過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は45%)と極めて高くなります。
- 延滞税:法定納期限の翌日から、完納する日までの日数に応じて、年率で課される利息に相当する税金です。
例えば、5年間にわたり、毎年200万円の関税の申告漏れがあったとします。不足税額の合計は1,000万円。これに過少申告加算税(10%と仮定)100万円と、相当額の延滞税が加わり、一度に1,100万円以上の想定外の資金流出が発生するのです。これが重加算税の対象となれば、そのダメージはさらに甚大なものになります。過少申告加算税と「正当な理由」の有無は、企業の財務に直接的な影響を与える重要な問題です。
税関事後調査のリスクを放置することは、将来的に大きな財務負担や調査対応上のリスクを生じさせる可能性があります。
税関事後調査は「通関士資格を持つ弁護士」へ相談すべき理由
税関事後調査の通知が届いたとき、多くの経営者はまず、日頃取引のある通関業者や顧問税理士に相談することを考えるかもしれません。しかし、複雑化・専門化する近年の事後調査においては、それだけでは十分な対応が難しいケースが増えています。ここで、第三の選択肢として「通関士資格を持つ弁護士」への相談がなぜ有効なのか、その理由を解説します。
複雑な法令を横断した「ワンストップ」でのリスク診断が可能
税関事後調査は、関税法、関税定率法、外国為替及び外国貿易法(外為法)、そして各種EPA/FTA協定など、複数の法律が複雑に絡み合う専門領域です。通関業者は通関手続きの実務に、税理士は国内税務の専門家ですが、これらの国際通商法規を横断的に解釈し、法的なリスクを評価することまでは専門外であることが少なくありません。
当事務所の代表弁護士である有森文昭は、弁護士資格に加え、財務省が管轄する貿易関連の国家資格である通関士資格を有しております。これにより、通関実務の知識と法律解釈・交渉の専門性を兼ね備え、契約書のリーガルチェックから、貿易ビジネスを「通関リスク」から守るための申告価格の法的な妥当性検証、原産地規則の厳密な解釈まで、問題を分断することなくワンストップで対応が可能です。表面的な問題解決ではなく、ビジネスの根幹にあるリスクを診断し、根本的な解決策を提示できるのが当事務所の強みです。
調査当日の立会いと税関との法的交渉を代理できる
事後調査当日は、専門的な事項について、調査官から複数の質問がなされることがあります。担当者は精神的なプレッシャーから、意図せず自社に不利な回答をしてしまうこともあり得ます。
弁護士は、法律に基づき依頼者の代理人として行動することが認められています。調査に立ち会うことで、調査官の質問の意図を正確に把握し、法的な観点から不適切な質問に対してはっきりと意見を述べることができます。また、税関との見解に相違が生じた際には、単なる実務担当者としてではなく、企業の「交渉代理人」として、法的な根拠に基づいた主張を展開し、輸入者の正当な権利を守ります。この輸入事後調査の罰則リスクと正しい対応策を熟知した専門家の存在は、担当者の精神的負担を大幅に軽減し、冷静な調査対応を実現します。
不当な課税処分に対する不服申立(審査請求)まで見据えた対応
万が一、税関事後調査の結果、更正処分等に納得がいかない場合、輸入者には不服を申し立てる権利があります。しかし、この不服申立(再調査の請求や審査請求)は、税関の判断を覆すための法的根拠と客観的証拠を揃えて、論理的に主張を組み立てる高度な法律行為です。
弁護士であれば、調査の初期段階から、将来的な不服申立の可能性を視野に入れた戦略的な対応が可能です。どのような証拠を保全し、どのような主張を記録に残しておくべきかを的確に判断し、万が一の事態に備えます。弁護士と通関業者の役割の違いを理解し、調査対応から最終的な紛争解決まで一貫してサポートできるのは、弁護士ならではの強みです。
このように、不服申立・審査請求の手続と戦略まで見据えた一貫したサポートは、企業の利益を適切に守るために重要です。
まとめ|事後調査の備えは専門家との連携が不可欠です
本記事で解説してきたように、2026年現在の税関事後調査は、調査件数・追徴税額ともに高水準で推移し、その内容はより厳格化・専門化しています。特に「関税評価」「原産地管理」「帳簿保存」の3大論点については、これまで以上に緻密な管理体制が求められます。
「長年このやり方で問題なかったから大丈夫」「通関業者に任せているから安心」といった考えは、もはや通用しない時代です。ある日突然、数千万円もの追徴課税という形で、過去の申告管理の不備が、資金繰りや経営判断に影響する可能性があります。
重要なのは、問題が起きてから対処するのではなく、問題が起きないように「予防」することです。そして、その最善策は、通関と法律の両面に精通した専門家と連携し、自社の体制を客観的に見直すことに他なりません。
もし、少しでも自社の輸出入管理体制に不安を感じる点があれば、早めにご相談ください。早期に対策を行うことで、予期しない追徴課税や調査対応上の負担を軽減しやすくなります。税関事後調査への初動対応を誤らないためにも、ぜひ一度、専門家の視点からのアドバイスをご活用いただければ幸いです。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

