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【解決事例】本物なのに税関で差止め!弁護士の意見書で輸入許可へ
「イタリアの信頼できるセレクトショップから仕入れた有名ブランドのバッグが、日本の税関で『商標権侵害の疑いがある』として止められてしまった。間違いなく本物なのに、このままでは没収されてしまうかもしれない…」
これは、ブランド品の並行輸入を手掛ける事業者様から、当事務所に実際に寄せられた切実なご相談です。商標権者(ブランドホルダー)側は「正規ルート以外の商品は認めない」と強硬な姿勢を示しており、輸入が認められない場合には、事業上大きな損失が生じ得る状況でした。
このような事態に直面すると、多くの方は「なぜ本物を仕入れただけなのに?」と混乱し、対応方針に迷い、不安を感じる方も少なくありません。
当職は、直ちに事態を分析し、税関に対して「輸入差止に対する意見書」を提出しました。回答期限が非常に短い税関検査では、初動のスピードが結果を大きく左右します。
意見書では、仕入れ先からのインボイス、クレジットカードの決済控え、商品のタグやシリアルナンバーの写真、そして事業者様が過去に同店舗から問題なく仕入れていた実績などを客観的な証拠として提示。その上で、日本の商標法における「真正品の並行輸入」が適法である法的根拠を詳細に論証しました。
結果、税関は当職の意見書を採用し、「侵害の事実は認定できない」として輸入を許可。商品は無事にご依頼者様の手元に届き、販売機会の損失という最悪の事態を防ぐことができました。この事例は、適切な法的対応がいかに重要であるかを示しています。
なぜ?「本物」なのに税関で止められる並行輸入の仕組み
そもそも、なぜ正真正銘の「本物」であるブランド品が、税関で止められてしまうのでしょうか。この疑問を解消することが、冷静な対応への第一歩です。
税関の重要な役割の一つは、偽ブランド品などの知的財産権を侵害する物品が国内に流入するのを防ぐことです。そのため、少しでも疑いのある貨物については、一旦留め置いて真贋を確認する権限を持っています。
並行輸入品は、正規代理店とは異なるルートで輸入されるため、税関から見ると「出所が正規ルートと異なる=偽物の可能性がある」と判断されやすい傾向にあります。これは、商標権が国ごとに独立して存在する「属地主義」の原則にも関係しています。ブランド側(商標権者)は、自国でのブランド価値や価格を維持するため、正規代理店以外の流通を厳しく監視しているのです。
つまり、税関での差止めは「あなたが偽物を扱っている」という断定ではなく、「この商品が知的財産侵害物品に該当するかどうかについて、税関が輸入者・権利者から提出された証拠や意見等を踏まえて判断します」という中立的な手続きの開始を意味します。この仕組みを理解することが、パニックに陥らず、的確な初動対応をとるための鍵となります。
適法な輸入ビジネスと商標権侵害のリスクは常に隣り合わせであり、正しい知識を持つことは、ご自身のビジネス上のリスクを抑えるために重要です。

税関から届く「認定手続開始通知書」とは?
税関で貨物が差し止められると、輸入者宛に「認定手続開始通知書」という書類が郵送されてきます。この名称の書類を受け取ると不安に感じる方もいますが、手続きの意味を理解して対応することが重要です。
この通知書は、刑事事件における逮捕状のようなものでは決してありません。むしろ、「あなたの貨物が商標権を侵害する疑いがあるため、税関がこれからその真偽を判断します。つきましては、輸入者であるあなたにも反論の機会を与えますので、意見があれば申し立ててください」という、法的な手続きの開始を告げる合図です。
つまり、これは反論の機会を与えられた、非常に重要なステップなのです。この通知を受け取った後の大まかな流れは以下のようになります。
- 認定手続開始通知書を受領
- 輸入者が「意見書」と証拠を税関に提出(期限あり)
- 商標権者(ブランド側)も意見を提出
- 双方の意見を踏まえ、税関が侵害品か否かを判断
- 結果が輸入者に通知される(輸入許可 or 没収・廃棄)
このプロセスにおいて、輸入者が唯一、自身の正当性を主張できるのが「意見書」の提出です。適切な対応をとれば、商品を無事に取り戻せる可能性は十分にあります。なお、税関が定める輸出入禁止物品の規制についても理解を深めておくとよいでしょう。
より詳細な手続きの流れについては、税関のウェブサイトも参考になります。
参照:税関 認定手続の流れ
絶対に無視はダメ!通知を放置した場合の最悪の結末
「どうせ本物だから、放っておいても大丈夫だろう」という楽観視は、取り返しのつかない事態を招きます。
認定手続開始通知書を無視したり、指定された期限内に意見書を提出しなかったりした場合、税関は「輸入者に反論の意思なし」と判断します。その結果、商標権者側の主張が一方的に認められ、あなたの貨物はほぼ自動的に「知的財産権侵害品」として認定されてしまいます。
侵害品と認定された貨物は、法律に基づき没収され、最終的には廃棄処分となります。これは、仕入れにかかった費用の全損を意味し、ビジネスに深刻な打撃を与えるでしょう。
さらに深刻なのは、一度このような記録が税関に残ってしまうと、将来の輸入通関が格段に厳しくなるリスクがあることです。いわゆる「ブラックリスト入り」に近い状態となり、以降の輸入申告のたびに厳格な検査対象となったり、差止めが頻発したりする可能性があります。これにより、ビジネスのスピード感が失われ、機会損失が拡大するという負のスパイラルに陥りかねません。
したがって、通知を受け取ったら、たとえ面倒に感じても、迅速かつ真摯に対応することが、ご自身のビジネスの未来を守るために不可欠なのです。万が一、税関の処分に納得がいかない場合は、税関の処分に対する不服申立てという次の手段も考えられますが、まずは意見書の段階で全力を尽くすべきです。
反論の要!「意見書」で真正品だと証明する3ステップ
認定手続において、輸入を許可してもらうためには、説得力のある「意見書」の提出が不可欠です。ここでは、その作成プロセスを3つの具体的なステップに分けて解説します。
ステップ1:証拠集め―「商流」を証明する客観的資料を揃える
意見書の説得力は、その主張を裏付ける客観的な証拠にかかっています。税関の担当者は、輸入者の「本物だと信じている」という感情的な訴えではなく、事実を証明する資料を重視します。まずは、商品の「商流」、つまり「いつ、どこで、誰から、何を、どのようにして購入したか」を時系列で証明できる資料を抜け漏れなく集めましょう。
具体的には、以下のような書類が有効な証拠となります。
- 仕入れ先発行の請求書(インボイス):商品名、数量、価格、発行日、仕入れ先の情報が明記されているもの。
- 送金記録:銀行の海外送金依頼書やクレジットカードの利用明細など、インボイス記載の金額を支払ったことを証明するもの。
- 商品の写真:ブランドタグ、品質表示タグ、シリアルナンバーなど、個体を特定できる部分の鮮明な写真。
- 仕入れ先との交渉記録:発注や価格交渉など、取引の経緯がわかるメールやチャットの履歴。
- (あれば)真正品であることの証明書:メーカーや正規販売店が発行した証明書や保証書。
- 過去の取引実績:同じ仕入れ先から継続的に購入している場合は、過去のインボイスや輸入許可通知書なども補強材料になります。
これらの貿易実務における帳簿書類を整理し、いつでも提出できるよう準備しておくことが重要です。

ステップ2:論理構成―並行輸入の適法3要件に沿って主張を組み立てる
証拠が集まったら、次はその証拠を使って法的に有効な主張を組み立てます。単に「本物です」と繰り返すだけでは不十分です。日本の裁判例(フレッドペリー事件最高裁判決)では、並行輸入が商標権侵害にならないための3つの要件が示されており、この要件を満たしていることを論理的に説明する必要があります。
その3要件とは、以下の通りです。
- 真正商品性:その商品が、商標権者が製造・販売した「本物」であること。
- 内外権利者の同一性:日本の商標権者と、海外の商標権者が同一であるか、法的に同一と評価できる関係にあること。(多くの有名ブランドではこの要件は満たされます)
- 品質の同一性:日本国内の正規代理店が販売する商品と、並行輸入した商品の品質が実質的に同じであること。
意見書では、この3つの要件に沿って主張を構成します。そして、ステップ1で集めた各証拠が、これらの要件のどれを証明するものなのかを明確に関連付けながら説明します。例えば、「インボイスと送金記録は、商標権者の正規販売店である〇〇社から購入したことを示しており、①真正商品性を満たす」といった具合です。この法的枠組みに沿って主張することで、意見書の説得力は格段に高まります。ブランド商品の並行輸入における留意点については、専門機関の情報も参考になります。また、真正品の並行輸入における法的有効性を深く理解することが、ビジネスの基盤を強固にします。
ステップ3:意見書の作成―税関担当者に伝わる書き方のポイント
最後に、実際に意見書を作成します。意見書に法律で定められた厳密な書式はありませんが、以下の項目は必ず含めるようにしましょう。
- 提出年月日
- 宛先(〇〇税関長 殿)
- 事件番号(通知書に記載されています)
- 輸入者の氏名・住所
- 意見の概要(結論:「本件貨物は商標権を侵害しない真正品であるため、輸入を許可されたい」など)
- 意見の理由(ステップ2で組み立てた論理構成を記述)
- 添付証拠の一覧(証拠番号を付してリスト化)
多忙な税関担当者が短時間で内容を把握できるよう、書き方にも工夫が必要です。
- 結論を先に書く:「意見の概要」で、まず何を主張したいのかを明確に伝えます。
- 項目を立てて整理する:「意見の理由」は、「1. 真正商品性について」「2. 内外権利者の同一性について」のように、3要件に沿って項目を分けて書くと格段に分かりやすくなります。
- 主張と証拠を対応させる:各主張の末尾に「(甲第1号証、甲第2号証)」のように、根拠となる証拠の番号を付記します。
逆に、感情的な表現(「こんなことは不当だ」など)や、証拠に基づかない断定的な主張は避けるべきです。あくまで客観的な事実と法的な論理に基づいて、冷静かつ丁寧に主張を展開することが重要です。こうした税関交渉では、論理性が何よりも重視されます。
自分で対応?弁護士に依頼?後悔しないための判断基準
「意見書の作成は、自分ですべきか、それとも専門家である弁護士に依頼すべきか」。これは、多くの方が悩むポイントでしょう。どちらを選ぶべきかは、ご自身の状況によって異なります。ここでは、後悔しないための判断基準を客観的に解説します。
最終的な決断を下す前に、ご自身の状況を冷静に評価することが大切です。特に、通関士資格をもつ弁護士に依頼するメリットを理解した上で、最善の選択を検討することをお勧めします。
ご自身での対応も可能なケース
以下の条件が複数当てはまる場合は、ご自身で対応できる可能性も考えられます。
- 商流の証明が完璧:仕入れ先がブランドの正規代理店や有名セレクトショップであり、真正品であることを証明する書類(インボイス、送金記録、保証書など)が完璧に揃っている。
- 権利者(ブランド側)が協力的:権利者側が並行輸入に比較的寛容で、誤解であることが明白な場合。
- 法的な論理構成に自信がある:前述した「並行輸入の適法3要件」を理解し、それに沿った論理的な文章を作成できる。
- 時間的な余裕がある:証拠集めや書類作成に十分な時間を割くことができる。
ただし、これらの条件が揃っていても、期限内に法的に有効な主張を組み立てることは容易ではありません。また、税関とのやり取りには専門的な知識が求められる場面もあります。ご自身で対応する場合でも、通関業者の役割と業務の境界線を理解し、彼らにどこまで相談できるかを知っておくことも重要です。
弁護士への相談を強く推奨するケース
一方で、以下のような状況に一つでも当てはまる場合は、速やかに弁護士へ相談することを強く推奨します。初動の遅れが、ビジネスの存続に関わる致命的な結果を招く可能性があるためです。

- 商流を証明する書類が不十分:インボイスの一部が欠けている、個人名の送金記録しかないなど、客観的な証拠に不安がある。
- 仕入れルートが複雑:個人や小規模な卸売業者から仕入れており、商品の出所を遡って証明することが難しい。
- 権利者(ブランド側)が強硬な姿勢:権利者側が「正規ルート以外は一切認めない」という姿勢を明確に示している。
- 一度反論された経験がある:過去に意見書を提出したが、権利者から再反論されてしまった。
- 貨物の金額が大きい:差し止められた商品の金額が高額で、没収された場合の経営への影響が甚大である。
- 法的な文章の作成に自信がない、または時間がない:本業が忙しく、意見書の作成に十分な時間を割くことができない。
これらのケースでは、高度な法的知識、証拠の評価能力、そして税関や権利者との交渉力が必要不可欠です。専門家である弁護士に依頼することは、証拠の整理や法的主張の構成を適切に行い、ご自身のビジネス上のリスクを抑えるための有力な選択肢となります。特に、通関業者任せにしてきたことで、いざという時に証拠が揃わないという事態は非常に危険です。
税関トラブルは初動が肝心。まずは専門家にご相談ください
並行輸入品の税関差止めは、多くの事業者にとって大きな負担となる手続きです。しかし、ここまでお読みいただいた方は、これが法的な手続きであり、適切な対応をとれば乗り越えられる問題であることをご理解いただけたかと思います。
重要なのは、一人で抱え込まず、パニックに陥らず、迅速に正しい行動を起こすことです。特に、意見書の提出期限は非常に短く、初動の対応が結果を大きく左右します。
当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であると同時に、貿易実務の国家資格である「通関士」の資格も有しております。そのため、単なる法律論だけでなく、税関実務や貿易の現場感覚を踏まえた、極めて実践的なサポートが可能です。
「何から手をつけていいかわからない」「自分のケースは弁護士に頼むべきか判断できない」という段階でも構いません。まずは専門家に現状をお話しいただくだけで、事実関係や必要な対応を整理し、次に取るべき対応を検討しやすくなります。初回のご相談で状況を伺い、最適な解決策をご提案いたします。
あなたのビジネスと大切な商品を理不尽な形で失うことのないよう、私たちが全力でサポートいたします。どうぞ、お気軽にお問い合わせください。
Q&A:並行輸入の税関差止でよくある質問
最後に、並行輸入の税関差止めに関して、事業者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。その他のよくあるご質問と回答も併せてご参照ください。
Q. 意見書の提出期限は延長できますか?
A. 意見書・証拠の提出期限は、通知書に記載された期限に従う必要があります。輸入者が侵害の該否を争う旨の申出をした場合には、その後に税関から送付される「証拠・意見提出期限通知書」に記載された日まで、原則として同通知書交付の日の翌日から起算して10執務日以内とされています。この期限は厳守すべきものですが、証拠収集に時間を要するなど、やむを得ない正当な理由がある場合には、事前に税関の担当部署に連絡・相談することで、延長が認められるケースもあります。ただし、安易に延長を期待するのではなく、まずは期限内提出を目指して迅速に行動を開始することが肝心です。弁護士にご依頼いただければ、こうした行政機関との手続き交渉も代理で行うことが可能です。万が一、輸入貨物の停滞が長期化しそうな場合でも、法的な観点から最善策を講じます。
Q. 費用を抑えたいのですが、弁護士に意見書の作成だけを依頼することは可能ですか?
A. はい、可能です。当事務所では、税関との交渉まで含めたフルサポートはもちろん、「意見書の作成・レビューのみ」といったスポットでのご依頼にも柔軟に対応しております。ご依頼者様の状況やご予算に合わせて、最適なサービスプランをご提案いたします。当事務所の弁護士報酬は、タイムチャージ制を基本としつつも、事案に応じて固定報酬制のご提案も可能ですので、費用面でご不安な方も、まずはお気軽にご相談ください。費用対効果を丁寧にご説明し、ご納得いただいた上で手続きを進めます。
Q. 一度トラブルになったら、もうそのブランドは並行輸入しない方がいいですか?
A. いいえ、一概にそうとは言えません。今回、意見書を提出して無事に輸入が許可されれば、それは「あなたの扱っている商品が、法的に真正品である」と税関に認められたことを意味します。この事実は、むしろ今後のビジネスにおける信頼性の証となり得ます。重要なのは、この経験を教訓とすることです。今後は、取引の都度、商流を完璧に証明できる書類(インボイス、送金記録、保証書など)を仕入れ先から確実に受け取り、整理・保管する体制を構築することが、将来のトラブルを未然に防ぐ最善の策となります。海外業者との契約書を見直すなど、コンプライアンス体制を強化する良い機会と捉え、より強固なビジネス基盤を築いていくことをお勧めします。継続的なサポートが必要な場合は、顧問契約という形で貴社のビジネスを長期的に支援することも可能です。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

