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1.輸出・輸入ビジネスのトラブル防止の考え方
輸出・輸入のトラブルといっても、そのトラブルの原因によって、防止策は全く異なりますので、想定されるトラブル内容、トラブルの発生場面、トラブルの相手方等を明確に区別した上でトラブルの防止策を検討することが非常に重要です。
また、輸出・輸入とは一切関係ないビジネスでは、ビジネスの当事者以外が重要な役割を果たす場面は必ずしも多くはないといえるので、ビジネスの相手方とのトラブルをケアすることに焦点を当てればよいとも言えるのですが、輸出・輸入に関するビジネスの場合には、輸出・輸入通関の際に税関、通関業者が関与し、かつ、この関与がビジネスの根幹に関わるものといえます。すなわち、貨物を輸出、輸入することができるかどうかは税関が輸出・輸入の許可を出すかどうかにかかっており、そういう意味では、極端な言い方をすれば、ビジネスの帰趨が税関に左右される状況に常にある、といっても過言ではないでしょう。
このように、輸出・輸入のトラブル防止の視点からは、取引相手とのトラブルという視点と、通関業者・税関との間のトラブル防止という視点を明確に分けて検討する必要があります。
繰り返しになりますが、以上の点は非常に重要なことであり、以上の点を理解していない場合、トラブルの予防として適切な対応を取ることができません(付言すると、中には、通関業者と税関をほぼ同じような存在と捉えている方もいらっしゃいますが、両者は全く異なる組織ですので注意が必要です。)。
以下では、各主体との間のトラブルの防止について、輸入を前提にご紹介いたします。
2.通関業者とのトラブルの防止について
通関業者は、輸入通関する貨物について、輸入者から申告された事実、及び提出された書面等を踏まえて、輸入申告のための通関資料を作成します。そのため、通関業者は、必ずしも輸入者のビジネス内容を理解しているわけではなく(通関業者の膨大な業務量を考えると、理解していないケースがほとんどではないでしょうか。)、淡々と輸入者から提出された書面を踏まえて申告書類を作成いたします(もちろん、担当者レベルで、輸入者と継続的な関係性をもち、輸入者のビジネスを踏まえて、提出された書面の内容に不自然な点がある等指摘してくれる担当者もいる可能性はありますが。)。
通関業者とのトラブルで一番多く相談を受けるケースは、以下のようなケースです。すなわち、通関業者が、輸入者から提出された書面を踏まえて輸入申告をしたが、その書面は、輸入者が間違って作成して提出してしまったもので、結果として間違った輸入申告となってしまった。当該書面は、輸入者の通常のビジネスを理解していれば即座に不自然な内容であると理解できたはずなので、通関業者が一言確認の連絡を取ってくれれば間違いに気付いたはずであり通関業者の形式的な対応に納得できない、というものです。
上記のとおり、通関業者が輸入者のビジネスを踏まえて書面内容を確認してくれるということは、なかなか難しい状況ですので、このようなトラブルを防止するためには、通関業者が正確な輸入のための通関資料を作成することができるように、適切な内容の資料を渡すことが必須となります。そして、そのためには、ビジネスの流れとして、輸入のための資料を正確に作成できるルーティーンを会社の中に構築する必要があります。
このような仕組みづくりには、輸出・輸入や通関関連の知識が必須となりますので、専門家へのご相談をご検討いただくことをお勧めいたします。
3.税関とのトラブルの防止について
税関とのトラブルでよくあるご相談は、貨物の輸入に関して税関から指摘があったので対応する必要が生じたというものと、事後調査の対応に関するものとなります。
これらのトラブルの防止策としては、適切に輸入申告を行うことができる体制を構築することにつきます。
しかしながら、多くの輸入者にとっては、ビジネスを軌道に乗せるだけでも精いっぱいなのに、そのビジネスが、輸入通関上問題ないかを逐一チェックすることはキャパシティ的に不可能だ、というのが現実であるものと思われます。
当事務所では、代表弁護士が通関士資格を有しており、正確な輸入・通関の知識を踏まえて、ビジネスを整理することで、ビジネスの流れの中で、どのような書類をどの部分で確認、作成する必要があり、また、どのような点に気を付けるべきか、さらには、どのような書類をどのように保存する必要があるか、といったことを詳細に整理、アドバイスするといったサポートをご提供しております。
もちろん、トラブルの発生の可能性をゼロにすることは不可能ですが、可能な限りトラブルの発生を避け、かつトラブルが発生した場合に適切な対応を取ることができる体制を構築することは、ビジネスをスムーズに進めるという観点からは非常に重要です。
法的な側面は専門家にアウトソーシングしていただくことで、輸入者はビジネスに専念することができますので、当事務所へのご相談を是非ご検討ください。
4.取引相手とのトラブルの防止について
取引相手とのトラブルについては、基本的には、輸入関連のビジネスの場合も、輸入に関係ないビジネスの場合も同様に考えることができます。
取引相手とコミュニケーションを十分に取ることや、事前にしっかりとした内容の契約書を作成すること等が取引相手とのトラブルの防止の中心的な内容となります。
もっとも、輸入関連のビジネスの場合には、輸入・通関に関連する法令、通達上規定されている非常に細かな内容までケアした規定を契約上盛り込んでおくことが取引の相手方との間のトラブル防止をより質の高いものとすることにつながります。
当事務所では、このような輸入・通関に関連する法令、通達を踏まえた契約書の作成・レビューといったサポートもご提供しておりますので、お気軽にご相談ください。