輸出入の関連法令としては、関税法と関税定率法が最も基本的な法令であり、かつ全ての輸出入者に関係するものとなります。
以下では、関税法と関税定率法に加え、その他にも、よく相談がある関連法令の代表的なものを簡単にご説明いたします。
もっとも、実際の問題に対処するためには、施行令や施行規則等の法令に加え、各種通達の規定も踏まえた対応が必要になります。
このページの目次
1.関税法
この法律では、関税額をどのように決定し、どのように納付するかといった関税の確定、納付、徴収、還付等に関する規定とともに、輸出入の通関に関する手続等も規定しております。いわば、輸出入・通関関連で最も基本的な法律となります。
具体的な規定内容は、
- 関税の確定、納付、徴収及び還付
- 保税地域
- 運送
- 輸出入通関に関する手続き
- 輸出入の定義と申告・許可の要否
- 税額の確定方式と納税申告
- 法定納期限と延滞税
- 修正申告と更正及び決定
- 補正と是正
- 法定納期限と納期限
- 許可と承認
- 適用法令、納税義務者
- 輸出入の申告時期
- 不服申立て
- 罰則
等です。
2.関税定率法
この法律は、関税を確定する上での税率、課税標準、減免戻し税に関する制度、特殊関税に関する制度、関税率表に関する解釈の通則等について規定しています。実際の事案では、よく問題となる課税価格の決定について、関税定率法の各規程を踏まえて、検討する必要があります。
3.関税暫定措置法
この法律は、関税の暫定税率、特恵関税制度、関税割当制度等に関する、暫定的な特例を規定しています。
4.食品衛生法
この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置に関して規定しております。
食品の輸入に関しては、例えば、販売又は営業上使用する食品等を輸入する輸入者は、その安全性確保の観点から、輸入届出を行う必要があります(食品衛生法27条)。この輸入届出を行わない食品等については、輸入者は、販売又は営業上使用することはできません。
また、注意点としては、輸入者は、届出を、税関ではなく検疫所で行う必要があります。
検疫所では、食品衛生監視員が適法な食品等であるかの審査や、検査の要否の判断を行います。
対象となる食品等とは、食品、食品添加物、器具、容器包装及び乳幼児用のおもちゃです。
対象となる食品等に該当するかどうか不明な場合には、厚労省等に事前に確認することも可能であり、輸入準備の観点からは非常に有用です。
5.医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称「薬機法」)
この法律は、品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うこと等を目的とした法律です。
医薬品等については、誰でも自由に輸入できるわけではありません。厚生労働大臣の製造販売業又は製造業の許可や登録を受けた者でなければ、業としてこれらを輸入してはならないと定められていますので注意が必要です。
6.外国為替及び外国貿易法
この法律は、外国為替、外国貿易その他の対外取引を総合的に対象とする法律です。
例えば、一定額を超える現金等を携帯して出国又は入国する場合には、事前に税関への届出が必要と規定されています。このほかにも、携帯する金の地金(純度90%以上)の重量が1キログラムを超える場合に関する規制が規定されていますが、金については、外為法上の規制以外にも規制が存在します。そのため、外為法上の規制をクリアすれば問題なく輸入できるわけではありませんのでご注意ください。
7.文化財保護法
国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別天然記念物、天然記念物等については、文化財保護法に基づき原則的に輸出禁止と規定されております。
8.植物防疫法
この法律は、輸出入する植物を検疫し、また植物に有害な動植物を駆除すること等を通して、農業生産の安全及び助長を図ることを目的としたものです。
【輸入について】
輸入植物検疫では、海外からの病害虫の侵入を防ぐため、植物の種類及び部位ごとに、輸入の禁止、輸出国の栽培地での検査、及び日本での輸入検査等が実施されております。
【輸出について】
他国でも植物検疫を実施している場合がありますので、日本から植物等を輸出する場合は、輸出対象国が行っている植物検疫をクリアする植物を輸出する必要があります。
9.道路運送車両法
道路運送車両法上、登録自動車の所有者は、その自動車を輸出しようとする場合、あらかじめ国土交通省(運輸支局又は自動車検査登録事務所)において「輸出抹消仮登録」の申請を行い、「輸出抹消仮登録証明書」の交付を受ける必要があります。
また、既に一時抹消登録を受けた自動車を輸出しようとする際には、あらかじめ国土交通省(運輸支局又は自動車検査登録事務所)に対し、当該自動車を輸出する旨の届出をし、「一時抹消登録証明書」を返納した上で、「輸出予定届出証明書」の交付を受けなければなりませんので、この点も注意が必要です。