お悩み別―労働条件を変更したい

1.労働条件を変更する方法

従業員を採用した時点とは企業を取り巻く状況や企業の経営状況等が変わったため、従業員の労働条件を変更したいとお考えの企業も多いものと思われます。

従業員の労働条件を変更する代表的な方法としては、以下の方法があります。

  1. 従業員との間で労働条件の変更に関する個別の合意を締結する方法。ただし、就業規則や労働協約に定める労働条件を下回る条件を合意した場合には、当該合意は無効となりますので注意が必要です。
  2. 就業規則の変更を利用する方法。ただし、企業が一方的に就業規則を変更しても、従業員の不利益に労働条件を変更することはできません。就業規則によって労働条件を変更する場合には、(i)内容が合理的であること、及び(ii)労働者に周知させること、が必要です。
  3. 労働協約の変更を利用する方法

 

2.①従業員との間で労働条件の変更に関する個別の合意を締結する方法について

従業員との間で労働条件の変更に関する個別の合意を締結する場合、就業規則や労働協約に定める労働条件を下回る条件を合意したとしても、当該合意は無効となりますので、注意する必要があります。

また、この方法を取る場合、最も注意すべき点は、従業員の自由な意思に基づく同意を得る必要があるという点です。

この点については、最判平成28年2月19日(裁判所時報1646号)において、従業員の労働条件の変更に関して、「当該変更を受け入れる旨の労働者の合意の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該合意がされるに至った経緯及びその態様、当該合意に先立つ労働者への情報提供又は説明内容等に照らして、当該合意が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるべき」、と判示されております。労働条件の変更に関する同意の有効性が事後的に問題となった場合に備えて、企業は、当該判例で指摘されている各要素を踏まえて、従業員から労働条件の変更に関する合意を得ることが重要となります。

 

3.②就業規則の変更を利用する方法について

就業規則の変更を利用して労働条件の変更を行う場合とは、多くの場合、就業規則の内容を従業員の不利益な内容に変更する場合を指します。

そして、就業規則の内容を従業員の不利益に変更する場合に関しては労働契約法10条等で規定されており、就業規則の変更に合理性が認められることが必要です。そして、就業規則の変更に合理性が認められるかどうかについては、「就業規則変更の必要性の内容・程度、変更による不利益の程度、変更後の就業規則の内容の相当性、代償措置その他関連する労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関するわが国社会における一般的状況」等を総合考慮して判断される、と規定されております。そのため、就業規則の変更を利用して従業員の労働条件の変更を行う場合には、労働契約法10条等で規定された諸要素を慎重に検討した上で実施する必要があります。

また、就業規則の変更を利用する場合には、就業規則の変更内容を労働者に対して周知する必要があります。この周知を欠いた場合には、就業規則の変更に関して従業員に対する拘束力が生じないので注意する必要があります。

 

4.③労働協約の変更を利用する方法について

労働協約の変更を利用する場合、以下の点に注意する必要があります。

(i)労働協約は、その変更内容が不合理なものは変更の効力が認められませんので、合理性を有する必要があります。

(ii)労働協約の効力は、原則としてその協約を締結した労働協約の組合員である従業員に対してのみ及びます。そのため、全従業員に対して効力を及ぼすことを想定する場合には、事業場の4分の3以上の従業員を組織する労働組合と労働協約を締結すること等が必要です。

当事務所では、労働問題を幅広く取り扱っております。従業員との間の労働条件の変更をご検討いただいている場合には、是非当事務所までご相談ください。

 

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