貨物を輸入する場合に、輸入者が利用できる可能性がある関税の減免税制度は複数あります。以下では、主要な関税の減免税制度の概要をご紹介いたします。
減免税制度を利用できるにもかかわらず利用していない場合、関税を余計に支払っている場合と実質的に同じ状況となってしまいます。減免税制度を利用する場合の手続きは煩雑ですので、必ずしも減免税制度の利用がビジネス上のメリットになるとも限りませんが、減免税制度の存在を把握した上で利用するかどうかを検討する場合と、そもそも減免税制度を知らないまま輸入を続ける場合では、ビジネス上、将来的に大きな違いとなる可能性があります。
輸入・通関の専門的な分野となりますので、なかなか理解が難しい面もありますが、輸入をビジネスとして行っている会社であれば、一度は減免税制度の利用に関してご検討いただく必要があります。これまで減免税制度に関して検討されたことがない場合は、専門家に是非ご相談ください。
主要な関税の減免税制度は、関税定率法及び関税暫定措置法上規定されております。以下、概要をご説明いたします。
このページの目次
1.関税定率法上規定されている減免税制度の概要
(1)変質、損傷等の場合の減税又は戻し税等(10条)
輸入申告後、輸入許可前に又は輸入許可後保税地域にある間に、輸入貨物が変質・損傷等により経済的価値が減少した場合、変質・損傷等した部分に相当する関税額を軽減又は払戻しできる場合があります。
(2)加工又は修繕のため輸出された貨物の減税(11条)
加工又は修繕のために日本から輸出され、原則1年以内に輸入される貨物(ただし、加工のための貨物については、その加工が日本では困難と認められるものに限る。)について、輸出時の性質・形状により輸入されると想定した場合の関税相当分を軽減できる場合があります。
(3)生活関連物資の減税又は免税(12条)
輸入する生活関連物資の輸入価格が高騰した場合に、その関税が軽減又は免除される場合があります。
(4)製造用原料品の減税又は免税(13条)
特定の製品(例えば、配合飼料等)を製造する国内産業の育成又は国民生活の安定等を図るため、その原料品(とうもろこし等)について、関税が軽減又は免除される場合があります。
この場合、減税又は免税される関税額に相当する担保の提供が必要となるケースがあります。
(5)無条件免税(14条)
国の専売品、再輸入品(一定の例外あり)等について関税が免除される場合があります。
(6)再輸入減税(14条の2)
日本から輸出された後、性質及び形状に変更がなく再輸入される貨物のうち、保税作業による製品、又は以前に減免戻税を受けた製品で保税作業により課されなかった関税額又は減免戻税額が新たに課される関税に比して少ない場合には、その差額に相当する関税が軽減される場合があります。
(7)外国で採捕された水産物等の減税又は免税(14条の3)
日本の船舶によって外国で採捕又は加工された水産物について、関税が軽減又は免除される場合があります。
(8)特定用途免税(15条)
日本の学術振興等の見地から特定の用途に使用される貨物(例えば、学校等で使用される学術研究用品等)について、関税が免除される場合があります。
(9)外交官用貨物等の免税(16条)
大使館等の公用品や外交官等の自用品について、関税が免除される場合があります。
(10)再輸出免税(17条)
日本の国内産業に影響を与えないものや国内で消費されないものについて、輸入の許可の日から原則1年以内に再び輸出されるものについて、関税が免除される場合があります。
この場合、減税又は免税される関税額に相当する担保の提供が必要となるケースがあります。
(11)再輸出減税(18条)
長期の耐用年数をもち、通常の輸入形態が貸借契約等によって日本で一時的に使用された後再輸出されるものについて、国内で使用された価値を除く再輸出分に相当する関税が軽減される場合があります。
この場合、減税又は免税される関税額に相当する担保の提供が必要となるケースがあります。
(12)輸出貨物の製造用原料品の減税、免税又は戻し税等(19条)
特定の輸出貨物の製造に使用された特定の原料品について、関税が軽減、免除又は払戻しされる場合があります。
この場合、減税又は免税される関税額に相当する担保の提供が必要となるケースがあります。
(13)課税原料品等による製品を輸出した場合の免税又は戻し税等(19条の2)
保税工場における製品の製造に際し、やむを得ない理由で従来使用していた外貨原料品と同種の内貨原料品を使用した場合に、使用内貨原料品と同種の輸入原料品について、関税が免除又は払戻しされる場合があります。
(14)輸入時と同一状態で再輸出される場合の戻し税等(19条の3)
関税を納付して輸入された貨物が、その輸入時の性質及び形状が変わっていない状態で、その輸入の許可の日から原則1年以内に再輸出される場合には、輸入時に納付された関税が払戻しされる場合があります。
(15)違約品等の再輸出又は廃棄の場合の戻し税等(20条)
違約品等を再輸出・廃棄する場合、輸入者は結果として経済的効果を受けないと言えるので、納付済の関税が払戻しされる場合があります。
2 関税暫定措置法上規定されている減免税制度の概要
(1)加工又は組立てのため輸出された貨物を原材料とした製品の減税(8条)
日本から輸出された貨物を原料又は材料とし、原則1年以内に輸入される特定の輸入貨物について、輸出原材料相当分の関税が軽減される場合があります。
(2)経済連携協定に基づく加工又は修繕のため輸出された貨物の免税(8条の7)
経済連携協定の規定に基づき、加工又は修繕のため日本から経済連携協定の日本以外の締約国に輸出され、原則1年以内に輸入される貨物について、関税が免除される場合があります。
当事務所では、通関士資格を有し、通関・貿易分野に強みをもつ代表弁護士が、各減免税制度の利用に関して様々なサポートをさせていただきます。減免税制度の利用に関心がある場合には、まずは当事務所まで、お気軽にご相談ください。