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第三国引渡し取引の法的検討
はじめに:相談事例のご紹介
本日は、グローバルなサプライチェーンにおいて頻繁に問題となる、第三国を経由して貨物を輸入する際の「輸入取引」の該否について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。複雑な物流経路を持つ企業様にとって、非常に重要な視点となります。
【相談者】
東京都内で精密機械の輸入販売を行う株式会社テクノ流通 代表取締役 A氏
【相談内容】
「当社は今回、ドイツのサプライヤーであるB社から高性能なセンサーを輸入することになりました。しかし、物流の効率化を図るため、B社とは「CIF シンガポール条件」で契約を締結し、一旦シンガポールにある当社の提携倉庫に貨物を搬入しました。シンガポールの倉庫では数週間、在庫として保管し、日本の顧客からの注文が入ったタイミングで、当社の指示により日本へ発送しました。
当社としては、ドイツのB社から購入した際の単価(シンガポールまでの運賃込み)を基礎として輸入申告を行えばよいと考えていました。ところが、通関業者から「このケースではドイツB社との契約は関税法上の輸入取引に該当しない可能性がある」と指摘を受け、困惑しております。仕入れ価格が申告価格のベースにならないとなれば、一体どのような価格を申告すべきなのでしょうか。また、申告を誤った場合の法的リスクについても詳しく教えてください。」
このような事例は、ハブ港を活用した在庫管理を行う企業において非常に多く見受けられます。適正な輸入申告価格が何かを把握するためには、まずは輸入取引がどの取引に該当するかを検討することが出発点となります。そして、関税定率法や基本通達において規定された輸入取引に関するルールを踏まえて正確に検討することが重要です。以下、詳しく解説いたします。
1 第三国において引き渡しがなされた場合の輸入取引該当性について
(1)輸入取引の定義と原則
輸入取引の該否を検討する上で、まずはその法的な定義に立ち返る必要があります。関税定率法第四条第一項において、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格(取引価格)とすると規定されています。
ここで重要となるのが、関税定率法基本通達四-一(一)の規定です。
(関税定率法基本通達四-一 輸入取引の意義)
輸入取引とは、本邦に拠点を有する者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいい、通常、現実に貨物を輸入することとなる売買がこれに該当する。
この定義には、二つの重要な要素が含まれています。第一に、本邦に拠点を有する者が「買手」であること。第二に、その売買が「貨物を日本に到着させることを目的」として行われ、「現実に到着する原因」となったことです。
(2)第三国引渡しの問題点
設例のように、輸入者が輸入貨物を本邦へ引き取ることを目的として、F国所在のサプライヤーと売買を行ったとします。そして、本件輸入貨物をE国で一時保管することとし、サプライヤーとの間では、CIF(E国港)条件で売買契約を締結したとします。
この場合、以下の理由により、F国サプライヤーと日本輸入者の間の売買は「輸入取引」とは認められない可能性が高くなります。
一 発送目的の断絶
CIF(E国港)条件での売買は、法的には「貨物をE国に到着させること」を目的とした取引です。サプライヤーの義務はE国の港で完了しており、その時点では「日本への輸出」を目的とした発送行為とはみなされません。
二 到着原因の変化
貨物が日本に運び込まれる際、それは既に輸入者がE国内の保税倉庫で保管している「自己所有貨物」となっています。当該貨物の本邦への到着をもたらしているのは、サプライヤーとの売買契約そのものではなく、日本国内の需要に応じた輸入者自身の「出荷計画」や「自社在庫の移動指示」であると認められます。
三 自己所有貨物の引取り行為
以上のことから、本件輸入貨物は、関税定率法第四条第一項に規定する「輸入取引」により輸入されるものとは認められません。つまり、ドイツのメーカーへ支払った価格(現実支払価格)をそのまま申告価格の基礎にすることはできず、同項の規定により課税価格を計算することはできないこととなります。
(3)輸入取引に該当しない場合の価格決定(第四条の二以下)
輸入取引が存在しないと判断された場合、課税価格は法第四条の二以下の規定、いわゆる「逆算方式」や「算定価格方式」等により計算することとなります。
(関税定率法第四条の二 同種の貨物又は類似の貨物に係る取引価格による課税価格の決定)
(関税定率法第四条の三 国内販売価格又は製造原価に基づく課税価格の決定)
(関税定率法第四条の四 特殊な貨物に係る課税価格の決定の原則の特例)
実務上は、日本国内での販売価格から国内経費や利益を差し引いて算出する「逆算方式(第四条の三第一項)」などが検討されますが、これは通常の取引価格による申告よりも計算が極めて複雑であり、税関との調整も難航する傾向にあります。
2 実務で役立つ輸入取引該否判定表
どのような場合に輸入取引と認められ、どのような場合に認められないのかを整理した比較表を作成いたしました。ワードデータ等に貼り付けて、社内での取引スキーム検討にご活用ください。
【輸入取引の該当性に関する判定基準一覧表】
取引の形態|日本到着の直接原因|輸入取引の成否|課税価格の計算根拠
--------|----------|--------|----------
直送取引(F国から日本へ)|サプライヤーとの売買契約|成立する|現実支払価格(法四条一項)
経由地での積み替え(B/L直送)|サプライヤーとの売買契約|成立する|現実支払価格(法四条一項)
第三国での転売(洋上転売等)|転売者との売買契約|成立する|転売価格(法四条一項)
第三国引渡し後の自社出荷|輸入者の出荷計画|成立しない|逆算方式等(法四条の二以下)
第三国で加工後の輸入|加工業者との契約または出荷計画|成立しない|算定価格方式等(法四条の二以下)
このように、契約条件が「CIF 日本港」なのか「CIF 第三国港」なのか、あるいは誰の指示で日本への発送が行われたのかによって、法的な扱いは劇的に変化します。
3 輸入申告価格の算定ミスが招く深刻なリスク
間違った輸入申告価格を申告してしまうと、つまるところ脱税と同じ状況となってしまいます。そのため、輸入申告価格は慎重に算定することが必要です。
(1)多額の追徴課税と過少申告加算税
「輸入取引」に該当しないにもかかわらず、安易に仕入れ価格で申告し、それが税関事後調査で否認された場合、本来あるべき価格(通常は仕入れ価格より高くなる逆算価格等)との差額分について、関税及び消費税が追徴されます。これに加え、不足税額の十パーセントから十五パーセントにのぼる過少申告加算税が課されることとなります。
(2)重加算税の適用リスク
事実を隠蔽したり、仮装したりしたとみなされた場合、三十五パーセントから四十パーセントという極めて重い重加算税が課されます。第三国を経由させるスキームにおいて、あえて低い仕入れ価格を利用するために虚偽のインボイスを提示したような場合は、この対象となる可能性が非常に高くなります。
納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、当該納税義務者に対し、過少申告加算税に代え、その額の計算の基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
(3)刑事事件化の恐れ
悪質な脱税行為と判断された場合、最悪のケースでは刑事事件化されてしまう場合もあります。法人の代表者が逮捕されたり、多額の罰金が科されたりすれば、企業の社会的信用は失墜し、ビジネスの継続は困難となるでしょう。
特に輸入取引の該当性については、関税定率法や基本通達において細かく規定されておりますが、万一誤った解釈を行ってしまうと、輸入申告価格が適正な価格から大きく異なるものとなってしまうリスクがあります。
4 関税評価における加算要素の重要性
輸入取引が認められる場合であっても、現実支払価格に加算すべき要素(アシスト費用やロイヤリティ等)を忘れてはなりません。第三国を経由する取引では、特に以下の項目が漏れやすいため注意が必要です。
一 中継地での保管・荷役費用
これらの費用を買手が負担している場合、日本までの運送に関連する費用として課税価格に算入しなければならない場合があります。
二 買付手数料と仲介手数料の混同
現地でパートナーに動いてもらう際、そのパートナーが「買付代理人」として認められる極めて限定的なケースを除き、支払う手数料は加算要素となります。
三 無償提供物品(アシスト)の費用
日本から中継地の工場へ金型や原材料を送っている場合、その費用を製品価格に上乗せして申告しなければなりません。
これらの加算漏れも、税関の事後調査では徹底的に追及されるポイントです。
5 専門家によるリーガルチェックの重要性
グローバルな取引スキームを構築する際には、物流の効率性だけでなく、関税法上の適合性を事前に検証しておくことが不可欠です。
【当事務所が推奨するコンプライアンス対策】
一 取引開始時のスキーム診断
新しいルートでの輸入を開始する前に、その契約条件(インコタームズ)が輸入取引の認定にどのような影響を与えるかを法的に分析すること。
二 事前教示制度の活用
判断が難しい複雑な取引については、税関に対して公式に見解を求める「事前教示制度」を利用し、法的安定性を確保すること。
三 契約書の適正化
実態に即した、かつ関税法上の不利益を被らないような売買契約書や業務委託契約書を作成すること。
四 事後調査への備え
過去の取引を振り返り、もし誤った申告を行っていた場合には、自主的に修正申告を行うことでペナルティを軽減すること。
6 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。
代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知識を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提供することができます。
輸入申告価格を正確に把握することが難しい場合等、少しでも不安がある場合には、まずはご相談ください。
【当事務所が提供できる具体的なサービス】
一 第三国経由取引における輸入取引該否のリーガルアドバイス
二 法第四条の二以下に基づく課税価格の算定支援
三 税関事後調査への立ち会いおよび当局との交渉
四 不当な課税処分や重加算税に対する不服申立て、税関訴訟の代理
結びに代えて:適正な通関こそがビジネスを安定させる唯一の道
輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。
企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入取引の認定基準と実務的留意点
はじめに:仮の相談事例のご紹介
本日は、輸入ビジネスにおいて最も基本的でありながら、最も判断が難しいとされる輸入取引の考え方について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入実務に携わる企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっております。
【相談者】
東京都内で海外製品の輸入代理店を営む株式会社グローバルエッジ 代表取締役 佐藤氏
【相談内容】
「当社は今回、アメリカの製造メーカーであるA社から、特殊な産業用ドローンを輸入することになりました。しかし、取引の構造は少し複雑です。当社はまず、香港にある商社B社と売買契約を締結し、B社がアメリカのA社に発注をかけるという形をとっています。貨物はアメリカのA社から日本の当社の倉庫へ直送されますが、代金の支払いは香港のB社に対して行います。
佐藤氏は、インボイス(仕入書)の発行元が香港のB社であるため、B社との契約価格を輸入申告価格(課税価格)とすればよいと考えていました。しかし、通関業者からは、実質的な価格決定権がどこにあるのか、また誰が製品の不具合等のリスクを負っているのかによって、輸入取引の該当性が変わる可能性があると指摘されました。
もし申告価格の根拠となる取引を間違えてしまった場合、意図せずとも脱税とみなされるリスクがあるのではないかと不安に感じています。法的な根拠に基づいた、正しい輸入取引の特定方法を教えてください。」
このような事例は、複数の国や企業が介在する現代のサプライチェーンにおいて非常に多く見受けられます。適正な輸入申告価格を把握するためには、まずは輸入取引がどの取引に該当するかを検討することが出発点となります。特に複数の取引が関係する場合には、輸入取引に該当する取引を正確に把握することは難しく、慎重な検討が必要です。以下、詳しく解説いたします。
1 輸入取引を定義する法的な根拠と必須の規定について
輸入取引を検討する上において、必須となる規定を整理いたします。これらは、税関が事後調査などで申告の妥当性を判断する際の絶対的な基準となります。
(1)課税価格決定の原則
関税定率法(以下「法」といいます。)第四条第一項において、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格とすると規定されています。
ここでいう取引価格の基礎となるのが現実支払価格ですが、これについては関税定率法基本通達において詳細に規定されています。
(2)輸入取引の意義
関税定率法基本通達(以下「通達」といいます。)において、「輸入取引」とは、本邦に拠点を有する者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいい、通常、現実に貨物を輸入することとなる売買がこれに該当するとされています。
(3)複数取引が存在する場合の判定
通達四-一(二)において、貨物が輸入されるまでに当該貨物について複数の取引が行われている場合には、現実に当該貨物が本邦に到着することとなった売買が「輸入取引」となるとされています。
(4)買手及び売手の実質的な定義
通達四-一(三)において、輸入取引における「買手」及び「売手」とは、実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする者をいい、具体的には、自ら輸入取引における輸入貨物の品質、数量、価格等について取り決め、瑕疵、数量不足、事故、不良債権等の危険を負担する者とされています。
2 実質的な買手と売手の認定における具体的判断要素
通達四-一(三)に規定される自己の計算と危険負担という概念は、実務上極めて重要です。単に契約書に買手として名前が記載されているだけでは不十分であり、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
(一)品質、数量、価格の決定権
誰が海外の輸出者と直接交渉し、商品の仕様や単価を決定したかという点です。代行業者が中間に介在していても、最終的な決定権が日本国内の依頼主にあるならば、その依頼主が実質的な買手となります。
(二)瑕疵担保責任(契約不適合責任)の帰属
届いた商品に不具合があった場合、誰が輸出者に対してクレームを入れ、損害賠償を請求する権利を有しているかという点です。また、その損害を最終的に誰が被るのかというリスクの所在が問われます。
(三)数量不足や輸送事故の危険負担
船積みから到着までの間に貨物が滅失したり損傷したりした場合の損害を、誰が自己の責任として引き受けているかという点です。
(四)代金の支払義務と不良債権のリスク
輸出者に対する送金義務を負い、かつ資金調達の責任を負っているのは誰か。また、転売先が倒産した場合などにその代金回収不能の損害を直接受けるのは誰かという点です。
3 輸入取引を正確に判定するための実務表
以下の表は、複数の当事者が介在する取引において、輸入取引の当事者を特定するためのチェックリストです。ワードデータ等に貼り付けてそのままご活用いただける形式で作成いたしました。
【輸入取引当事者の実質的認定チェック表】
項 目|確 認 す べ き 実 態|判定のポイント
--------|----------------|------------
価格決定権|商品の単価を最終的に合意したのは誰か|計算の主体
品質・仕様の指定|製品のスペックを詳細に指示したのは誰か|計算の主体
瑕疵担保責任|不良品発生時の損害を最終的に負うのは誰か|危険負担
輸送中の事故リスク|保険を付保し、事故の損失を負うのは誰か|危険負担
決済の最終責任|海外への送金原資を負担しているのは誰か|計算の主体
在庫リスク|販売先が決まる前に在庫を抱えるのは誰か|危険負担
これらの要素を検討した結果、中間業者が単に手数料を受け取るだけでリスクを負っていない場合には、その中間業者は買手ではなく、中間業者を飛ばした直接の売買が輸入取引と認定されることになります。
4 複数取引が連鎖する場合の輸入取引の特定
通達四-一(二)に示される複数取引の連鎖は、近年のグローバルな転売ビジネスにおいて頻繁に問題となります。例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
一 海外の製造業者A社が、同じく海外の卸売業者B社に販売する。
二 B社が日本国内の輸入商社C社に転売する。
三 C社が日本国内の小売業者D社に販売し、貨物はA社からD社へ直送される。
この場合、どの売買が日本に貨物を到着させる直接の原因となった輸入取引になるでしょうか。原則として、日本に拠点を有する買手が関与し、その契約によって貨物が日本に向けて発送されることとなった売買が輸入取引となります。
もし、C社がB社から購入した時点で貨物の仕向け地が日本に確定しており、その契約に基づいて日本への輸送が開始されたのであれば、B社とC社の間の売買が輸入取引となります。一方で、C社が輸入者としての名義のみを貸しており、実質的な価格決定やリスク負担をD社が行っている場合には、B社とD社の間の売買、あるいはA社とD社の間の売買が輸入取引と認定される可能性が生じます。
5 輸入申告価格の算定を誤った場合の深刻なリスク
間違った輸入申告価格を申告してしまうと、つまるところ脱税と同じ状況となってしまいますので輸入申告価格は慎重に算定することが必要です。このような検討を経ることなく間違ってしまうと、多大な不利益を被ることになります。
(一)過少申告加算税
事後調査等により、本来の課税価格よりも低く申告していたことが発覚した場合、不足税額の十パーセントから十五パーセントにのぼる過少申告加算税が課されます。
(二)重加算税
事実を隠蔽したり、仮装したりしたとみなされた場合には、三十五パーセントから四十パーセントという極めて重い重加算税が課されます。輸入取引の当事者を意図的に偽る行為は、この隠蔽・仮装に該当すると判断されるリスクが非常に高いといえます。
(三)延滞税
本来の納期限から修正申告の日までの期間に応じて、利息に相当する延滞税が徴収されます。
(四)刑事罰
悪質な脱税行為とみなされた場合には、関税法違反として刑事事件化される可能性があります。
偽りその他不正の行為により、関税を免れ、又は関税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
このように、輸入取引の特定を誤ることは、単なる事務的なミスでは済まされない重大な経営リスクに直結いたします。
6 関税評価における加算要素の重要性
輸入取引を特定した後は、その取引価格に加算すべき要素がないかを精査しなければなりません。取引価格には含まれていないが、買手が別途負担している以下の費用は、課税価格に算入しなければなりません。
一 輸入港までの運賃及び保険料
二 買手により負担される仲介料その他の手数料(買付手数料を除く)
三 輸入貨物の生産に関連して、買手により無償で、又は値引きして提供された物品又は役務の費用(アシスト費用)
四 輸入貨物に係る特許権、商標権等の使用の対価(ロイヤリティ)
特にロイヤリティやアシスト費用は、輸入取引の当事者が誰であるかという問題と密接に関わります。実質的な買手が誰であるかによって、誰が支払っている費用を加算すべきかが変わるため、取引構造の全体像を正確に把握することが不可欠です。
7 輸入代行取引における売手・買手の認定
近年、個人事業主や中小企業が輸入代行業者を利用して海外製品を仕入れるケースが増えています。この場合、税関は誰を輸入者(納税義務者)として見ているのでしょうか。
通達四-二(一)によれば、輸入取引の売手及び買手とは、実質的に自己の計算と危険負担に基づいて当該輸入取引を行う者をいうとされています。
輸入代行業者が、単に注文を取り次ぎ、配送の手配を代行しているだけで、商品の品質不良によるリスクを一切負わず、在庫も持たない場合には、代行業者は買手とは認められません。この場合、実質的な買手は代行業者に依頼した国内の個人や企業であり、その依頼主が輸入申告価格の適正性について全責任を負うことになります。
8 税関事後調査への備えと専門家によるリーガルチェック
税関事後調査は、輸入許可から数年が経過した後に、突然行われることが一般的です。その際、税関職員は契約書、仕入書、銀行の送金記録、電子メールの履歴などを詳細に調査し、申告価格の根拠となった取引の実態を解明しようとします。
当事務所が推奨するコンプライアンス対策は以下の通りです。
一 取引開始時のスキーム診断
新しい商流を構築する際に、誰が実質的な買手・売手であるかを法的に整理し、申告の根拠を明確にしておくこと。
二 契約書の整備
危険負担の所在や、価格の決定方法を契約書に明文化し、実態と契約に齟齬がないようにしておくこと。
三 事前教示制度の活用
判断が難しい複雑な取引については、事前に税関に対して公式な見解を求めること。
四 定期的な自主点検
過去の輸入申告について、加算要素の漏れや取引の特定に誤りがないかを内部監査すること。
9 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。
代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知識を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提供することができます。
輸入申告価格を正確に把握することが難しい場合等、少しでも不安がある場合には、まずはご相談ください。
当事務所が提供できる具体的なサービス
一 輸入取引スキームの適法性診断および関税評価のアドバイス
二 輸入代行契約、売買契約書等のリーガルチェックおよび作成
三 税関事後調査への立ち会い、および当局との法的な交渉
四 不当な課税処分や重加算税に対する不服申立て、税関訴訟の代理
結びに代えて:適正な通関こそがビジネスを安定させる唯一の道
輸入ビジネスにおけるコンプライアンスは、単なる守りではありません。正しい法的知識に基づき、適正な申告を継続することは、税関からの信頼を獲得し、ひいては円滑な物流を実現することに繋がります。
企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入取引における事前教示制度の活用
はじめに:具体的な相談事例の紹介
本日は、輸入実務において法的安定性を確保するための極めて重要なツールである事前教示制度について詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容に基づいた、以下の架空事例をご覧ください。輸出入ビジネスを中長期的に展開される企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっているかと存じます。
【相談者】
東京都内で精密機器の製造販売を行う株式会社ミライ 代表取締役 佐藤氏
【相談内容】
当社は今年から、ベトナムの工場に原材料を無償で提供し、加工を委託して完成品を輸入する委託加工貿易を開始いたしました。この一連の物流手続を円滑に進めるため、国内の物流コンサルティング会社である株式会社エックスに対し、輸出入の事務手続を全面的に委託しております。
佐藤氏は、この株式会社エックスに支払う業務委託手数料が、輸入時の関税申告価格(課税価格)にどのように影響するのかを懸念しています。「海外の工場へ原材料を送る際の手続費用と、完成した製品を日本へ戻す際の手続費用が、それぞれ関税の対象になるのかどうかが分かりません。もし申告漏れがあれば、後の税関事後調査で大きなペナルティを受ける可能性があると聞き、不安に感じています。事前教示制度を利用して、あらかじめ税関の見解を確認したいと考えていますが、どのような点に留意すべきでしょうか」
このような事例は、サプライチェーンが複雑化する現代の貿易実務において頻繁に発生いたします。輸入や輸出を業として行われている方は、事前教示制度という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
事前教示制度とは、税番(統計品目番号)や関税評価について実際の輸出入を行う前に税関に対して照会を行い、税関側の判断を確認するための制度です。
税関のホームページにおいては、事前教示制度における実際の回答内容が公表されております。本日は、その中から実務の参考となる一例をご紹介いたします。
1 事案の概要:委託加工貿易における手数料の取扱い
今回の事案は、委託加工貿易という特殊な取引形態における、第三者への業務委託手数料の算入要否が主な争点となっています。
(1)取引の具体的な構造
日本所在のA社はE国所在の製造者であるB社との間で委託加工貿易を締結いたしました。日本から無償で提供した材料を加工させ、当該加工によって出来上がった製品である機器をCIF条件(運賃・保険料込み条件)にて輸入しています。
そして、A社は輸出及び輸入の手続を日本国内のX社に業務委託をしています。
(2)照会者(A社)による法的見解
照会者の見解は以下の通りです。
輸入者と輸出者は、輸入貨物の品質、数量、価格等について取り決め、瑕疵や数量不足等の危険を負担する者であることから、輸入者と輸出者による取引となります。そして、当該取引においてX社は、輸入者と締結した業務委託契約に基づき、輸入者の指示により輸入者の代理として当該取引に関する通関業務を行う手助けをしている者であることから、当該契約のうち輸入業務に関して支払われる対価の額は、関税定率法第4条第1項第2号イの仲介料その他の手数料に該当せず、課税価格に算入する必要はないものと考えます。他方で、輸出に関してX社に支払う手数料は、関税定率法第4条第1項第3号イの無償提供材料に係る費用の一部として、課税価格に算入する必要があると考えます。
2 税関による回答内容と法的帰結
税関による回答内容は、照会者の見解を補完し、関税定率法の規定に則った明確な区分を示しています。
(1)輸出に係る手数料の算入
輸入者がX社に支払う業務委託手数料のうち、E国への無償支給材料の輸出に係る業務に対する手数料については、輸入者が関税定率法第4条第1項第3号イに規定されている「輸入貨物に組み込まれている材料、部分品又はこれらに類するもの」を輸出者に提供するために要した運賃等の費用であって買手により負担されるものに該当することから、輸入貨物の課税価格に算入されます。
(2)輸入に係る手数料の不算入
他方で、E国からの輸入貨物の輸入に係る業務に対する手数料については、関税定率法第4条第1項第2号に規定されている「輸入貨物に係る輸入取引に関し買手により負担される手数料又は費用」には該当しないことから、輸入貨物の課税価格に算入されません。
この判断のポイントは、その手数料が原材料の提供という加算要素に関連するものか、それとも単なる輸入手続の代行であるかという点にあります。
3 関税評価の適正化に向けた専門的な解説
ここで、今回の判断の根拠となった関税定率法の具体的な条文を確認していきます。
(1)無償提供材料(アシスト)に関する規定
関税定率法第4条第1項第3号は、輸入貨物の生産に関連して買手が無償または値引きして提供した材料等の費用を加算要素として定めています。
関税定率法第4条(課税価格の決定の原則)第1項第3号
三 当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により直接又は間接に、無償で又は値引きして提供された次に掲げる物品又は役務の費用(当該費用に、当該物品又は役務を提供するために要した運賃、保険料その他運送に関連する費用が含まれていないときは、これらの費用を加えた費用)
イ 当該輸入貨物に組み込まれている材料、部分品又はこれらに類するもの
今回のケースで、X社に支払った輸出事務手数料は、この「材料を提供するために要した費用」の一部であるとみなされました。つまり、原材料そのものの価格だけでなく、それを海外の工場へ届けるための付随費用(事務手数料を含む)もすべて、最終製品の価値を構成するものとして課税価格に算入しなければならないという厳格なルールが適用されています。
(2)手数料の区分に関する規定
一方で、輸入の際の手数料がなぜ算入されないのかについては、同法第4条第1項第2号の解釈が重要です。
関税定率法第4条第1項第2号
二 当該輸入貨物に係る輸入取引のために買手により負担される仲介料その他の手数料(買付けに関し当該買手を代理する者に対し、当該買付けに係る業務の対価として支払われるものを除く)及び容器の費用
関税評価上、加算すべき手数料とは、売手のために支払われる販売手数料や、売手と買手の双方を媒介する仲介手数料を指します。今回のX社は、あくまで買手の代理人として輸入事務を代行しているに過ぎないため、ここで言う加算対象の手数料には該当しないという判断がなされました。
4 実務で活用できる手数料の課税判断一覧表
以下に、今回の事前教示の事例を踏まえた実務的な判断基準をまとめました。
【業務委託手数料の課税価格算定判定基準一覧表】
確認対象となる業務の内容|課税価格への算入の要否|法的な判断の根拠
------------|-----------|------------
無償提供材料の輸出事務費|算入する(課税対象)|関税定率法第4条第1項第3号
無償提供材料の海外運賃|算入する(課税対象)|同上(アシスト費用の一部)
完成品の輸入事務手数料|算入しない(非課税)|定率法第4条第1項第2号対象外
買付業務の代理人手数料|算入しない(非課税)|同条第1項第2号カッコ書き
販売を仲介する者への報酬|算入する(課税対象)|同条第1項第2号(仲介料)
輸入港までの海上運賃|算入する(課税対象)|同条第1項第1号(運賃等)
このように、一口に手数料と言っても、その目的が材料の提供に関わるものか、それとも輸入手続きに関わるものかによって、全く異なる取扱いとなります。
5 事前教示制度の活用における戦略的意義
事前教示制度は、単に税関に質問をするだけの手続きではありません。この制度には、以下のような極めて大きな実務的メリットが存在します。
(1)法的拘束力の確保
事前教示に対して書面による回答を受けた場合、その回答内容は原則として実際の通関において尊重されます。これにより、輸入後の事後調査において申告価格が不当であると指摘されるリスクを劇的に低減させることが可能です。
(2)予見可能性の向上によるコスト計算の適正化
輸入を開始する前に正確な税率や課税価格が判明することで、販売価格の決定や収益予測をより精緻に行うことができます。予期せぬ追徴課税による経営へのダメージを未然に防ぐことが、グローバルビジネスの安定に繋がります。
(3)社内コンプライアンス体制の証明
税関に対して自ら照会を行う姿勢は、企業のコンプライアンス意識の高さを証明する材料となります。これは将来的に、AEO(認定事業者)の資格取得を目指す際などにもプラスの評価として働きます。
6 不適切な情報提供が招く深刻な法的リスク
事前教示制度を利用する際には、正確な情報を税関に対して伝えることが非常に重要です。間違った情報を踏まえた税関からの回答では何らの意味もありません。
【間違った申告が行われた場合のペナルティ】
もし事前教示の結果を誤解したり、事実と異なる前提条件で回答を得ていたりした場合、実際の輸入時に以下のような処分を受ける可能性があります。
一 過少申告加算税の賦課
不足していた税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)の加算税が課されます。
二 重加算税の賦課
事実を隠蔽または仮装して申告したと判断された場合、35パーセントという極めて重い重加算税が課されます。
納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、当該納税義務者に対し、過少申告加算税に代え、その額の計算の基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
三 回答の効力喪失
照会内容と実際の取引実態に相違があることが判明した場合、せっかく得た事前教示の回答はその効力を失います。税関からの回答を盾に身を守ることができなくなり、過去数年分の全取引を遡って追徴されるという最悪の事態を招きかねません。
7 事前教示制度を利用する際の専門家によるサポート
税関に対してどのような情報をどのように伝え理解してもらうかということはなかなか難しいところでもあり、慎重に執り行う必要があります。
当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、事前教示制度の利用や税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。事前教示制度の利用をご検討いただいている場合には、まずはご相談ください。
代表弁護士は、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。
【弁護士による具体的な支援内容】
一 照会内容の適法性および妥当性の精査
二 税関へ提出する説明書類および契約書のリーガルチェック
三 複雑な取引スキーム(委託加工貿易、多国間貿易等)の図解と整理
四 回答を得た後の運用マニュアルの策定支援
事前教示制度においては、単に形式的な申請書を書くのではなく、関税定率法等の法令や過去の判例、通達に基づいた論理的な主張を組み立てることが、望ましい回答を得るための鍵となります。
8 まとめ:適正な関税評価が企業の未来を安定させる鍵
輸入ビジネスを中長期的に成功させるためには、その背後にある法的リスクを正確にコントロールすることが不可欠です。今回ご紹介した委託加工貿易における手数料の事例は、氷山の一角に過ぎません。
企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。
正しい法令知識に基づき、事前教示制度を賢く活用すること。その一歩が、貴社のグローバルな信頼を勝ち取り、予期せぬリスクから会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
犯則調査にご注意ください
はじめに:仮の相談事例
輸入・輸出をビジネスとして継続的に行われている方であれば、税関による「犯則調査」という言葉を一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。知り合いの会社が突然の立ち入り調査を受け、大変な事態に陥ったといった話を聞き、不安を感じている方も少なくありません。まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談内容を模した、架空の事例をご紹介いたします。
【相談者】
東京都内でブランド時計や高級雑貨の輸入卸売を営む株式会社デイ 代表取締役 シー氏。
【相談内容】
「当社は海外のブローカーを通じて、欧州の高級時計を定期的に輸入しています。これまでは通関業者に書類を任せ、特に大きなトラブルもなく事業を進めてきました。ところが先日、突然税関の職員が数名で事務所に現れ、『犯則事件の調査』だと言って書類やパソコン、スマートフォンの提出を求められました。以前受けたことがある事後調査とは全く雰囲気が異なり、高圧的で、まるで犯罪者扱いをされているような恐怖を感じました。
聞けば、過去の輸入申告において価格を低く書き換えたインボイスを使用し、消費税を免れた疑いがあるとのことです。当社としては、現地のブローカーから送られてきた書類をそのまま出していただけで、脱税の意図はありませんでした。しかし、このままでは逮捕されるのではないか、会社が潰れてしまうのではないかと夜も眠れません。刑事事件としての対応が必要なのでしょうか、それとも行政処分で済むのでしょうか」
このような事態は、輸入実務に携わる者にとって最大の危機の一つといえます。犯則調査は、通常の「事後調査」とは法的性質が根本的に異なり、最終的には刑事罰に直結する可能性を秘めた厳格な手続きです。本記事では、犯則調査の概要から最新の動向、そして万が一対象となった場合の法的対応について詳しく解説いたします。
1 犯則調査の定義と法的性質
税関の公式な見解によれば、犯則調査とは「犯則事件について、証拠を発見・収集し、犯則事実の有無及び犯則者を確定させるための手続きであり、告発又は通告処分を終局の目標として行う調査」と定義されています。
簡単にいうと、犯則事件とは税金に関する犯罪を指しますが、税関の調査対象は主として関税及び内国消費税となります。
犯則調査の法的根拠は、関税法第11章「犯則事件の調査及び処分」に規定されています。特に関税法第119条から第149条にかけて、税関職員による質問、検査、領置(差し押さえ)などの強大な権限が明文化されています。
税関職員は、犯則事件の調査をするため必要があるときは、犯則嫌疑者若しくは参考人に対して出頭を求め、若しくは質問し、若しくはこれらの者が所持し、若しくは置き去つた物件を検査し、又はこれらの者が任意に提出し、若しくは置き去つた物件を領置することができる。
税関職員は、犯則事件の調査をするため必要があるときは、その所属する税関の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、捜索又は差押えをすることができる。
このように、裁判所の許可状に基づく強制捜査が行われることもあり、「任意の協力」とは一線を画す強制力を持った調査であることがわかります。
2 近年の犯則調査の動向と具体的な事例
税関が公表しているデータによれば、近年の犯則調査は、金地金(ゴールド)の密輸入や、ブランド品・時計の過少申告(アンダーバリュー)に対して非常に厳格化しています。
最新の傾向としては、税関長が処分(通告処分)又は告発を行った件数は相当数に上り、脱税額も数億円規模に達する事例が報告されています。
(1)金地金の密輸入事件
金の輸入には10パーセントの消費税がかかります。海外で金を購入し、税関に申告せずに密輸入して国内で転売すれば、その消費税分が不当な利益となります。これまでは旅行者を装った個人による「運び屋」が中心でしたが、最近では貨物に巧妙に隠し、組織的に脱税を図る法人の犯則事件が目立っています。
(2)高級ブランド品の過少申告事件
冒頭の相談事例のように、実際の購入価格よりも低い金額をインボイスに記載し、関税や消費税を免れる手口です。最近の事例では、海外の売手と共謀して二重のインボイスを作成し、税関には低い価格のものを提出していた法人が、電子メールの履歴から偽装が発覚し、重加算税の賦課とともに検察庁へ告発されたケースがあります。
(3)知的財産侵害物品の輸入事件
コピー商品や偽ブランド品を輸入する行為も、関税法上の犯罪(輸出入禁止物品の輸入)となります。これらは単純な脱税だけでなく、商標法違反等とも重なり、非常に重い刑事罰の対象となります。
3 犯則調査と事後調査の違い
多くの経営者が混同しやすいのが、定期的に行われる「事後調査」と、この「犯則調査」の違いです。実務上の混乱を避けるため、以下の比較表にまとめました。
【事後調査と犯則調査の比較一覧表】
項目|事後調査(税務調査)|犯則調査(犯罪捜査)
法的根拠|関税法第105条等|関税法第119条等
主な目的|申告の適正性の確認|犯罪の証拠収集と確定
調査の性質|行政上の任意調査|刑事手続に準ずる調査
強制力の有無|事実上の強制(受忍義務)|許可状に基づく強制捜査あり
終局の目標|修正申告・更正処分|告発・通告処分
事後調査は「間違っていたら直してください」というスタンスですが、犯則調査は「法を犯した証拠を固めます」というスタンスです。犯則調査の対象となった場合、非常に動転される方も多い一方で、刑事事件ではないから大丈夫だろうと高を括ってしまう方もいらっしゃいますが、これは大きな間違いです。
4 通告処分という独自の制度
犯則調査の結果、税関長が行う「通告処分」という言葉について補足いたします。
通告処分とは、税関による犯則調査の結果、その情状が罰金刑に相当すると判断された場合において、税関長がその罰金に相当する金額の納付を求める処分のことを指します。
税関長は、犯則事件の調査の結果、犯則の確信を得たときは、その理由を明示し、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額及び書類の送達に要する費用(中略)を税関に納付すべき旨を通告しなければならない。
通告処分の特色は、刑事処分ではなくあくまでも行政処分であるという点にあります。この通告に従って金額を納付すれば、刑事訴追(裁判)を免れることができます。一種の「司法取引」に近い性格を持っており、前科がつかないというメリットがあります。しかし、通告に従わない場合や、悪質性が極めて高いと判断された場合は、即座に検察官へ告発され、通常の刑事裁判の手続きへと移行することになります。
5 犯則調査の対象となった場合の対応指針
犯則調査の対象となった場合、安易な対応は非常に危険であると言わざるを得ません。ただその一方で、恐怖のあまり早く事件を解決させようと虚偽の主張や自白をしてしまおうとされる方もおりますが、このような対応は絶対にとってはいけません。一度事実と異なる供述をしてしまうと、後から訂正することは極めて困難です。
以下の点に留意して冷静に対応することが求められます。
(1)黙秘権の理解
刑事手続に準ずる調査である以上、自分に不利な供述を強要されることはありません。しかし、税関側の質問を無視し続けることは、情状を悪くする可能性もあります。どの範囲で回答すべきかは、専門家の助言が不可欠です。
(2)証拠の任意提出と押収
パソコンや書類が差し押さえられると、業務が停止してしまいます。どの資料が調査に必要で、どの資料が返還されるべきか、法的な観点からのチェックが必要です。
(3)反省と改善姿勢の提示
意図的でないミスであったとしても、管理体制の不備は認めざるを得ません。調査には協力的な姿勢を見せつつ、再発防止策を提示することで、告発ではなく通告処分での解決を目指す戦略が重要となります。
冷静に対応しつつ、税関側の調査に協力し、自分が行ってしまったことの反省をしていただくことが重要ではありますが、なかなか一般の方で突然このような対応を取ることは至難の業といえるでしょう。
6 専門家による支援の重要性
まずは、冷静に落ち着いて状況を確認し、その後の流れを確認する意味でも、万一犯則調査の対象となってしまった場合には、速やかに弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
輸入・輸出に関連する法律は、関税法だけでなく、消費税法、外為法、知的財産法など多岐にわたります。特に課税価格の決定(関税評価)に関する専門知識がないまま税関と交渉することは、自ら不利な状況を作り出すことに他なりません。
具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。
7 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、輸出入や貿易関連のトラブル、税関事後調査をはじめとする税関対応等を幅広く取り扱っております。代表弁護士は、輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。
弁護士でありながら通関実務の知識を持つことで、税関職員の主張が法的に妥当であるか、不当な権利侵害が行われていないかを的確に判断し、依頼者の正当な権利を守ります。
当事務所が提供できる主なサポート
一 犯則調査への立ち会いおよび質問回答のアドバイス
二 押収された書類やデータの返還交渉
三 税関長による通告処分への誘導、および検察官への告発回避のための交渉
四 不当な課税処分や重加算税に対する不服申立て
犯則調査の対象となった場合には、まずはご相談ください。一人で悩まず、早期に専門家の介入を受けることが、ビジネスの継続と個人の自由を守るための唯一の道です。
結びに代えて:適正な通関こそがビジネスの安定を支える
犯則調査という深刻な事態に直面したとき、最も重要なのは「透明性のある対応」と「法的な防御」の両立です。脱税の意図がなかったとしても、客観的な証拠が揃っていれば、税関は淡々と手続きを進めます。
企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、その法的基盤を盤石にするためのパートナーとして、常に最善の助言を提示いたします。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です
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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入貨物の停滞を防ぐための法的対応
0 相談事例
【相談者】
千葉県内で海外雑貨の輸入販売を手掛ける株式会社Z、物流担当のS部長
【相談内容】
当社ではこれまで、東南アジア諸国から竹細工の工芸品を継続的に輸入してきました。通常、輸入申告から数時間、長くとも翌日には輸入許可が下りていたのですが、今回のコンテナ貨物については申告から三日が経過しても許可の連絡がありません。税関に問い合わせたところ、関税法に基づく検査対象に指定されたため、指定の保税蔵置場にて全部検査を行うとの回答がありました。販売先との契約上、今週末には納品を完了させる必要がありますが、検査を回避する方法や、少しでも早く許可を得るための法的な手段はないでしょうか。また、万が一申告内容と現物に相違があった場合の法的なリスクについても詳しく知りたいと考えております。
貨物を輸入しようとした際、税関検査によって輸入許可が遅れる事態は、輸入者にとって事業継続に関わる重大なリスクとなり得ます。本日は、税関による貨物検査の仕組みとその法的根拠、実務上の対応策について解説いたします。
1 輸出入貨物における税関検査の基本原則
輸入申告があった貨物について、税関は必要に応じて検査を行う権限を有しております。これは日本の水際における安全確保と、適正な関税および消費税の徴収を目的とした公権力の行使です。
(1)検査の法的根拠
税関検査の主要な法的根拠は、関税法第六十七条に規定されております。この条文の内容を要約すると、貨物を輸出しようとする者、または輸入しようとする者は、税関長に対して申告を行い、その申告に係る貨物について必要な検査を経て、その許可を受けなければならないとされております。
輸出入の許可を受けるためには、税関が適正な審査のために必要と判断した検査を完了させることが法的な大前提となります。輸入者がこの検査を任意に拒否することは認められず、検査が完了しない限り輸入許可という行政処分が下されることもありません。
(2)検査の目的と必要性
税関検査が行われる主な目的は、以下の通りです。
①申告された品名、数量、価格が、実際の貨物と一致しているかの確認
②麻薬、拳銃、爆発物などの禁制品や、知的財産を侵害する物品の流入阻止
③食品衛生法や植物防疫法といった、関税法以外の法令への適合性の確認
④適切な関税率を適用するための、品目分類(統計品目番号)の正当性の判断
(3)検査場所に関する規定
税関検査は、原則として税関長が指定した場所で行う必要があります。これは関税法第六十九条第一項に規定されており、実務上は指定地検査と呼ばれております。
ただし、貨物が極めて巨大である場合や、危険物であるために移動が困難な場合、あるいは精密機械のように特定の環境下でしか開梱できない場合などは、例外的に指定された場所以外での検査が認められます。これは関税法第六十九条第二項に基づき、申告者が申請を行い、税関長が許可を与えた場合に限られます。この手続きを、実務上は指定地外検査と呼びます。
2 税関検査の具体的な手法と分類
税関は、すべての貨物に対して一律に検査を行うわけではありません。税関が保有する輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)による自動審査や、過去の取引実績、輸出入者の信頼性などに基づき、検査の要否や方法が決定されます。
(1)検査方法の三区分
実務上、検査の方法は以下の三種類に分類されます。
以下の表は、税関検査の種類とその内容をまとめたものです。
|検査の種類|検査の具体的な内容|主な対象貨物の例|
|見本検査|貨物の一部を少量抜き取り、税関官署に持ち帰って成分分析等を行う手法|化学薬品、食品、医薬品など|
|一部指定検査|梱包されている貨物の中から、税関職員が任意に数個を指定して開梱し、内容を確認する手法|一般的な雑貨、アパレル、工業製品など|
|全部検査|すべての貨物について開梱を行い、内容を網羅的に確認する手法。コンテナごとのX線検査も含む|密輸の疑念がある場合や、初めての取引など|
(2)検査の決定プロセス
税関における審査は、大きく三つの区分に分かれております。
区分一:即時許可(書類審査も検査も不要と判断されたもの)
区分二:書類審査(インボイス等の書類内容の確認が必要と判断されたもの)
区分三:検査(書類確認に加え、現物の検査が必要と判断されたもの)
株式会社Zの事例のように、突如として全部検査の対象となる背景には、ランダム抽出による定期検査のほか、該当する品目の原産国における偽装事例の増加や、過去の申告内容との微細な不整合などが検知された可能性があります。
3 搬入前検査と事前検査制度の活用
輸入手続きの迅速化を図るため、貨物が保税地域に到着する前、あるいは輸入申告の前に行われる検査制度も存在します。
(1)輸出時の搬入前検査
輸出貨物については、再梱包が困難な特殊な貨物などの場合、保税地域への搬入前に検査を受けることで、輸出許可までの時間を短縮できる場合があります。
(2)輸入時の事前検査
輸入申告の前に、輸入者が貨物の内容をあらかじめ確認したい場合に利用される制度です。これにより、誤った申告を防ぎ、結果としてスムーズな通関を実現することが可能となります。ただし、この段階で関税関係書類の提示を求められることも多いため、正確な資料準備が欠かせません。
4 他法令との関連性と税関の役割
税関検査は、関税法のみならず、他の多くの法令(他法令)の遵守状況を確認する役割も担っております。
(1)他法令の証明義務
関税法第七十条には、他の法令の規定により許可や承認、検査などを必要とする貨物については、輸出入申告の際に、それらの手続きを完了していることを税関に対して証明しなければならないと定められております。
(2)証明ができない場合の措置
この証明がなされない限り、税関長は輸出または輸入の許可を下すことができません。例えば、食品を輸入する際の食品衛生法に基づく届出や、植物を輸入する際の植物防疫法に基づく検査などがこれに該当します。税関検査の過程で、これらの他法令への不適合が判明した場合、貨物の廃棄や積戻しを命じられるといった、極めて厳しい事態を招くことになります。
5 不適切な申告や検査拒否に伴う法的リスク
税関検査において、意図的な過少申告や隠蔽が発覚した場合、輸入者は多大な不利益を被ることになります。
(1)行政罰としての加算税
本来納付すべき税額よりも少なく申告していた場合、差額税額に対して十パーセントから十五パーセントの過少申告加算税が課されます。さらに、隠蔽や仮装といった悪質な行為が認められた場合には、関税法第十二条の四に基づき、三十五パーセントから四十パーセントという極めて高い税率の重加算税が課せられることとなります。
(2)刑事罰の適用
虚偽の申告を行い、または検査を妨害して不正に輸入を行った場合には、刑事罰の対象となります。関税法第百十一条には、無許可で貨物を輸出入した者に対し、五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金、またはその両方を科すことが規定されております。
6 トラブル発生時における弁護士の役割と介入のメリット
税関検査によって貨物が長期間留め置かれたり、税関側と見解の相違が生じたりした場合、法律の専門家である弁護士の関与が極めて重要となります。
(1)税関への法的釈明と意見書の提出
税関からの照会に対し、法律的な論点を整理した意見書を作成し、提出いたします。特に関税分類の妥当性や、関税評価額の算定根拠について、過去の裁決例や判例に基づいた専門的な主張を行うことで、不当な不許可処分や課税処分を回避できる可能性が高まります。
(2)不服申立て手続きの代理
税関長の下した処分に対して納得がいかない場合、行政不服審査法および関税法に基づき、再調査の請求や審査請求を行うことが可能です。これは関税法第八十九条などに規定されている正当な権利です。弁護士はこれらの複雑な手続きを代理し、輸入者の権利を守るために尽力いたします。
(3)他法令等に関わる行政調整
輸入トラブルは関税法のみならず、経済産業省や厚生労働省などの管轄法令が絡み合うことが多々あります。複数の官庁にまたがる調整が必要な局面においても、弁護士は包括的な法的アドバイスを提供し、解決策を提示することが可能です。
7 株式会社Zの事例に対する具体的なアドバイス
相談事例の株式会社ZのS部長に対しては、以下の順序での対応を推奨いたします。
①検査の理由と詳細な状況の把握
まずは通関業者を通じて、税関がどのような懸念を持って全部検査を指定したのかを正確に聞き出す必要があります。単なるランダム抽出なのか、それとも品目分類や原産国表示に関する具体的な疑義があるのかによって、対応策は大きく異なります。
②根拠資料の再点検と迅速な提供
税関から資料の提出を求められた際、インボイスや契約書だけでなく、製造工程図や原材料表など、申告の正当性を証明できる書類を速やかに提示してください。提出が遅れるほど、検査の完了は先延ばしになります。
③納期遅延に対する契約上の措置
販売先との関係では、税関検査による遅延が契約上の不可抗力条項に該当するかどうかを確認する必要があります。法的な観点から、取引先への通知内容や賠償責任の有無を精査することが重要です。
④今後のコンプライアンス体制の構築
今回の検査を機に、社内の輸出入管理体制を見直すことをお勧めいたします。継続的な適正申告の実績を積み重ねることで、将来的にAEO制度(認定事業者制度)の承認を受けることができれば、検査率の低減や迅速な通関が可能となります。
8 まとめ:貿易実務における法的備えの重要性
税関検査は、国際貿易に携わる企業にとって避けては通れない手続きの一つです。しかし、その根拠となる法律を正しく理解し、適切に対応することで、ビジネスへの影響を最小限に抑えることが可能です。
関税法第九十四条には、輸入者に対し、輸入貨物に関する帳簿や書類を一定期間保存する義務が課せられております。日頃からの適正な文書管理こそが、いざ検査が行われた際の最大の防波堤となります。
貿易実務は、日々変化する国際情勢や法改正の影響を強く受けます。専門的な知見を持つ弁護士をパートナーに持つことで、不測の事態にも冷静かつ迅速に対応できる体制を整えておくことが、グローバルなビジネスを展開する上での大きな強みとなります。
9 弁護士への相談をご希望の方へ
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、通関実務と法務の両面から高度なサポートを提供できる体制を整えております。
税関検査によって貨物が止まってしまい困っている、税関から課税処分の通知を受けて対応に苦慮している、あるいは将来的な通関遅延リスクを低減したいといったご要望に対し、個別の案件に応じた法的アドバイスをご提供いたします。
輸出入や通関に関して、少しでも不安な点や疑問がございましたら、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入取引における「売手」と「買手」
0 はじめに
まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。
「私は国内でアパレルショップを経営しております。この度、イタリアのメーカーから直接商品を購入することになりましたが、実際の契約手続きや代金の支払いは、香港にある仲介会社を通じて行っています。貨物はイタリアから日本へ直送されますが、インボイス(仕入書)の発行元は香港の会社です。この場合、税関への輸入申告において、誰を『売手』とし、誰を『買手』として申告すべきなのでしょうか。また、仲介手数料が発生している場合、それも課税価格に含まれるのでしょうか。正しい申告を行わなかった場合、後日税関の事後調査で指摘を受けるのではないかと不安を感じております。専門的な視点から、売手と買手の正確な認定基準について詳しく教えてください」
このような複雑な商流を伴う取引は、現代の国際貿易において決して珍しいものではありません。しかし、輸入通関の土台となる課税価格を決定するためには、まず「誰と誰の間の取引が、法的な輸入取引に該当するのか」を正確に見極める必要があります。
本日は、関税定率法に基づく売手と買手の考え方について、具体例を詳しく解説いたします。
1 原則的な課税価格の決定方法と売手・買手の定義
輸入貨物の課税価格を算出する際の最も基本的なルールは、関税定率法第四条第一項に定められています。
「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物の輸入取引(買手が本邦に住所、居所、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有しない者であるものを除く。)がされた場合において、買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加算した価格とする」 この条文が示す通り、課税価格は「買手」から「売手」へ支払われる価格がベースとなります。したがって、実務の第一歩として、この両者を正しく特定することが不可欠である点
(1)売手及び買手の本質的な意義
輸入取引における売手及び買手とは、単に書類上に名前が記載されている者ではなく、「実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする者」を指します。
具体的には、以下のような役割と責任を負っているかどうかが判定の基準となります。
①自ら輸入貨物の品質、数量、価格、納期などの取引条件を交渉し、決定していること
②貨物の瑕疵(不良品)や数量不足、輸送中の事故、あるいは代金の回収不能といった経済的なリスクを自らの責任で負担していること
典型的な取引では、海外の輸出者が売手、日本の輸入者が買手となりますが、必ずしも「荷送人=売手」「荷受人=買手」とは限らない点に注意が必要です。
(2)具体例:仲介者が介在する場合の判定
冒頭の相談事例のように、メーカーと国内業者の間に仲介者が入る場合、その仲介者が単なる「代理人」なのか、それとも自らリスクを負う「売手」なのかによって、課税価格の計算根拠が変わります。仲介者が在庫リスクを負わず、単に手数料を受け取って取引を仲介しているだけであれば、売手は元のメーカー、買手は国内業者となります。この場合、買手から売手に支払われる代金が課税価格の基礎となります。
2 「輸入(申告)者」と「売手・買手」の関係
実務において混同されやすい概念に「輸入(申告)者」があります。輸入者とは、関税法上の用語であり、一般的には保税地域から貨物を引き取ろうとする者を指します。
(1)輸入者の資格
輸入者には、売手であっても買手であってもなることができます。
例えば、海外の売手が自ら輸入手続きを行い、日本国内の倉庫まで貨物を届ける(DDP条件など)場合、売手が輸入者となることもあります(税関事務管理人等の適正な手続をとる必要はあります。)。しかし、誰が輸入者であるかに関わらず、課税価格の算出の基礎となるのは、常に「輸入取引における売手と買手の間の取引価格」である点には注意が必要です。
(2)連続する転売取引がある場合
貨物が日本に到着するまでの間に、A社(外国)からB社(外国)、さらにB社からC社(日本)へと転売が繰り返されることがあります。この場合、どの取引が「本邦に到着させるために行われた輸入取引」に該当するかを判定しなければなりません。基本的には、日本への輸出を目的として締結された最後の売買契約が輸入取引とみなされます。この判定を誤ると、不当に低い価格や、逆に過大な価格で申告してしまうリスクが生じるため、慎重な検討が求められる点
以下に、売手と買手の認定における主要な確認項目を整理した図表を掲載いたします。
【表1 売手・買手の認定における判断基準】
項目名/具体的な確認内容/判定への影響
取引交渉の主体/価格や数量を誰が決定しているか/主導権を持つ者が当事者となる
代金の支払義務/誰が売手に対して送金を行うか/支払う者が買手となる
貨物の損傷リスク/輸送中の事故の損失を誰が被るか/リスク負担者が当事者となる
瑕疵担保責任/不良品の返品や交換を誰が要求するか/責任を追求する者が買手となる
転売の有無/輸入後に誰が誰に対して販売するか/最終的な輸出目的取引を特定する
3 実務上のトラブル事例と法的リスク
売手や買手の認定を誤った状態で輸入申告を継続すると、後日の税関事後調査において多額の追徴課税を受ける可能性があります。
(1)価格の過少申告リスク
例えば、実際には買手が売手のために別途負担している費用があるにもかかわらず、インボイスに記載された表面上の金額だけで申告してしまった場合、それは過少申告とみなされます。関税法に基づき、不足分の関税・消費税に加え、過少申告加算税や延滞税が課されることとなる点
(2)特殊関係の影響
売手と買手の間に、親子会社のような「特殊関係」がある場合、その関係によって取引価格が恣意的に低く設定されていないかが厳しくチェックされます。関税定率法第四条第二項の規定により、特殊関係が価格に影響を与えていると判断された場合、実際の取引価格を課税価格として認めてもらえないことがあります。
【表2 輸入取引に関連する各主体の役割比較】
呼称/法的な定義や役割/課税価格決定における位置付け
売手/自己の計算とリスクで貨物を販売する者/価格の受領者であり計算の基礎
買手/自己の計算とリスクで貨物を購入する者/価格の支払者であり計算の主体
荷送人/貨物の発送手続きを行う実務上の主体/必ずしも売手とは限らない
荷受人/貨物の受け取りを行う実務上の主体/必ずしも買手とは限らない
輸入(申告)者/税関に対して輸入の申告を行う者/買手または売手等がなり得る
4 弁護士へのご相談をご希望の方へ
輸入貨物の課税価格の決定は、単なる事務的な手続きではなく、複雑な法令が絡み合うプロセスです。当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、貿易実務で生じるトラブルに対して、アドバイスを提供することが可能です。
特に、以下のような課題でお困りの際には、お気軽にお問い合わせください。
①複雑な仲介取引や連続取引における「売手」及び「買手」の正確な法制度上の認定
②税関の事後調査に対する立ち会いおよび法的な主張の構成
③特殊関係にある企業間の取引価格の妥当性に関するリーガルオピニオンの作成
④関税法違反等で貨物が差し押さえられた場合の権利救済手続き
⑤国際売買契約書の作成・レビューを通じた、通関リスクの未然防止
輸入手続き上の疑問や不安を放置することは、将来的な経営リスクを抱え続けることと同義です。少しでもご不安な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入事後調査における事前通知と備え
0 はじめに:相談事例
まずは、当事務所に実際に寄せられた相談をベースにした、典型的な事例をご紹介いたします。
【相談者:中堅輸入商社 C社 物流管理部長】
「当社は長年、家具や雑貨の輸入を行っております。先日、事前の連絡もなく、突然税関の職員が数名、本社に調査にやってきました。『輸入事後調査を実施します』とのことでしたが、通常は事前に電話や書面で通知が来るものだと思っていましたので、非常に驚き、現場は混乱してしまいました。その日は主要な担当者が不在だったこともあり、十分な説明や資料の提示ができませんでした。このように、事前通知なしで調査が始まることは法的に許されるのでしょうか。また、抜き打ち調査が行われる場合にはどのような背景があるのでしょうか。今後の適切な対応方法を知りたいです。」
このような「突然の事後調査」に直面した企業の動揺は計り知れません。
以下では、輸入事後調査における通知の仕組みと、根拠となる法令、そして企業が取るべき対策について詳しく解説いたします。
1 輸入事後調査と事前通知の原則
輸入事後調査とは、貨物の輸入許可後において、税関が輸入者の事業所などを訪問し、申告内容の適正性を帳簿や書類等に基づき確認する手続きです。
【事前通知の運用実態】
一般的に、税関は調査の円滑な遂行と輸入者側の準備期間を考慮し、調査実施の数週間前に電話または書面にて事前通知を行う運用をしています。これにより、輸入者は過去の輸入書類を整理し、担当者のスケジュールを確保することが可能となります。しかし、この事前通知は「絶対的な義務」ではないという点に、実務上の大きな落とし穴があります。
2 事前通知を規定する法令とその例外
輸入事後調査の事前通知については、関税法そのものよりも、行政手続法および税務調査の手続きに準じた運用がなされています。
関税法第105条第1項第6号では税関職員の検査権限が規定されていますが、通知に関しては国税通則法第74条の9第1項の規定が実務上の指針となっています。
「税務署長等は、国税庁等又は税務署の職員に納税義務者に対し実地調査を行う場合には、あらかじめ、当該納税義務者に対し、その旨及び調査を開始する日時、調査を行う場所その他政令で定める事項を通知するものとする。」
【事前通知を要しない場合の例外規定】
しかし、同法第74条の10には、以下のような重要な例外規定が存在します。
「税関長は、申告の内容、過去の調査の結果、事業の内容その他の事情に照らし、事前通知をすることによって、適正な税額等の把握を困難にするおそれ、又は調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、前三項の規定にかかわらず、事前通知をすることなく調査を行うことができる。」
つまり、税関が「通知をすると証拠隠滅や口裏合わせをされるリスクがある」、あるいは「正確な実態把握ができない」と判断した場合には、法的根拠に基づいて、予告なしの調査(無予告調査)を強行することが認められているのです。
3 事前通知がなされない具体的な判断基準
税関の公式見解や実務指針に基づくと、以下のような状況下では事前通知が行われない可能性が高まります。
①隠蔽・仮装の疑い:過去の申告において意図的な過少申告や書類の偽造が発覚している場合
②事業形態の特殊性:現金取引が主体である、あるいは在庫の流動性が極めて高く、抜き打ちでなければ実数把握が困難な場合
③第三者からの情報提供:脱税や不当申告に関する具体的な情報が税関に寄せられている場合
ただし、冒頭の相談事例のように、特に身に覚えがない企業であっても、税関側の「リスク分析」の結果として無予告調査の対象に選定されるケースは十分にあり得ます。
4 輸入事後調査の形式と通知の有無(比較一覧表)
事後調査の形態と通知の関係を、以下の表にまとめました。
【表:輸入事後調査の種類と運用の比較】
| 調査の形態 | 事前通知の有無 | 主な目的と特徴 | 輸入者側の対応準備 |
| 一般事後調査 | 原則としてあり(4週間前程度) | 申告全体の適正確認、帳簿管理状況の把握。 | 過去5年分のインボイス、契約書等の整理。 |
| 無予告調査 | 法令に基づきなし(当日訪問) | 隠蔽・仮装の防止、現況の即時把握。 | 弁護士への即時連絡、当日の応接体制の確認。 |
| 特別調査 | あり、またはなし | 特定の重要案件や、大規模な脱税疑念がある場合。 | 専門チームの編成、徹底した内部調査。 |
| 簡易的な照会 | なし(電話や書面) | 単一の輸入申告に対する疑義の解消。 | 該当資料の迅速な提出。 |
5 無予告調査が行われた際の対応の注意点
もし事前通知なしに税関職員が訪問してきた場合、輸入者はどのように振る舞うべきでしょうか。
5-1 身分証の確認と調査目的の把握
まずは、来訪した職員の「税関職員証」の提示を求め、所属部署と氏名を確認します。
また、関税法第105条第1項に基づき、どの範囲(どの貨物やどの期間)についての調査なのかを明確に質問する必要があります。
5-2 専門家(弁護士等)への連絡
無予告調査であっても、弁護士等の立ち会いを求める権利はあります。
職員に対し、「顧問弁護士が到着するまで待機してほしい」と伝えることは正当な要求です。ただし、調査自体を不当に拒否することは、関税法上の罰則(検査拒否罪)の対象となるため、協力姿勢を示しつつも慎重に対応する必要があります。
5-3 書類の提示と預かり証
税関職員が書類の持ち出し(領置)を希望した場合は、必ず「預かり証」の発行を求めてください。どの書類が回収されたかを正確に把握しておかないと、その後の防御活動に支障をきたします。
6 「通知を待つ」ことのリスクと事前対策
「通知が来てから準備すればよい」という考えは、無予告調査の可能性を排除している点において非常に危険です。万が一の抜き打ち調査で不適切な対応をしたり、資料が散逸していたりすると、本来は「過失」であった間違いが「隠蔽」と疑われ、重加算税を課されるリスクが増大します。
【推奨される事前対策】
①自主的な内部監査:年に一度は過去の申告書類を抽出し、実際の送金記録や契約書との整合性をセルフチェックする。
②保存書類のデジタル化と整理:関税法で義務付けられている帳簿等の保存期間(原則7年)を遵守し、誰でもすぐに出せる状態にしておく。
③対応マニュアルの策定:突然の訪問時に、誰が受付をし、誰が対応責任者となるかを決めておく。
7 当事務所が提供する事後調査サポート
輸入事後調査は、事前の通知があってもなくても、輸入者にとって精神的・実務的に大きな負担となります。税関側の意図を正確に汲み取り、不当な不利益を被らないようにするためには、通関と法律の両面を知り尽くしたアドバイザーが必要です。
当事務所の代表弁護士は通関士資格を有しており、数多くの事後調査において輸入者の立ち会いを行ってまいりました。
①調査前のシミュレーション:現状の申告体制の脆弱性を指摘し、是正をサポートします。
②調査当日の立ち会い:税関職員の質問に対し、法的に適切な範囲で回答を補佐し、現場の混乱を防ぎます。
③調査後の交渉と修正申告:指摘事項に対する反論書面の作成や、加算税の減免に向けた交渉を代理します。
8 おわりに
輸入事後調査の通知は、あくまで税関側の「配慮」による運用の一環であり、法的権利として保証されているものではありません。いつ、どのような形で調査が始まっても揺るがない体制を築いておくことこそが、真のコンプライアンス経営といえます。
「もし今、税関が来たらどうなるだろうか」と少しでも不安に感じられた方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。事後調査を恐れるのではなく、適切に受け入れ、乗り越えるためのパートナーとして貴社を支えます。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入事後調査の罰則リスクと正しい対応策
1 はじめに:輸入事後調査を甘く見てはいけない理由
「税関の輸入事後調査は、強制捜査ではない『任意』の調査だから、適当にあしらっておけば大丈夫だろう」
もし貴社がそのようにお考えであれば、今すぐその認識を改める必要があります。
実際に当事務所に相談に来所された方の中で、稀にですがこのようなことを仰る方がおりますが、非常にリスクの高い認識と言わざるを得ません。
2026年現在、コンプライアンス遵守の機運はかつてないほど高まっており、輸出入実務における「誠実な対応」こそが、あらゆる面で企業を守る最大の防御となります 。
結論から申し上げます。
輸入事後調査は形式上「任意」ではありますが、法令に基づく強力な「質問検査権」に裏打ちされており、不適切な対応には罰金等の刑事罰が科される明確なリスクが存在します 。
本記事では、輸入事後調査で陥りやすい誤解と、実務家(通関士資格を有する弁護士)の視点から見た、不測の事態を避けるための最初に一歩と言える知識を解説していきます。
2 「任意調査」に潜む法的強制力と罰則の真実
輸入事後調査の法的性格は、関税法に基づいています。
確かに輸入事後調査は、税関職員がいきなり土足で踏み込んでくるような強制捜査ではありません(反則調査の場合はこのようなケースもございます)。
しかし、法は調査の有効性を担保するために、以下の厳しいルールを設けています 。
(1)帳簿書類等の提示・提出拒否のリスク
調査の際、税関職員から取引に関する帳簿や書類(インボイス、パッキングリスト、契約書、送金記録など)の提示を求められることがあります。これに対し、「面倒だ」「見せたくない」といった主観的な理由で拒むことはできません。正当な理由なくこれらを拒否、または妨害した場合、「1年以下の懲役(現在は拘禁刑)又は50万円以下の罰金」という刑事罰の対象となる可能性があるのです。
(2)虚偽記載・書類改ざんの代償
最もやってはいけないのが、自社にとって不都合な事実を隠すために書類を「修正」したり、虚偽の回答を行ったりすることです。
「少し数字をいじれば追徴課税を免れられる」といった安易な判断は、前述の刑事罰を招くだけでなく、税関からの社会的信用を完全に失墜させます。一度「不誠実な輸入者」とみなされれば、その後の通関検査が厳格化されるなど、長期的なビジネス上のデメリットは計り知れません。
書類を改ざんすることは絶対に行ってはいけません。
3 「個人の私物」なら隠せるという大きな誤解
実務の現場でたまに聞かれるのが、「会社名義ではない個人のスマホや手帳、私的なノートなどは調査の対象外であり、提示を拒否できるはずだ」という主張です。
しかし、これは大きな誤解です。
税関職員の調査権限は、輸入者の事業に関連する事項に及びます。そのため、たとえ形式上は個人の私物であっても、そこに輸入業務に関するやり取り(SNSのチャット履歴、個人的なメモ書きなど)が含まれている、あるいは含まれていると疑われる合理的な理由がある場合、提示・提出義務が発生することがあります 。
「私物だから」という一点張りで頑なに拒絶し続けることは、かえって「何か隠蔽しているのではないか」という強い疑念を抱かせる結果となり、調査を長期化させる一因となります。このような事態を避けるためにも、日常的な準備をはじめ、輸入事後調査の実施が決まった時点での徹底した準備、調査当日の専門家の立ち会いは非常に重要であり、現場では法的にどこまでが開示範囲かを冷静に見極める必要があります 。
4 専門家が教える:輸入事後調査に向けた「3つの備え」
事後調査の通知が届いてから慌てるのではなく、日頃から以下の管理体制を構築しておくことが、結果として貴社を守ることにつながります 。
①結論先行の説明ができるような備え
調査当日は、税関職員に対して「結論から述べる」回答を徹底した方がスムーズです。
調査において「当時は適当に行っており……」といった世間話や曖昧な前置きは不要ですし、徒に調査を長引かせることにつながります。
「今回の取引価格の根拠は●●契約に基づくもので、資料はこれです」とはっきりと提示することで、調査はスムーズに進みます 。
②一次情報の整備と定期確認
法令は常に変化します。
過去の成功体験に頼るのではなく、常に最新の関税法、関係政省令を確認しておく必要があります。
また、社内の業務マニュアルも、「●年●月の法改正に対応済み」といった形で常にアップデートしておくことが、組織としての信頼性を高めます 。
③「よくある質問」をネタ帳にする
社内で頻繁に発生する「この経費は加算要素になるのか?」、「無償提供品はどう扱うべきか?」といった疑問をリスト化し、専門家のアドバイスを受けて整理しておきましょう。これがそのまま事後調査時に指摘される可能性のある論点となります。
5 通関士資格を有する弁護士によるサポート
輸入事後調査は、単なる事務手続きではありません。
それは「法律の解釈」と「実務の運用」が複雑に絡み合う場です。
当事務所の代表弁護士は、弁護士であると同時に、「通関士」試験に合格しており「通関士」の資格を保有しております。
これは、教科書的な法律論だけでなく、現場での「生の声」や「慣習」を把握していることを意味します 。
輸入事後調査の対応においては、例えば以下のようなサポートを提供しております。
①事前準備:過去数年分の申告書類を精査し、リスク箇所を事前に特定します。
②当日立会:不当な質問や範囲外の検査に対しては、法的根拠に基づき即座に異議を申し立てます。
③事後交渉:万が一の指摘事項に対しても、修正申告の妥当性を精査し、過度なペナルティを防ぎます。
「とりあえず自分で対応してみよう」という判断が、取り返しのつかないデメリットを招く前に、ぜひ一度ご相談ください。
輸入事後調査においては事前にどの程度準備できるかが調査の結果の9割を占めると言っても過言ではありません。
6 お問い合わせ
輸入事後調査に関する不安や、具体的な対策についてのご相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法規制に基づき内容を改定

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
