RCEP、TPP11、日EU・EPAといった大型の経済連携協定(EPA)が次々と発効したことで、これらの協定を戦略的に活用し、通常よりも低い関税率(特恵税率)を適用させて輸入コストを削減する企業が急速に増えています。
特に、最終的な関税がゼロ(無税)になるメリットは経営上の競争力を左右するほど大きなインパクトがありますが、その恩恵を享受する裏側には、税関による厳しい「事後調査」のリスクが常に潜んでいることを忘れてはいけません。
事後調査では、輸入申告から数年が経過した後であっても、その製品が本当に協定に定められた「原産地規則」を満たしているかどうかが厳格に検証されます。
もし、原産地証明の根拠となる書類に不備があったり、製造工程の記録が不十分で原産性を証明できなかったりした場合には、特恵税率の適用が否認され、過去に遡って免除されていた関税を全額追徴されることもあり得ますので決して軽視してはいけません。
このページの目次
1 原産地証明書は「絶対」ではない
特恵税率を適用するためには、「原産地証明書」や「原産地申告書」が必要です。
しかし、これを持っているからといって、無条件に関税が安くなるわけではありません。その証明書の内容が真実であり、かつ協定上の複雑な「原産地規則(関税分類変更基準や付加価値基準)」を満たしていることが前提となります。
2 検認(Verification)
輸入許可後、日本の税関は「本当にこの商品はタイ産(あるいはベトナム産など)なのか?」を確認するため、輸入者に対して資料提出を求めたりするなどします。
これを「検認」といいます。もし、現地の生産者が「面倒だから」と回答への協力を無視したり、資料が不十分で原産性を証明できなかったりした場合、「特恵税率の適用否認」という処分が下されます。
3 否認されるとどうなるか
適用が否認されると、過去に遡って(通常3年~5年分)、正規の税率との差額に加え、過少申告加算税や延滞税を一括で支払わなければならない場合もあります。
数年分の関税が一度に請求されるため、その額は数千万円単位になることも珍しくありません。
4 自己申告制度と輸入者の責任
特にTPP11や日EU・EPAなどの新しい協定では、第三者機関の証明書が不要な「自己申告制度」が採用されています。これは手続きが簡素化された反面、「輸入者が自ら原産性を証明する責任」を負うことを意味します。
「輸出者が書いてくれた書類だから」と鵜呑みにせず、輸入者自身が部品構成表(BOM)や製造フローチャートを入手し、原産地規則を満たしているかを確認する「義務」があります。
当事務所では、検認への対応サポートや、原産地規則の法的解釈に関するアドバイスを提供していますので、少しでもご不安な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

