輸入申告価格の誤りに対する自主的な修正

1 はじめに―相談事例

貨物の輸入をビジネスとして展開する上で、税関への申告は避けて通れない重要なプロセスです。しかし、人間が行う作業である以上、意図せぬミスや後日の事実判明によって、当初の申告内容を訂正しなければならない場面が多々あります。まずは、当事務所に寄せられる具体的な相談事例を想定してみましょう。

【相談者】

輸入機械卸売業者 T氏

【相談内容】

「当社では、半年前にドイツのメーカーから産業用ロボットを数台輸入し、その際の仕入書(インボイス)に基づいて輸入申告を行い、許可を得て国内に引き取りました。ところが先日、ドイツの売手側から、当時のインボイスに記載されていた価格が、計算ミスにより本来よりも低く記載されていたとの連絡がありました。確認したところ、確かに本来支払うべき総額が、申告した額よりも100万円ほど多いことが判明しました。このまま放置しておくと、将来的に税関の事後調査を受けた際に脱税を疑われるのではないかと非常に不安です。 自発的にこの誤りを認め、関税や消費税を正しく納め直すにはどのような手続きが必要なのでしょうか。また、逆に本来よりも多く税金を納めてしまっていたことがわかった場合も、取り戻すことはできるのでしょうか。法的なルールと、手続き上の注意点を詳しく教えてください」

このような状況は、国際取引の現場では決して珍しいことではありません。日本の関税制度は、納税義務者が自らの責任で税額を計算する「申告納税方式」を基本としているため、誤りに気づいた際には、納税者自らがその内容を訂正する法的手段が用意されています。以下、関税法に基づく詳細な解説を行います。

2 申告納税方式における自主的な修正

関税法における税額確定の基本原則は、関税法第6条の2第1項第1号に定められています。

関税法第6条の2第1項第1号(申告納税方式)

「申告納税方式 納税義務者がする納税申告により、納付すべき税額が確定する方式をいう」

この制度の下では、納税義務者には適正な申告を行う義務がある一方、申告後に誤りが判明した場合には、それを正す権利と義務も認められています。税額を増やす方向での訂正を修正申告、減らす方向での訂正を更正の請求と呼び、それぞれ手続きや法的性質が異なります。これらの制度を正しく理解し活用することは、企業のコンプライアンス維持のみならず、不必要なペナルティの回避や適正な税負担の実現に直結します。

3 修正申告(関税法第7条の14)の詳細解説

輸入申告時の税額が、本来納付すべき額よりも少なかった場合に行うのが「修正申告」です。

(1)修正申告の法的根拠

関税法第7条の14第1項には、以下の通り規定されています。

「納税申告をした者又は第7条の16第2項(税関長による決定)の規定による決定を受けた者は、当該申告又は決定に係る課税標準又は納付すべき関税額について、その本来納付すべき課税標準又は関税額が当該申告又は決定に係る課税標準又は関税額(中略)を超えること(中略)を知つたときは、税関長に対し、当該申告又は決定に係る課税標準又は関税額を修正する申告をすることができる」

(2)修正申告が行われる具体的なケース

実務上、修正申告が必要となるのは、以下のような場面です。

・インボイスの価格が本来の取引価格よりも低かった場合

・関税評価の際に加算すべき費用(ロイヤリティ、運賃、無償提供資材の費用等)を算入し忘れた場合

・関税率表の適用(HSコードの分類)を誤り、本来よりも低い税率を適用してしまった場合

・減免税の適用を受けていたが、その要件を満たさなくなった場合

(3)自主的な修正申告のメリット

税関の事後調査によって申告漏れを指摘される前に、自発的に修正申告を行うことには大きな意味があります。後述する「過少申告加算税」などの附帯税について、自発的な申告であれば、一定の条件下で免除または軽減される措置が設けられているためです。

4 更正の請求(関税法第7条の15)の詳細解説

逆に、輸入申告時の税額が本来よりも多かった場合、つまり「税金を納めすぎていた」場合に行うのが「更正の請求」です。

(1)更正の請求の法的根拠

関税法第7条の15第1項には、以下の通り規定されています。

「納税申告をした者は、当該申告に係る課税標準又は納付すべき関税額の計算が関税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告に係る納付すべき関税額(中略)が過大である場合には、輸入許可の日(中略)から5年以内に限り、税関長に対し、当該申告に係る課税標準又は関税額について更正をすべき旨の請求をすることができる」

(2)更正の請求の期間制限

更正の請求ができる期間は、原則として輸入許可の日から5年以内と定められています。この期間を過ぎると、たとえ誤りが明白であっても、法的に還付を求めることが困難になるため、早期の発見と対応が求められます。

(3)更正の請求の性質

修正申告が「自ら税額を確定させる」行為であるのに対し、更正の請求はあくまで「税関長に対して、税額を減額する処分(更正)をしてほしいとお願いする」手続きです。そのため、請求を行ったからといって直ちに税金が戻るわけではなく、税関による審査が行われます。税関長がその請求を正当と認めた場合に初めて、税額が減額され、過払い分が還付されます。

5 修正申告と更正の請求の比較検討

実務においてこれらの手続きを使い分ける際のポイントを以下の表にまとめました。

【修正申告と更正の請求の比較一覧】

|比較項目|修正申告|更正の請求|

|法的根拠|関税法第7条の14|関税法第7条の15|

|対象となる状況|本来の税額よりも過少に申告していた場合|本来の税額よりも過大に申告していた場合|

|手続きの目的|不足している税額を増額して確定させる|納めすぎた税額の減額を税関長に求める|

|期間の制限|税関長による更正があるまで(原則)|輸入許可の日から5年以内|

|附帯税の発生|延滞税等が発生する可能性がある|原則として発生しない(還付加算金が生じる場合あり)|

|税関による審査|提出と同時に税額が確定する|税関による内容審査を経て更正が行われる|

6 過少申告加算税と延滞税の法的リスク

修正申告を行う際、最も懸念されるのが「附帯税」の負担です。これは、適正な申告を促すための行政上の制裁措置としての側面を持ちます。

(1)過少申告加算税(関税法第12条の2

当初の申告額が不足していた場合に課されるペナルティ。原則として、不足税額の10パーセント(一定額を超える部分は15パーセント)が加算されます。 ただし、税関の調査を受ける前に、自発的に修正申告を行った場合には、この過少申告加算税は課されないという取扱いがあります。

(2)延滞税(関税法第12条

法定の納付期限(輸入許可の日等)から、実際に不足分を納付するまでの期間に応じて課される利息的な税金。自発的な修正申告であっても、延滞税は免除されないことが多いため、誤りに気づいたら一日も早く申告を行うことがコスト抑制の観点からも重要です。

7 税関事後調査と自己修正の関係

税関は定期的に輸入者の事務所を訪れ、過去の取引内容を精査する「事後調査」を実施します。この調査の通知が届いた後に慌てて修正申告を行っても、前述の「自発的な修正」とはみなされず、過少申告加算税が課されることになります。

したがって、企業としては事後調査を待つのではなく、定期的な社内監査(セルフチェック)を行い、自ら誤りを発見し、修正申告を行う体制を整えておくことが、コンプライアンス上のベストプラクティスと言えます。また、故意に事実を隠蔽して申告を免れていたとみなされた場合には、より重い「重加算税(35パーセント)」が課されるリスクもあり、経営へのダメージは計り知れません。

8 弁護士への相談による法的防御

輸入申告価格の訂正は、単なる算数のやり直しではありません。特に「なぜ価格が間違っていたのか」という理由の説明において、関税評価上の高度な法解釈が求められる場合があります。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国内唯一の国家資格である通関士資格を保有しており、法務と実務の両面から一貫したサポートを提供できる強みを持っております。

弁護士に相談をすべきかお悩みの方もいらっしゃるものと存じますが、お悩みをご相談いただくことで、以下のようなメリットを提供し、お悩み解消の一助となることができます。

・修正申告を行う際、税関に対して「隠蔽や仮装の意図がなかったこと」を論理的に説明し、重加算税等のリスクを回避する。

・更正の請求において、関税評価上の正当な理由を法的に構成し、税関による審査を円滑に進め、確実に還付を受ける。

・事後調査の通知を受けた直後の対応を協議し、不当な不利益を被らないよう法的な防御を固める。

・将来的な誤りを防ぐため、社内の通関コンプライアンス体制を構築し、法的リスクを最小限に抑える。

輸入・輸出や通関上のトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。法律の専門家であり、かつ通関実務の専門家である当事務所が、貴社のビジネスを法的な側面から全力でバックアップいたします。

9 まとめ

本日は、輸入申告価格に誤りがあった際、納税義務者が自ら税額を訂正するための手続きである「修正申告」と「更正の請求」について解説いたしました。

日本の申告納税方式は、輸入者の自主性と誠実さを前提としています。誤りを自ら正すことは、恥ずべきことではなく、健全なビジネス運営を維持するための前向きなステップです。関税法第7条の14、第7条の15といった条文を正しく理解し、適時適切な対応をとることで、企業の信頼性はより強固なものとなります。

特に、修正申告においては「自発性」がペナルティ軽減の鍵となるため、迷っている時間があるならば、まずは専門家に相談し、迅速に手続きを進めることをお勧めいたします。

本記事の解説が、皆様の輸入実務における適正な納税と法的リスク管理の一助となれば幸いです。もし、過去の申告内容に不安がある場合や、税関との見解の相違が生じている場合には、一人で悩まずに当事務所までお問い合わせください。

【修正申告及び更正の請求に関する重要事項の再確認】

・税額が不足していたら関税法第7条の14に基づく修正申告

・税額が過大であれば関税法第7条の15に基づく更正の請求

・修正申告は自発的に行えば加算税が免除される恩典があること

・更正の請求は輸入許可の日から5年以内という期限があること

・事後調査の通知を受ける前のアクションが最も重要であること

・関税評価やHSコードの判断には高度な専門知識が不可欠であること

適正な申告と納税を通じて、貴社の国際貿易ビジネスが健全に発展し続けることを願っております。

【お問合せは、こちらから】

・・・・・・・・・・・

執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

03-5877-4099電話番号リンク 問い合わせバナー