最新の裁判例その2

ECサイトの利用の拡大や副業の推進等により、輸入や輸出に関わる個人、法人は増加傾向にあります。

そこで、本日は、輸入トラブルによって裁判まで発展した事案である、東京地判令和5年4月27日(LLI/DB 判例秘書登載)をご紹介いたします。

 

1 事案の概要

Xが、自身が権利を有する商標に関して、Yが類似する商標を付したバックパック、肩掛けかばん、ブリーフケース、旅行かばん、カジュアルバッグ等を輸入、販売し、又は販売のために展示する行為を行っているとして、商標権侵害を理由に損害賠償請求を行った事案です。

 

2 裁判所の判断

①商標法38条は、商標権侵害の際に商標権者が請求し得る最低限度の損害額を法定した規定であり、その損害額は、原則として、侵害品の売上高を基準として、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。

②実施に対し受けるべき料率は、(i)当該商標の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、(ii)当該商標に蓄積された信用や顧客吸引力の程度、(iii)当該商標を当該商品に使用した場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、(iv)商標権者と侵害者との競業関係や商標権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである(知的財産高等裁判所平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7日特別部判決参照)

③本件訴訟の審理経過や証拠関係に鑑みると、弁論の全趣旨に照らし、本件における侵害品の売上高は、損益計算書の売上高に、売上高に占める侵害品の割合を乗じて算定することが相当であり、上記売上高に占める侵害品の割合は、被告作成に係る納品書等から算定するのが相当である。

 

3 輸出や輸入のトラブルにはご注意ください

輸出や輸入に関しては、通常の売買とは異なる習慣や法規制が存在しますので、通常の売買と同じイメージをもち対応を行うと思わぬ部分で足元をすくわれてしまうリスクがあります。

輸出や輸入という特別な取り扱いを行っていることを踏まえ、どのようにすればトラブルを回避することができるかを事前に把握した上で対応を行うことが非常に重要です。自社の輸出や輸入に関するフローが適切かどうかを再度確認いただくとともに、必要に応じて専門家にセカンドオピニオンを求める等、万全の態勢をトラブル発生前に構築しておくことが重要です。

 

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