ホームページ画像の無断使用を指摘された事例

1 相談内容

不動産会社の広報担当者から、自社ホームページに掲載している画像について、写真家を名乗る人物の代理人弁護士から内容証明郵便が届いたという相談を受けた事例です。

内容証明には、「当社のホームページに、写真家が著作権を有する写真が無断で掲載されている。広告目的で使用されているため、損害賠償金として100万円を支払うよう求める」と記載されていました。

相談者としては、ホームページ制作は前年にフリーランスのデザイナーへ依頼しており、画像についても「商用利用可能なフリー素材を使用している」と説明を受けていたため、自社が無断使用をしたという認識はありませんでした。ところが、そのデザイナーとは連絡が取れなくなっており、画像の入手元や利用条件を確認できない状態でした。

項目内容
相談者不動産会社の広報担当
問題となった媒体自社ホームページ
請求者写真家の代理人弁護士
請求内容写真の無断使用を理由とする損害賠償100万円
制作経緯フリーランスデザイナーにHP制作を外注
相談者の認識商用利用可能なフリー素材と聞いていた
問題点デザイナーと連絡が取れず、権利処理の証拠がない

2 法的見解:まず画像は速やかに削除すべき

最初に行うべき対応は、問題の画像を速やかに削除することです。

仮に、後で「自社に過失がない」と主張できる余地があるとしても、権利者から具体的な指摘を受けた後に掲載を続けると、故意または少なくとも過失があると評価されるリスクが高まります。

写真は著作物として保護されます。インターネット上で簡単に取得できる画像であっても、撮影者の著作物であり、無断で使用すると差止請求や損害賠償請求に発展する可能性があります。

そのため、D社には、相手方への反論・交渉とは別に、まず該当画像をホームページから削除し、キャッシュ、SNS投稿、広告バナー、過去のLP、チラシPDFなど、同じ画像を使用している可能性がある媒体を洗い出すよう助言しました。

3 「デザイナーに任せていた」は万能の免責理由ではない

相談者は、「騙されたのは当社であり、悪いのはデザイナーではないか」と疑問を持っていました。

この感覚は自然です。しかし、著作権者から見れば、自分の写真がD社のホームページに掲載され、広告として利用されているという事実が重要です。制作会社やデザイナーに外注していたという事情は、D社とデザイナーとの内部関係にすぎません。

もっとも、広告主が常に必ず損害賠償責任を負うとまではいえません。損害賠償請求では、原則として故意または過失が問題となるためです。実際に、広告主が広告制作会社から提供を受けた写真を使用した事案で、広告主に過失がないとして損害賠償責任を否定した裁判例も紹介されています。

他方で、広告主側の責任が肯定された裁判例もあります。たとえば、商品パッケージのデザインを外部委託したところ、第三者のイラストに依拠したデザインが使われた事案では、販売会社が業として商品を販売していた以上、イラスト作成経過を確認するなどして権利侵害を回避すべきであったとして過失が認められています。

つまり、ポイントは「外注していたかどうか」ではなく、D社がどの程度確認すべき立場にあり、実際にどのような確認をしていたかです。

事情D社に有利に働く可能性D社に不利に働く可能性
デザイナーに制作を外注専門業者に任せたとの主張が可能丸投げで確認していないと評価され得る
商用利用可能と聞いていたデザイナーの説明を信頼した事情口頭のみで証拠がないと弱い
素材の出典リストがない権利確認体制が不十分と見られやすい
広告・営業目的で掲載商用利用として損害額が高くなりやすい
指摘後すぐ削除損害拡大防止の姿勢を示せる削除前の掲載期間は問題として残る
同種画像を多数使用管理体制全体の問題と見られる可能性

4 相手方の100万円請求はそのまま受け入れるべきではない

次に、相手方が主張する100万円という金額が妥当かを検討しました。

著作権侵害の損害額は、実務上、当該写真を正規に使用した場合のライセンス料相当額、逸失利益、掲載態様、掲載期間、媒体の性質、商用利用の程度などを踏まえて検討されます。

著作権侵害の損害額については、請求額と裁判所が認める金額に大きな差が出ることがあります。たとえば、著作権侵害を理由に高額請求がされた事案でも、裁判所が認めた賠償額は大幅に低くなるケースがあるため、請求額をそのまま鵜呑みにせず交渉することが重要とされています。

写真のWeb掲載に関する裁判例でも、原告が高額な損害賠償を請求したのに対し、裁判所は、掲載期間、使用目的、商業的価値、使用料の逓減などを考慮し、請求額より大幅に低い損害額を認定した例があります。

そこで、本件でも次の事情を整理し、相手方の請求額を精査しました。

減額交渉で確認した事項確認内容
写真の権利者性請求者が本当に著作権者か、権利譲渡・管理権限があるか
写真の同一性D社掲載画像が相手方写真と同一または実質的に同一か
掲載期間いつからいつまで掲載されていたか
掲載場所トップページか、下層ページか、広告LPか
画像サイズメインビジュアルか、装飾的な小画像か
商用性直接集客に使われたか、単なる背景素材か
使用料相場ストックフォト、同種写真、写真家の通常料金
クレジット表示氏名表示が必要な素材だったか
故意・過失権利処理済みと聞いていた事情があるか
指摘後対応削除、謝罪、再発防止策の有無

5 交渉方針:早期削除と謝罪を前提に、適正額での和解を目指す

本件では、D社が画像の入手元やライセンス証跡を示せない以上、全面的に争うよりも、早期に削除し、権利者に謝意を示したうえで、金額を適正水準まで下げる交渉が現実的と判断しました。

ただし、相手方の100万円という金額は、1枚の画像使用として高額である可能性がありました。そこで、相手方に対し、権利者性と損害額の根拠資料の開示を求めつつ、D社側の事情を説明しました。

交渉上の主張内容
故意ではないフリー素材と説明を受けていた
指摘後速やかに削除損害拡大防止に努めた
使用態様は限定的掲載場所・サイズ・期間を確認し過大評価を争う
使用料相当額を基準にすべき懲罰的な高額請求は妥当でない
早期解決の意向訴訟ではなく和解で解決する意思を示す
再発防止策素材管理フローを整備することを説明

その結果、D社は100万円全額を支払うのではなく、掲載期間や使用態様を踏まえた一定の和解金を支払う方向で交渉を進めました。

6 デザイナーへの求償・責任追及

権利者との関係ではD社が対応せざるを得ないとしても、最終的な原因がデザイナーの無断使用や不適切な権利処理にある場合、D社はデザイナーに対して求償や損害賠償請求を検討できます。

特に、契約書、メール、見積書、チャット履歴などに「商用利用可能なフリー素材を使用する」「権利処理済み素材を使用する」といった記載が残っていれば、デザイナーの契約違反や説明義務違反を主張しやすくなります。

デザイナーへの請求で確認すべき資料内容
業務委託契約書権利保証条項、損害賠償条項の有無
見積書・発注書制作範囲、素材費、権利処理の記載
メール・チャット商用利用可能素材と説明した証拠
納品データ画像ファイル名、メタデータ、制作過程
請求書・振込記録デザイナーの住所、氏名、口座情報
過去のやり取り素材の出典を尋ねた記録

デザイナーと連絡が取れない場合でも、契約時の住所、振込先口座、請求書記載情報、メールアドレス、SNSアカウント、事業者登録情報などから、所在確認を試みる余地があります。所在が判明すれば、内容証明郵便による請求、支払督促、少額訴訟、通常訴訟などを検討します。

もっとも、デザイナーに資力がない場合や所在不明の場合には、回収可能性が低くなるため、費用対効果を見極める必要があります。

7 再発防止策:外注契約と素材管理フローを見直す

今回の根本原因は、ホームページ制作を外注する際に、素材の権利処理について契約書・納品管理・社内確認が不十分だったことです。

LegalOnナレッジでも、ホームページ制作やコンテンツ制作のように成果物を完成させる業務については、業務委託契約として契約内容を明確にしておくことが重要です。LegalOnナレッジ +1

D社には、今後の外注契約書に、少なくとも次の条項を入れるよう助言しました。

8 契約書に入れるべき条項例

受託者は、本件成果物および本件成果物に含まれる文章、写真、イラスト、動画、フォント、プログラムその他一切の素材について、第三者の著作権、著作者人格権、商標権、肖像権、パブリシティ権その他一切の権利を侵害しないことを保証する。

受託者は、本件成果物に第三者が権利を有する素材を使用する場合、事前に当該素材の出典、利用条件、ライセンス範囲および権利者の許諾内容を委託者に書面で開示し、委託者の承諾を得なければならない。

本件成果物または使用素材について第三者から権利侵害の主張、警告、請求、訴訟その他の紛争が生じた場合、受託者は自己の責任と費用においてこれを解決し、委託者に損害、費用または負担を生じさせないものとする。

前項の紛争により委託者に損害、弁護士費用、調査費用、和解金、賠償金その他の負担が生じた場合、受託者はこれを全額賠償する。

9 納品時に提出させるべき「使用素材リスト」

契約書だけでなく、実務運用も重要です。今後は、納品時に使用素材リストの提出を義務付けるべきです。

項目記載内容
素材番号社内管理番号
素材の種類写真、イラスト、動画、フォント、アイコン等
使用箇所トップページ、物件紹介ページ、LP等
出典URL素材サイト、購入ページ、作者ページ
権利者・作者氏名、法人名、アカウント名
ライセンス種別有料素材、無料素材、CCライセンス、自社撮影等
商用利用可否可否、条件、禁止事項
加工可否トリミング、色変更、合成の可否
クレジット要否表記が必要か
証跡購入履歴、利用規約PDF、スクリーンショット
利用期限期間制限の有無

特に「フリー素材」という言葉には注意が必要です。無料で取得できる素材であっても、著作権が放棄されているとは限りません。商用利用、改変、広告利用、ロゴ・人物写真の利用、クレジット表記、再配布禁止など、素材サイトごとに条件が異なります。

10 社内チェック体制の整備

D社には、ホームページや広告物を公開する前に、広報部門だけでなく法務・総務部門も含めて素材権利を確認するフローを導入するよう助言しました。

フロー実施内容
制作発注時権利保証条項を含む契約書を締結
制作中主要ビジュアルの出典を随時確認
納品時使用素材リストと証跡を受領
公開前社内でライセンス条件を確認
公開後素材リストと掲載ページを紐づけて保存
更新時過去素材の再利用可否を再確認
警告受領時速やかに削除・証拠保全・弁護士相談

11 解決結果

本件では、D社は問題画像を速やかに削除し、相手方に対して誠実に対応しました。そのうえで、請求額100万円については、権利者性、使用料相場、掲載期間、掲載場所、故意ではない事情を踏まえて減額交渉を行いました。

最終的には、訴訟に発展することなく、一定額の和解金を支払うことで解決を目指す方針となりました。あわせて、デザイナーに対しては、契約関係資料と送金記録をもとに所在確認を進め、求償請求の可能性を検討しました。

対応項目結果
画像削除指摘後速やかに実施
相手方対応弁護士を通じて回答
請求額100万円からの減額交渉を実施
訴訟リスク早期和解により低減
デザイナー対応所在確認・求償請求を検討
再発防止契約書・素材リスト・社内確認フローを導入

12 弁護士のコメント

ホームページ制作や広告制作では、「フリー素材を使っています」「権利処理済みです」という一言だけで安心してしまうケースが少なくありません。しかし、著作権トラブルが起きた場合、まず表に出るのは広告主です。

外注先が悪い場合でも、権利者との関係では、掲載している企業が削除対応や交渉の窓口にならざるを得ません。広告主に過失がないと主張できる場合もありますが、そのためには、制作会社に権利確認を求めていたこと、権利処理済みと説明を受けていたこと、合理的に信頼できる事情があったことを示す証拠が必要です。

今後、企業が取るべき対策は明確です。

  • 外注契約書に権利保証・補償条項を入れる
  • 使用素材リストと証跡を必ず提出させる
  • フリー素材の商用利用条件を社内でも確認する
  • 主要ビジュアルは有料素材または自社撮影を優先する
  • 指摘を受けたら、まず削除し、掲載継続による損害拡大を避ける

「デザイナーに任せたから大丈夫」ではなく、「任せたことを証明できる契約書と素材管理資料を残しているか」が重要です。著作権トラブルは、発生後の交渉よりも、発注時の契約と納品時の証跡管理で防ぐ方がはるかに低コストです。

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