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0 はじめに:具体的な相談事例
まずは、輸入業務において多く寄せられる相談事例をご紹介します。
【相談事例】
食品輸入業を営む株式会社A社の担当者Bさんは、海外の取引先から原材料を輸入する際、インボイス(仕入書)の金額確認を誤り、実際の取引価格よりも低い金額で税関に納税申告を行ってしまいました。輸入許可から2年後、税関による事後調査が行われ、申告価格の誤りを指摘されました。Bさんはすぐに修正申告を行いましたが、税関から「過少加算税」を課すとの通知を受けました。Bさんは「故意に隠したわけではなく、単純な確認不足だった。それなのに重い罰金のような税金がかかるのは納得がいかないし、計算方法も複雑でよくわからない」と頭を悩ませています。
このようなケースは、決して他人事ではありません。輸入貨物の申告において、意図せず納税額を少なく申告してしまった場合に課される追徴税について、詳しく解説していきます。
1 過少申告加算税の概要と課税の根拠
過少申告加算税とは、納税者が当初行った納税申告の額が本来納めるべき税額よりも少なかった場合に、その差額に対して課される行政罰的な性格を持つ税金です。申告納税制度の適正な運用を確保することを目的としています。
この制度の根拠となるのは、「関税法第12条の2」(過少申告加算税)です。
【参考:関税法第12条の2第1項(要約)】
納税申告があった場合において、修正申告が行われ、又は更正があったときは、税関長は、当該納税申告に関し、当該修正申告又は更正により納付すべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
輸入者が自ら誤りに気づいて修正申告を行った場合には税額の割合は変わる(関税法第12条の2第5項)。
2 過少申告加算税の税率と加重される条件
過少申告加算税の基本的な税率は、不足していた税額に対して10%です。しかし、不足額が大きい場合には、さらに税率が上乗せされる仕組みになっています。具体的には、以下のいずれか多い方の金額を超える部分については、税率が15%(基本の10%に5%を加算)となります。
①当初の申告税額
②50万円
これをわかりやすく図解すると、以下のようになります。
【図表1:過少申告加算税の税率構造イメージ】
項目 / 計算対象となる不足税額の範囲 / 適用される加算税の税率
基本税率分 / 当初申告額と50万円のいずれか多い額に達するまでの額 / 10パーセント
加重税率分 / 当初申告額と50万円のいずれか多い額を超える部分の額 / 15パーセント
※ただし、税関の調査の通知を受ける前に、自発的に修正申告を行った場合には、この過少申告加算税は課されません(無利子での延滞税が発生する場合等はあります)。また、申告漏れについて「正当な理由」があると認められる場合も課税対象外となりますが、実務上、単純な事務ミスや法令の不知は正当な理由として認められにくい傾向にあります。
3 過少申告加算税の税額計算と端数処理
過少申告加算税を計算する際には、端数処理のルールが厳密に定められています。
これは「国税通則法」の規定が準用されます(関税法第13条の4)。
①基礎となる税額の切り捨て(国税通則法第118条第3項)
過少申告加算税を計算する際の基礎となる不足税額が1万円未満であるときは、過少申告加算税は課されません。また、1万円以上の場合は、1万円未満の端数を切り捨てて計算します。
②確定した加算税額の切り捨て(国税通則法第119条第4項)
算出された過少申告加算税の額が5000円未満であるときは、その全額を切り捨てます(つまり課されません)。また、5000円以上の場合は、100円未満の端数を切り捨てます。
【図表2:端数処理の具体的プロセス】
ステップ番号 / 処理の内容 / 具体的な計算ルール
第1段階 / 不足税額の確定 / 当初申告税額と適正税額の差額を算出する
第2段階 / 基礎額の端数処理 / 不足税額が1万円未満なら終了。以上なら1万円未満を切り捨てる
第3段階 / 税率の乗算 / 第2段階の額に10パーセント(又は15パーセント)を乗じる
第4段階 / 最終税額の確定 / 算出額が5000円未満なら0円。以上なら100円未満を切り捨てる
4 賦課決定と納付の期限
過少申告加算税の額は、税関が調査結果に基づき「賦課決定通知書」を送付することによって確定します。
この通知を受けた輸入者は、通知書記載の金額の加算税を納付する必要があります。
5 おわりに:専門家への相談の重要性
輸入通関における納税申告は、関税率の適用判断や加算要素の有無など、非常に高度な専門性が求められるプロセスです。一度「過少申告」として指摘を受けると、加算税という金銭的な負担だけでなく、税関からのコンプライアンス評価にも影響を及ぼす可能性があります。
当事務所の代表弁護士は、法律の専門家である弁護士でありますが、「通関士」試験に合格しており、通関士の国家資格も有しております。輸出入実務と法律の両面から、事後調査への対応や、不当な賦課決定に対する異議申し立て、またミスを未然に防ぐための社内体制構築に関するアドバイスが可能です。
「今回の加算税の計算は正しいのか」、「正当な理由を主張できる余地はないか」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ一度当事務所までお気軽にご相談ください。
複雑な税関手続を、確かな知見でサポートいたします。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

