Archive for the ‘コラム~通関手続、輸出入トラブル~’ Category

輸入申告における必要書類の法的役割

2021-04-01

0 はじめに

当事務所に寄せられた、輸入書類の不備にまつわる相談事例をご紹介いたします。

【相談者】

東京都内で海外製サプリメントの輸入販売を計画している株式会社Z 代表取締役 A氏

【相談内容】

当社は今回、初めてアメリカのメーカーから大量のサプリメントを輸入することになりました。通関業者からは、インボイスやパッキングリストを送るように指示を受けましたが、メーカーからはプロフォーマーインボイス(仮仕入書)しか届いていません。A氏は、金額さえ合っていれば問題ないと考え、その書類を通関業者に渡して輸入申告を進めてもらいました。しかし、税関の審査において、支払実態と書類の内容が整合しないとの指摘を受け、貨物が保税地域で足止めされてしまいました。さらに、特恵関税の適用を受けるための原産地証明書も、形式が古いという理由で受理されませんでした。貨物の滞留による保管料が膨らみ、国内販売のスケジュールも大幅に遅れています。このような書類のトラブルを未然に防ぐには、どのような点に注意すべきだったのでしょうか。

このような事例は、輸入実務に慣れていない企業において頻繁に発生します。輸入申告は、単なる事務手続きではなく、関税法という法律に基づいた厳格な行政手続きであることを理解しなければなりません。

1 輸入申告と書類提出の法的根拠

ビジネスで貨物を輸入する際に必要となる書類は複数あります。

通常は、貨物の輸入は通関業者に依頼し、通関業者からの指示に沿って書類を提出すれば、あとは通関業者が適切に輸入申告をしてくれます。そのため、どのような書類が、輸入申告においてどのような意味合いを持っているのか、ということに関してまで明確には認識することができていないケースも多いのではないでしょうか。

まず、輸入申告において書類が必要とされる法的根拠を確認します。

関税法第67条(輸出又は輸入の許可)

貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない。

関税法第68条(輸出申告又は輸入申告に際しての提出書類)

前条の規定による輸入申告をしようとする者は、仕入書(インボイス)その他税関長において必要があると認める書類を提出しなければならない。

この条文にある通り、インボイス等の提出は努力義務ではなく、法律上の明確な義務です。税関はこれらの書類を精査することで、輸入される貨物の品名、数量、そして関税の計算基礎となる課税価格が正しいかどうかを判断いたします。

2 インボイス(仕入書)の重要性と種類

インボイスは、通常、貨物の購入者(輸入者)に対してメーカー側が発行する納品書兼請求書のことを指しますが、送付状や見積もり段階で発行される場合もあります。輸入申告において最も基本的な書類であり、課税価格を決定する際の最大の根拠となります。

代表的なものとしては、プロフォーマーインボイスとコマーシャルインボイスの2種類があります。

(1)コマーシャルインボイス(商業送り状)

これは実際の取引に基づき、売主が買主に対して発行する確定した確定仕入書です。輸入申告において原則として提出が求められるのはこちらの書類です。貨物の正確な説明、単価、総額、支払い条件、インコタームズ(貿易条件)などが記載されている必要があります。

(2)プロフォーマーインボイス(仮仕入書)

見積書の性格を持つ仮書類です。信用状(L/C)の開設時や、事前の輸入許可申請のために使用されることはありますが、最終的な輸入申告においては、コマーシャルインボイスが優先されます。冒頭の相談事例のように、プロフォーマーインボイスだけで申告を行うと、実際の送金額と差異が生じた場合に虚偽申告を疑われるリスクがあります。

関税法第7条(申告)では、納税申告において価格を正しく記載することを求めており、インボイスの内容が不正確であれば、この義務を尽くしていないことになります。

3 パッキングリスト(梱包明細書)の役割

パッキングリストは、貨物がどのように梱包されているのか、梱包の数はいくつなのか、梱包の番号と内容、大きさと重量はどうなっているのか、梱包の外装に書かれたマーク(荷印)はどんなものなのか、といった梱包の状況や梱包された貨物の内容等を把握することを目的として作成される書類です。

インボイスだけでは、実際の貨物の状況が分かりませんので、インボイスとあわせて輸入申告の際には提出されることになります。税関による現物検査が行われる際、検査官はパッキングリストを参照して、どの箱の中にどの製品が入っているかを確認します。

もしパッキングリストの記載と実際の梱包内容が異なっていた場合、隠匿物(密輸品)の存在を疑われるなど、検査が長期化する原因となります。実務上は、インボイスと内容が完全に一致していることを、輸入者自身が事前にチェックすることが極めて重要です。

4 運送書類(B/L、AWB)の法的性質

船便輸送の場合のB/L(船荷証券)は、輸入取引に関する書類で最も重要なものの一つです。なぜなら、この書類と引き換えに、貨物を受領することができるからです。

(1)B/L(船荷証券)

船会社が貨物を引き受けたことを証明するとともに、船会社に対して貨物の引き渡しを請求できる権利を表彰する有価証券としての性質を持ちます。日本の商法や国際海上物品運送法といった法律とも深く関わる書類であり、荷受人(コンサイニー)の記載が輸入者本人と一致している必要があります。

(2)AWB(航空貨物運送状)

航空便の場合の航空貨物輸送状はAWBといいます。B/Lとは異なり、有価証券としての性質は持ちませんが、運送契約の証拠書類として輸入申告の際に必須となります。

これらの書類に記載された到着港や重量などのデータが、インボイスの内容と矛盾している場合、税関から厳格な説明を求められることがあります。

5 原産地証明書の税制上のメリット

原産地証明書は、EPA等を利用して税制上の優遇等を受けるために必要な書類です。

近年では経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の拡大により、特定の国からの輸入について関税を免除または減免する機会が増えています。この適用を受けるためには、貨物が間違いなくその国で生産されたものであることを証明する原産地証明書が不可欠です。

ただし、原産地証明書には有効期限があり、また協定ごとに定められた特定の様式(フォーム)を遵守しなければなりません。冒頭の事例のように、古い様式を使用したり、記載内容に不備があったりすると、本来受けられるはずの免税措置が受けられず、多額の関税を支払うことになってしまいます。

6 その他の必要書類と他法令の確認

輸入する品目によっては、関税法以外の法律(他法令)に基づく書類が必要となる場合があります。

(1)保険承認状

貨物に保険をかけている場合、その保険料も原則として課税価格に加算されるため、保険金額を確認するための書類が必要となることがあります。

(2)成分分析表や製造工程表

食品や化学品、化粧品などを輸入する場合、食品衛生法や薬機法(医薬品医療機器等法)に適合しているかを判断するために、詳細なスペックシートが求められます。

(3)輸入許可証(他法令分)

例えば、動植物を輸入する際の検疫証明書や、経済産業省の輸入割当が必要な品目の場合は輸入承諾書など、関税法以外のハードルをクリアしたことを示す書類です。

これら他法令の確認を怠ると、関税法上の申告を行うことすらできません。

7 書類管理における実務チェックリスト

輸入者が通関業者へ書類を渡す前に確認すべき事項を整理すると以下のようになります。

【輸入書類の事前チェック表】

確認対象書類|チェックすべき具体的なポイント|留意事項|

インボイス|単価、総額、通貨単位に誤りはないか|コマーシャルインボイスを使用すること|

インボイス|品名が具体的で、実態を反映しているか|抽象的な表現(部品等)は避けること|

パッキングリスト|個数、正味重量、総重量が正確か|インボイスの数量と照合すること|

パッキングリスト|梱包番号と中身の対応が明確か|検査対象の特定に必要|

運送書類|荷受人の名称と住所は正しいか|裏面裏書の有無を確認すること|

原産地証明書|適用を受けるEPAの様式に合致しているか|有効期限内であることを確認すること|

他法令書類|成分表や検査済証は揃っているか|専門機関への事前相談を推奨|

8 書類の不備に伴う法的リスクとペナルティ

輸入申告における書類の不備や、虚偽の記載は、単なる事務ミスでは済まされない重い法的責任を伴います。

関税法第110条(関税を免れる罪)

偽りその他不正の行為により関税を免れた者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

意図的な隠蔽だけでなく、重大な過失によって不適切な書類で申告を行い、結果として関税を低く抑えてしまった場合、脱税とみなされる可能性があります。また、刑事罰に至らないまでも、過少申告加算税や重加算税といった重い附帯税が課されます。

一度、税関のブラックリストに掲載されると、その後の輸入取引において全件検査が行われるようになり、ビジネスのスピードが極めて低下するという実質的な不利益を被ることになりかねませんので注意が必要です。

9 輸入者が持つべき専門知識と確認の重要性

通関業者はプロフェッショナルですが、彼らはあくまで「輸入者から提出された書類」を信じて申告書を作成します。取引の背景や、別ルートでの支払いの有無、詳細な製品スペックなど、輸入者本人しか知り得ない情報については、輸入者が自ら正確に伝えなければなりません。

各書類の内容等はまた、別の機会にご紹介できればと思いますが、概要にとどまる今日の説明だけでも、書類一枚一枚に重い法的責任が宿っていることがお分かりいただけたかと思います。

具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

10 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルを幅広く取り扱っております。

弁護士でありながら通関士の知見を持つことで、書類上の形式的なチェックだけでなく、関税法や他法令に照らした本質的なリーガルリスクの診断が可能です。

具体的には、以下のようなサービスを提供しております。

①輸入取引開始前の必要書類および他法令適用のリーガルチェック

②不適切な書類提出による税関調査や貨物差し止めへの緊急対応

③EPA原産地証明書の有効性確認および自己申告制度への対応支援

④通関業者との契約およびコミュニケーションの最適化アドバイス

輸出入トラブルや通関トラブルでお困りの方や、ご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

11 適正な書類準備がビジネスを守る

輸入申告における書類は、単なる紙切れではなく、国の通関手続を通過するための通行証であり、かつ輸入者の誠実さを証明する証拠書類でもあります。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい書類を正しく準備すること。この基本的なコンプライアンスの積み重ねこそが、予期せぬトラブルから会社を守り、海外ビジネスを長期的に成功させるための唯一の近道です。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入ビジネスのリスク管理と税関事後調査

2021-03-31

0 はじめに

まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容に基づいた、架空の事例をご紹介いたします。輸入実務を日常的に行っている企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっております。

【相談者】

神奈川県内に拠点を置く、欧州家具の輸入販売を行う株式会社X 代表取締役 Y氏

【相談内容】

「当社は10年以上、イタリアやフランスのメーカーから高級家具を輸入し、国内のセレクトショップへ卸しています。通関業務や国際輸送については、長年付き合いのある大手フォワーダーにすべて委託しており、これまで一度もトラブルはありませんでした。ところが先日、税関から『税関事後調査』の実施通知が届きました。慌てて過去の書類を確認したところ、家具の輸入価格(インボイス価格)とは別に、現地のデザイナーに対してデザインの使用料、いわゆるロイヤリティを毎月送金していることが判明しました。また、昨年からは製品の品質を高めるため、日本からクッション材を無償でメーカーへ送り、それを家具に組み込んでもらっています。フォワーダーに相談したところ、『それらの費用は輸入申告の際に加算すべき要素だった可能性があるが、指示を受けていなかったのでインボイスの金額だけで申告していた』と言われてしまいました。もし多額の追徴課税が発生した場合、当社の経営に深刻な影響が出かねません。どのような法的準備をすべきでしょうか。」

このような事例は、決して珍しいものではありません。

輸入者が「実務はプロに任せている」と盲信している間に、法的義務である適正申告が漏れてしまっているケースは多々存在します。

1 輸入通関手続の適正さを日々精査することが重要な理由

輸入取引をビジネスの中心とする場合、通常は、通関手続きや貨物の運送などは、フォワーダー等の専門家に依頼すればよいので、基本的には、ビジネスを行う者はそれらの手続面を気にする必要はないのが実情といえます。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。なぜなら、輸入申告の責任は、代行した通関業者ではなく、輸入者本人に帰属するからです。

関税法第7条等では、輸入者の義務を明確に定めています。

要約すると、貨物を輸入しようとする者は、当該貨物の品名及び数量並びに価格その他必要な事項を税関長に申告しなければならない、と規定されております。

ここにある「価格」とは、単に相手に支払った金額を指すのではなく、関税法上の「課税価格」としてのルールに基づいた計算結果を指します。この計算こそが、輸入ビジネスにおける最大の落とし穴となります。

2 税関事後調査という制度の実態

というのも、税関事後調査という制度があり、貨物を輸入した後、相当程度の期間経過後に税関が貨物の輸入申告が適切に行われたかどうかを輸入者の事業所等で調査することがあります。これは、輸入許可を迅速に下す代わりに、後からじっくりと書類を精査して、税金の取りこぼしがないかを確認する仕組みです

調査は通常、5年に一度程度の頻度で行われることが多く、過去数年分の取引データがすべてチェックの対象となります。調査官は企業の会計帳簿や銀行の送金記録、輸出者との契約書、さらにはメールのやり取りまで精査します。そこで「申告漏れ」が発見されると、過去に遡って不足税額を徴収されることになります。

このような調査があることを踏まえて、具体的にどのような点に注意しておく必要があるかというと、それは、ビジネスの内容ごとに大きく異なります。特に、輸入者側から輸出者側に対して原材料の一部を無償で提供している場合や知的財産権に絡む問題がある場合等では注意が必要です。

3 課税価格に加算すべき要素と関税定率法第4条の重要性

具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。ここで重要となる規定の一つが、関税定率法第4条です。

実務上、特に見落とされやすいのは、いわゆる「輸入価格の算出に関わる支援(アシスト)」に関する費用です。日本から金型を送って製品を作らせている場合や、原材料を無償で提供している場合、その金型の償却費や原材料の調達費用を、インボイス上の製品価格に上乗せして申告しなければなりません。

また、ロイヤリティについても同条第1項第4号に規定があります。

これらは、商品の代金とは別のルートで支払われることが多いため、通関業者が把握することは不可能です。輸入者側で明確な管理体制が整っていない限り、ほぼ確実に申告漏れが発生します。

4 輸入者が行うべきセルフチェック

社内のコンプライアンス体制を構築し、各部門間の情報共有を円滑にすることがリスク回避の第一歩となります。

【輸入申告価格の適正性確認表】

項目(カテゴリ)|具体的な確認内容|関連部署(情報源)|

原材料の無償支給|輸出者へ生地、部品、資材を無償で送っていないか|製造・物流部門|

金型・工具の提供|製品製造のための金型や設計図を無償提供していないか|開発・生産管理|

ロイヤリティ支払|商標権やデザイン権料を別途送金していないか|法務・経理部門|

運送関連費用の負担|輸入港までの運賃や保険料を輸入者が別途支払っていないか|物流・海外営業|

買付手数料の区別|代理店への支払いが「買付手数料」に該当するか精査したか|調達・購買部門|

特別な関係の有無|輸出者と親子会社などの資本関係はないか|経営企画・総務|

このような視点を用いて、定期的に社内監査を実施することが推奨されます。特に新しく取引を開始する際には、契約書の段階でこれらの費用負担がどのようになっているかを精査しなければなりません。

5 申告漏れに対する厳格なペナルティ

法令を遵守しなかった場合、経済的なダメージだけでなく、社会的信用の失墜も招きます。関税法には、以下のような附帯税の規定があります。

関税法第12条の2(過少申告加算税)

納税義務者が納税申告をした後において、修正申告が行われた場合、又は更正があった場合には、当該納税義務者に対し、その修正申告又は更正により納付すべき税額の100分の10(一定の金額を超える部分は100分の15)に相当する過少申告加算税を課する。

これに加え、悪質と判断された場合には重加算税が課されます。

関税法第12条の4(重加算税)

納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、当該納税義務者に対し、過少申告加算税に代え、その額の計算の基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。

重加算税が課されると、その後の輸入において全件検査の対象となるなど、ビジネスのスピードが著しく低下するリスクがあります。適正な申告を維持することは、スムーズな物流を確保するための必要経費とも言えます。

6 実務上の対策:フォワーダーとの連携強化

専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

具体的には、以下の3点を実施することをお勧めいたします。

①インボイス以外の費用が発生している場合は、必ず通関業者等の専門家に事前に相談することです。ロイヤリティの支払いがある場合や、原材料を支給している場合、それを通関業者に伝えれば、彼らは適切な加算計算を行ってくれます。

②契約書の作成段階で、関税評価上の問題を検討することです。契約書に「デザイン料は別途支払う」と記載があれば、それは課税対象になる可能性が非常に高いです。法務部門と物流部門が連携し、契約内容が税関申告にどのような影響を与えるかを常に検討すべきです

③税関から問い合わせがあった際には、独断で回答せず、専門家の助言を仰ぐことです。事後調査の際の不用意な回答が、事実の隠蔽とみなされ、重加算税の対象となってしまうケースも少なくありません。

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所では、代表弁護士が、輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、輸出入トラブルや通関トラブルに関するご相談を幅広く取り扱っております。

弁護士でありながら通関実務の現場を知る専門家として、法的な解釈のみならず、実際の通関申告書の作成プロセスや税関当局との交渉戦略についても、具体的なアドバイスを提供することが可能です。

ご相談いただいたビジネスの内容を踏まえ、日々の業務においてどのような点を注意すべきかを整理するといったサービスもご提供しております。具体的には、以下のようなサポートを行っております。

①輸入契約書のリーガルチェックおよび関税評価の適正化アドバイス

②税関事後調査に対する事前模擬調査の実施と改善案の提示

③不当な更正処分に対する不服申立てや税関訴訟の代理

④社内向け通関コンプライアンス研修の実施

日々の業務で貨物の輸入を頻繁に行っているものの、輸入・通関に関して把握できていない等ご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

8 輸入ビジネスの持続可能性を高めるために

輸入ビジネスの成功は、良い商品を安く仕入れることだけではありません。その背後にある法的義務を誠実に果たし、国家の税務当局との信頼関係を維持することも、経営者の重要な責務です。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

事後調査で指摘を受けてから後悔するのではなく、日常の業務フローの中に法的チェック機能を組み込むことが、結果として最もコストパフォーマンスの良い経営判断となります

適切な知識を持ち、適正な申告を行うことで、貴社の輸入ビジネスがより強固なものとなるよう、当事務所はサポートいたします。

もし貴社において、現在の通関体制に少しでも不安をお持ちであれば、まずは現状の取引内容を整理し、潜在的なリスクを洗い出すところから始めましょう。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入取引における一括加算申告制度

2021-03-25

0 はじめに

輸入ビジネスを展開する企業にとって、関税の適切な納税はコンプライアンス遵守の観点から極めて重要です。特に、輸入貨物の課税価格を決定する際には、仕入書(インボイス)に記載された価格だけでなく、輸入者が無償で提供した金型の費用や意匠権の使用料など、様々な加算要素を考慮しなければなりません。

これらの費用を個々の貨物に案分して申告する作業は煩雑になりがちですが、これを効率化する仕組みとして「一括加算」という制度が存在します。本稿では、実務担当者が直面しやすい課題を踏まえ、一括加算制度の概要から具体的な適用要件、法的根拠に至るまで、専門的な視点から解説いたします。

1 相談事例

相談者:株式会社C(日本国内の家電製品輸入販売会社)

担当者:貿易部 高橋様(仮名)

相談内容:「当社では、ベトナムの製造委託先に対して、製品製造用の金型を無償で提供しています。この金型の製作費用は数千万円に上りますが、対象となる製品は今後2年間にわたり、数百回に分けて輸入される予定です。税関からは、金型費用を各輸入申告の際に加算するように指導を受けていますが、毎回の輸入数量に応じて費用を案分して計算するのは事務負担が非常に大きく、誤入力のリスクも懸念しています。何か効率的に申告できる方法はないでしょうか。また、その際の注意点についても教えてください」

2 一括加算制度の定義と基本的な概念

一括加算とは、複数の輸入原因に基づいて輸入される貨物に関わる加算要素の額を、特定の輸入貨物の課税価格に一括して算入することができる制度です。

通常、関税定率法第4条第1項の規定に基づき、輸入貨物の課税価格を決定する際には、買手が無償または安価で提供した物品や役務の費用(生産支援費用)などの加算要素がある場合、原則としてその費用を個々の輸入貨物の数量や価格に応じて案分し、それぞれの輸入申告時に加算しなければなりません。しかし、取引が長期にわたる場合や輸入回数が極めて多い場合、この按分計算は実務上大きな負担となります。そこで、事務負担の軽減と申告の正確性を確保するために、特定の要件を満たす場合に限り、便宜上、特定の回(例えば初回の輸入時など)の申告に全額をまとめて加算することが認められています。これが一括加算制度という仕組みになります。

3 一括加算が認められる費用とその要件

一括加算の対象となる費用は、その性質によって大きく二つのカテゴリーに分類され、それぞれ適用要件が異なります。

(1)関税定率法第4条第1項第3号に掲げる費用

これは、輸入者が輸入貨物の生産に関連して直接または間接に、無償または安価で提供した物品や役務の費用を指します。

具体的には、以下のものが該当します。

① 輸入貨物に組み込まれている材料、部分品またはこれらに類するもの

② 輸入貨物の生産のために使用された工具、金型、ダイスまたはこれらに類するもの

③ 輸入貨物の生産の過程で消費された材料

④ 輸入貨物の生産に関する技術、設計、工案、工芸および意匠(日本国内で開発されたものを除く)

【これらの費用について一括加算が認められるための要件】

輸入者から希望する旨の申し出があり、かつ、課税上その他特に支障がないと認められるとき

(2)上記以外の費用(ロイヤリティ、運賃、保険料など)

関税定率法第4条第1項第1号、第2号、第4号および第5号に規定される費用も、一定の条件下で一括加算が可能です。

① 運賃および保険料

② 仲介手数料

③ 容器や包装の費用

④ ロイヤリティ(特許権、商標権の使用料など)

⑤ 売手に帰属する収益

【これらの費用について一括加算が認められるための要件】

「輸入者から希望する旨の申し出があり、かつ、課税上その他特に支障がないと認められるとき」という条件に加え、「個々の輸入貨物への案分が困難と認められるもの」である必要があります

4 一括加算の手続きと包括評価申告の重要性

一括加算を利用するためには、単に輸入申告時に合計額を入力するだけでは足りません。原則として、あらかじめ「包括評価申告書」を税関長に提出し、その承認を得ておく必要があります。

包括評価申告とは、同一の相手方との間で同一の内容の取引が継続的に行われる場合に、一定期間(原則2年間)の輸入申告において適用される評価の基礎事項をあらかじめ申告しておく制度です。一括加算を希望する旨は、この包括評価申告書の中で明示することになります。

【一括加算適用のための実務フロー表】

|ステップ|実施事項|留意事項|

|1 費用の把握|加算すべき総額の確定|契約書や領収書に基づき正確に算出|

|2 案分の検討|個別の貨物への案分可否を確認|案分が困難な理由を明確にする|

|3 包括評価申告|税関への申告書の提出|一括加算を希望する旨を記載|

|4 税関の審査|提出書類の審査と受理|追加資料の提出を求められる場合あり|

|5 輸入申告|特定の貨物の申告時に加算|包括評価申告の受理番号を入力|

|6 書類の保存|根拠資料の7年間保存|事後調査への備えとして必須|

5 一括加算制度を利用するメリットとデメリット

本制度は便利ではありますが、利用にあたっては利点と欠点の両方を理解しておく必要があります。

(1)メリット

① 事務負担の軽減:毎回の輸入申告ごとに複雑な案分計算を行う必要がなくなる点

② 計算ミスの防止:分母(輸入予定数量)の変動に伴う単価計算の誤りを回避できる点

③ 納税管理の簡素化:多額の加算要素を早期に納税することで、後々の管理が楽になる点

(2)デメリット

① 資金繰りへの影響:将来輸入される貨物の分まで関税・消費税を先払いすることになるため、キャッシュフローを圧迫する可能性がある点

② 過払いのリスク:輸入計画が中止になった場合、一括して支払った税金の還付手続き(更正の請求)が必要となり、手続きが非常に煩雑である点

③ 厳格な立証責任:一括加算の対象となる費用の総額が確定していることを証明する高い透明性が求められる点

6 事後調査におけるリスクと対応策

税関による事後調査において、評価申告(一括加算を含む)は重点的な確認項目となります。不適切な処理が発覚した場合、多額の追徴課税を課される恐れがあります。

【よくある指摘事例】

① 一括加算した費用の総額に、一部の付随費用(設計変更費など)が含まれていなかったケース

② 包括評価申告の有効期限が切れているにもかかわらず、一括加算を継続していたケース

③ 一括加算を適用した貨物とは別のルートで同一の金型を使用した製品を輸入し、二重計上または申告漏れが生じたケース

これらに対する防御策としては、法的な裏付けを持った書面作成と、経理データとの整合性のチェックが不可欠です。特に、関税定率法施行令第1条の5(加算要素の細目)に基づく費用の範囲設定には専門的な判断が求められます

7 まとめ

一括加算制度は、輸入実務における事務負担を軽減し、申告の透明性を高める有効な手段です。しかし、その適用には関税法および関税定率法の深い理解と、税関との適切なコミュニケーションが欠かせません。特に、生産支援費用やロイヤリティの取り扱いは、一歩間違えると巨額の過少申告に繋がりかねないリスクを秘めています。自社の取引が一括加算の要件を満たすのか、あるいは包括評価申告をどのように進めるべきかについて、確かな知見に基づいた判断が必要となります

【弁護士へのご相談をご希望の方へ】

当事務所の代表弁護士は、輸出入および通関手続きに関する国家資格である「通関士」の資格を有しております。法的なアドバイスだけでなく、実際の申告実務や事後調査の現場に即した具体的なアドバイスを提供することが可能です。

「一括加算を利用したいが手続きが不安だ」、「過去の加算申告に誤りがないかチェックしてほしい」、「税関から事後調査の通知が来たので立ち会ってほしい」といったご要望がございましたら、どうぞご遠慮なく当事務所までお問い合わせください。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入取引における評価申告制度

2021-03-24

0 はじめに

輸入取引を継続的に行っている企業や個人事業主の方々にとって、税関への適正な申告は事業の根幹を支える重要な責務の一つとなります。その中でも「評価申告」という制度は、輸入貨物の課税価格を正しく決定するために極めて重要な役割を果たしています。

しかしながら、その内容の複雑さから、正しく理解されないまま申告漏れが生じてしまうケースも少なくありません。本稿では、評価申告の基本的な仕組みから、具体的な手続き、そして申告を怠った際のリスクについて、実例を交えながら詳細に解説いたします。

1 相談事例

相談者:A株式会社(日本国内の精密機械輸入販売業者)

担当者:物流管理部 佐藤様(仮名)

相談内容:「当社では、アメリカに拠点を置く親会社から精密部品を継続的に輸入しております。これまで、関税の申告は仕入書(インボイス)に記載された価格に基づいて行ってきました。しかし、今期から親会社に対して、部品の輸入価格とは別に、技術提供に対する『ロイヤリティ』や、製造に使用する金型の費用を別途支払うことになりました。このような場合、これまでの申告方法のままで問題ないのでしょうか。また、税関から『評価申告が必要ではないか』とのアドバイスを受けたのですが、具体的にどのような手続きを行えばよいのか、また、申告を行わない場合にどのようなペナルティがあるのかについて詳しく教えてください」

2 評価申告の定義と基本的な仕組み

評価申告とは、輸入貨物の関税を算出する基礎となる「課税価格」が、仕入書に記載された価格だけでは正しく計算できない場合に、その計算の根拠となる事項を税関に対して申告する制度を指します。 関税の額は、原則として「課税価格」に「関税率」を乗じて算出されます。この課税価格を決定するためのルールは、関税定率法第4条以下に厳格に定められています。

多くの輸入取引では、仕入書の価格がそのまま課税価格の基礎となりますが、特定の費用が仕入書価格に含まれていない場合や、売手と買手の間に特殊な関係がある場合には、別途の計算が必要となります。 評価申告の根拠となる法令は、関税法第7条および関税法施行令第4条となります。関税法第7条では、輸入申告の際に課税標準となるべき数量や価格を申告しなければならないと定めており、その具体的な方法として評価申告が位置付けられています。

3 評価申告が必要となる具体的なケース

評価申告が必要となるのは、主に「現実支払価格」に加算すべき費用がある場合や、原則的な課税価格の決定方法(取引価格による方法)が適用できない場合です。具体的なケースとしては以下の通りとなります

(1)加算要素がある場合

関税定率法第4条第1項各号に基づき、以下の費用が輸入価格に含まれていない場合には、これらを加算して課税価格を算出しなければなりません

① 運賃および保険料(輸入港到着までのもの)

② 仲介手数料や手数料(買付手数料を除く)

③ 容器や包装の費用

④ 買手が無償または安価で提供した物品や役務の費用(生産支援費用)

⑤ ロイヤリティ(特許権、意匠権、商標権などの使用料)

⑥ 売手に帰属する収益(リセール・プロシード)

(2)特殊関係がある場合

輸入取引における売手と買手の間に、親子会社関係や一定の出資関係などの「特殊関係」がある場合です。この関係が取引価格に影響を及ぼしていると判断される場合には、仕入書価格をそのまま課税価格として認めることができず、別の方法で算定する必要があります。

(3)特別な事情がある場合

取引に際して、価格を決定できないような条件が付されている場合や、輸入後の貨物の処分に制限がある場合なども含まれます

4 評価申告の種類と手続

評価申告には、大きく分けて「個別評価申告」と「包括評価申告」の2種類が存在します。輸入取引の実態に合わせて、適切な方法を選択することが求められます。

【評価申告の種類と比較表】

|項目|個別評価申告|包括評価申告|

|適用範囲|輸入申告ごとに行う申告|同一の内容の取引が継続する場合の申告|

|提出時期|輸入(納税)申告の際|輸入申告の前にあらかじめ提出|

|有効期間|当該輸入申告のみ有効|原則として受理の日から2年間|

|メリット|取引ごとに正確な判断が可能|毎回の書類提出の手間を軽減できる|

|デメリット|輸入の都度書類作成が必要|取引内容に変更があれば変更届が必要|

|主な利用場面|スポット取引や内容が頻繁に変わる場合|親子会社間の継続的なロイヤリティ契約等|

個別評価申告は、文字通り輸入申告のたびに評価申告書を提出する方法です。

一方で、包括評価申告は、あらかじめ税関から承認を受けることで、有効期間内(通常2年間)であれば、個別の申告時に評価申告書の提出を省略できる制度です。

5 評価申告を怠った際のリスクとペナルティ

評価申告が必要であるにもかかわらず、これを適切に行わずに適切な輸入申告ができていなかった場合、税関の事後調査などによって指摘を受けることになります。その際のリスクは極めて大きく、以下のような不利益を被る可能性があります

(1)追徴課税の発生

本来支払うべきであった関税および消費税の不足分を一括で納付しなければなりません。特にロイヤリティなどの支払額が大きい場合、数年分を遡って徴収されるため、企業のキャッシュフローに甚大な影響を与えることになります

(2)付帯税の賦課

不足税額に加えて、過少申告加算税(原則10%、悪質な場合は重加算税35%〜40%)が課せられます。また、納期限からの経過日数に応じて延滞税も発生します

(3)企業の社会的信用の失墜

コンプライアンス遵守が求められる現代において、税務申告の不備は企業イメージの低下に直結します

6 実務上の留意点とアドバイス

評価申告を行うにあたっては、以下の点に特に注意が必要です

(1)契約書の精査

ロイヤリティ契約や技術援助契約を締結する際は、その内容が輸入貨物とどのように関連しているかを明確に把握する必要があります。関税定率法施行令などにおいて、加算すべきロイヤリティの範囲が定められていますが、その解釈には専門的な知識が不可欠です

(2)無償提供資産の把握

買手が売手に対して、原材料や金型、デザインなどを無償または安価で提供している場合、その費用を適切に課税価格に算入しなければなりません。これを「生産支援費用(アシスト)」と呼びますが、会計上の減価償却費などを基に計算を行うため、経理部門との連携が重要となります

(3)包括評価申告の有効活用

継続的な取引がある場合は、包括評価申告を行うことで実務負担を大幅に軽減できます。ただし、契約内容に変更があった場合や、有効期間が満了する前には、遅滞なく手続きを行う必要があります

(4)事後調査への備え

税関による事後調査は、通常5年から10年に一度の頻度で行われます。

その際、評価申告の妥当性が厳しくチェックされます。申告の根拠となった資料や計算書類は、法定の期間(原則7年間)適切に保存しておくことが法律で義務付けられています

7 まとめ

評価申告は、輸入取引における適正な納税を実現するための不可欠なプロセスです。特に近年、グローバル企業の取引形態が複雑化しており、単純な仕入書価格だけでは判断できないケースが増加しています。関税法や関税定率法といった専門性の高い法律に基づいた判断が必要となるため、少しでも不安がある場合には、専門家への相談を強くお勧めいたします。

弁護士へのご相談をご希望の方へ 当事務所の代表弁護士は、輸出入および通関手続に関する国家資格である「通関士」の資格を保有しております。

法務と実務の両面から、輸出入トラブルや通関手続きに関する幅広いご相談に対応することが可能です。輸出入や通関手続にお悩みやご不明な点がございましたら、どうぞご遠慮なく当事務所までお問い合わせください。

法令を遵守しつつ、貴社の円滑な海外ビジネスをサポートいたします

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本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入取引における「売手」と「買手」

2021-03-23

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は国内でアパレルショップを経営しております。この度、イタリアのメーカーから直接商品を購入することになりましたが、実際の契約手続きや代金の支払いは、香港にある仲介会社を通じて行っています。貨物はイタリアから日本へ直送されますが、インボイス(仕入書)の発行元は香港の会社です。この場合、税関への輸入申告において、誰を『売手』とし、誰を『買手』として申告すべきなのでしょうか。また、仲介手数料が発生している場合、それも課税価格に含まれるのでしょうか。正しい申告を行わなかった場合、後日税関の事後調査で指摘を受けるのではないかと不安を感じております。専門的な視点から、売手と買手の正確な認定基準について詳しく教えてください」

このような複雑な商流を伴う取引は、現代の国際貿易において決して珍しいものではありません。しかし、輸入通関の土台となる課税価格を決定するためには、まず「誰と誰の間の取引が、法的な輸入取引に該当するのか」を正確に見極める必要があります。

本日は、関税定率法に基づく売手と買手の考え方について、具体例を詳しく解説いたします。

1 原則的な課税価格の決定方法と売手・買手の定義

輸入貨物の課税価格を算出する際の最も基本的なルールは、関税定率法第四条第一項に定められています。

「輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物の輸入取引(買手が本邦に住所、居所、事務所、事業所その他これらに準ずるものを有しない者であるものを除く。)がされた場合において、買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加算した価格とする」 この条文が示す通り、課税価格は「買手」から「売手」へ支払われる価格がベースとなります。したがって、実務の第一歩として、この両者を正しく特定することが不可欠である点

(1)売手及び買手の本質的な意義

輸入取引における売手及び買手とは、単に書類上に名前が記載されている者ではなく、「実質的に自己の計算と危険負担の下に輸入取引をする者」を指します。

具体的には、以下のような役割と責任を負っているかどうかが判定の基準となります。

①自ら輸入貨物の品質、数量、価格、納期などの取引条件を交渉し、決定していること

②貨物の瑕疵(不良品)や数量不足、輸送中の事故、あるいは代金の回収不能といった経済的なリスクを自らの責任で負担していること

典型的な取引では、海外の輸出者が売手、日本の輸入者が買手となりますが、必ずしも「荷送人=売手」「荷受人=買手」とは限らない点に注意が必要です。

(2)具体例:仲介者が介在する場合の判定

冒頭の相談事例のように、メーカーと国内業者の間に仲介者が入る場合、その仲介者が単なる「代理人」なのか、それとも自らリスクを負う「売手」なのかによって、課税価格の計算根拠が変わります。仲介者が在庫リスクを負わず、単に手数料を受け取って取引を仲介しているだけであれば、売手は元のメーカー、買手は国内業者となります。この場合、買手から売手に支払われる代金が課税価格の基礎となります。

2 「輸入(申告)者」と「売手・買手」の関係

実務において混同されやすい概念に「輸入(申告)者」があります。輸入者とは、関税法上の用語であり、一般的には保税地域から貨物を引き取ろうとする者を指します。

(1)輸入者の資格

輸入者には、売手であっても買手であってもなることができます。

例えば、海外の売手が自ら輸入手続きを行い、日本国内の倉庫まで貨物を届ける(DDP条件など)場合、売手が輸入者となることもあります(税関事務管理人等の適正な手続をとる必要はあります。)。しかし、誰が輸入者であるかに関わらず、課税価格の算出の基礎となるのは、常に「輸入取引における売手と買手の間の取引価格」である点には注意が必要です。

(2)連続する転売取引がある場合

貨物が日本に到着するまでの間に、A社(外国)からB社(外国)、さらにB社からC社(日本)へと転売が繰り返されることがあります。この場合、どの取引が「本邦に到着させるために行われた輸入取引」に該当するかを判定しなければなりません。基本的には、日本への輸出を目的として締結された最後の売買契約が輸入取引とみなされます。この判定を誤ると、不当に低い価格や、逆に過大な価格で申告してしまうリスクが生じるため、慎重な検討が求められる点

以下に、売手と買手の認定における主要な確認項目を整理した図表を掲載いたします。

【表1 売手・買手の認定における判断基準】

項目名/具体的な確認内容/判定への影響

取引交渉の主体/価格や数量を誰が決定しているか/主導権を持つ者が当事者となる

代金の支払義務/誰が売手に対して送金を行うか/支払う者が買手となる

貨物の損傷リスク/輸送中の事故の損失を誰が被るか/リスク負担者が当事者となる

瑕疵担保責任/不良品の返品や交換を誰が要求するか/責任を追求する者が買手となる

転売の有無/輸入後に誰が誰に対して販売するか/最終的な輸出目的取引を特定する

3 実務上のトラブル事例と法的リスク

売手や買手の認定を誤った状態で輸入申告を継続すると、後日の税関事後調査において多額の追徴課税を受ける可能性があります。

(1)価格の過少申告リスク

例えば、実際には買手が売手のために別途負担している費用があるにもかかわらず、インボイスに記載された表面上の金額だけで申告してしまった場合、それは過少申告とみなされます。関税法に基づき、不足分の関税・消費税に加え、過少申告加算税や延滞税が課されることとなる点

(2)特殊関係の影響

売手と買手の間に、親子会社のような「特殊関係」がある場合、その関係によって取引価格が恣意的に低く設定されていないかが厳しくチェックされます。関税定率法第四条第二項の規定により、特殊関係が価格に影響を与えていると判断された場合、実際の取引価格を課税価格として認めてもらえないことがあります。

【表2 輸入取引に関連する各主体の役割比較】

呼称/法的な定義や役割/課税価格決定における位置付け

売手/自己の計算とリスクで貨物を販売する者/価格の受領者であり計算の基礎

買手/自己の計算とリスクで貨物を購入する者/価格の支払者であり計算の主体

荷送人/貨物の発送手続きを行う実務上の主体/必ずしも売手とは限らない

荷受人/貨物の受け取りを行う実務上の主体/必ずしも買手とは限らない

輸入(申告)者/税関に対して輸入の申告を行う者/買手または売手等がなり得る

4 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の決定は、単なる事務的な手続きではなく、複雑な法令が絡み合うプロセスです。当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、貿易実務で生じるトラブルに対して、アドバイスを提供することが可能です。

特に、以下のような課題でお困りの際には、お気軽にお問い合わせください。

①複雑な仲介取引や連続取引における「売手」及び「買手」の正確な法制度上の認定

②税関の事後調査に対する立ち会いおよび法的な主張の構成

③特殊関係にある企業間の取引価格の妥当性に関するリーガルオピニオンの作成

④関税法違反等で貨物が差し押さえられた場合の権利救済手続き

⑤国際売買契約書の作成・レビューを通じた、通関リスクの未然防止

輸入手続き上の疑問や不安を放置することは、将来的な経営リスクを抱え続けることと同義です。少しでもご不安な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

輸入申告時の外国為替相場の決定ルール

2021-03-22

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私はアメリカから精密機械を継続的に輸入している商社の担当者です。昨今の急激な為替変動に頭を悩ませております。先日、輸入申告を行った際、申告当日のニュースで報じられていた実勢のドル円相場と、税関への申告に用いられた換算レートが大きく乖離していることに気づきました。社内の経理担当者からは、なぜ実際の市場レートではなく別のレートが適用されているのか、その法的な根拠と仕組みを説明するように求められています。また、為替予約を締結している場合であっても、税関への申告には公示された相場を使用しなければならないのでしょうか。専門的な視点から、正しい通貨換算のルールを教えてください」

輸入ビジネスにおいて、貨物の代金が外国通貨で表示されている場合、その価格を日本円に換算する工程は避けて通れません。この換算に用いられる相場は、実は申告当日の市場相場とは異なる独自のルールに基づいて決定されています。本稿では、輸入申告価格等の通貨換算に用いられる外国為替相場の仕組みについて、法令の規定を交えながら解説いたします。

1 通貨換算の原則的な考え方

輸入貨物の課税価格を決定する際、仕入書(インボイス)に表示された外国通貨を本邦通貨(日本円)へ換算する必要が生じます。この換算に用いるべき相場については、関税定率法第四条の七において、以下のように明確に規定されています。

「課税価格を計算する場合において、外国通貨により表示された価格の本邦通貨への換算は、その輸入貨物の輸入申告の日(保税蔵置場等に置かれた貨物に係る承認の日等を含む)における外国為替相場によるものとする」

この規定により、輸入者は自分に都合の良い日の相場を任意に選択することはできず、必ず輸入申告の日という特定の時点を基準とした相場を用いなければならないという法的義務が課されています。

2 税関長が公示する相場の具体的な仕組み

それでは、「輸入申告の日における外国為替相場」とは具体的にどのような数値を指すのでしょうか。その詳細な取り扱いについては、関税定率法施行規則第一条において次のように定められています。

「法第四条の七に規定する外国為替相場は、輸入申告の日の属する週の前々週における実勢外国為替相場の当該週間の平均値に基づき、税関長が公示する相場とする」

実務において「公示相場」と呼ばれるこの数値は、以下の三つのステップを経て決定されます。

(1)前々週の市場相場の平均を算出

例えば、ある週の月曜日から日曜日までの銀行間為替市場における実勢相場の平均値を計算いたします。

(2)税関長による公示

上記で算出された平均値が、翌々週(すなわち来週の次の週)の一週間を通じて適用されるレートとして、事前に公示されます。

(3)一週間固定での適用

一度公示された相場は、その週の月曜日から日曜日まで変更されることなく適用されます。そのため、申告当日に市場で急激な円安や円高が進んだとしても、申告に用いるレートは変動いたしません。

この制度は、輸入者が事前に納税額を予測しやすくし、また全国の税関で統一的な課税を行うための安定性を確保することを目的としています。

【表1 為替相場の決定スケジュールと適用時期の概念】

対象期間の区分/期間の内容/実施される事項

計算基準期間/輸入申告の日の属する週の前々週/実勢相場の週間平均値を算出

公示期間/輸入申告の日の属する週の前週/税関長が次週の適用相場を公示

適用期間/輸入申告の日の属する週/公示された相場を一律に適用

3 通貨の種類による算出基準の違い

公示相場を決定するための基礎となる市場データの参照先も、法令によって細かく規定されています。これは、公正な価格評価を維持するための重要な基準です。

(1)アメリカドルの場合

本邦の外国為替市場における銀行間の直物取引の中心相場(翌々営業日渡し)が基準となります。

(2)アメリカドル以外の通貨の場合

ニューヨーク外国為替市場等における銀行間の直物取引の中心相場に類するアメリカドルの相場により裁定した相場が用いられます。

以下に、主要な通貨ごとの算出の基礎となる市場を整理いたしました。

【表2 通貨別の換算基準市場一覧】

通貨の種類/参照される主要な市場/相場の種類

アメリカドル/東京外国為替市場/銀行間直物取引中心相場

欧州ユーロ/ニューヨーク外国為替市場等/対ドルの裁定相場

中国人民元/ニューヨーク外国為替市場等/対ドルの裁定相場

その他指定通貨/主要な国際為替市場/対ドルの裁定相場

4 実務上の留意点と為替予約の取り扱い

輸入実務において特によくある誤解の一つが、為替予約との関係です。

企業が銀行と為替予約を締結し、実際に支払う際の円貨額が確定していたとしても、税関への申告においてはその予約レートを使用することは認められません。

(1)為替予約レートの否認

関税評価制度は、あくまで客観的な基準に基づくべきであるという国際的なルール(関税評価協定)に準拠しています。特定の企業が締結した個別の予約レートを認めてしまうと、納税者間での公平性が保てなくなるため、必ず公示相場を用いなければならないという点

(2)端数処理の規定

為替換算の結果、一円未満の端数が生じた場合には、関税定率法施行規則等に基づき、通常は小数点以下二位までを算出してそれ未満を切り捨てる等の詳細な処理ルールが存在いたします。

(3)公示相場の確認方法

公示相場は、各税関の窓口に掲示されるほか、財務省税関の公式ウェブサイトにおいても公開されています。輸入者は申告前に、必ず当該週の正しいレートを確認しておく必要があります。

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

為替相場の適用という一見単純なルールであっても、大規模な取引や長期的な契約においては、わずかな認識の相違が多額の納税額の差となって現れます。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、法務と実務の双方からサポートを提供することが可能です。

具体的には、以下のような課題に対して専門的な知見を提供いたします。

①為替変動リスクを考慮した適正な関税申告価格の算定支援

②特殊な通貨や、公示相場が存在しないマイナー通貨での取引への対応

③税関による事後調査において、過去の換算レートの妥当性を指摘された際の弁護

④包括的な評価申告制度を活用した、為替処理の効率化とコンプライアンスの強化

⑤為替予約やデリバティブ取引と関税評価の整合性に関するリーガルオピニオン

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(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

個人的使用に供される輸入貨物の課税価格

2021-03-21

0 はじめに

まずは,当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は海外の高級ブランドの公式オンラインサイトから,自分自身で使用するために五十万円の腕時計を購入いたしました。個人輸入の場合,実際に支払った小売価格をそのまま申告するのではなく,卸売価格に引き下げて関税を計算できるという特例があると聞きました。この特例は,どのような場合に適用されるのでしょうか。また,知人へのプレゼントとして輸入する場合や,帰国時に別送品として送る場合でも適用されるのか教えてください。さらに,商売目的の輸入とみなされないための注意点についても,専門的な見地から詳しく解説をお願いいたします」

個人の趣味や生活のために海外から物品を輸入するケースは,電子商取引の普及により飛躍的に増加しております。このような個人的な使用を目的とした輸入については,一般の商業輸入とは異なる特別な課税価格の算定方法が認められています。本稿では,関税定率法に基づく個人的使用の特例について,法令の規定を交えて詳しく解説いたします。

1 課税価格決定の原則的ルール

輸入貨物の課税価格は,原則として,その貨物の輸入取引がされた場合において,買手から売手に対し現実に支払われた,または支払われるべき価格である「決定価格」に基づいて算出されます。

これは関税定率法第四条第一項に規定されている原則です。通常の商業取引では,卸売段階で購入された貨物は卸売価格,小売段階で購入された貨物は小売価格をベースとして課税価格を決定いたします。しかし,個人が自分自身の生活で使用するために小売価格で購入した貨物に対し,そのままの価格で課税することは,商業目的で大量に輸入する業者との比較において,税負担が重くなりすぎるという懸念があります。

2 個人的に使用する貨物の課税価格の特例

そこで,関税定率法第四条の六第二項等において,個人的な使用に供される貨物に係る課税価格決定の特例が設けられています。

(1)特例の対象となる貨物

本条の対象となるのは,以下のいずれかに該当する貨物です。

①本邦に入国する者が携帯して輸入する貨物

②その輸入取引が小売段階によるものと認められる貨物で,輸入者の個人的な使用に供されると認められるもの

③日本に居住する者に寄贈される貨物で,その寄贈を受ける者の個人的な使用に供されるもの

これらは,たとえ小売価格で購入されたものであっても,その課税価格は「通常の卸売取引の段階でされたとした場合の価格」により決定することとされています。

(2)通常の卸売取引の段階の意義

ここでいう通常の卸売取引の段階とは,国内の卸売業者が再販売等の商業目的のために,輸入貨物と同種の貨物を輸入する場合の取引段階を指します。

実務上,税関ではこの「卸売価格」を算出する際,実際の小売価格に「〇.六」を乗じた金額,すなわち小売価格の六十パーセントを課税価格とする運用を行っています。

以下に,特例が適用される具体的なケースを整理した流れを掲載いたします。

【表1 個人特例の適用対象となるケース一覧】

区分の詳細/具体的な形態/課税価格の計算方法

携帯品 海外旅行の帰国時に本人が持ち帰る荷物 小売価格の六十パーセント

別送品 入国後に届くように別途送付した荷物 小売価格の六十パーセント

通信販売 海外サイトから自分用に直接購入した物品 小売価格の六十パーセント

個人依頼 海外の知人に頼んで小売店で買ってもらった物 小売価格の六十パーセント

寄贈品 海外から個人的なプレゼントとして届く荷物 小売価格の六十パーセント

3 適用範囲に関する詳細な法的定義

この特例の適用範囲については,関税定率法施行令や基本通達において詳細に定義されています。

(1)携帯品と別送品の取り扱い

「本邦に入国するものにより携帯して輸入される貨物」には,関税定率法施行令第十四条に規定される手続きを経て,別送して輸入される貨物も含まれます。

これは,帰国時に空港で「別送品申告書」を提出することで,後から届く荷物についても本人の携帯品と同様の特例が受けられる仕組みです。

(2)通信販売等の小売取引

「その他その輸入取引が小売取引の段階によるものと認められる貨物」とは,一般消費者が海外のインターネットサイトを通じて購入する場合や,海外の知人に依頼して店舗で購入してもらう場合を指します。

(3)寄贈品の取り扱い

自分でお金を払って購入したものではなく,海外の親族や友人から無償で送られてきた寄贈品であっても,それが個人的な使用目的であれば,卸売価格への引き下げが適用されます。この場合,貨物の市場価値(小売価格相当)の六十パーセントが課税価格となります。

4 実務上の留意点とリスク管理

この特例は非常に有利な制度ですが,適用にあたっては厳格な条件があります。

(1)個人的使用の認定

最も重要なのは「個人的な使用に供される」と認められるかどうかという点です。

輸入した貨物を日本国内で販売する目的がある場合や,事業のために使用する場合は,たとえ一個の輸入であっても「商業輸入」とみなされ,特例は適用されません。卸売価格への引き下げが認められず,実際の購入価格全額に対して課税されます。

(2)数量と頻度のチェック

同一の物品を短期間に大量に輸入したり,頻繁に輸入を繰り返したりしている場合,税関から販売目的を疑われる可能性があります。この際,個人的な使用であることを客観的に説明できないと,一般の商業通関として扱われるリスクがある点

(3)虚偽申告の禁止

関税を安くするために,実際よりも低い価格をインボイスに記載させたり,個人的な贈り物と偽って商業貨物を輸入したりすることは,関税法違反(脱税)に問われる重大な違法行為です。

以下に,個人輸入と商業輸入の主な違いを比較表としてまとめました。

【表2 個人輸入と商業輸入の比較】

比較項目/個人的な使用(特例適用)/商業目的・販売目的(原則通り)

課税価格のベース/小売価格の六十パーセント/実際の取引価格(卸売価格等)

法令の適用条文/関税定率法第四条の六第二項/関税定率法第四条第一項

他法令の規制/一部免除や緩和がある場合あり/食品衛生法や薬機法等が厳格に適用

必要書類/インボイスや領収書等/インボイス,契約書,各種許認可証等

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

個人的な使用を目的とした輸入であっても,高額な物品や希少な貨物を取り扱う場合には,税関との見解の相違が生じることが少なくありません。特に,個人輸入を装った商業輸入ではないかという疑義をかけられた場合,適切な法的主張を行わなければ,多額の追徴課税や加算税を課される恐れがあります。当事務所は,代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しております。法律の専門家としての知見と,通関実務の視点を融合させ,以下のような課題に対して強力なサポートを提供いたします。

①輸入貨物が「個人的な使用」に該当するかどうかの法的な判定と助言

②税関による事後調査や確認に対する適切な説明資料の作成支援

③別送品申告の不備や手続き上のミスに関する救済

④商業輸入とみなされた場合の更正処分に対する不服申立て手続き

⑤海外の販売店とのトラブルや契約上の問題解決

輸出入や通関上のトラブルでお悩みの方,あるいはご自身の輸入手続きが適正かどうか不安を感じておられる方は,ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。通関士の資格を持つ弁護士だからこそできるリーガルサービスをご提供いたします。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

変質又は損傷した輸入貨物の課税価格の決定

2021-03-15

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私はフランスから高級なヴィンテージワインを数百本輸入いたしました。しかし、本邦の港に到着して荷卸しをした際、輸送中の温度管理の不手際により一部のボトルで液漏れや品質の劣化が生じていることが判明いたしました。また、数ケースについては梱包の破損によりボトルが割れてしまっています。輸入契約の段階では、これらの不測の事態による値引き等は想定されておりません。このような場合、本来の購入価格のままで関税を支払わなければならないのでしょうか。損傷して価値が下がった分を考慮して、申告価格を下げることは可能でしょうか。法的な根拠と手続きの流れについて詳しく教えてください」

国際貿易においては、輸送中の事故や環境の変化により、貨物が本来の品質を維持できないまま到着することが稀にあります。このような場合、税関への申告価格をどのように設定すべきかは、輸入者にとって大きな関心事です。本稿では、変質又は損傷が生じた貨物の課税価格の決定方法について、法令に基づき詳しく解説いたします。

1 変質又は損傷があった場合の原則的な課税価格の考え方

輸入貨物の課税価格は、原則として実際の取引価格である現実支払価格を基礎として算出されます。しかし、輸入申告の時までに貨物が変質したり損傷したりしている場合には、その価値が低下していることを考慮する必要があります。関税定率法第四条の五の規定によれば、輸入申告時までに変質又は損傷があったと認められる貨物については、変質又は損傷がなかったと仮定して計算される課税価格から、その減価に相当する額を控除した価格を課税価格とすることができます。

この規定の目的は、輸入者が実際に受け取る価値に見合った適正な関税を課すことにあります。

2 適用を受けるための要件と注意点

この例外的な決定方法を適用するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。

(1)輸入取引の条件の確認

関税定率法第四条の五の適用を受けるためには、その輸入取引の条件から見て、変質又は損傷が想定外の事態であることが求められます。もし、輸入契約において「一定の割合で破損が生じることを見越してあらかじめ低価格で設定されている」場合や、「現状渡しの条件で、損傷のリスクが買手に全面的に帰属し、かつそれが価格に反映されている」ような場合には、本条の適用はありません。この場合、当初の契約価格そのものが課税価格の基礎となる点に注意が必要です。

(2)輸入申告時までの発生であること

本条が対象とするのは、輸入申告の時までに生じた変質又は損傷です。貨物が日本に到着した後、保税地域等で保管されている間に生じた損傷も含まれます。輸入許可が下りた後に発生した損傷については、別の規定である関税定率法第十条の減税措置の対象となるため、混同しないように整理しておく必要があります。

以下に、適用される条文の違いを整理した比較表を掲載いたします。

【表1 変質又は損傷の発生時期と適用法令の比較】

適用法令/発生時期の区分/課税価格・税額の処理方法

関税定率法第四条の五/輸入申告時まで/減価額を控除して課税価格を決定

関税定率法第十条第一項/輸入許可前(申告後)/算出された関税額から減税

3 減価に相当する額の算定方法

「減価に相当する額」とは、損傷等によって失われた貨物の価値を金額で評価したものです。

これを客観的に証明するためには、合理的かつ妥当な数値を用いる必要があります。実務上、以下の書類が有力な証拠資料となります。

①公認検定機関(サーベイヤー)が発行する損害検定報告書

②損傷部分の修繕に要する費用の見積書や請求書

③保険会社に提出した損害賠償請求の書類 ・売手との間で行われた値引き交渉の記録やクレジットノート

特に、第三者機関である公認検定機関による損害見積書は、税関に対する説明において非常に高い証拠力を持ちます。単に輸入者が主観的に「価値が半分になった」と主張するだけでは認められない可能性が高いです。

4 具体的な申告手続きの流れ

変質又は損傷した貨物を申告する際の実務的なステップは以下の通りです。

【表2 損傷貨物の輸入申告における実務フロー】

ステップ/実施内容/留意事項

1 損傷の発見と確認 貨物の荷卸し時に状態を写真等で記録、証拠の確保が最優先

2 損害額の算定 検定機関への依頼や修理見積の取得 客観的な数値の算出

3 税関への事前相談 決定方法の妥当性について担当官と協議 スムーズな審査のため

4 輸入申告の実施 減価額を控除した価格で申告 備考欄に事情を記載

このプロセスにおいて、当初のインボイス価格からどのように計算して申告価格を導き出したのか、その計算過程を明確に記した資料を添付することが重要です。

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の変質や損傷に伴う課税価格の決定は、事実関係の立証と法令の解釈が複雑に絡み合う領域です。当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、法務と実務の両面からサポートを提供することが可能です。特に、高額な貨物や精密機器、品質変化の判断が難しい食品・化学品等の事案において、以下のような業務を通じて貴社のビジネスを支援いたします。

①関税定率法第四条の五の適用が可能かどうかのリーガルオピニオンの作成

②税関当局に対する合理的かつ説得力のある説明資料の構築支援

③公認検定機関や通関業者との連携による証拠資料の整備

④税関からの価格否認や更正処分に対する不服申立てや訴訟対応

⑤輸送契約や保険契約と連動した、トータルでの損害回避アドバイス

輸入通関上のトラブルや、損傷貨物の取り扱いに関してご不安な点がありましたら、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。専門的な知見に基づき、適正な納税と貴社の利益保護のために尽力いたします。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

製造原価に基づく課税価格の決定

2021-03-12

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は、海外にある関連会社で特別に設計された特殊工作機械を輸入しようとしています。この機械は受注生産品であるため、本邦において同種の貨物や類似の貨物の輸入実績が全くありません。また、輸入後の国内販売価格を基礎とした計算を行おうにも、自社で直接使用する設備であるため、国内での転売予定もありません。このような場合、どのような方法で課税価格を算定すべきでしょうか。海外の生産者からは製造原価に関する詳細なデータ提供を受けることが可能ですが、これを利用した申告は認められるのでしょうか。また、その際の具体的な計算方法や法的根拠についても詳しく教えてください」

輸入貨物の課税価格は、原則として買手が実際に支払う価格に基づきますが、相談者のように原則的な方法が適用できない局面は多々あります。

本日は、そのような際の例外的な算定方法の一つである、製造原価に基づく課税価格の決定方法について解説いたします。

1 製造原価に基づく課税価格の決定方法の概要

輸入貨物の課税価格を決定する際、原則的な方法(関税定率法第4条)や、同種・類似の貨物を用いる方法(同法第4条の2)、国内販売価格に基づく方法(同法第4条の3第1項)によっても決定できない場合に検討されるのが、製造原価に基づく方法です。

この方法は、関税定率法第4条の3第2項に規定されています。実務上、この手法は「構成価格による評価」とも呼ばれ、生産コストを積み上げて価値を算出する非常に客観性の高い手法といえます。

2 国内販売価格に基づく方法との適用順位

関税評価のルールには、適用すべき順番が法律で定められています。

関税定率法第4条の3の規定によれば、原則として「国内販売価格に基づく方法」が「製造原価に基づく方法」よりも優先されます。

しかし、同条第3項には重要な例外規定があります。

輸入しようとする者が税関長に対して、製造原価に基づく方法を優先して適用したい旨を申し出た場合には、その順位を逆転させることが可能です。相談事例のように、国内での転売予定がなく国内販売価格の把握が困難な一方で、製造原価のデータが明確である場合には、この順位逆転の申し出を行うことが実務上有効な選択肢の一つとなります。

【表1 課税価格決定方法の適用順位と選択】

方法の名称/基本的な適用順位/選択の可否

国内販売価格に基づく方法(第4条の3第1項)/第四順位(優先適用)/原則通り

製造原価に基づく方法(第4条の3第2項)/第五順位(後位適用)/輸入者の申し出により優先可

3 製造原価に基づく算定の具体的な構成要素

製造原価に基づく方法では、以下の要素をすべて合算して課税価格を算出いたします。この計算式は関税定率法第4条の3第2項の規定を基礎としています。

【表2 製造原価に基づく課税価格の計算構成要素】

要素の区分/具体的な内容/算出の根拠

(A)製造原価 原材料費、労務費、容器・包装費、補助的な物品の費用等 生産者の商業帳簿

(B)利益・経費 生産国における同類の貨物の販売に係る通常の利潤及び一般経費 生産国の標準的数値

(C)輸送費用等 輸入港までの運賃、保険料その他運送に関連する費用 実際の支払費用

(1)製造原価(A)の範囲

製造原価には、単なる材料費だけでなく、輸入貨物の容器の費用や包装に要する費用が含まれます。さらに、関税定率法第4条第1項第3号に規定される、買手が無償または低価格で提供した金型、工具、原材料などの「アシスト」に要する費用も、生産者が負担している場合には算入しなければなりません。

また、本邦で開発された技術、設計、意匠等の費用であっても、生産者がこれを負担した場合には、当該負担額も原価の一部として構成されます。これらの数値は、原則として生産者の商業帳簿に基づいて確認されることとなります。

(2)通常の利潤及び一般経費(B)

これには、輸入貨物が属する「同類の貨物」について、生産国において本邦への輸出のために販売される際に通常付加される利益と経費が含まれます。ここでいう「同類の貨物」は、輸入貨物と同一の国から輸入されたものに限定されます。

(3)運賃等(C)

最後に、当該貨物が本邦の輸入港に到着するまでの運賃及び保険料を加算いたします。これにより、輸入港に到着した時点での貨物の総価値が確定されます。

4 実務上の留意点と証拠書類の重要性

製造原価に基づく方法は、生産者の協力が不可欠な手法です。税関は申告の妥当性を確認するため、生産者の商業帳簿や会計資料の提示を求めることがあります。

もし、生産者が企業秘密を理由にデータの提供を拒んだり、提供された資料が国際的に認められた会計原則に合致していなかったりする場合には、この方法を採用することは認められません。そのため、事前の契約段階から、関税評価のために必要な情報提供を受けられる体制を整えておくことが肝要です。

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であると同時に、輸出入や通関手続きに関する唯一の国家資格である通関士資格を保有しております。

製造原価に基づく課税価格の算定は、関税法や関税定率法のみならず、会計実務や国際的な関税評価協定への深い理解が求められる専門性の高い領域です。当事務所では、以下のような高度な法的サービスを提供しております。

①国内販売価格法と製造原価法のどちらが有利か、または適用可能かの法的検討

②税関長に対する適用順位逆転の申し出に関する手続き代行

③海外生産者から提供された原価データの妥当性検証と税関への説明

④製造原価に含めるべきアシスト費用の正確な按分計算の助言

⑤税関による事後調査において、算定根拠を論理的に防衛するための法的サポート

輸出入や通関上のトラブル、特に特殊な貨物の価格評価でお悩みがある場合には、当事務所までお気軽にご相談ください。通関士の視点と弁護士の知見を融合させ、貴社の円滑な通関と適正な納税を全面的に支援いたします。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

同種又は類似貨物と課税価格の決定方法

2021-03-08

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は海外の取引先から、キャンペーン用のノベルティとしてロゴ入りの特注バッグを無償で提供してもらうことになりました。無償で提供される物品であるため、輸入取引の際の売買価格というものが存在しません。通関業者に相談したところ、実際の取引価格がない場合は、同種の貨物や類似の貨物の価格を基にして申告する必要があるとの説明を受けました。しかし、ロゴ入りの特注品であるため、全く同じ商品は市場に存在しないように思われます。このような場合、どのような基準で比較対象となる貨物を選定し、課税価格を算定すればよいのでしょうか。法令に基づいた具体的な判断基準を教えてください」

輸入通関における課税価格は、原則として買手が売手に実際に支払う取引価格に基づきます。しかし、無償貨物や委託販売貨物など、取引価格が存在しない場合には、関税定率法第四条の二以下の規定により、別の方法で価値を評価しなければなりません。

本日は、その代表的な手法である同種又は類似の貨物の価格を用いる方法について解説いたします。

1 同種の貨物に係る取引価格による決定

原則的な決定方法(現実支払価格による方法)が適用できない場合、まず検討されるのが同種の貨物の取引価格を用いる手法です。

(1)同種の貨物の定義

関税定率法第四条の二第一項における同種の貨物とは、当該輸入貨物の生産国で生産されたもので、形状、品質及び社会的評価を含むすべての点で当該輸入貨物と同一であるものを指すと解されています。具体的には、以下の条件をすべて満たす必要があります。

①輸入貨物の本邦への輸出の日、またはこれに近似する日に本邦へ向けて輸出されたものであること

②輸入貨物の生産国と同一の国で生産されたものであること

③形状や品質、社会的評価において、外見上の微細な差異を除き、実質的に同一の貨物であること。

例えば、同一メーカーが製造した同一型番の電気製品などは、まさに同種の貨物の典型例といえます。

(2)近接する日の解釈

法令にいう近接する日については、関税定率法基本通達において、輸入貨物の輸出の日から遡り、またはその日以後において、価格を変動させるような経済的状況の変化がない期間内とされています。実務上は、市場価格の変動が激しい商品を除き、前後一ヶ月程度が目安とされることが一般的です。

2 類似の貨物に係る取引価格による決定

同種の貨物の取引価格が存在しない場合に、次なる選択肢として検討されるのが類似の貨物です。

(1)類似の貨物の定義

関税定率法第四条の二第一項における類似の貨物とは、輸入貨物の生産国で生産されたもので、すべての点で同一ではないが、同様の形状及び材質を有し、かつ、同様の機能を有し、商業上の交換が可能なものを指します。

具体例を挙げれば、異なるメーカーが製造した同程度のスペックを持つ汎用的な電子部品や、デザインは異なるものの素材や機能、ブランド価値が同等であるアパレル製品などがこれに該当する可能性があります。

(2)商業上の交換可能性

ここで重要なのは、単に機能が似ているだけでなく、市場において代替品として取引される程度に社会的評価や品質が同等であるという点でしょう。例えば、極めて高いブランド価値を持つ高級時計と、機能は同じでもブランドのない普及品の時計は、類似の貨物として扱うことはできません。

【表1 同種の貨物と類似の貨物の比較】

| 項目 | 同種の貨物 | 類似の貨物 |

| 生産国 | 当該輸入貨物と同一の国 | 当該輸入貨物と同一の国 |

| 形状及び品質 | すべての点で同一 | 同様の形状及び材質 |

| 機能 | 同一 | 同一の機能を有する |

| 社会的評価 | 同一 | 同等の社会的評価 |

| 商的交換性 | 完全に交換可能 | 商業上の交換が可能 |

3 取引価格の優先順位と適用ルール

比較対象となる価格が複数存在する場合、関税定率法及び同法基本通達に基づき、以下の順位に従って適用する価格を決定します。

(1)同種と類似の優先関係

同種の貨物に係る取引価格と類似の貨物に係る取引価格の双方が存在する場合、必ず同種の貨物の価格を優先して採用しなければなりません。

(2)生産者の優先関係

輸入貨物の生産者が製造した貨物の価格と、別の生産者が製造した貨物の価格がある場合は、前者を優先します。これは、生産コストや利益率の構造が近いと考えられるためです。

(3)最小価格の原則

上記の手順によっても、なお複数の有効な取引価格が競合する場合には、それらの価格のうち最小のものを課税価格として採用するというルール これは、納税者に不利にならないように配慮された規定であると同時に、恣意的な価格選定を防ぐ役割も果たしています。

【表2 比較対象価格の選定フロー】

| 手順 | 判断基準 | 決定される価格 |

| 1 | 同種の貨物の有無を確認 | ある場合は優先的に採用 |

| 2 | 同一生産者の有無を確認 | 同一生産者の価格を優先 |

| 3 | 複数の候補が残る場合 | 最も低い価格を採用 |

| 4 | 同種がない場合に類似を確認 | 類似の貨物で上記1から3を適用 |

4 実務上の留意点と証拠書類

この方法を適用するためには、比較対象となる貨物の取引価格が、税関において既に「原則的な決定方法」により適正に決定されたものである必要があります。

したがって、単に他社のカタログ価格やインターネット上の販売価格を提示するだけでは不十分です。実際にその価格で輸入許可が下りた実績を示すインボイスの写しや、輸入許可書の内容を確認できる資料が求められるため、独力で適切な比較価格を見つけ出すことは容易ではありません。

5 弁護士へのご相談をご希望の方へ

輸入貨物の課税価格の決定方法は、関税評価協定に基づく極めて専門的な領域です。

特に同種や類似の貨物を選定するプロセスにおいては、貨物の物理的な特徴だけでなく、市場における商的な地位や評価といった定性的な分析も必要となります。当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であるとともに、通関実務の国家資格である通関士資格を保有しております。税関との見解の相違が生じやすい関税評価の問題に対し、法的なロジックと実務的なデータの双方からサポートを提供いたします。

具体的には、以下のような業務を通じて貴社の貿易ビジネスを支えていきます。

①無償貨物等の特殊事案における、法令に基づいた適切な課税価格の事前算定

②税関に対する事前教示制度の活用による、通関時のトラブル防止

③事後調査において申告価格の妥当性を指摘された際の、意見書の作成及び当局との交渉

④不当な更正処分がなされた場合の、行政不服審査法に基づく審査請求等の権利救済手続

輸出入や通関に関するトラブル、あるいは課税価格の評価に不安をお持ちの経営者や担当者の方は、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

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