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技術の対面での口頭での提供
外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。
また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。
本日は取扱いを間違いやすい(勘違いしやすい)事例をご紹介いたします。
1 事例
日本メーカーAの担当者Xは、海外子会社のBから、対面での打合せ中のやり取りの中で、外為令別表の16の項に該当する技術の説明を求められた。このような場合には、口頭で説明をするにあたって、事前の許可を取得する必要があるかどうか。
2 正しい対応
上記のような事例における対面での口頭での提供に関しては、貿易外省令第9条第2項第七号において「当該技術を内容とする情報が記載され、若しくは記録された文書、図画若しくは記録媒体の提供若しくは電気通信による当該技術を内容とする情報の送信を伴わないもの」という規定に該当することから、事前の許可を取得する必要はありません。
他方で、電話や電子メールといった方法で情報の提供する場合には、いわゆる客観要件などに該当するときは、事前の許可を取得する必要があるケースもありますので注意が必要です。
3 外為法の規制には十分ご注意ください
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。
日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
日用品として用いる小さな機械製品であっても大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。
また、外為法上の許可を取得することが煩雑であることから、安易に特例の適用があると判断することは非常にリスクの高い行為であるといわざるを得ません。
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在しますので、貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
外国ユーザーリストの取扱い
はじめに:仮の相談事例のご紹介
本日は、大学や研究機関において特に判断が難しいとされる、国際会議や研究会での「口頭による技術提供」と外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」といいます。)の関係について詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。学術交流の現場で日常的に起こり得る、極めて重要な局面が示されています。
【相談者】
国内の有力な研究機関であるA大学に所属する、先端材料工学の権威であるB教授。
【相談内容】
B教授は先日、スイスで開催された国際材料学会に出席いたしました。その際、以前から親交のある海外の大学の研究者から、特定の高機能素材の製造プロセスに関する詳細な質問を受けました。この技術は、外為法上の輸出貿易管理令別表第一の十六の項(キャッチオール規制)に関係する機微な内容を含んでおります。B教授は、その場でのやり取りはあくまで口頭のみであり、設計図面や記録媒体を渡すわけではないため、法的な許可は不要であると考えて、その場で丁寧に回答しようとしました。しかし、ふと「海外の人物への情報提供」が規制対象になるのではないかという不安がよぎり、回答を保留いたしました。B教授は、口頭での説明が法的にどのような扱いを受けるのか、また、相手方が特定の「懸念リスト」に掲載されている組織であった場合にどのようなリスクがあるのかについて、専門的な見地からの詳細な解説を求めています。
このような事例は、学術界における国際交流が進展する現代において、非常に多く見受けられます。外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。本日は取扱いを間違いやすい事例として、口頭での技術提供に関する実務上の考え方をご紹介いたします。
1 外為法における技術提供の規制体系と「役務」の定義
外為法では、貨物の輸出(モノの移動)だけでなく、技術の提供(サービスや情報の移動)についても厳格に規制しております。これを「役務取引」と呼びます。
国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の技術を特定の外国において提供し、又は特定の外国の居住者に提供することを目的とする取引をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
ここでいう特定の技術とは、外国為替令(以下、外為令といいます。)別表の一の項から十五の項までに掲げられた「リスト規制技術」と、十六の項に掲げられた「キャッチオール規制技術」に大別されます。B教授の事例は、まさにこの技術提供の許可が必要な場面かどうかが問われているのです。
2 口頭による技術提供と法的な例外規定
本日の核心である、口頭での回答が規制対象となるかという点について検討いたします。実務上、技術の提供方法には、書類、磁気ディスク、電子メール、そして口頭による指導などが含まれます。しかし、外為令の運用を定める「貿易外支払や役務取引の許可について(役務通達)」においては、特定の条件において規制の対象外となるケースが規定されています。
(1)キャッチオール規制(十六の項)と口頭提供の関係
外為令別表の十六の項に該当する技術(キャッチオール規制対象技術)については、役務通達等において、原則として「書面、磁気ディスク等による提供」が規制の対象とされており、単なる「口頭のみ」による技術提供は、現行の運用上、許可を要する取引には含まれないと解釈されております。これは、キャッチオール規制が広範な物品・技術に網をかける性質上、日常的な会話まですべてを規制対象とすることが実務的に困難であるという背景があります。
(2)リスト規制(一から十五の項)との決定的な違い
一方で、極めて機微度が高いリスト規制技術(一の項から十五の項)については話が全く異なります。これらに該当する技術については、提供の手段を問いません。すなわち、図面を渡す場合はもちろん、電話での説明、対面での口頭による技術指導、ホワイトボードを用いた解説など、いかなる形態であっても、それが特定の外国居住者等に向けられたものであれば、経済産業大臣の許可が必須となります。
B教授の事例では、当該技術が「十六の項(キャッチオール)」に該当するものであれば、法的には口頭での回答は直ちに規制違反とはなりません。しかし、もし一歩踏み込んで「一から十五の項(リスト規制)」に該当する要素が含まれていた場合、口頭であっても即座に違法行為となるリスクがあるのです。
3 大学・研究機関としてのコンプライアンスと「外国ユーザーリスト」の重要性
正しい対応として、法的な形式論だけで判断することは非常に危険です。外為法上は、口頭での外為令別表十六の項に該当する技術の提供は規制対象ではありません。しかしながら、海外の研究者が所属する機関が、経済産業省の公表する「外国ユーザーリスト」に掲載されているような組織である場合には、大学のコンプライアンスの観点から、口頭でのやり取りについても慎重に検討し、控えるべき場合があります。
(外国ユーザーリストとは)
経済産業省が、大量破壊兵器等の開発等に関与している懸念がある外国の組織を列挙したリストです。このリストに掲載されている組織に技術を提供することは、たとえキャッチオール規制の対象外であっても、実質的に兵器開発を助長する行為とみなされる可能性があり、組織としての社会的信用を著しく損なう結果を招きます。
B教授個人が「法的にセーフである」と自己判断して回答することは、組織全体のガバナンスを揺るがしかねません。そのため、B教授としては、まず所属する大学Aの安全保障貿易管理担当部署に照会し、海外の研究者の所属先が外国ユーザーリストに掲載されていないか、あるいは過去に懸念される活動が報告されていないかを確認してもらった上で、質問に回答してよいかどうかを組織として判断する必要があります。
4 実務で活用できる「口頭での技術提供」判定表
大学や研究室の壁に貼って、日常的な判断の参考としてご活用いただける判定基準をまとめました。
【技術提供における許可要否の簡易判定基準一覧】
検討対象となる技術の内容|提供の手段|外為法上の許可要否|組織的な判断の要否
--------|--------|--------|--------
リスト規制技術(1から15項)|書面・電子データ|必ず必要|必須(事前照会)
リスト規制技術(1から15項)|口頭のみ|必ず必要|必須(事前照会)
キャッチオール技術(16項)|書面・電子データ|条件により必要|必須(事前照会)
キャッチオール技術(16項)|口頭のみ|原則不要|強く推奨
公知の技術(特許公開済等)|不問|不要|不要(ただし記録は残す)
基礎科学研究(原理の究明)|不問|原則不要|専門的な判断が必要
この表から明らかな通り、口頭であれば何を話してもよいというわけではありません。特に研究の進展に伴い、当初は「十六の項」であったものが、性能向上により「一から十五の項」に格上げされる(該当する)ケースも多く、常に最新の貨物等省令を確認する体制が不可欠です。
5 外為法違反に伴う深刻な組織的リスクとペナルティ
貨物を輸出する場合や技術を国際間で提供する場合には、外為法上の厳格な規制が存在します。日本国内で購入したものであるから、あるいは学術的な会話であるから海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険です。
(1)刑事罰と行政処分の重み
外為法に違反し、無許可で技術提供を行った場合、以下のような極めて厳しい罰則が科されます。
一 刑事罰。
第四十八条第一項(輸出の許可)または第二十五条第一項(技術提供の許可)に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金、またはその併科。法人に対してはさらに高額な罰金が科される二罰規定も存在します。
二 行政処分。
経済産業大臣により、一定期間(最長で三年間)の技術提供の禁止、あるいは貨物の輸出禁止処分が下されることがあります。大学にとって、三年の技術提供禁止は国際共同研究の全面停止を意味し、事実上の研究機能停止に追い込まれます。
(2)社会的信用の失墜と評判リスク
違反の事実が広く知れ渡ると企業や組織の評判にも大きくかかわり、場合によっては悪質な組織であるとの批判が高まってしまうリスクもあります。一度でも不適切な輸出入や技術提供の事実が公表されれば、国内外の公的研究資金(科研費等)の採択が困難になるばかりか、優秀な学生や研究者が離れていくという、取り返しのつかないダメージを受けます。
6 「知らなかった」では済まされない国際的平和への責任
知らなかったでは済まされず、外為法の法規制に違反することは重大な犯罪行為となります。ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。日用品として用いる小さな機械製品や、一見すると純粋な理論であっても、大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。
安全保障貿易管理は、単なる事務的な手続きではありません。自らの研究成果が意図せぬ形で他国の軍事力強化や人権侵害に利用されることを防ぐという、学識者としての高い倫理性と社会的責任が問われています。
7 みなし輸出管理の最新動向:特定類型該当性の判断
2022年5月から施行された、みなし輸出管理の強化についても補足いたします。従来は居住者への技術提供は原則自由でしたが、現在は「特定類型」という概念が導入されています。
第一類型:外国政府等と雇用契約やその他の契約を結んでおり、その外国法人の指揮命令を受ける者。
第二類型:外国政府等から多額の金銭的利益(奨学金等)を得ている者。
第三類型:日本国内において、外国政府等の指示の下で行動する者。
たとえ相手が日本国内の研究室にいる学生や研究員であっても、これらの特定類型に該当する場合には、日本国内での指導であっても輸出許可が必要となります。B教授が海外の研究者と話す場面だけでなく、自らの研究室内のマネジメントにおいても、外為法の視点が不可欠となっているのです。
8 専門家による法的サポートの重要性
貨物を輸出する場合、及び技術を国際間で移転、提供する場合において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前に専門家に相談いただくことを強くお勧めいたします。
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、学術機関やハイテク企業特有の技術提供管理に関する法務サポートを幅広く提供しております。弁護士でありながら通関実務の深い知見を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提示することができます。
【当事務所が提供できる具体的な支援内容】
一 研究内容や提供技術の精緻な外為法上の該否判定支援。
二 外国ユーザーリストや特定類型該当性に関するスクリーニング(調査)の助言。
三 大学・研究機関向けの内部輸出管理規定(ICP)の策定および運用指導。
四 経済産業省に対する役務取引許可申請の代行および折衝。
五 万が一の法令違反の疑いが生じた際の事実関係調査および当局対応のサポート。
六 教授会や研究室単位での外為法遵守に関するセミナーへの講師派遣。
9 まとめ:適正な輸出管理が学問の自由と国際貢献を支える礎
本日は、大学の研究現場で陥りやすい「口頭での技術提供」という論点から、安全保障貿易管理の全体像を解説いたしました。B教授のようなケースにおいても、正しい手順を踏んで組織としての承認を得ることで、法的リスクを回避しつつ、堂々と国際的な学術交流を継続することが可能となります。
企業や組織としては、提供する技術の内容や相手方の意向のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
正しい法令知識に基づき、一つひとつのやり取りを精査すること。その地道な努力が、貴組織のグローバルな評価を安定させ、不測の事態から組織を守ることに繋がります。当事務所は、貴組織の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した研究活動や海外展開をサポートし続けます。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
海外法人の従業員の取扱い
外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。
また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。
本日は取扱いを間違いやすい(勘違いしやすい)事例をご紹介いたします。
1 事例
日本のメーカーAの海外法人で従業員として勤務している日本人Xが、研修のため日本の工場に訪れた。メーカーAの工場側としては、同じ会社の同僚であり、かつ日本人であるXの場合には、リスト規制該当技術を提供しても問題ないと判断しているが、このような判断は適切かどうか。
2 正しい対応
メーカーAの工場側の判断は間違っています。
Xは、外国にある事務所に勤務する目的で出国し、現在も外国に滞在している以上は、原則として非居住者に該当します。
そのため、同じ会社の同僚であり、また、日本人であったとしても居住者性に影響はなく、あくまでもXに対してリスト規制該当技術を提供する場合には、事前に役務取引許可を取得する必要があります。
3 外為法の規制には十分ご注意ください
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。
日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
日用品として用いる小さな機械製品であっても大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。
また、外為法上の許可を取得することが煩雑であることから、安易に特例の適用があると判断することは非常にリスクの高い行為であるといわざるを得ません。外為法を軽んじてしまうと事業の根本に影響を及ぼしますので厳に慎むべきです。
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在しますので、貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
講演会における技術の公開
外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。
また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。
本日は取扱いを間違いやすい(勘違いしやすい)事例をご紹介いたします。
1 事例
日本のA大学のX教授は、来月アメリカ合衆国において、リスト規制に該当する先端技術について、学会での講演会を予定している。当該講演会は、誰でも10ドルの参加費を支払うことで参加することができ、一般大衆に開かれた講演会となっているので、事前に役務取引許可を取得する必要がないとA大学は判断したが、このような取り扱いは適切かどうか。
2 正しい対応
A大学の取扱いに問題はありません。
僅かな参加費を支払うことで誰でも参加可能であれば、貿易外省令第9条第2項第九号ホの例外規定に該当しますので、役務取引許可を取得する必要がありません。
他方で、参加者が制限されているような場合には許可取得が必須となりますので、学会や講演会という形式上の判断基準ではなく、実態としてどのような『場』であるのかが重要です。
3 外為法の規制には十分ご注意ください
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。
日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
日用品として用いる小さな機械製品であっても大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。
また、外為法上の許可を取得することが煩雑であることから、安易に特例の適用があると判断することは非常にリスクの高い行為(脱法行為であるとすら判断されてしまいます。)であるといわざるを得ません。
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在しますので、貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
海外子会社への技術提供
外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。
また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。
本日は取扱いを間違いやすい(勘違いしやすい)事例をご紹介いたします。
1 事例
日本のメーカAは、海外子会社とのスムーズな情報共有のため、A社内のプライベートネットワーク(イントラネットともいいます。)に海外子会社の担当者が自由にアクセスできるように設定を変更することを検討している。当該ネットワークにおいては、外為法上のいわゆるリスト規制に該当すような先端技術の情報も多数存在するが、ネットワークのサーバー自体が日本に存在することから、事前の役務取引許可は不要であると判断しているが、このような判断は適切かどうか。
2 正しい対応
海外子会社はあくまでも非居住者に該当します。
そのため、海外子会社に対するプライベートネットワークの開放を行う場合には、事前の役務取引許可の取得は必須となります。
子会社の場合にはよく勘違いされるところですが、十分注意が必要です。
3 外為法の規制には十分ご注意ください
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。
日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
日用品として用いる小さな機械製品であっても大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。
知らなかったでは済まされず、法規制に違反する場合には重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在します。
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事業者としては継続的に事業を行う観点から万全を期すためにも事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
留学生からの誓約書の提出
外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。
また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。
本日は取扱いを間違いやすい(勘違いしやすい)事例をご紹介いたします。
1 事例
日本の大学Aは、留学に来ているX国の留学生Bに対して、『ガイドライン』に従った確認を行い、Bから特定類型に該当する事実はない旨の誓約書を取得した。ところが、事後的に当該誓約書の内容が虚偽であることが判明したため、それまでにBに対して提供した技術を確認したところ、事前許可の取得が必要な技術を既に提供してしまっていた。このような場合、大学Aは、Bに対する無許可のみなし輸出として、罰則又は行政処分の対象となるかどうか。
2 正しい対応
大学Aは、ガイドラインに沿った対応を行うとともに、誓約書を取得しておりますので、原則として、無許可でのみなし輸出に対して故意又は過失がなかったと判断され、罰則又は行政処分の対象外と考えられます。
しかしながら、法的な判断とは別の評判という面では、悪い評判がたつリスクはありますので、大学Aとしてはそのような事実面でのデメリットも含めた対応を行うことが必要となります。
3 外為法の規制には十分ご注意ください
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。
日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
日用品として用いる小さな機械製品であっても大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。もっとも、その判断は非常に微妙なものですので、一概には判断できません。
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在しますので、貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
留学奨励金と特定類型該当性
外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。
また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。
本日は取扱いを間違いやすい(勘違いしやすい)事例をご紹介いたします。
1 事例
日本の大学Aに留学に来ているX国の留学生Bは、来日後9カ月が経過しており、既に外為法上は日本の居住者となっている。留学生Bは、X国の政府から、留学奨励金として留学資金に相当する金銭の援助を受けている。この場合、当該留学生Bは、外為法上の特定類型に該当するかどうか。
2 正しい対応
上記事例における留学生Bは、外為法上明確に特定類型に該当することになります。
そのため、大学Aとしては、留学生Bに対する技術提供については最大限の注意を払う必要があり、適切な体制づくりを早急に行う必要があります。
優秀な学生にはそれぞれの国政府から奨励金を含めて何らかの経済的援助が行われているケースも珍しくありません。留学生の受け入れに当たっては常にこのような視点をもって対応することが必要です。
3 外為法の規制には十分ご注意ください
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。
日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
日用品として用いる小さな機械製品であっても大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在します。また、企業の評判にも大きく影響を与える事情となりますので、貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
学術研究における安全保障貿易管理
はじめに:仮の相談事例のご紹介
本日は、大学や研究機関、そして先端技術を取り扱う企業において、実務上非常に判断が分かれやすく、かつ重要な論点である「公知の技術」の提供と外国為替及び外国貿易法(以下、外為法といいます。)の関係について詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。学術交流の現場において、誰もが直面し得る典型的な局面が示されています。
【相談者】
国内の有力な研究機関であるA大学に所属する教授 B氏
【相談内容】
当研究室では長年、先端材料工学の研究を行っております。先日、以前から親交のあるアメリカ合衆国の大学教授から、特定の金属材料の腐食耐性に関する理論について、より深く学びたいとの連絡を受けました。B氏は、自身も執筆に携わった15年前に大手出版社から発行された専門書Xの中に、その回答となる理論や実験データが詳細に記されていることを思い出し、日本の書店でその書籍を購入してアメリカへ郵送しようと考えました。
しかし、その専門書Xには、現在の輸出貿易管理令や外国為替令においてリスト規制の対象となっている技術の一部が含まれています。B氏は、一般に流通している書籍を郵送するだけであっても、規制対象の技術が含まれている以上は経済産業大臣の許可が必要になるのではないかと不安に感じています。もし無許可で送付してしまった場合に、大学としての信用失墜や法的なペナルティを受ける可能性があるのか、専門的な見地からの詳細な解説を求めています。
このような事例は、国際的な共同研究や留学生の受け入れが日常的に行われている現代の学術界において、非常に多く見受けられます。外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。本日は取扱いを間違いやすい(勘違いしやすい)事例として、書籍を通じた技術提供に関する実務上の考え方を網羅的にご紹介いたします。
1 外為法における「技術提供」の規制体系と役務取引許可
外為法では、貨物という形のあるモノの輸出(貨物取引)だけでなく、技術という目に見えない情報の提供(役務取引)についても厳格に規制しています。
(1)役務取引許可の法的根拠
外為法第二十五条第一項は、技術の提供について次のように規定しています。
国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の技術を特定の外国において提供し、又は特定の外国の居住者に提供することを目的とする取引をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
ここでいう特定の技術とは、外国為替令(以下、外為令といいます。)別表の一の項から十五の項までに掲げられたリスト規制技術を指します。B氏の専門書Xに記載されている内容が、もしこのリスト規制の項目(例えば先端材料の設計や製造技術など)に該当する場合、原則としては経済産業大臣の許可が必要となります。
(2)提供形態の広範さ
技術の提供は、設計図やプログラムを記録媒体に入れて渡す行為だけではありません。電子メールによる送信、クラウドサーバーへのアップロード、ウェブ会議での口頭説明、そして今回のような書籍の郵送も、すべて外為法上の役務取引に該当し得る点に注意が必要です。
2 「公知の技術」を提供する取引の例外規定について
今回の事例において、最も重要な解決の鍵となるのが「公知の技術」に関する例外規定です。外為法には、学問の自由や円滑な学術交流を阻害しないよう、既に一般に公開されている情報については、規制の対象外とする合理的な仕組みが存在します。
(1)貿易外省令による許可不要の規定
具体的な法的根拠は、「貿易関係外の事業に係る申告、報告等に関する省令」(以下、貿易外省令といいます。)に定められています。
九 次に掲げる技術を提供する取引
公知の技術を提供する取引又は技術を公知とするために当該技術を提供する取引(特定の者に提供することを目的として公知とする取引を除く。)であって、以下のいずれかに該当するもの
さらに、この「公開されている技術」の定義については、役務取引許可指針(役務通達)において詳細に例示されています。
(2)書籍等による公知性の証明
リスト規制該当技術が説明されている書籍である場合には、海外への技術提供に当たっては原則として事前の許可取得が必要となります。しかしながら、既に出版されて公知の技術である場合には、前述の貿易外省令第九条第二項第九号イの「既に公開されている技術」に該当いたします。具体的には、以下の媒体を通じて誰もが入手可能な状態にある技術は、公知とみなされます。
一 新聞、書籍、雑誌、カタログ、又は定期刊行物。
二 特許公報、公開特許公報、又は登録実用新案公報。
三 不特定多数の者が参加可能な学会、展示会、セミナー等の講演資料。
四 インターネット等を通じて広く閲覧可能なウェブサイト上の情報。
冒頭の事例における専門書Xは、15年前に大手出版社から出版され、書店で購入可能なものです。これは、まさに上記の「書籍」に該当し、誰でも正当な対価を支払えば入手できる「公知の技術」を体現したものです。したがって、当該書籍を研究者仲間に郵送する行為は「公知の技術を提供する取引」に該当し、特段の許可取得は不要となるという結論になります。
3 実務上の境界線:公知の技術と認められないケース
一方で、書籍を送る場合であっても、例外が認められないケースがあるため、B氏のような実務者は慎重な判断が求められます。以下の表に、許可の要否を左右する境界線を整理いたしました。
【技術提供における「公知性」の判定基準一覧表】
取引の態様|外為法上の許可要否|法的な判断の根拠と留意点
--------|----------|----------------
市販されている専門書の郵送|原則として不要|貿易外省令第九条第二項第九号イの「公知の技術」に該当するため。
未発表の論文原稿の送付|必要(リスト該当時)|公表前であれば、たとえ将来的に公開予定であっても「未公開技術」となる。
特定の企業向けの社外秘資料|必要(リスト該当時)|特定の範囲の者しか閲覧できない情報は公知とは認められない。
専門書に加え、独自の補足資料を添付|必要(リスト該当時)|書籍の内容は公知だが、補足資料(ノウハウ等)は未公開技術となる恐れ。
特許公開前の発明内容の説明|必要(リスト該当時)|特許庁により公開されるまでは秘密保持が必要な機微情報。
公知の情報の「収集・整理」による提供|不要|情報の組み合わせ自体に高度な新規性がない限り、元データが公知なら不要。
このように、ポイントは「その情報が不特定多数に対して開かれているか」という一点に集約されます。B氏が、書籍Xに加えて「この理論を実際の製品に適用するための独自の実験ノート(未発表)」を同封してしまった場合には、そのノートの内容について輸出許可が必要となり、無許可であれば外為法違反を構成することになります。
4 大学・研究機関が構築すべき実務フローと特定類型
大学においては、書籍の郵送以外にも、留学生の受け入れや共同研究においてより複雑な判断が必要となります。特に、2022年5月から施行された「特定類型」の該当性判断は避けては通れない論点です。
(1)みなし輸出管理の強化
日本国内に居住している外国人研究者や学生であっても、特定の外国勢力から強い影響を受けている場合(特定類型該当者)には、その人物への技術提供は「非居住者への提供(輸出)」とみなされます。
B氏の事例でも、郵送する相手方がアメリカの大学に所属していても、もしその人物が特定の軍事関連組織の指示の下で行動しているような場合には、取引審査においてより高度な注意が必要となります。
(2)内部管理体制(ICP)の重要性
大学等の組織が外為法違反を未然に防ぐためには、教職員個人の裁量に任せるのではなく、組織として定期的な点検を実施する必要があります。
一 提供する技術がリスト規制(1から15項)に該当するかどうかの精緻な該否判定。
二 提供先の相手方が「外国ユーザーリスト」に掲載されていないか等の顧客審査。
三 提供する情報の公開性(公知の技術か否か)の最終確認。
5 外為法の規制に対する厳格な注意喚起
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
(1)転用リスクの遍在性
日用品として用いる小さな機械製品であっても、大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。高性能なセンサーや炭素繊維材料、あるいは暗号化ソフトウェアなどは、一見すると平和的な学術研究に見えても、核開発の遠心分離機やミサイルの誘導装置、軍事通信の秘匿に使用される恐れがあります。
(2)「初めのうち」の網羅的注意
どのような物が気を付けるべきかという点については、技術の進歩や国際情勢の変化により、なかなか一概にはいえないところではありますので、初めのうちは網羅的に注意しておいた方が安全です。自らの判断で「これは単なる本だから」「これは古い技術だから」と断定することは、法的なリスクを過小評価することに繋がりかねません。
6 法令違反に伴う深刻なペナルティと刑事罰
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在します。外為法違反は、国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことは、研究者としても、また経営者としても、くれぐれも気を付けるべき点です。
(1)刑事罰の内容
(外国為替及び外国貿易法第六十九条の六)
第四十八条第一項(輸出の許可)または第二十五条第一項(技術提供の許可)に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金、またはその併科。
さらに、法人に対しても重い罰金刑が科される「二罰規定」が存在します。組織ぐるみの違反とみなされれば、大学の存立を揺るがす事態に発展します。
(2)行政処分と評判リスク
経済産業大臣による、最長で三年間におよぶ輸出禁止処分や技術提供の禁止処分が下されることがあります。違反の事実が広く知れ渡ると企業や組織の評判にも大きくかかわり、場合によっては悪質な組織であるとの批判が高まってしまうリスクもあります。一度でも「安全保障上の懸念がある組織」とのレッテルを貼られれば、国内外の公的研究資金(科研費等)の採択が困難になるばかりか、優秀な人材の獲得も絶望的となります。
7 専門家による法的サポートの重要性と当事務所の役割
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前に専門家に相談いただくことを強くお勧めいたします。公知の技術の判定一つをとっても、それが「特定の貨物の設計・製造」に特化したノウハウを含んでいないか等、精緻な条文解釈が必要となるからです。
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知見を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提示することができます。
【当事務所が提供できる具体的な支援内容】
一 研究内容や提供技術の精緻な外為法上の該否判定支援および判定書の作成。
二 「公知の技術」や「基礎科学研究」の例外規定適用のリーガルアドバイス。
三 大学・研究機関向けの内部輸出管理規定(ICP)の策定および運用指導。
四 経済産業省に対する輸出許可申請、役務取引許可申請の代行。
五 税関事後調査や経済産業省による実地調査への立ち会いおよび法的な抗弁。
六 特定類型該当性に関する調査体制の構築およびコンプライアンス研修。
8 まとめ:適正な輸出管理が学問の自由と国際貢献を支える礎
本日は、書籍を通じた技術提供という一見身近な行為に潜む、外為法上の論点について解説いたしました。B氏のようなケースにおいても、正しい法令知識に基づき、例外規定の適用要件を正確に把握していれば、法的なリスクを回避しつつ、堂々と国際的な学術交流を継続することが可能となります。
企業や組織としては、提供する技術の内容や相手方の意図のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引や交流を精査すること。その地道な努力が、貴組織のグローバルな評価を安定させ、不測の事態から組織を守ることに繋がります。当事務所は、貴組織の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した研究活動や海外展開をサポートし続けます。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
少額特例における総価額の考え方
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
本日は、輸出実務において非常に多くの方からお問い合わせをいただく少額特例の解釈、特に複数の貨物を同時に輸出する際の総価額の算定方法について解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容に基づいた、以下の架空事例をご覧ください。グローバルな展開を志す企業様にとって、判断を一つ誤るだけで重大なコンプライアンス違反に直結する重要な局面が示されています。
【相談者】
東京都内で精密測定機器及び電子部品の輸出販売を行うA社 代表取締役 B氏。
【相談内容】
当社は今回、アメリカ合衆国の研究機関向けに、自社で取り扱っている高精度なジャイロスコープ関連部品を輸出することになりました。対象となるのは、輸出貿易管理令別表第一の7の項(2)に該当する貨物X(価額600,000円)と、同じく7の項(2)に該当する貨物Y(価額900,000円)の二種類です。B氏は、輸出実務に詳しい知人から「アメリカのようなグループAの国向けであれば、一〇〇万円以下の取引には少額特例が適用され、経済産業大臣の許可は不要である」という話を聞いていました。B氏は、貨物Xも貨物Yも、それぞれ単体で見れば一〇〇万円以下であるため、少額特例を利用して輸出許可申請手続きを省略し、迅速に出荷できると考えておりますが、果たしてこの対応は法的に適切なのでしょうか。また、もし特例を誤って適用し、無許可で輸出が行われた場合にはどのような法的責任を負うことになるのか、専門的な見地からの詳細な解説を求めています。
このような事例は、輸出ビジネスを営む企業や、大学等の研究機関において、特に複数のスペアパーツや関連機器を同時に送付する際に非常に多く見受けられます。外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。本日は取扱いを間違いやすい、あるいは勘違いしやすい事例として、少額特例の合算ルールについて網羅的にご紹介いたします。
1 少額特例の定義と法的根拠
少額特例とは、輸出される貨物の総価額が一定の金額以下である場合に、経済産業大臣の輸出許可を不要とする免除規定のことです。この特例の直接的な法的根拠は、輸出貿易管理令第四条第一項第四号に規定されています。
(輸出貿易管理令第四条第一項第五号)
五 別表第一の五から一三まで又は一五の項の中欄に掲げる貨物(中略)であつて、その総価額が、当該貨物の区分に応じ経済産業大臣が告示で定める額以下のものを輸出しようとするとき。
この規定に基づき、一定の機微性が比較的低いとされる汎用品(デュアルユース品)については、少額取引に限り手続きの簡素化が認められています。しかし、この特例を適用するためには、貨物の種類、総価額、そして仕向地という三つの要素をすべてクリアしなければなりません。
2 事例に対する正しい対応と解説
冒頭の事例について検討いたします。A社のB氏が輸出しようとしている貨物X及び貨物Yは、いずれも輸出令別表第一の7の項(2)に該当するものです。この場合、正しい対応は以下の通りとなります。
上記の事例では、貨物Xと貨物Yの総価額は1,500,000円ですので、少額特例を利用することは出来ません。そのため、輸出許可を取得しなければ外為法違反となりますので注意が必要です。少額特例の利用に関してはよく勘違いされる部分でもありますが、少額特例の総価額として積算すべき貨物の範囲は、輸出令別表第一の各項の中欄のうち括弧毎の貨物となります。そのため、括弧が同じであれば積算することになります。B氏のケースでは、両方の貨物が7の項(2)という同じ括弧内に分類されるため、たとえ別々の製品であっても、その価額を合計した150万円が判定基準となります。アメリカ合衆国(グループA)向けであっても、7の項の特例基準額は一〇〇万円であるため、これを超過している以上、特例の適用は受けられません。
3 総価額算定における「括弧毎」のルールの詳細
少額特例を適用する際、最も間違いが生じやすいのが、この積算範囲の考え方です。輸出令別表第一の中欄は、非常に細かく分類されていますが、法的な積算単位は以下の通りです。
(1)原則的な考え方
同一の契約に基づき、同時に輸出される貨物のうち、別表第一の中欄において同じ「号」や「括弧」で括られているものは、すべて合算して総価額を算出します。例えば、7の項(1)に該当する貨物と7の項(2)に該当する貨物を同時に送る場合は、括弧が異なるため、それぞれ単体で特例の金額判定を行います。しかし、今回の事例のように同じ7の項(2)であれば、合算が義務付けられます。
(2)仕向地による金額基準の相違
少額特例が適用される金額の閾値は、輸出先となる国によって大きく異なります。
一 グループA(旧ホワイト国)向けの輸出
特定の項番(5から13、15の項)に該当する貨物について、原則として一〇〇万円が基準となります。ただし、一部の品目では基準額が異なる場合があるため、常に最新の無償告示等を確認する必要があります。
二 グループA以外の国向けの輸出
原則として一回の取引の総価額が50,000円以下である必要があります。開発途上国や新興国向けの輸出においては、たとえ数万円の部品であってもリスト規制該当品であれば許可が必要になるケースが大半です。
(3)運用通達における補足
輸出貿易管理令の運用について(運用通達)では、分割輸出の禁止についても厳格に定められています。本来一つの契約であるものを、少額特例の枠内に収めるために意図的に二回に分けて申告するなどの行為は、事実の仮装・隠蔽とみなされ、重加算税や刑事罰の対象となります。
4 実務で役立つ少額特例判定マトリクス表
B氏のような実務担当者が、現場で迅速に判断を下すための判定基準表を提示いたします。ワードデータ等に貼り付けて社内管理にご活用ください。
【少額特例の適用要件および積算基準一覧】
確認すべき項目|具体的な判断基準|留意点
--------|----------------|------------
輸出貨物の項番|5から13、15の項に該当するか|1から4、14項は適用不可
積算の単位|別表第一中欄の「括弧」が同一か|同一括弧内は全額合算が必要
仕向地の区分|グループA(旧ホワイト国)か否か|グループにより一〇〇万か五万か
総価額の計算|同一契約、同時輸出の合算額|FOB価格を基準とする
用途の確認|大量破壊兵器等の開発目的ではないか|懸念があれば特例適用不可
需要者の確認|外国ユーザーリストに掲載がないか|掲載があれば特例適用不可
5 外為法に基づく安全保障貿易管理の厳格性
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
(1)転用リスクの遍在
日用品として用いる小さな機械製品であっても、大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。例えば、今回事例に挙げた7の項のジャイロスコープは、民生用のドローンやカメラの安定装置に使われる一方で、ミサイルの誘導装置や戦闘機の姿勢制御システムの核心部品となり得るものです。
(2)特例適用のリスク
外為法上の許可を取得することが煩雑であることから、安易に特例の適用があると判断することは非常にリスクの高い行為であるといわざるを得ません。B氏のように、積算ルールを正しく理解せずに「単体価格」で判断してしまうことは、実務上の典型的な失敗例です。税関での事後調査や、輸出時の書類審査においてこれが発覚した場合、言い逃れはできません。
(3)法の不知は免責されず
外為法を含む様々な法規制について知らなかったでは済まされません。規制に違反してしまうと重大な犯罪行為となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在します。安全保障貿易管理は、単なる国内の事務手続きではなく、国際社会の平和と安全を守るための国際的な枠組みに基づく責任であることを忘れてはなりません。
6 外為法違反に伴う深刻なペナルティ
もし、B氏のA社が無許可輸出を行ってしまった場合、以下のような極めて厳しい処分が科されることとなります。
一 刑事罰
(外国為替及び外国貿易法第六十九条の六)
第四十八条第一項(輸出の許可)に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金、またはその併科。なお、対象貨物の価格の五倍が三千万円を超える場合には、その価格の五倍以下の罰金が科されるという「罰金の多額の特例」が存在します。
二 行政処分
経済産業大臣により、一定期間(最長で三年間)の輸出禁止処分や技術提供の禁止処分が下されることがあります。製造業を営む企業にとって、三年の輸出禁止は事実上の倒産宣告に等しい重みがあります。
三 社会的制裁
法令違反の事実は公表され、金融機関からの融資停止や、既存の取引先からの契約解除を招くことになります。一度損なわれた国際的な信用を回復するには、膨大な時間と労力が必要となります。
7 専門家による法的サポートの重要性
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。特例の適用可否を判断するには、製品の精密な技術的仕様の把握のみならず、最新の法令、告示、運用通達を横断的に理解しなければなりません。
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。
【当事務所が提供できる主な支援内容】
一 製品の精密な該否判定支援および少額特例適用の妥当性診断。
二 社内輸出管理規定(ICP:内部輸出管理プログラム)の策定および運用指導。
三 経済産業省に対する輸出許可申請および役務取引許可申請の代行。
四 外国ユーザーリストや懸念取引に関するリスク審査のアドバイス。
五 万が一の無許可輸出発覚時の当局への自主申告および事後対応支援。
六 外為法や関税法に関する社内勉強会の講師派遣。
8 まとめ:適正な輸出管理がグローバルビジネスの安定を支える鍵
本日は、少額特例における総価額の積算ルールについて解説いたしました。B氏のようなケースにおいても、当初から「同じ括弧内は合算する」という基本ルールを認識していれば、適正に輸出許可を申請し、法的なリスクを回避してビジネスを展開することができました。
企業としては、輸出する貨物の内容や取引相手の意向のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
少額特例の体系的解説と注意点
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
本日は、輸出実務において非常に多くの方からお問い合わせをいただく「少額特例」について、その法的根拠から適用の限界、そして実務上の陥りやすい罠までを網羅的に解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。グローバルな展開を志す企業様にとって、判断を一つ誤るだけで重大なコンプライアンス違反に直結する重要な局面が示されています。
【相談者】
東京都内で化学工業用部品及び特殊繊維の輸出販売を行うA社 代表取締役 B氏
【相談内容】
当社は今回、アメリカ合衆国の研究機関向けに、自社で取り扱っている特殊なバルブ部品(輸出令別表第1の2の項に該当するもの)を輸出することになりました。当該貨物の総価額は50,000円と非常に少額です。B氏は、輸出実務に詳しい知人から「5万円以下の少額な取引であれば、経済産業大臣の許可は不要である」という話を聞いていました。B氏は、この「少額特例」を適用すれば、煩雑な輸出許可申請手続きを省略して迅速に出荷できると考えておりますが、果たしてこの対応は法的に適切なのでしょうか。また、もし少額特例を誤って適用し、無許可で輸出が行われた場合にはどのような法的責任を負うことになるのか、専門的な見地からの詳細な解説を求めています。
このような事例は、輸出ビジネスを営む企業や、大学等の研究機関において、特にサンプル品や部品の緊急送付を行う際に非常に多く見受けられます。外為法上、貨物を輸出する場合には、リスト規制、キャッチオール規制といった規制の該当性を判断しなければならないことは、貨物の輸出を業として行っている法人や個人事業主の方に広く知られていることと思います。また、大学や各種研究機関においては、共同研究や留学生の受け入れ等、外為法の規制該当性に関して非常に微妙な判断をする必要がある場面も多くあります。本日は取扱いを間違いやすい、あるいは勘違いしやすい事例として、少額特例の論点を網羅的にご紹介いたします。
1 少額特例の定義と法的根拠
少額特例とは、輸出される貨物の総価額が一定の金額以下である場合に、経済産業大臣の輸出許可を不要とする免除規定のことです。この特例の直接的な法的根拠は、輸出貿易管理令第4条第1項第4号に規定されています。
(輸出貿易管理令第4条第1項第5号)
一 (中略)
五 別表第1の5から13まで又は15の項の中欄に掲げる貨物(中略)であつて、その総価額が、当該貨物の区分に応じ経済産業大臣が告示で定める額以下のものを輸出しようとするとき。
この規定に基づき、一定の機微性が比較的低いとされる汎用品(デュアルユース品)については、少額取引に限り手続きの簡素化が認められています。しかし、この特例を適用するためには、貨物の種類、総価額、そして仕向地という三つの要素をすべてクリアしなければなりません。
2 事例に対する正しい対応と解説
冒頭の事例について検討いたします。日本法人A社が輸出しようとしている貨物は、輸出令別表第1の2の項(核燃料物質、原子炉、化学兵器原料等に関連する機微品目)に該当するものです。この場合、正しい対応は以下の通りとなります。
上記の事例では、輸出令別表第1の2の項に該当する貨物とのことですので、少額特例の適用対象外となります。たとえ総価額が1円であったとしても、2の項に該当する以上、必ず経済産業大臣の輸出許可を取得しなければなりません。そのため、少額特例を利用して許可なしに輸出を行うことは、外為法第48条第1項に違反する無許可輸出となり、極めて重いペナルティが発生しますので、十分な注意が必要です。
なお、少額特例は、あくまでも通常兵器関連であるワッセナー・アレンジメントに基づく規制対象貨物の一部(5の項から15の項、ただし一部除外あり)が対象となるものです。これに該当しない限りは貨物の総価額とは関係なく少額特例を使用することは出来ませんのでご注意ください。
3 少額特例の適用要件の網羅的整理
実務において少額特例を正しく活用するために、その適用要件を詳細に整理いたします。少額特例が適用できるかどうかの判断は、以下のステップに従って行う必要があります。
(1)貨物の項番による制限
少額特例が適用できるのは、輸出令別表第1の以下の項番に該当する貨物に限られます。
一 5の項から13の項まで
二 15の項
一方で、以下の項番に該当する貨物は、金額の多寡にかかわらず特例の適用は一切認められません。
一 1の項(武器)
二 2の項(原子力、化学兵器、生物兵器関連)
三 3の項(ミサイル関連)
四 4の項(火薬、通常兵器関連の極めて機微なもの)
五 14の項(その他の機微品目)
冒頭の事例でB氏が勘違いしていたのは、まさにこの項番による制限です。2の項という大量破壊兵器の拡散防止に直結する項目については、国際的な平和及び安全の維持という観点から、少額であっても例外なく政府の管理下に置かれています。
(2)総価額の基準
少額特例における金額の基準は、貨物の項番と仕向地によって以下の二種類に分かれます。
一 総価額が100万円以下のもの
二 総価額が5万円以下のもの
具体的には、輸出令別表第3に掲げられる地域(ホワイト国、現在のグループA)向けの輸出であって、特定の項番(例えば電子計算機等)に該当する場合などには100万円の基準が適用されることがありますが、多くの場合、リスト規制貨物については5万円という厳しい基準が適用されます。この総価額とは、1回の契約で輸出される貨物の価格の合計を指します。
(3)仕向地(輸出先国)による制限
少額特例は、すべての国に対して適用できるわけではありません。輸出令別表第4に掲げられる特定の国々(懸念国や経済制裁対象国等)については、少額特例の適用が一切認められない場合があります。また、特定の項目については、ホワイト国以外への輸出には特例が適用できないといった細かな制約も存在します。
4 実務上の盲点:分割輸出の禁止
少額特例を適用しようとする際に、最も注意しなければならないのが「分割輸出」という脱法行為です。
(分割輸出とは)
本来、1回の取引として輸出されるべき総価額が5万円を超える貨物を、意図的に複数の荷物に分割して発送し、1荷物あたりの価額を5万円以下に抑えることで少額特例を悪用しようとする行為を指します。
(運用通達による規定)
輸出貿易管理令の運用を定める通達(運用通達)においては、同一の相手方に対し、同一の時期に、同種の貨物を分割して輸出する場合には、それらを合算した金額を総価額として判定すべきであると明記されています。これを「分割輸出の禁止」と呼びます。意図的な分割輸出は、不正な手段による無許可輸出とみなされ、重加算税の賦課や刑事罰の対象となるリスクが極めて高いため、絶対に行ってはなりません。
5 役務(技術提供)における少額特例の取り扱い
貨物の輸出だけでなく、技術(プログラムや設計図等)の提供においても少額特例に類する規定が存在します。これは外国為替令(外為令)の規定に基づきます。
技術の提供に関しても、特定の項番に該当する技術であり、かつその取引の対価の額が、経済産業大臣が告示で定める額(原則として100万円)以下である場合には、役務取引許可を不要とする特例があります。しかし、これも貨物の場合と同様に、原子力関連(1の項)や武器関連などの機微な技術については、金額にかかわらず一切の特例が認められません。また、技術の提供先が特定の懸念国である場合や、提供しようとする人物が特定類型に該当する場合などは、判断が非常に複雑になります。
6 少額特例適用の該否判定フローと実務表
輸出者が実務において少額特例を適用する際に、どのようなプロセスで検討すべきかを整理した一覧表を提示いたします。
【少額特例適用可否判定チェックリスト】
検討ステップ|確認すべき事項|判定基準および留意点
--------|----------------|------------
第一ステップ|輸出貨物の項番(1から15項)|1から4項、14項なら即座に適用不可
第二ステップ|仕向地の確認(輸出先国)|別表第4等の懸念国でないか確認
第三ステップ|総価額の算定(1契約合計)|5万円以下か、100万円以下か
第四ステップ|分割輸出の有無の点検|意図的に分割して基準以下にしていないか
第五ステップ|キャッチオール規制の確認|特例対象外でも、用途や需要者に懸念はないか
第六ステップ|判定結果の記録と保存|特例適用を判断した根拠を書面に残す
このように、少額特例は決して「金額が低いから何もしなくてよい」という制度ではなく、むしろ厳格な該否判定を行った上で、初めて適用が可能となる「高度な免除規定」であることを正しく理解する必要があります。
7 外為法の規制に対する厳格な注意喚起
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)には、外為法上の厳格な規制が存在します。
日本国内で購入したものであるから、海外に輸出しても問題ないと安易に考えることは非常に危険であり、日本国内で一般に販売されている物品であっても、海外に輸出する際には規制対象となる品目は多数存在します。
日用品として用いる小さな機械製品であっても、大量破壊兵器や一般兵器に転用することが可能な場合は多数存在します。例えば、高性能なセンサーや小型のポンプ、あるいは特殊な素材が、一見するとただの工業用品に見えても、核兵器の開発やミサイルの誘導装置に不可欠な要素となり得るからです。
また、外為法上の許可を取得することが煩雑であることから、安易に特例の適用があると判断することは非常にリスクの高い行為であるといわざるを得ません。今回のB氏の事例のように、項番の確認を怠って金額だけで判断することは、企業の存続を揺るがす重大な過失となります。
8 法令違反に伴う深刻なペナルティ
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまい、違反した場合には重い刑事罰等も存在します。
(1)刑事罰の内容
第四十八条第一項(輸出の許可)に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金、またはその併科。
さらに、対象となる貨物の価格の五倍が三千万円を超える場合には、その価格の五倍以下の罰金が科されるという「罰金の多額の特例」が存在します。
(2)行政処分
経済産業大臣により、一定期間(最長で三年間)の輸出禁止処分や技術提供の禁止処分が下されることがあります。グローバルに事業を展開する企業にとって、三年の輸出禁止は事実上の倒産宣告に等しい重みがあります。
(3)社会的制裁
法令違反の事実は公表され、金融機関からの融資停止や、既存の取引先からの契約解除を招くことになります。一度失った国際的な信用を回復するには、膨大な時間と労力が必要となります。
9 専門家による法的サポートの重要性
貨物を輸出する場合(及び技術を国際間で移転、提供する場合)において、外為法の規制内容に少しでも不安がある場合には、事前にご相談いただくことを強くお勧めいたします。
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知見を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局や経済産業省がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提示することができます。
当事務所が提供できる主な支援内容
一 製品の精密な該否判定支援および少額特例適用の妥当性診断。
二 社内輸出管理規定(ICP:内部輸出管理プログラム)の策定および運用指導。
三 経済産業省への個別輸出許可申請、役務取引許可申請の代行。
四 外国ユーザーリストや懸念取引に関するリスク審査のアドバイス。
五 万が一の無許可輸出発覚時の当局への自主申告および事後対応支援。
六 最新の法令改正情報を反映した社内教育研修の講師派遣。
10 まとめ:適正な輸出管理がグローバルビジネスを安定させる唯一の道
本日は、少額特例の適用要件とその限界について詳しく解説いたしました。B氏のようなケースであっても、当初から正しい該否判定を行い、少額特例が使えないことを認識した上で適切な許可を得ていれば、法的リスクをゼロにしてビジネスを展開することができました。
企業としては、輸出する貨物の内容や取引相手の意向のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
