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輸入者の製造物責任に関する裁判例

2021-12-27

本日は、輸入者の製造物責任に関連して、珍しい裁判例をご紹介いたします。
事案としては珍しいものですが、考え方は貨物の輸入をビジネスとして行っている方にとっては非常に参考になるものだと思いますので、是非ご参照いただけますと幸いです。

 

1 東京地判平成17年3月24日(判例時報1921・96)

本件は、形式的な輸入者が実質的には輸入を取り次いだにすぎず本邦の責任主体となるかが争われたもので、具体的な事案としては、ストーブを台湾の製造者の日本法人から購入して国内で販売するスーパーマーケットが本邦にいう製造業者に該当するかが問題となりました。

裁判では、販売者であるスーパーマーケットが海外製造元から直接輸入していると見るべき事情があると原告から主張され、形式的な輸入者である日本法人は単なる出先機関にすぎないかが検討されました。
結論として、判旨では、スーパーマーケットが日本法人から仕入れている事情を考慮し、日本法人が実質においても輸入者であると判断しました。

 

2 大阪地判平成22年7月7日判例時報2100・97

本件は、冷凍とんかつの輸入に関する事案ですが、形式的な輸入者から製造物を購入し、他に販売する事業者が、実質的に輸入者に該当するかが問題となりました。
裁判所は、販売事業者が形式的輸入者から購入している事情を考慮し、形式的輸入者が国内における流通の開始者として実質的にも輸入者であるとの判断をしました。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

輸入品の製造物責任の概要について

2021-12-23

本日は、輸入品の製造物責任について、ご紹介いたします。
貨物の輸入をビジネスとして行っている方にとっては、非常に重要な問題ですので、是非ご参照いただけますと幸いです。

 

1 輸入品の製造物責任の概要について

貨物を輸入し、当該貨物に何らかの問題がある場合、一般的に、輸入者は製造物責任を負う可能性があります(製造物責任法3条、2条3項3号)。
輸入者の製造物責任を考える場合、輸入品については、汚染時期が輸入の前後であるかが特に重要な点となります。
例えば、食品を輸入し、細菌性食中毒が発生した場合には、最近が輸入の前に食品に混入したのか、それとも輸入の後に食品に混入したのかが問題となります。
仮に、輸入の前に食品に細菌が混入している場合には、輸入者の製造物責任は肯定されます。他方で、輸入後、輸入者が業者に販売した後に細菌が混入したのであれば、輸入者の製造物責任は否定されます。

以上の参考になる裁判例としては、①カナダ産馬刺がO157に感染した事故に関する裁判例(東京地判平成16年8月31日判時1891・96)、及び②輸入瓶詰オリーブによる食中毒事故に関する裁判例(東京地判平成13年2月28日判タ1068・181)があります。

①では、細菌による汚染経路が不明であるとして輸入者の製造物責任が否定されました。

他方で、②においては、検出された細菌が国内ではほとんど検出されない細菌であるといった特徴等を踏まえて、商品の開封前に細菌が感染したと推定し、輸入者の製造物責任を肯定しました。

また、食品以外でも、輸入クロスバイク自転車で転倒事故が発生した場合に関する裁判例(東京地判平成25年3月25日判時2197・56)があり、個々では、輸入者の製造物責任が肯定されました。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

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未払賃金立替払制度について

2021-12-20

法律上の倒産及び中小企業の事実上の倒産の場合に、賃金の支給がなされないまま退職した従業員に対して、未払賃金の一部が立替払いされる制度として、未払賃金立替払制度があります。
本日は、このような未払賃金立替払制度の概要をご紹介いたします。

 

1 支給要件の概要

事業主が、1年以上事業を行っていたことに加え、法律上の倒産又は中小企業の事実上の倒産に該当することが必要です。
ここで、法律上の倒産とは、破産、民事再生、会社更生、特別清算の手続きを利用する場合を指します。また、中小企業の事実上の倒産とは、一定の中小企業の事業活動が停止し、再開の見込みがなく、従業員に対する賃金の支払能力がない場合を指します。

 

2 支給を受けることができる従業員

事業主の倒産に関する認定申請日の6か月前から2年の間に退職した従業員であり、かつ未払い賃金が2万円以上残っていることが必要です。
また、立替払いの対象となる未払い賃金は、従業員の退職日の6か月前から独立行政法人労働者健康安全機構に対する立替払請求の前日までに賃金の支払期日が到来しているにもかかわらず未払となっている定期賃金及び退職手当であり、実際の立替額はその8割(ただし、退職時の年齢に応じた上限額あり)に限られますので、注意が必要です。そのため、賞与や解雇予告手当等については、賃金には該当せず立替払いの対象とはなりません。

なお、未払賃金立替払制度のこれまでの利用状況は、令和元年度が利用企業数1,991件(支給者数は23,992人)、平成30年度が利用企業数2,134件(支給者数は23,554人)、平成29年度が利用企業数1,979件(支給者数は22,458人)となっております。

 

3 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所では、労働問題・トラブルの予防策から、実際に生じた問題・トラブルへの対応まで、幅広く取り扱っておりますので、未払賃金立替払制度のご利用を検討されている場合は、お気軽にご相談ください。

退職勧奨の違法性が認められた裁判例

2021-12-16

本日は、退職勧奨の違法性が認められた裁判例についてご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 下関商業高校事件(広島高判昭52・1・24労判345・22)

【判示の概要】
退職勧奨が、前年度までの回数を大幅に超えるものであり、しかもその期間も前記のとおりそれぞれかなり長期にわたっているのであって、あまりにも執拗になされた感はまぬがれず、退職勧奨として許容される限界を越えているものというべきである。また本件以前には例年年度内(三月三一日)で勧奨は打切られていたのに本件の場合は年度をこえて引続き勧奨が行なわれ、加えて八木らは被控訴人らに対し、被控訴人らが退職するまで勧奨を続ける旨の発言を繰り返し述べて被控訴人らに際限なく勧奨が続くのではないかとの不安感を与え心理的圧迫を加えたものであって許されないものといわなければならない。
さらに、その後の様々な嫌がらせといえる行為について加味すると、被控訴人らに対し二者択一を迫るがごとき心理的圧迫を加えたものであるといわざるを得ない。

 

以上のとおり、上記裁判例においては、退職勧奨の態様があまりにも執拗であって、退職勧奨として許容される限度を超えて退職を強要したとして、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いが認められました。
あくまでも具体的な事例に基づく判断ですが、他の事案でも参考となる裁判例と考えられます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、人事労務に関するご相談を幅広くお受けしております。
弁護士に相談をした方がよいかお悩みの方もいらっしゃるものと思いますが、お悩みをご相談いただくことで、お悩み解消の一助となることもできます。
日々の業務の中で発生する人事労務に関するご相談や、新しい労働関連法規の成立、修正により自社にどのような影響が生じているかを確認したいといった場合まで、人事労務に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

退職願の撤回の可否について

2021-12-13

労働者が会社に対して退職願を提出した後に、当該退職願を撤回したいとの要望を出してきたという経験のある経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この点について、参考となる裁判例をご紹介いたしますので、ご参照いただけますと幸いです。

 

1 大隈鉄工所事件(最判昭62・9・18労判504・6)

【判示の概要】
労働者の退職願に対する承認について、採用後の当該労働者の能力、人物、実績等について掌握し得る立場にある人事部長に退職承認についての利害得失を判断させ、単独でこれを決定する権限を与えることとすることも、経験則上何ら不合理なことではない。
そして、部長に被上告人(退職願を出した労働者のこと。以下同様。)の退職願に対する退職承認の決定権があるならば、原審の確定した前記事実関係のもとにおいては、部長が被上告人の退職願を受理したことをもって本件雇用契約の解約申込に対する上告人(会社のこと)の即時承諾の意思表示がされたものというべく、これによって本件雇用契約の合意解約が成立したものと解するのがむしろ当然である。

以上のとおり、本裁判例を前提とすると、労働者が退職願を提出し、それを人事権を掌握する人物が受理した場合には、即時に雇用契約の解約合意が成立したと判断される可能性がありますが、あくまでも具体的な事例ごとに慎重に判断すべきですので、ご注意ください。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

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解雇権濫用により解雇無効とした裁判例

2021-12-09

本日は、解雇権濫用により解雇無効とした裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 日本食塩製造事件(最判昭50・4・25労判227・32)

本事案は、ユニオンショップ協定に基づき、労働組合が除名した労働者を、会社側が解雇したところ、解雇の有効性が問題となった事案です。

【判示の概要】
労働組合から除名された労働者に対しユニオン・シヨツプ協定に基づく労働組合に対する義務の履行として使用者が行う解雇は、ユニオン・シヨツプ協定によつて使用者に解雇義務が発生している場合にかぎり、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当なものとして是認することができるのであり、右除名が無効な場合には、前記のように使用者に解雇義務が生じないから、かかる場合には、客観的に合理的な理由を欠き社会的に相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏づける特段の事由がないかぎり、解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。

 

以上の裁判例は、解雇の前提となった労働組合からの除名がそもそも無効であることから、ユニオンショップ協定を踏まえた解雇が無効と判断されたものであり、特殊な事案ではありますが、解雇の前提とした事情が正確かどうかを検討することが必要であるという点は、様々な場面で応用できますので、他の事案でも参考となる裁判例であるものといえます。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

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就業規則上に規定されていない事由を理由とする懲戒処分

2021-12-06

従業員に対して懲戒処分を行う場合、初めに確認する必要があるのは、就業規則上の懲戒事由に該当するかどうかです。
就業規則上の懲戒事由に該当しない場合には懲戒処分を行うことができませんので注意が必要です。
本日は、就業規則上に規定されていない事由を理由とする懲戒処分に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 立川バス事件(東京高判平2・7・19労判580・29)

【判示の概要】
本件で懲戒処分の根拠とされた「重要な経歴資格を偽ったとき」(五三条四号)についても、原則として懲戒解雇を予定し、情状により、出勤停止又は減給若しくは格下げに止めることができる旨を規定していることが明らかである。
このような懲戒に関する規定からみると、五三条は、懲戒解雇にふさわしい態様の非行を対象とした規定であり、懲戒の内容もそれに応じ、仮に情状酌量しても、出勤停止又は減給若しくは格下げに止めるものとして定められているのであり、更にそれを減じて譴責処分に付することは予定されていないものと解される。
したがって、本件のように、就業規則五三条の経歴詐称に該当することを理由に譴責処分に付することは、就業規則に違反し、無効といわなければならない。

繰り返しとなりますが、就業規則上の懲戒事由に該当しない場合には懲戒処分を行うことができませんので、懲戒処分を検討されている場合にはご注意ください。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

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会社側による就労拒否と賃金支払義務について

2021-12-02

本日は会社側による就労拒否と賃金支払い義務に関する裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 新興工業事件(神戸地尼崎支判昭62・7・2労判502・67)

本事件は、提出が義務付けられていた報告書について、提出をしなかった従業員に対して、会社側が就労を拒否した事案において、当該従業員への賃金の支払義務が問題となったものです。

【判示の概要】
原告は就労を被告側に申し出ていたが、雇用関係において、労働者は、従業員の服務上の規律につき使用者の指揮命令に服すべき義務があり、正当な理由なしにその命令を拒否している場合には、たとえ就労の申出をしたとしても、それは労働者としての服務規律に違反し、ひいては職場秩序を乱すものであるから、原則として債務の本旨に従った労務の提供とはいえないものと解すべきである。

本件における原告の作業ミス報告書の提出拒否は、全社的な品質管理の向上を目指す運動の一環として重要な意味を有する作業ミスの自主申告制度を否定し、それに対する協力を拒むものであり、これを放置するときは、右品質管理運動の円滑な遂行を阻害し、その目的達成の支障となる具体的な危険があるものと考えられるし、また、原告は、これを拒否すべき正当な理由がないばかりか、むしろ前述のような独善的な見解のもとに、会社の施策に対し敵意と反感をもち、これにあくまで抵抗しようとしたものであり、再三の説得にも応じようとしないそのかたくなな態度を考えれば、職場秩序の上からも無視できないものがあるといわなければならない。

したがって、原告が、作業ミス報告書の提出を拒否する態度を変えないままで、仕事だけはさせてほしいと申し出たとしても、それは債務の本旨に従った労務の提供といえないばかりでなく、その瑕疵は決して軽度なものではなくて、被告として受忍すべからざるものというべきであるから、その就労の申出を拒否することは正当であり、被告の責に帰すべき事由による就労不能にはならないものとすべきである。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

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輸入貨物の再販売収益を売手に交付する場合について

2021-11-29

本日は、輸入貨物の再販売収益を売手に交付する場合の課税価格の考え方について、ご紹介いたします。
貨物の輸入をビジネスとして行っている方にとっては、課税価格の考え方は非常に重要な問題となりますので、是非ご参照いただけますと幸いです。

 

1 輸入貨物の再販売収益を売手に交付する場合について

買手による当該輸入貨物の処分又は使用による収益で直接又は間接に売手に帰属するものは、加算要素の一つとされております。
また、「輸入貨物の処分又は使用による収益」とは、当該輸入貨物の再販売その他の処分又は使用によって得られる売上代金、賃貸料、加工賃等を構成するものを言うとされております。さらに、輸入貨物の利潤分配取引に基づき売手が買手に対して分配する利潤は、売手に帰属する収益に該当することとされております(関税定率法4条1項5号、関税定率法基本通達4-14)。

注意点としては、例えば、買手と売手が共同で事業を行っており、毎会計年度末に、買手の当期純利益の50%を売手側に配当するという場合、買手から売手への配当金の支払いは、輸入貨物と関係ないものですので、輸入貨物の再販売その他の処分又は使用により得られる収益ではないことから、課税価格に加算する必要はありません。
ただ、ここでの配当金については実質的に判断いたしますので、形式的に配当金として交付しても意味がない点は注意する必要があります。

 

2 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。
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商標法における普通名称の考え方について

2021-11-26

商標法においては、「その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」については、商標登録をすることが出来ないものと規定されております。
本日はこの点について参考となる裁判例をご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。

 

1 つゆの素事件(名古屋地判昭40・8・6判時423・45)

本事案では、「イチビキつゆの素」という商標が既に存在するときに、「サンビシつゆの素」という商標を別の業者が使用したところ、「つゆの素」が普通名称であるかどうかが問題となった事案です。

【判示の概要】
普通名称とは、一般に、当該商品の固有の名称、或はこれに準ずる名称、ないしは、その慣用語または俗用語の名称を指すものと解すべきところ同条は、「普通名称或は取引上普通に同種の商品に慣用される表示を普通に使用される方法を以て使用し、またはこれを使用した商品を販売する行為」は同法に所謂不正競争を構成しない旨明定する。
けだし、普通名称によって表示される商品は特別顕著性に乏しく商品の出所につき何らの指標力を有せず、一般市場における営業主体の誤認を招来すべき恐れなく、従って、これによって生ずべき不正競業を規制すること自体、無意味かつ不必要といわねばならないからである。同法条の法意をかくの如く解する限り、それが普通名称であるかどうかの認定は、これを抽象的に文字自体につき判定すべきではなく、当該文字の用法、なかんずくその使用時期における経済的社会的背景、当該文字と商品との関連、当該商品取引の実質的関係、すなわち商品の出所たる企業の分析、商品の生産流通過程における関与者の諸関係等の相関関係においてこれを決定すべきものといわねばならないのであり、当該名称を選択採用した者が、これを普通名称なりとする動機、意思ないしは確信、或は、一般需要者側に存するそのような認識の有無は、さしてこの点につき係わりなきものとなすべきである。

普通名称といえるかどうかの判断は総合的に判断する必要があり、難しい問題といえますので注意が必要です。

 

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