外国貨物の廃棄および滅却に関する法的手続

0 はじめに:具体的な相談事例の紹介

本日は、輸入取引における貨物の管理に関連して、特にトラブルが発生した際の対応策である、外国貨物の廃棄および滅却の手続について解説いたします。まずは、当事務所に寄せられた、倉庫内での貨物事故をめぐる相談事例をご紹介いたします。

【相談者】

兵庫県内で海外製の高級オーガニックジュースの輸入販売を手掛ける株式会社Ⅿ 代表取締役K氏

【相談内容】

「当社は、欧州からコンテナで大量のジュースを輸入し、神戸港の保税蔵置場に蔵置していました。ところが、輸入申告の準備を進めていた際、倉庫内での荷崩れにより、全体の3割にあたる瓶が割れてしまい、内容物が漏れ出していることが判明しました。残った貨物については通常通り輸入したいのですが、破損した貨物については販売が不可能です。K氏は、破損した分についてはそのまま倉庫業者に頼んで捨ててもらおうと考えましたが、通関業者から「外国貨物のまま勝手に捨てると法律違反になる」と指摘を受けました。破損して価値がなくなった貨物に対しても関税を支払わなければならないのでしょうか。また、法的に正しく処分するためには、どのような手続をいつまでに行うべきか教えてください。」

このような事例は、輸入実務において予期せず発生するリスクの一つです。輸入許可後に内国貨物となった後、当該貨物を廃棄、滅却する場合には、基本的には自由に行うことが出来ます。しかしながら、保税地域にある外国貨物を廃棄、滅却する場合には、一定の手続等が必要となりますので注意が必要です。本記事では、この手続の重要性と法的根拠を詳しく解説いたします。

1 外国貨物の廃棄に関する法的規定と実務

保税地域にある外国貨物を廃棄しようとする者は、あらかじめその旨を税関に届け出なければなりません。これは関税法第34条に規定されています。

【関税法第34条】

外国貨物を廃棄しようとする者は、その旨を税関に届け出なければならない。ただし、亡失し、若しくは滅失したことによりその価値を失つた貨物を廃棄する場合又は税関長が取締り上支障がないと認めてあらかじめ指定した貨物を廃棄する場合は、この限りでない。

この規定は、外国貨物を廃棄しようとする者に対し届け出義務を課すことによって、関税の徴収を確保しようとするものです。なぜなら、廃棄と称して貨物を不正に国内へ持ち出す行為を防ぐ必要があるからです。

ここでいう廃棄とは、腐敗、変質等し、本来の用途に供されなくなった外国貨物をくずとして処分することですが、廃棄しようとする貨物がくずと認められないものであるときは、その現況により輸入手続を要することになります。

つまり、廃棄した後の残存物に何らかの価値がある場合、その「くず」に対して関税が課される仕組みです。廃棄しようとする外国貨物について正規の輸入手続をとることを希望しない場合には、くずとして処分しようとする貨物について、焼却、異物混入その他の人為的処理をすることになります。

2 外国貨物の滅却と関税免除の特例

保税地域にある外国貨物を滅却しようとする者は、あらかじめ税関長の承認を受けなければなりません。これは廃棄よりも一段階厳しい手続ですが、所定の手続をとることにより、滅却の承認を受けた者の関税納付義務を免除するものです。

この「滅却の承認」は、輸入者にとって重要な措置です。税関長は、保税地域にある外国貨物が腐敗し、若しくは変質し、又は他の貨物を害するおそれがある等の事情により、これを滅却することがやむを得ないと認めるときは、滅却の承認をしなければならない点には注意が必要です(関税法第45条第2項)。

冒頭のK氏の事例のように、ジュースが漏れ出して周囲の貨物に被害を与える可能性がある場合、税関長はこの滅却を承認しなければなりません。この承認を受けることで、破損したジュースにかかる関税の支払いを免れることが可能となります。

3 廃棄と滅却の違いと選択基準

実務上、廃棄と滅却をどのように使い分けるべきかを以下の表にまとめました。ワードデータ等に貼り付けて、社内のトラブル対応マニュアルとしてご活用ください。

【外国貨物の処分方法比較一覧表】

項目|廃棄(はいき)|滅却(めっきゃく)|

法的根拠|関税法第34条|関税法第45条第1項ただし書き|

手続の形式|税関への事前の届け出|税関長の事前の承認|

関税の取り扱い|残存物の現況により課税される|原則として関税が免除される|

主な目的|不要となった貨物の処分|災害、腐敗、変質等のやむを得ない処分|

適用の条件|取締り上の支障がないこと|滅却がやむを得ないと認められること|

残存物の価値|くずとして価値があれば輸入手続が必要|価値が完全に消滅することが前提|

4 手続を怠った場合の法的リスクとペナルティ

もし、保税地域にある外国貨物を無断で廃棄したり、適切な承認を得ずに滅却したりした場合、以下のような深刻な法的リスクが発生いたします。

(1)関税の即時徴収(関税法第45条第1項

保税地域にある外国貨物が亡失し、又は滅失したときは、その許可を受けた者から、直ちにその関税を徴収する。

無断での廃棄は「亡失」とみなされ、本来受けることができたはずの免税措置を受けられなくなります。

(2)無許可輸出入等の罪

輸入許可を得ていない貨物を勝手に処分することは、税関の取締権限を侵害する行為であり、関税法上の罰則の対象となる可能性があります(関税法第111条)。許可を受けないで貨物を輸入した(引き取った)ものとみなされる危険性があり、懲役や罰金が科される恐れがあります。

(3)事後調査における信頼の失墜

税関事後調査において、帳簿上の在庫と実在庫が合わないことが発覚し、それが不適切な廃棄によるものであった場合、税関からの信頼を著しく損ないます。これは将来の通関における検査率の上昇や、AEO認定の取り消し等に繋がりかねません。

5 専門家としての視点と実務上のアドバイス

具体的なビジネスの内容を踏まえて、どのような内容を特に注意すべきかを把握した上で、輸入関連の法令に照らして適切となるように、日々のビジネスの内容を精査していくといった作業が必要となります。

外国貨物の処分における実務的アドバイスを3点申し上げます。

①事故発生時の「現場写真と記録の保存」です。滅却の承認を受けるためには、なぜ滅却が必要なのかを客観的に証明しなければなりません。破損状況や汚損の程度を詳しく写真に収め、倉庫業者の事故報告書を確実に確保しておくべきです。

②他法令(廃棄物処理法等)との整合性の確認です。関税法上の廃棄届や滅却承認を得たとしても、実際の処分にあたっては日本の環境関連法規を遵守しなければなりません。産業廃棄物として適切に処理され、そのマニフェスト(産業廃棄物管理票)を保管しておくことが、後の税関への報告においても重要となります。

③通関業者との迅速な連携です。廃棄届や滅却承認申請は、通常の輸入申告とは異なるデリケートな手続です。事故が判明した瞬間に通関業者に連絡し、税関の担当官による現場確認(立会い)をいつ受けるべきかを調整する必要があります。

6 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を有しており、輸出・輸入や通関上のトラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。

弁護士でありながら通関士の専門知識を持つことで、外国貨物の廃棄や滅却という特殊な事態においても、税関当局との論理的な折衝が可能です。特に、大量の貨物の滅却に伴う巨額の関税免除の正当性を主張したり、万が一手続違反を指摘された際の法的防御において、強力なサポートを提供いたします。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。

7 まとめ:適正な終務処理がグローバルビジネスの信頼を築く

輸入ビジネスにおいて、貨物が無事に届くことは当然の目標ですが、不幸にも事故が発生した際に、どのように法的責任を果たして幕を引くかという点も、経営者の手腕が問われる部分です。

企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。

通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。

正しい法的知識に基づき、廃棄や滅却の手続を遺漏なく行うことが、貴社の誠実さを税関に示し、将来の安定した貿易活動を守ることに繋がります。当事務所は、その法的基盤を盤石にするための最善のパートナーとして、常に貴社に寄り添ったアドバイスを提供いたします。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

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