輸入サプリが医薬品扱いで差止めに!廃棄前の対処法を解説

「食品」のはずが「医薬品」に?輸入サプリが税関で止まる理由

海外で人気のダイエットサプリを輸入し、販売しようとした矢先、税関から「医薬品成分が含まれているため通関できない」という突然の通知。食品として仕入れたはずが、なぜ医薬品扱いになってしまうのか。多くの方がこの想定外の事態に直面し、頭を抱えていらっしゃいます。この問題の根源には、日本独自の法規制が存在します。このテーマの全体像については、食品・化粧品・器具の輸入リスク管理で体系的に解説しています。

海外で流通するサプリでも日本の食薬区分で医薬品と判断される場合がある

海外では「食品」として広く流通しているサプリメントでも、日本では「医薬品」と判断されるケースは少なくありません。食品と医薬品を区分する基準は国ごとに異なるためです。日本では、厚生労働省が定める「食薬区分」という基準に基づき、ある成分が食品か医薬品かを判断します。

具体的には、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」というものが存在し、輸入しようとした製品にこのリストに掲載されている成分が一つでも含まれていると、たとえ見た目や目的がサプリメントであっても、日本では「無承認無許可医薬品」と見なされてしまうのです。このように、海外で食品として扱われている製品でも、日本の食薬区分では医薬品と判断される場合があります。この法律で定められたルールにより、輸入が制限される品目に該当してしまう可能性があります。

参照:食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示(厚生労働省)

「食品」と書いてもダメ?薬機法違反のリスク

「パッケージの表示を『食品』に変えれば通関できるのでは?」というご質問をいただくことがありますが、残念ながらその考えは通用しません。食薬区分の判断では成分本質が重要ですが、表示された効能効果、形状、用法用量なども踏まえて医薬品該当性が判断されます。

成分そのものが医薬品に該当する場合、表示をどう工夫しても、その製品は医薬品です。それを食品として輸入・販売しようとする行為は、薬機法(旧・薬事法)違反に該当します。もし無理に通関させようとすれば、最悪の場合、逮捕されるリスクさえ伴います。安易な考えが深刻な事態を招く可能性があるため、法に基づいた適切な対応が不可欠です。特に、輸入代行業者を利用している場合でも、薬機法違反のリスクは事業者自身に及ぶことを理解しておく必要があります。

【実例】ダイエットサプリが医薬品成分に…相談から解決まで

当事務所には、まさに今あなたが直面しているのと同じような状況に陥った事業者様から、数多くのご相談が寄せられます。ここで、一つの典型的な事例をご紹介しましょう。

健康食品販売会社のH社様からのご相談でした。
「アメリカで流行のダイエットサプリを3,000個輸入しました。食品として検疫所に届け出たのですが、『この成分は日本では医薬品に該当する』と言われ、通関がストップしてしまいました。どうすればよいでしょうか…」

お話を伺った際、担当者様は突然のことでひどく動揺され、全量廃棄による多額の損失を前に、途方に暮れていらっしゃいました。

当職はまず、H社様を落ち着かせ、状況を法的に整理することから始めました。厚生労働省の通称「46通知」と呼ばれる通達に基づき、問題となった成分を調査したところ、残念ながら日本では医師の処方が必要な医薬品成分であることが確認されました。これにより、H社様が懸念されていた通り、このサプリを「食品」として日本国内に輸入することは法的に不可能であることが確定しました。

では、仕入れた商品はすべて廃棄するしかないのでしょうか?
いいえ、そうではありません。当職は、H社様の金銭的損失を最小限に抑えるため、全量廃棄を回避する「積み戻し」という選択肢をご提案しました。これは、商品を日本国内には入れず、輸出国(この場合はアメリカ)の発送元へ返送する手続きです。直ちに税関および船会社と交渉を開始し、法的な手続きを代行。結果として、3,000個の商品の大部分を無事にアメリカへ積み戻すことができ、H社様は商品の資産価値を守り、海外での再販という次のビジネスチャンスに繋げることができました。
このように、貨物が税関で止まってしまった場合でも、諦める前に専門家へ相談することで、道が開けるケースは少なくないのです。

全量廃棄は最終手段!損失を抑える「積み戻し」という選択

税関から「医薬品成分含有」を指摘された場合、突き付けられる選択肢は主に「滅却(廃棄)」か「積み戻し」の二つです。多くの事業者は動揺のあまり「もうダメだ」と全量廃棄を選びがちですが、それは最悪の事態を招く最終手段です。ビジネスへのダメージを最小限に抑えるためには、「積み戻し」を積極的に検討すべきです。積み戻しとは、輸入許可が下りなかった貨物を、日本国内に引き取らずに輸出国へ返送する手続きを指します。

「廃棄」と「積み戻し」の費用とメリットを比較

ここで、「廃棄」と「積み戻し」のどちらを選ぶべきか、冷静に比較検討してみましょう。

輸入サプリが医薬品と判断された場合の選択肢「廃棄」と「積み戻し」のメリット・デメリットを比較した図解。廃棄は商品価値がゼロになるが、積み戻しは価値を維持できることを示している。

項目滅却(廃棄)積み戻し
商品の価値ゼロになる維持できる
将来性なし輸出国や第三国での再販の可能性が残る
主な費用廃棄処分費用、倉庫保管料返送運賃、各種手続き費用、倉庫保管料
メリット手続きが比較的早く終わる仕入れ代金の全損を回避できる
デメリット仕入れた商品が全て損失となる返送コストがかかる、手続きに時間がかかる
廃棄と積み戻しの比較

表を見れば明らかなように、廃棄は商品価値を完全に失う、まさに最終手段です。一方、積み戻しは返送費用こそかかるものの、商品の資産価値を守ることができます。多くの場合、積み戻しを選択することが、事業にとってより合理的な判断と言えるでしょう。より詳しい外国貨物の廃棄手続きに関する解説もご参照ください。

積み戻しの手続きの流れと注意点

積み戻しを決断した場合、迅速かつ正確な手続きが求められます。主な流れは以下の通りです。

  1. 税関への事情説明と積み戻しの意思表示:まず、貨物を管轄する税関に対し、医薬品成分に該当するとは知らずに輸入しようとした経緯を説明し、廃棄ではなく積み戻しを希望する旨を明確に伝えます。
  2. 積み戻し申告書の提出:税関の指示に従い、「積戻し申告書」を作成・提出します。
  3. 船会社・航空会社との調整:貨物を輸送してきた船会社や航空会社と連絡を取り、返送のためのスペース(船腹やフライト)を確保し、手続きを進めます。

このプロセスには、いくつかの注意点が存在します。第一に、保税地域での貨物の保管期限は限られており、期限を超えると高額な保管料(デマレージ)が発生します。第二に、税関や船会社との交渉は専門的な知識を要し、スムーズに進まないケースも少なくありません。特に、このようなトラブル対応において、税関検査で貨物が滞留してしまった場合の交渉は、法律と実務の両面からのアプローチが不可欠です。当事務所の弁護士は通関士資格も有しており、こうした複雑な交渉を円滑に進めるための専門知識と経験を兼ね備えています。

同じ失敗を繰り返さないための輸入前3つのチェックリスト

今回のトラブルを乗り越えることはもちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、同じ失敗を二度と繰り返さない体制を築くことです。将来、海外からサプリメント等を輸入する際には、必ず以下の3つのポイントをチェックしてください。

1. 全成分を和名でリストアップし、食薬区分リストと照合する

最も基本的かつ重要なステップです。海外のメーカーが提示する成分表を鵜呑みにせず、含まれる全ての成分を日本語の正式名称(和名)でリストアップしてください。そして、厚生労働省が公開している「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」と一つひとつ丁寧に照合します。この確認作業は、化学品の輸入トラブルのような予期せぬリスクを避けるための重要な手順です。

2. 形状やパッケージの広告表現が医薬品的でないか確認する

食薬区分の判断は成分だけではありません。商品の「形状」やパッケージに記載された「広告表現」も判断材料となり得ます。例えば、注射器を連想させるアンプル形状や、「飲むだけで脂肪が燃焼する」「病気が治る」といった、医薬品的な効果効能を暗示する表現は薬機法に抵触する可能性があります。海外のパッケージをそのまま流用するのは非常に危険です。必ず日本の法律に準拠した形にローカライズ(修正)する必要があります。どのような表現が国内販売時の法規制に抵触するか、慎重な確認が求められます。

3. 不安な場合は、輸入前に専門家へ相談する

セルフチェックには限界があります。特に、過去に規制対象となったことがある成分や、判断に迷う新規の成分を含む商品を扱う場合は、輸入契約を結ぶ前に専門家へ相談することが賢明です。輸入前のリスク確認として、税関の事前教示制度の活用も含め、弁護士などの専門家に相談することは、時間やコストの損失を抑えるうえで有効です。健全な貿易ビジネスのコンプライアンス体制を構築するためにも、事前のリーガルチェックは不可欠です。

税関との交渉や複雑な手続きは、通関・貿易に対応する弁護士へ

輸入サプリが医薬品成分に該当してしまった問題は、単なる手続き上のミスではなく、薬機法や関税法が絡み合う、専門的な法律知識と交渉力が不可欠な事案です。特に、期限が迫る中での税関や船会社との交渉は、事業者様ご自身で対応するには精神的にも時間的にも大きな負担となります。

通関・貿易に強い弁護士が、輸入トラブルで困っている事業者に対して、解決策を提示しコンサルティングを行っている様子。

このような複雑な状況においては、法律の専門家であると同時に、貿易実務にも精通したパートナーの存在が不可欠です。当事務所の代表弁護士は、国家資格である通関士の資格も有しており、法律と実務の両面から、あなたの状況を的確に分析し、損失を抑えるために取り得る対応策を検討します。

全量廃棄という最悪の事態を回避し、大切なビジネスを守るために、一人で抱え込まず、まずは一度、当事務所にご相談ください。あなたの再出発を全力でサポートいたします。

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