ある日、輸入予定の商品について「税関から差止に関する通知が届いた」経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな突然の事態に、輸入事業者の多くは戸惑い、不安を抱えながら対応を迫られます。
税関による輸入の差止は、知的財産権(商標権・著作権など)の侵害が疑われる場合に行われる措置であり、正しく対応しなければ、商品は廃棄され、損害が膨らむおそれもあります。
このページの目次
1 税関での差止とは?
税関は、特定の知的財産権(商標権・著作権・意匠権など)を侵害する物品の輸入を未然に防止するため、輸入通関前に貨物を差止める権限を有しています。
商標権者などがあらかじめ税関に「輸入差止申立」をしていた場合、それに該当する貨物が通関されようとすると、税関が内容をチェックし、該当の可能性があれば輸入者に対して通知書等を送付してきます。
2 通知が届いたときに取るべき初動対応
通知を受け取った場合、焦って自己判断で対応するのは非常に危険です。まずは以下の手順で冷静に対応しましょう。
①通知書の内容を確認する
すなわち、対象商品は何か?差止申立人(商標権者など)の氏名・権利名は?回答期限(通常は10日~14日以内)は?
②輸入した商品に関する権利関係を再検討する
並行輸入か否か?そもそもの真贋の確認?海外取引先との契約内容は?
③提出資料を準備する
3 弁護士に相談することの重要性
①権利侵害があるかどうかの法的評価
②提出書類の作成支援
③必要に応じた税関への同行対応
4 回答を怠るとどうなるか?
期限までに意見書や資料を提出しない場合、税関は輸入者に争う意思がないものと判断し、原則として差止を行うことになります。
この場合、対象貨物は返送や廃棄の措置となり、関税・消費税の返還が認められないこともあります。さらに、継続して同様の輸入を試みても、税関から都度詳細なヒアリングが行われることもあり得ます。
5 今後の再発防止策
税関からの差止通知は、輸入事業者にとってはその後のビジネスにうまく生かすことができる貴重な契機でもあります。特に、再発を防ぐためには、
①事前に税関の「知的財産情報検索システム」で権利の有無を確認
②新たな商品を扱う前に弁護士等の専門家にチェックを依頼
③海外取引先に「権利侵害のないこと」の保証条項を求める
輸入差止は、放置すれば損害が拡大する重大な法的トラブルです。しかし、正しく対応すれば、差止解除や将来の予防につなげることも可能です。
当事務所では、輸入差止対応に関する相談・書類作成・税関への対応支援などを幅広く行っております。突然の通知にお困りの際は、どうぞお早めにご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。