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0 はじめに
まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。
「私は個人事業主として海外から希少なアンティーク時計や宝飾品を輸入し、国内で販売しております。これまでは安価な品物が中心だったため、税関から届くハガキに従って税金を支払うだけでスムーズに荷物を受け取ることができていました。しかし先日、一梱包で価格が30万円を超える商品を輸入した際、税関からこれまでとは異なる複雑な案内が届き、輸入申告が必要である旨の指摘を受けました。郵便物であっても、金額によって手続きがこれほど大きく変わるとは思わず、どのように対応すべきか困惑しております。また、将来的にこれらの商品を海外のコレクターへ輸出する際の手続きについても、正確な法的根拠を知っておきたいと考えております」
国際郵便を利用した物品の送付は非常に簡便な手段ですが、相談者の方のように一定の金額を超える場合には、通常の貨物と同様の厳格な通関手続きが求められます。
以下では、郵便物の輸出入に関する法的な枠組みと実務上の留意点を解説いたします。
1 郵便物の輸出通関手続き
郵便物を利用して物品を輸出する場合、その価格や性質によって手続きが二分されます。
(1)輸出郵便物の簡易手続きと法的根拠
輸出される郵便物のうち、課税価格が20万円以下のもの、または価格に関わらず寄贈物品であるものについては、輸出通関の迅速性を確保する観点から簡易的な手続きが認められています。
この根拠となるのは、関税法第七十六条です。
(2)20万円を超える場合の輸出申告
前述の通り、課税価格が20万円を超える郵便物(寄贈物品を除く)については、輸出者は自ら、または通関業者に委託して輸出申告を行う必要があります。
この手続きにおいては、関税法第六十七条に基づき、貨物の品名、数量、価格その他必要な事項を税関長に申告し、必要な検査を経て輸出許可を得なければなりません。
以下に、輸出郵便物の手続きの区分を整理した図表を掲載いたします。
【表1 輸出郵便物の手続き区分一覧】
貨物の区分/適用される手続き/申告の要否
課税価格が20万円以下/簡易手続き(関税法76条)/輸出申告不要
寄贈物品(価格不問)/簡易手続き(関税法76条)/輸出申告不要
20万円超の一般物品/一般通関手続き(関税法67条)/輸出申告必要
2 郵便物の輸入通関手続き
輸入においても、輸出と同様に課税価格の「20万円」という境界線が極めて重要な意味を持ちます。
(1)輸入郵便物の簡易手続きと免除規定
輸入される郵便物のうち、課税価格が20万円以下のものについては、原則として輸入者は個別の輸入申告を行う必要がなく、郵便事業者が税関に提示するだけで手続きが進みます。
もっとも、特定の郵便物については価格に関わらず、または高額な場合に輸入申告が義務付けられています。具体的に輸入申告が必要となるのは、主に以下のケースです。
①課税価格が20万円を超えるもの(ただし寄贈物品等で、税関長において課税価格の把握や所属区分の判断が容易であると認めるものを除きます)
②課税価格が20万円以下であっても、EPA税率の適用を受けようとするもの ここで注意が必要なのは、輸出とは異なり、輸入においては「寄贈物品」であっても、課税価格を把握することが困難な場合などは、一般の輸入申告を求められる可能性がある点です。
(2)輸入申告が必要な場合の具体的な流れ
課税価格が20万円を超え、輸入申告が必要と判断された郵便物については、名宛人に対して郵便事業者から「外国から到着した郵便物の通関手続のお知らせ」という案内文書が送付されます。この通知を受け取った名宛人は、以下のいずれかの方法を選択して手続きを進めることになります。
①自分自身で税関窓口へ出向き、または輸出入申告システム(NACCS)を利用して輸入申告を行う
②日本郵便株式会社または民間の通関業者に手続きを委託する
輸入申告の際には、仕入書(インボイス)や運賃明細、保険料明細などの価格根拠資料を提出し、関税、消費税、地方消費税を正しく計算して納付する必要があります。
【表2 輸入郵便物における輸入申告の要否判定】
| 区分 | 課税価格 | 申告の要否 |
| 一般の商流品 | 20万円以下 | 申告不要 |
| 一般の商流品 | 20万円超 | 申告必要 |
| EPA適用希望物品 | 価格不問 | 申告必要 |
| 税関長が指定する物品 | 価格不問 | 申告必要 |
3 専門的知見に基づく実務上のアドバイス
郵便物通関において特に留意すべきは「課税価格の算定」です。
関税定率法第四条では、輸入貨物の課税価格は「当該輸入貨物に係る輸入取引がされた時の価格(決定価格)に、当該輸入貨物が輸入港に到着するまでの運賃、保険料その他一切の費用を加算した価格」と定義されています。
郵便物の場合、物品自体の代金だけでなく、国際送料や保険料も合算した金額が「20万円」を超えているかどうかが判断基準となります。この計算を誤ると、意図せず無申告の状態となり、後日、過少申告加算税や延滞税などの附帯税が課されるリスクがあります。
また、関税法では、税関長が郵便物の内容を確認するために、名宛人に対してインボイス等の書類の提出を求めることができると定められています。書類の不備や価格の過少申告が疑われると、貨物の引き渡しが大幅に遅れるだけでなく、税関による厳しい調査の対象となることもあります。
さらに、輸入してはならない貨物(関税法第六十九条の十一)についても注意が必要です。 知的財産権を侵害する物品、例えばブランド品のコピー商品などを郵便で輸入しようとした場合、たとえ一個であっても没収の対象となります。郵便物通関は簡易的である反面、税関のX線検査や開披検査が非常に効率的に行われており、違法物品の検挙率は非常に高いのが現状です。
特に、一時期違法薬物を郵便で輸入しようと試みて検挙されるケースが多数存在しました。このようなことは絶対にやめてください。
4 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関手続きに関する国家資格である通関士資格を保有しております。単なる法律の解釈にとどまらず、実際の通関現場で行われている実務慣行や、税関当局の考え方を踏まえたアドバイスが可能です。
例えば、以下のような事項でお困りの際に、サポートを提供いたします。
①課税価格の決定(評価申告)に関する税関との見解の相違
②実行関税率表上の所属区分(HSコード)の判定に関する助言
③税関事後調査に対する立ち会いおよび対応方針の策定
④関税法違反等で貨物が差し押さえられた場合の権利救済
④効率的な輸出入管理体制(ガバナンス)の構築
郵便物や一般貨物を問わず、輸出入に関してご不明な点や、税関とのトラブル、あるいは将来的な法的リスクを回避するための対策についてのご相談がありましたら、どうぞお気軽に当事務所までお問い合わせください。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

