賦課課税方式による関税の徴収と注意点

1 はじめに―相談事例

まずは、輸入実務において賦課課税方式が問題となる具体的な場面を想定してみましょう。

【相談者】

輸入雑貨販売業 I社 代表者

【相談内容】

「当社では、主に海外のアンティーク家具や雑貨を輸入して販売しております。これまでは通関業者を通じて申告納税方式で関税を支払ってきましたが、今回、海外の知人から個人的に譲り受けた高額な工芸品を、国際郵便(EMS)を利用して日本へ送ってもらいました。

すると、後日、郵便局から『関税等の支払いが必要である』という連絡があり、これまでの輸入手続きとは全く異なる流れで税額が決定されていることに驚きました。自分たちで計算して申告するのではなく、税関側が税額を一方的に決めて通知してくる仕組みがあるのでしょうか。

また、その通知には『賦課決定通知』や『納税の告知』といった言葉が並んでおり、それぞれの法的意味や、万が一税額に納得がいかない場合の対応方法についても知っておきたいと考えております」

このように、ビジネス目的の輸入であっても、郵送物の形態をとる場合や特定の貨物については、通常の「申告納税方式」ではなく「賦課課税方式」が適用されることがあります。以下、関税法に基づく詳細な仕組みを解説いたします。

2 賦課課税方式の原則と対象範囲

関税の確定方式には、大きく分けて「申告納税方式」と「賦課課税方式」の二種類が存在します。その根拠となるのは、関税法第6条の2第1項です。

関税法第6条の2第1項第2号(賦課課税方式)

「賦課課税方式 税関長の処分により、納付すべき税額が確定する方式をいう」

日本の関税制度では、輸入者が自ら税額を計算する申告納税方式が原則ですが、以下の貨物については、税務行政の効率化や客観的な判断の必要性から、例外的に税関長が税額を決定する賦課課税方式が採用されています(関税法第6条の2第1項第2号イからハ)。

賦課課税方式が適用される主な貨物

・入国者が携帯して持ち込む別送品や携帯品

・国際郵便物(一定の金額以下のもの等)

・関税法第6条の2各号に掲げる一定の事実が発生したことにより直ちに徴収される貨物

・過少申告加算税、無申告加算税、重加算税などの附帯税

輸入ビジネスを営む方にとって特に身近なのは、郵便物や附帯税に関する規定でしょう。

3 賦課決定の通知手続き

税関長が賦課課税方式によって関税を課そうとする場合、まず「いくらの税金を課すか」を決定し、それを納税者に伝えなければなりません。これを「賦課決定の通知」と呼びます。

(1)賦課決定通知書の送達

関税法第8条第4項前段には、以下の規定があります。

「税関長は、賦課課税方式が適用される貨物について関税を賦課しようとするときは、納税義務者に対し、その決定をした課税標準及び納付すべき税額その他所要の事項を記載した賦課決定通知書を送達しなければならない」

税関は、輸入された貨物を調査し、その課税標準(価格や数量)と適用される税率を決定した上で、この通知書を発行します。これにより、納税義務の内容が法的に確定することになります。

(2)通知書の送達を要しない特例

ただし、すべてのケースで通知書の送達が必要なわけではありません。迅速な処理が求められる場面では、手続きが簡素化されています。

関税法第8条第4項ただし書きでは、以下の例外が認められています。

「ただし、郵便物に係る関税を賦課する場合その他政令で定める場合には、当該通知書の送達を要しない」

例えば、国際郵便物については、関税法第77条の規定に基づき、郵便事業体を通じて税額を知らせる仕組みがあるため、別途の通知書送達が免除される場合があります。

4 納税の告知手続き

賦課決定によって税額が確定した後、次に必要となるのが「期限までに税金を納めてください」という催告です。これを「納税の告知」と呼びます。

(1)納税告知書の役割

関税法第9条の3第1項には、以下の規定があります。

「税関長は、賦課課税方式による関税で、次に掲げる関税以外のものを徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない」

この納税告知書には、納付すべき税額、納付期限、納付場所が記載されており、納税者はこれに基づいて納付手続きを行うことになります。実務上、賦課決定通知書と同時に、あるいは一つの書面でこれらが示されることもあります。

(2)納税告知の省略ができるケース

賦課決定と同様に、納税の告知についても例外が存在します。

具体的には、入国者の携帯品についてその場ですぐに現金で納付する場合などがこれに当たります。

5 賦課課税方式の主な対象となる貨物と手続き

賦課課税方式が具体的にどのように運用されているかを、主要な例を挙げて整理します。

(1)郵便物(関税法第77条関連)

国際郵便によって輸入される貨物については、賦課課税方式が原則となります。

関税法第77条第1項(郵便物の輸出入の簡易手続)に基づき、郵便物の受取人は原則として輸入申告を行う必要がありません。その代わりに、税関が内容品を確認し、税額を算出します。

算出された税額は、郵便物の交付時に「納付書」として受取人に示されるか、あるいは郵便物の表面に税額が記載されたラベルを貼付するなどの方法で告知されます。

(2)加算税などの附帯税

輸入申告に誤りがあり、後日追加で関税を納めることになった場合、本税(関税)自体は申告納税方式ですが、ペナルティである加算税(過少申告加算税など)は、税関長が計算して賦課する「賦課課税方式」となります。

この場合、税関長は調査結果に基づいて加算税額を決定し、輸入者に対して「賦課決定通知書」を送達します。

6 申告納税方式と賦課課税方式の比較

輸入実務における二つの方式の違いを以下の表にまとめました。

【関税の確定方式比較一覧表】

項目 申告納税方式 賦課課税方式
原則となる対象 一般的な商業輸入貨物 郵便物、携帯品、附帯税等
税額確定の主体 納税義務者(輸入者) 税関長(行政処分)
手続きの流れ 納税申告→許可→納付 税関の調査→賦課決定→告知→納付
根拠条文 関税法第6条の2第1項第1号 関税法第6条の2第1項第2号
訂正の手段 修正申告、更正の請求 不服申し立て(審査請求等)
特徴 輸入者の自主性を尊重 税関が主導して正確性を確保

7 不服申し立てと権利救済

賦課課税方式において税関長からなされた決定や告知の内容に納得がいかない場合、輸入者は法的な救済を求めることができます。

(1)審査請求

税関長が行った賦課決定等の処分に不服があるときは、行政不服審査法に基づき、財務大臣に対して審査請求を行うことが可能です。これは、処分の取り消しや変更を求める手続きとなります。

(2)処分の理由付記

税関長が賦課決定通知書を送達する際には、なぜそのような税額になったのかという「理由」を付記しなければなりません。輸入者はこの理由を精査し、自身の法的解釈と異なる場合には、専門家を通じて適切な反論を検討することになります。

8 実務上の留意点とトラブル回避策

(1)郵便物と商業輸入の境界線

郵便物であっても、その課税価格の合計額が20万円を超える場合などには、賦課課税方式ではなく、通常の申告納税方式による輸入申告が必要となります。この境界線を誤ると、通関手続きが停滞し、納期に影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。

(2)附帯税への対応

事後調査等で加算税の賦課決定通知を受けた場合、本税の更正内容に不服がなくても、加算税の算出根拠や過失の有無について争う余地がある場合があります。賦課決定の内容を鵜呑みにせず、内容を正確に把握することが重要です。

(3)帳簿保存との関係

賦課課税方式で税額が決定された貨物であっても、それがビジネス上の取引であれば、関税法第94条に基づく帳簿保存義務や書類保存義務が免除されるわけではありません。後の税関調査に備え、関連するインボイスや通知書は適切に管理しておく必要があります。

9 弁護士へのご相談をご希望の方へ

関税の賦課決定や納税告知に関する手続きは、関税法だけでなく、行政手続法や行政不服審査法といった公法上の知識が不可欠となる分野です。特に、税関による一方的な処分(賦課決定)が行われる場面では、輸入者と税関の見解が鋭く対立することも珍しくありません。

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国内唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法律と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士に相談をすべきか迷われている段階でも、まずはお気軽にお話しください。

以下のようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

・郵便物として輸入した商品について、納得のいかない税額が賦課された場合

・税関長からの賦課決定通知書に記載された理由が不明確であり、精査したい場合

・加算税の賦課決定を受け、その不当性を主張して審査請求を行いたい場合

・申告納税方式と賦課課税方式の使い分けについて、法的なアドバイスが欲しい場合

専門的な知識を持つ弁護士が介入することで、税関の処分が適正な手続きと法的根拠に基づいているかを厳密にチェックし、貴社の正当な権利を守るための一助となることができます。

輸出・輸入や通関に関するトラブル、税関事後調査を含む税関対応等でお悩みの場合には、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。経験豊富な弁護士が、貴社のビジネスを法的な側面から全力でバックアップいたします。

10 まとめ

賦課課税方式は、税関長が税額を決定するという、輸入者にとっては受け身の手続きとなります。しかし、その根底には関税法第8条や第9条の3といった厳格な法的ルールが存在しており、納税者の権利は守られています。

賦課決定の通知や納税の告知といったステップを正しく理解し、万が一の際には適切な権利救済手段を講じることができる体制を整えておくことが、安定した輸入ビジネスを継続する上でのリスク管理となります。

本記事の解説が、読者の皆様の輸出入実務における一助となれば幸いです。複雑な通関制度や行政処分に直面した際は、一人で悩まず、専門家への相談を検討することをお勧めいたします。

賦課課税方式に関する重要ポイントの再確認

・税関長が税額を決定する方式であり、郵便物等に適用される

・関税法第8条に基づく賦課決定通知により税額が確定する

・関税法第9条の3に基づく納税告知により納付を催告される

・郵便物等の一定の貨物には通知の省略等の特例がある

・不服がある場合には、審査請求などの法的な対抗手段がある

適正な通関実務を通じて、透明性の高いグローバルビジネスを実現していきましょう

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

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