関税法における外国貨物の定義と法的性質

0 はじめに:具体的な相談事例

【相談者】

神奈川県内で精密部品の輸出入および加工を行う株式会社A、物流管理担当のB氏

【相談内容】

「当社では現在、海外から輸入した原材料を保税工場に入れ、国内で調達した部品と組み合わせて製品を製造し、再び海外へ輸出する計画を立てております。先日、通関業者との打ち合わせの中で「保税工場内で内国貨物と外国貨物を混ぜて使用する場合、完成した製品の法的性質がどちらになるかによって、納税義務や通関手続きが変わる」との指摘を受けました。また、万が一、輸出許可が下りた後に国内の倉庫へ戻す必要が生じた場合、その貨物は国内の物として扱ってよいのでしょうか。関税法上の用語である外国貨物の定義と、実務上の留意点、特に混同して使用した場合の規定について詳しく教えてください。」

輸出入をビジネスとして継続的に行う際、税関や通関業者との円滑なコミュニケーションは欠かせません。その対話の中で頻繁に登場し、かつ実務上極めて重要な概念が「外国貨物」です。多くの実務者にとって馴染みの薄い用語かもしれませんが、貨物が「外国貨物」に該当するか「内国貨物」に該当するかによって、関税法上の規制内容や罰則の適用範囲が劇的に異なります。本稿では、関税法第二条に定義される基本的な用語の意義から、保税作業における特殊な規定までを解説いたします。

1 外国貨物の定義と三つのカテゴリー

外国貨物とは、単に「海外で作られた物」を指す言葉ではありません。

関税法第二条第一項第三号においては、以下の三つのいずれかに該当する貨物を外国貨物と定義しております。

(1)輸出の許可を受けた貨物

本邦(日本国内)にある貨物であっても、税関長から輸出の許可を受けた瞬間に、法的には外国貨物へと性質が変化いたします。これには日本で生産された産品のほか、外国から到着して一旦輸入された後に、再び海外へ送り出すために輸出申告を行った貨物も含まれます。実務上、輸出許可を受けた後の貨物は、船積み前であっても税関の監督下に置かれることになります。

(2)外国から本邦に到着した貨物(輸入許可前)

海外から日本の港湾や空港に到着した貨物は、輸入の許可を受けるまでは外国貨物です。保税地域等に蔵置されている状態の貨物がこれに該当いたします。

(3)外国の船舶により公海で採捕された水産物等

公海(いずれの国の領海にも属さない海域)において、外国の船舶によって採捕された魚介類などの水産物も、日本に持ち込まれる際には外国貨物として扱われます。

以下の表は、外国貨物と内国貨物の区分を整理したものです。

【外国貨物と内国貨物の区分一覧表】

|区 分|貨物の状態の詳細|法的な位置付け|

|外国貨物|外国から到着し、輸入許可を受ける前の貨物|関税の徴収権が保留されている状態|

|外国貨物|輸出の許可を受け、まだ本邦から引き出されていない貨物|輸出されるべき貨物として税関の監督下にある状態|

|外国貨物|外国船舶が公海で採捕し、本邦に持ち込まれた水産物|輸入手続きが必要な貨物|

|内国貨物|本邦にある貨物で、外国貨物でないもの|自由な流通が認められている状態|

|内国貨物|本邦の船舶により公海で採捕された水産物|国内産品として扱われるもの|

|内国貨物|輸入の許可を受けた後の貨物|関税の支払いが完了または免除された状態|

2 貨物の性質が変化する法的タイミング

貨物が外国貨物から内国貨物へ、あるいはその逆へと変化するタイミングを把握することは、コンプライアンス遵守の観点から非常に重要です。

(1)輸出許可による変化(関税法第六十七条)

貨物を輸出しようとする者が税関長に申告し、必要な検査を経て許可を受けたとき、その貨物は内国貨物から外国貨物になります。許可を受けた後は、原則として勝手に国内で消費したり、保税地域から無断で持ち出したりすることはできません。

(2)輸入許可による変化(関税法第六十七条)

外国から到着した貨物につき、輸入申告を行い、関税や消費税を納付して税関長の許可を受けたとき、その貨物は外国貨物から内国貨物になります。この許可を得ることで、初めて日本国内での自由な流通や使用が可能となります。

(3)相談事例への当てはめ

株式会社AのB氏が懸念されている「輸出許可後の引き戻し」については、許可を受けた時点で貨物は外国貨物となっているため、これを再び国内に流通させるには、原則として「輸出申告の撤回」や、場合によっては「再輸入」の手続きが必要となります。

3 保税工場における保税作業と「みなす」規定

相談事例のように、保税工場において外国貨物と内国貨物を組み合わせて製品を作る場合、その完成品の法的性質が問題となります。これについては、関税法第五十九条に重要な規定があります。

(1)保税製品の外国貨物視(関税法第五十九条第一項)

保税工場における保税作業によって、外国貨物と内国貨物を使用して製造された製品(保税製品)は、原則としてそのすべてが「外国貨物」とみなされます。

(注)「みなす」とは 本来は性質が異なるもの(この場合は内国貨物の部分を含む製品)を、法令の適用上、一定の目的のために同一のものとして扱い、同一の法律効果を生じさせることを指す法的な表現です。

この規定があるため、完成した製品を国内に引き取る際には、製品全体の価値に対して輸入手続きと関税の支払いが必要になるのが原則です。これは、作業過程で外国貨物と内国貨物を厳密に区分することが実務上困難であるという背景から設けられた規定です。

(2)混用承認による例外規定(関税法第五十九条第二項)

ただし、これには重要な例外があります。

あらかじめ税関長の承認を受けて、外国貨物と同種の内国貨物を混じて使用した場合には、完成した製品のうち、使用した外国貨物の数量に対応する部分のみを外国貨物とみなし、残りの部分は内国貨物として扱うことが可能です。

この承認を得ることで、株式会社Aは国内調達した部品に相当する部分について、無駄な輸入手続きや関税負担を回避できる可能性があります。

4 外国貨物の取り扱いに関する実務上の留意点

貨物が外国貨物である期間中は、税関の強力な監督下に置かれます。これに関連する主な規制は以下の通りです。

(1)蔵置場所の制限(関税法第三十条

外国貨物は、原則として保税地域以外の場所に置くことができません。これを「指定地外蔵置」とする場合には、あらかじめ税関長の許可を得る必要があります。

(2)運送の制限(関税法第六十三条

外国貨物を保税地域間で運送する場合には、原則として税関長に申告し、運送の承認を受けなければなりません。これを「保税運送」と呼びます。

(3)事故等による滅失

保税地域にある外国貨物が亡失したり、滅失したりした場合、原則としてその保管責任者や当該貨物の所有者から直ちに関税が徴収されることになります。相談事例のような精密部品の場合、火災や破損による滅失には細心の注意が必要です。

5 不適切な取り扱いに対する法的ペナルティ

外国貨物の定義を誤解し、必要な手続きを経ずに貨物を動かしたり消費したりした場合、厳しい罰則が課される可能性があります。

(1)無許可輸出入罪(関税法第百十一条

輸入許可を受ける前の外国貨物を引き取ったり、輸出許可を受けて外国貨物となったものを無断で移動させたりした場合、五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

(2)保税地域外蔵置罪(関税法第百十五条の二

許可なく外国貨物を保税地域以外の場所に蔵置した場合も、罰則の対象となります。

6 まとめ:外国貨物の概念理解がビジネスを守る

「外国貨物」という用語の正確な理解は、単なる知識の習得にとどまらず、企業のコンプライアンス体制を構築する上での基盤となります。貨物がどの瞬間に外国貨物になり、どの瞬間に内国貨物に戻るのかを把握しておくことは、意図しない法律違反を防ぎ、かつ保税制度を有効に活用してコストを削減するための第一歩です。

【外国貨物の主要手続きチェックリスト】

|手続きの名称|内容の要約|根拠となる法令|

|輸出申告・許可|内国貨物を外国貨物にするための手続き|関税法第六十七条|

|輸入申告・許可|外国貨物を内国貨物にするための手続き|関税法第六十七条|

|保税作業の届出|保税工場で外国貨物を加工する際の手続き|関税法第五十六条|

|混用承認申請|内国貨物と外国貨物を混ぜて使用する許可|関税法第五十九条|

|保税運送の承認|外国貨物のまま国内を移動させる際の手続き|関税法第六十三条|

|廃棄の届出|外国貨物を廃棄する際の手続き|関税法第三十四条|

貿易実務においては、これらの用語が日常的に飛び交います。株式会社AのB氏におかれましては、保税工場での作業を開始する前に、税関長の混用承認を得ることの是非を含め、自社のオペレーションが関税法のどの条文に依拠しているのかを再確認することをお勧めいたします。

7 弁護士へのご相談をご希望の方へ

当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する国家資格である通関士資格を保有しており、輸出入トラブルや通関トラブルに関するご相談を幅広くお受けしております。

外国貨物の定義を巡る解釈の争いや、保税地域における貨物管理の不備、さらには税関事後調査において外国貨物の取り扱いを指摘された場合など、専門的な知見に基づいた迅速な対応が可能です。

輸出入や通関に関して、お悩みの方や、ご不明な点、ご不安な点等ございましたら、どうぞご遠慮なく当事務所までご相談ください。

【お問合せは、こちらから】

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

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