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0 はじめに:相談事例
海外との直接取引を開始された事業者の方から寄せられた、具体的な相談事例をご紹介いたします。
【相談者】
千葉県内で海外ブランドの家具やインテリア雑貨を輸入販売する株式会社Eの代表、F氏
【相談事例】
「当社ではこれまで、物流全般を大手フォワーダーに一任し、通関手続きもその提携先である通関業者にすべて任せてきました。ある時、輸入した貨物の税番(HSコード)の解釈を巡って税関から疑義を呈され、予定していた納期に許可が下りないという事態が発生しました。通関業者からは『税関の指示に従うしかない』と言われましたが、納得がいかず、自社で法的な根拠をもって主張をしたいと考えています。しかし、そもそも通関業者がどこまでの権限をもって代理してくれているのか、万が一不当な処分を受けた場合にどのような対抗措置があるのかが分かりません。通関業者の本来の業務範囲と、彼らが作成する書類の法的な意味、そして我々荷主が直接関与すべき局面について、専門的な視点から整理したいと考えています」
F代表のような状況は、輸入実務に携わる事業者にとって非常に重要な局面です。
通関業者は輸出入のプロフェッショナルですが、彼らの業務には法律で定められた明確な「独占業務」の範囲があり、また一方で荷主自身が責任を負わなければならない領域も存在します。本稿では、通関業法および関税法に基づき、通関業者の業務内容を詳細に解説してまいります。
1 通関業法における通関業の定義
通関業者の業務を理解するためには、まず根拠法である通関業法を確認する必要があります。通関業とは、他人の依頼を受けて、税関官署に対して行う「通関業務」を業として行うことを指します。
通関業務とは、関税法その他の貨物の輸出入に関する法令(以下「関税関係法令」という。)の規定に基づき、税関官署に対して行われる次に掲げる手続につき、その依頼をした者の代理をすること((中略)輸出申告、輸入申告、不服申立て、主張、陳述の代行)をいう。
さらに、通関業を営むためには財務大臣の許可が必要です(通関業法第3条第1項(通関業の許可))。
通関業を営もうとする者は、財務大臣の許可を受けなければならない。
2 独占業務としての「通関業務」の詳細
通関業者のメインとなる業務は、以下の4点に集約されます。これらは通関業法によって保護された独占業務であり、通関業者以外の者が報酬を得て代理で行うことは禁止されています。
(1)輸出入申告などの手続きの代理
関税法に基づき、貨物を輸出し、または輸入しようとする者は、税関長に申告し、その許可を受けなければなりません。
貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、当該貨物の品名並びに数量及び価格((中略)輸入貨物については、その課税標準となるべき価格)その他必要な事項を税関長に申告し、貨物の検査を経て、その許可を受けなければならない。
通関業者は、荷主から提供されたインボイス(仕入書)やパッキングリスト(梱包明細書)に基づき、複雑な税番分類(HSコードの特定)を行い、適正な関税額を計算した上で、この輸出入申告を代理で行います。
(2)不服申立ての代理
税関の処分に対して不服がある場合に、行政上の救済を求める手続きを代理します。これは、実務上極めて専門性の高い業務です。
税関長がした処分((中略)関税の確定、徴収に関する処分等)に不服がある者は、税関長に対して再調査の請求をすることができる。
税関長への「再調査の請求」に加え、その決定にさらに不服がある場合は財務大臣への「審査請求」を行うことになります。F代表のようなケースで、税関の判断が法律に照らして誤っていると考える場合、これらの不服申立てを通関業者を通じて、あるいは弁護士と共に進めることになります。
(3)主張・陳述の代行
税関による書類審査や貨物検査の際、荷主の代わりに専門的な立場から説明を行います。
税関は、申告された内容を確認するために貨物検査を実施することがあります。この際、通関業者は検査に立ち会い、貨物の性状や用途について税関職員に説明し、申告の正当性を主張します。これは荷主の権利を守るための重要なプロセスです。
(4)通関書類の作成
上記の代理手続きに必要な申告書や、計算書などの書類を作成します。
単なるデータ入力ではなく、膨大な実行関税率表や関税定率法、さらにはEPA(経済連携協定)の原産地規則などを読み解きながら、法的に瑕疵のない書類を作成する高度な知識が求められる業務です。
3 関連業務(非独占業務)の範囲と役割
通関業務以外にも、輸出入には多岐にわたる実務が付随します。これらは「関連業務」と呼ばれ、通関業者の独占業務ではないため、フォワーダーや物流業者、あるいは荷主自身が行うことも可能です。
(1)物流・梱包実務
貨物の船積みや航空機への搭載、海上保険の手配、倉庫への保管、国内でのドレージ輸送などが含まれます。
(2)他法令の手続代行
食品衛生法、植物防疫法、家畜伝染病予防法など、税関以外の官署に対する輸入届出等の手続きです。これらは厳密には通関業法の「通関業務」には含まれませんが、利便性の観点から通関業者が一括して受託することが一般的です。
(3)事前教示の照会
貨物を輸入する前に、税関に公式な回答を求める制度です。
4 通関業務と関連業務の比較一覧表
事業者が実務を委託する際、どの業務が法律上の独占業務であり、どの業務がそうでないかを把握するための対応表を以下に作成いたしました。ワードデータ等に貼り付けて、委託範囲の確認や契約内容の検討にご活用ください。
5 通関業者とフォワーダーの違いと連携
事業者にとって、通関業者と混同しやすい存在にフォワーダー(利用運送事業者)があります。フォワーダーは、自らは運送手段を持たず、船舶や航空機を利用して貨物の運送を引き受ける事業者のことを指します。
多くのフォワーダーは自社で通関業の許可を持っており、運送から通関までを一貫して提供していますが、中には通関業務のみを別の通関業者に再委託しているケースもあります。
事業者が留意すべきは、通関書類の作成にあたっての責任の所在です。フォワーダーが運送のプロであっても、HSコードの分類や関税評価の適正性については、最終的に通関士の資格を持つ専門家がチェックする必要があります。F代表のように、税関との見解の相違が生じた場合には、運送の効率性よりも、通関業法上の専門的な主張が重要となります。
6 税関事後調査への対応と通関業者の役割
輸入許可が下りて貨物が国内に引き取られた後も、事業者の責任が終わるわけではありません。税関は定期的に、輸入者の事務所を訪れて帳簿や書類を検査する「事後調査」を実施します。
税関職員は、関税の確定又は徴収((中略)その他この法律の施行)に関して調査するため必要があるときは、当該調査において徴収すべき関税の納税義務者となるべき者((中略)輸入者等)に質問し、又はその者の帳簿書類その他の物件を検査することができる。
この事後調査において、申告漏れや税番の誤りが指摘された場合、過少申告加算税や重加算税が課されるリスクがあります。通関業者は、事後調査の際にも立ち会い、過去の申告が適正であったことを説明する役割を担います。しかし、通関業者に「すべて任せていた」としても、納税義務者である事業者の責任が免除されるわけではない点に注意が必要です。
7 荷主(輸入者・輸出者)の法的責任とリスク管理
事業者が最も理解しておくべきは、通関業者に業務を委託したとしても、最終的な納税義務や法的な責任は荷主にあるという原則です。
通関業者が過失によって誤った申告をした場合、事業者は通関業者に対して民事上の損害賠償を請求できる可能性がありますが、税関に対する行政上の責任(追徴課税の支払い等)は、あくまで事業者が負わなければなりません。
また、虚偽の申告を行った場合には、罰則の対象となる可能性もあります。
偽りその他不正の行為により関税を免れ、又は関税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
事業者は、通関業者に情報を丸投げするのではなく、自社が扱う商品の材質や用途を正確に把握し、それを正確に通関業者に伝える義務があります。
8 適切な通関業者の選び方と認定通関業者制度
リスクを最小化し、円滑な通関を実現するためには、信頼できる通関業者を選ぶことが不可欠です。一つの指標となるのが「認定通関業者(AEO通関業者)」制度です。
認定通関業者を利用することで、輸入申告と納税申告を分離して行うことができたり(特例申告制度)、貨物を保税地域に搬入する前に輸入許可を受けることができたりといった、物流上の大きなメリットを享受できます。
事業者は、単に通関手数料の安さだけで選ぶのではなく、自社の商品カテゴリーに対する知識の深さや、AEO認定の有無、さらにはトラブル発生時の対応能力を総合的に判断すべきです。
9 弁護士によるリーガルサポートの重要性
通関業者は通関実務のプロですが、税関との法的な争いや、行政訴訟を見据えた高度な対応については、法律の専門家である弁護士の協力が必要になる場面があります。
特に、以下のようなケースでは、単なる通関実務の枠を超えた対応が求められます。
1.税関の処分に対する行政不服審査や訴訟の検討
2.海外取引先との間での、通関遅延や損害賠償に関する契約トラブル
3.関税法違反や外為法違反の疑いによる、当局の調査への対応
4.通関業者の過失を理由とする損害賠償請求の可否判断
当事務所では、代表弁護士が通関士資格を保有しており、実務と法律の両面から事業者をサポートできる体制を整えています。F代表のように、通関業者の説明に疑問を感じたり、税関との間で法的な主張を展開したいと考えたりする場合には、早期に専門家へ相談することが、最善の解決策への近道となります。
10 パートナーとしての通関業者との向き合い方
通関業者は、事業者の海外展開を支えるかけがえのないパートナーです。しかし、その業務内容を正しく理解し、丸投げするのではなく、常にコミュニケーションを取りながら共に適正な申告を目指す姿勢が、現代の事業者には求められています。
本日の論点を念頭に置き、自社のコンプライアンス体制を強化することは、結果として物流のスピードアップとコスト削減に繋がります。
輸入貨物の税番分類に悩まれている場合や、過去の申告に不安がある場合、さらには税関事後調査の対策を講じたいとお考えの際には、ぜひ当事務所までご連絡ください。通関士の知見を持った弁護士として、貴社のビジネスを法的な側面からガードいたします。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

