Archive for the ‘インターネットトラブル全般’ Category
リツイート(リポスト)や「いいね」でも訴えられる?
「共感したから『いいね』を押しただけ」
SNSにおいて、これらの行為は日常的に行われています。
しかし、そのワンタップが、時には数百万円の損害賠償請求に繋がる可能性があることをご存知でしょうか。
今回は、拡散行為(リポスト/リツイート)と、賛同行為(いいね)の法的責任について、最新の裁判例を交えてみていきます。
1 リツイートは「投稿と同じ」とみなされる
他人の誹謗中傷投稿をリツイート(リポスト)する行為について、裁判所は厳しい判断を下しています。
過去の裁判例において、裁判所は「リツイートは、元の投稿内容をそのまま自身のフォロワーに表示させる行為であり、自身の発言として発信したのと同等の責任を負う」と判断しました。
つまり、「他人が書いた悪口だから自分は関係ない」という言い訳は通用しません。
コメントなしのリツイートであっても、その内容が名誉毀損に当たる場合、リツイートした人自身も損害賠償責任を負うことになります。
2 「いいね」を押しただけで違法になる?
これまでは、「いいね」を押す行為は単なる好意的な反応に過ぎず、違法性は問えないと考えられていました。
しかし、状況が変わりつつあります。
2022年の東京高裁判決において、執拗に他者を侮辱する投稿に対して繰り返し「いいね」を押した行為が、名誉感情を侵害する違法行為であると認定されました。
もちろん、すべての「いいね」が直ちに違法になるわけではありませんが、
①悪意を持って執拗に行われた場合
②社会的な影響力がある人物が行った場合
③ハラスメントの一環として行われた場合
などは、法的責任を問われるリスクがあります。
3 安易な拡散(拡散希望)のリスク
「犯人はこいつだ!拡散希望!」
ネット上の私刑(リンチ)や、デマ情報の拡散に加担してしまうケースも後を絶ちません。
もし拡散した情報が「人違い」や「デマ」だった場合、元の投稿者だけでなく、拡散した全員が法的責任を問われる可能性があります。
「みんながやっているから大丈夫」ではありません。被害者が本気になれば、拡散者を片っ端から特定して訴えることも物理的には可能です。
4 もし訴えられたら、または被害に遭ったら
自分が拡散してしまった側で、開示請求の意見照会書が届いた場合は、すぐに弁護士に相談し、適切な回答書を作成する必要があります。場合によっては早期の示談が最善策となります。
逆に、自分の悪口が拡散されて被害に遭っている場合は、元の投稿者(発信源)を特定すると同時に、悪質な拡散者に対しても法的措置を検討しましょう。デマの拡散を止めるには、毅然とした対応が必要です。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
退職者による書き込みへの対応
「転職会議」「OpenWork(旧Vorkers)」「キャリコネ」「en Lighthouse(旧カイシャの評判)」などの転職口コミサイト
これらは求職者にとって有用な情報源ですが、企業にとっては退職者(元社員)による恨み節や、事実と異なる書き込みの温床となりがちです。
こうした専門サイトの削除は、一般的な掲示板とは異なる難しさがあります。
1 各サイトの削除ポリシーと傾向
これらのサイトは、「会員登録した元従業員」から情報を集めるビジネスモデルであり、投稿者の匿名性を強く守る傾向があります。また、サイト側も「多少のネガティブ情報も、求職者にとっては有益」というスタンスを取っているため、問い合わせフォームからの任意の削除依頼には、なかなか応じてくれません。
「事実と異なる」と主張しても、「投稿者の主観的な体験・感想ですので削除できません」と返答されるのが関の山です。
2 削除・特定のための法的手段
任意の削除が難しい場合、裁判所への「仮処分申立て」を行います。
ここで重要になるのが「虚偽の事実」であることの立証です。
例えば、「サービス残業を強要された」と書かれた場合、会社側は「タイムカードと給与明細を照らし合わせ、全額支払われている」という客観的な証拠を提出します。
裁判所が「真実ではないことが明らか」と判断すれば、サイト運営者に対して削除命令やIPアドレスの開示命令が出されます。
3 投稿者は誰か?-退職者の特定
開示請求が進み、プロバイダから契約者情報が開示されれば、投稿者が「どの元社員か」が特定できます。多くの場合、円満退社しなかった人物や、在職中にトラブルがあった人物です。
特定後は、損害賠償請求を行うだけでなく、「退職時の秘密保持誓約書違反」を問える可能性もあります。
4 サイト側とのガイドライン攻防
裁判まで行かなくても、各サイトの「ガイドライン違反」を精緻に指摘することで、削除に成功するケースもあります。
①個人名の記載: 上司や同僚の実名が出ている。
②プライバシー侵害: 社内の特定の個人しか知らない事情が書かれている。
③過度な暴言: 批評を超えた侮辱的表現がある。
転職口コミサイトの悪評は、数年にわたって採用活動の足を引っ張り続けます。
「どうせ消えない」と諦めず、特に悪質なものから優先的に法的対処を行うことが、優秀な人材を確保するための投資となります。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
競合他社による嫌がらせの口コミ―不正競争防止法や偽計業務妨害での対抗措置
「ある時期から急に、低評価の口コミが増えた」「内容が具体的ではなく、同業者しか知らないような専門用語が使われている」
もしこのような不自然な口コミがあれば、それは競合他社による組織的なネガティブキャンペーン(嫌がらせ)かもしれません。
ライバルを蹴落とすための誹謗中傷は、単なる名誉毀損を超えた重い責任を問える可能性があります。
1 「不正競争防止法」違反としての責任
不正競争防止法では、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、または流布する行為(信用毀損行為)」を不正競争行為として禁止しています(同法2条1項15号)。
もし加害者が競合他社であると特定できた場合、この法律に基づいて以下の請求が可能です。
①差止請求: 書き込みの削除や、今後同様の行為を行わないよう求める。
②損害賠償請求: 売上の減少分だけでなく、信用の回復に必要な措置(謝罪広告など)の費用も請求できます。
2 「偽計業務妨害罪」での刑事告訴
嘘の情報を流して他人の業務を妨害する行為は、刑法の「偽計(ぎけい)業務妨害罪」(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)に該当します。
競合他社が身分を隠して(あるいは業者を使って)大量の虚偽口コミを投稿し、お店の予約を妨害したり、問い合わせ対応に忙殺させたりする行為は、立派な犯罪です。警察が捜査に入れば、会社のパソコンなどが押収され、相手企業にとっては致命的なダメージとなります。
3 同業者の特定は難しい?
「ライバル社がやっている気がするが、証拠がない」という場合がほとんどでしょう。
しかし、発信者情報開示請求を行うことで、意外な尻尾が掴めることがあります。
①IPアドレスが会社のものだった: 脇の甘い従業員や経営者が、会社のWi-Fiから投稿しているケースがあります。IPアドレスからプロバイダを特定し、それが法人契約であれば、相手企業を特定できる可能性が高まります。
②投稿のタイミングや内容の類似性: 複数のアカウントを使っていても、接続元が同じであったり、投稿のクセが似ていたりすることから、同一人物による自作自演が暴かれることがあります。
4 泣き寝入りせず調査を
同業者からの嫌がらせは、放置すればエスカレートし、自社の存続に関わります。「もしかして?」と思ったら、疑心暗鬼になる前に弁護士へ調査を依頼してください。法的な証拠を掴めば、相手に対して強力な反撃が可能になります。

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「ブラック企業」という書き込みは消せる?
企業が削除したい書き込みNo.1とも言えるのが、「ブラック企業」というレッテル貼りです。
「残業代が出ない」「パワハラが横行している」「辞めさせてくれない」
こうした書き込みは、事実であれば公益目的の告発ですが、事実無根の嫌がらせであれば重大な名誉毀損です。
この境界線はどこにあるのでしょうか。
1 名誉毀損が成立しない「3つの要件」(公共性・公益性・真実性)
企業に対する批判的な書き込みであっても、以下の3つをすべて満たす場合、違法性はない(名誉毀損にならない)と判断され、削除できません。
①公共の利害に関わる事実であること(公共性): 企業の労働環境は、社会的に関心の高い事柄とされます。
②公益を図る目的であること(公益性): 個人的な恨みではなく、「これから入社する人のために情報を共有する」といった目的があること。
③真実であること、または真実だと信じる正当な理由があること(真実性): 投稿内容が客観的な証拠に照らして事実であること。
つまり、「本当にブラックな実態があるなら、ある程度書かれても仕方がない」というのが法律の原則ではあります。
2 削除できる「ブラック企業」の書き込み
逆に言えば、以下のいずれかに該当すれば削除・特定が可能です。
①事実無根の嘘: 「残業代未払い」と書かれたが、実際には全額支払っている(証拠が出せる)。
②過激な侮辱・罵倒: 批判の域を超えて、「社長は狂っている」「社員は全員犯罪者」など、人格攻撃や侮辱的な表現が含まれている場合。
③抽象的なレッテル貼り: 具体的な根拠を示さずに、ただ「ここはブラック企業だ」「やめておけ」と連呼しているだけの場合。
3 削除できない場合の対応
どうしても削除が認められない(真実性が疑われる)場合でも、放置は危険です。
HP上で「ネット上の書き込みに関する当社の見解」として、誠実な説明や改善策を発表するなどの広報対応が必要になります。
「ブラック企業」という評判を放置せず、法的な削除と社内環境の改善の両輪で対応しましょう。

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従業員によるSNS炎上(バイトテロ)への対応
コンビニのアイスケースに入ったり、飲食店の厨房で不衛生な行為をしたりする動画をSNSに投稿する「バイトテロ」。
一度拡散されると、株価の暴落、店舗の休業、ブランドイメージの失墜など、企業に甚大な損害を与えます。
もし自社でバイトテロが起きてしまったらどうすべきか、また起こさないために何が必要かをみていきましょう。
1 発生直後の初動対応:証拠保全と拡散防止
バイトテロが発覚したら、まずは冷静かつ迅速な対応が必要です。
①証拠の確保: 動画や画像を保存します。投稿者がすぐに削除する可能性があるため、アカウント名やIDも控えます。
②本人への事実確認: 該当する従業員を特定し、ヒアリングを行います。
③対外的な発表: 事実関係を認め、謝罪と今後の対応(厳正な処分など)をHP等で発表します。隠蔽しようとするのが一番の悪手です。
2 従業員に対する法的責任の追及
会社に損害を与えた従業員に対しては、以下の責任を追及できます。
①懲戒処分: 就業規則に基づき、解雇(懲戒解雇)などの処分を行います。
②損害賠償請求(民事): 店舗の清掃費用、廃棄した食材の費用、休業補償、信用の低下による損害などを請求します。ただし、従業員個人に数千万円の損害を全額賠償させることは、支払い能力や労働法の観点(報償責任)から難しく、裁判では「信義則上相当な範囲(損害の一部)」に制限されることが多いです。それでも、「請求する姿勢」を見せることが、他の従業員への抑止力になります。
③刑事告訴(刑事): 威力業務妨害罪、器物損壊罪などで警察に被害届を出し、処罰を求めます。
3 「ソーシャルメディアポリシー」の策定
バイトテロを防ぐためには、予防策が不可欠です。
入社時の研修で「SNSに不適切な投稿をしたらどうなるか(損害賠償や刑事罰のリスク)」を具体的に教育することが重要です。
また、就業規則とは別に「ソーシャルメディア利用ガイドライン」を策定し、誓約書にサインさせておくことも有効です。これにより、万が一トラブルが起きた際に、会社の指導不足を問われるリスクを減らし、従業員への責任追及がしやすくなります。
4 会社を守るために
「悪ふざけでした」では済まされない損害が生じます。
企業のリスク管理として、社内規定の整備や研修の実施について不安がある場合は、弁護士にご相談ください。

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企業のネット風評被害対策
現代のビジネスにおいて、インターネット上の評判(レピュテーション)は企業の資産そのものです。「検索したら悪口が出てくる」というだけで、売上の低下や採用活動の不振に直結するリスクがあります。
本日は、企業が直面する風評被害の実態と、弁護士を入れることで何が変わるのかについて解説します。
1 風評被害が企業に与える「3つの実害」
ネットの書き込みを「たかがネット」と軽視していると、ボディブローのように経営にダメージを与えます。
①売上・集客への影響
飲食店やサービス業では、口コミサイトの点数が0.1下がるだけで数%の売上減になると言われています。BtoB企業でも、取引開始前の与信調査でネガティブな情報が見つかり、契約が見送られるケースがあります。
②採用活動(リクルーティング)への影響
求職者のほぼ100%が、応募前に対象企業を検索します。「ブラック企業」「パワハラがある」といった書き込みがあれば、優秀な人材ほど応募を避けます。内定辞退の増加にも直結します。
③従業員のモチベーション低下
自社が悪く書かれているのを見るのは、既存社員にとっても辛いものです。「うちの会社、こんなに評判が悪いの?」と不安になり、離職率の増加を招きます。
2 「表現の自由」と「企業の名誉」
企業には、個人と同様に「名誉権」や「信用」を守る権利があります。
しかし、企業は社会的な存在であるため、個人に比べて「批判を受け入れるべき範囲(受忍限度)」が広く解釈される傾向にあります。
「料理が美味しくない」「サービスが悪かった」といった顧客の感想レベルや、「残業が多い」といった事実に基づく労働環境への批判は、正当な批評として保護される可能性が高く、簡単には削除できません。
一方で、「事実無根の嘘」「過度な罵倒」「誹謗中傷」については、法的措置により削除や特定が可能です。
3 法務部ではなく外部弁護士に依頼するメリット
多くの企業には法務担当者がいますが、ネット風評被害対策は非常に専門的なノウハウ(IPアドレスの仕組み、各サイトの削除基準、海外法人への送達など)を要する特殊分野です。 通常の企業法務(契約書チェックなど)とは勝手が違うため、社内で対応しようとすると時間がかかり、その間に被害が拡大してしまいます。
ネット問題に特化した外部弁護士であれば、「どの書き込みなら消せるか」の目利きが早く、最短ルートでの削除・開示請求が可能です。

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加害者が特定できた後の選択肢―「訴える」か「示談」か「刑事告訴」か
発信者情報開示請求が成功し、加害者の氏名と住所が判明しました。
長い戦いの末に手に入れた相手の情報ですが、これを使って、次になにをすべきでしょうか?被害者には、大きく分けて3つの選択肢があります。
それぞれの特徴と選び方をみていきます。
1 ルート1:示談交渉(話し合い)
弁護士を通じて相手に内容証明郵便を送り、裁判外での和解を目指す方法です。
①メリット:スピード解決、柔軟な条件設定(削除、謝罪、接触禁止など)、秘密厳守。
②デメリット: 相手が無視したり、条件に応じない場合は決裂する。
多くのケースでは、まずこの示談交渉を行い、相手の誠意や支払い能力を確認します。相手が反省して素直に応じれば、最もコストパフォーマンスの良い解決となります。
2 ルート2:民事訴訟(損害賠償請求訴訟)
示談が決裂した場合、あるいは最初から「話し合うつもりはない」という場合に、裁判所に訴状を提出して訴訟を起こします。
①メリット: 裁判所による公的な「判決」が得られる。強制執行(差し押さえ)の権限が得られる。
②デメリット: 時間がかかる(半年〜1年)。弁護士費用が追加でかかる。法廷で公開される(傍聴可能になる)。
3 ルート3:刑事告訴
警察や検察に告訴状を提出し、犯罪としての処罰を求める方法です。
民事(お金)とは別の手続きであり、並行して行うことが可能です。
①メリット: 相手に「刑罰(罰金刑など)」を与え、前科をつけることができる。強力な社会的制裁になる。
②デメリット: 警察が受理してくれるとは限らない(ハードルが高い)。被害者にお金が入るわけではない。
悪質な脅迫や、リベンジポルノ、執拗な名誉毀損などでは、刑事告訴を積極的に検討すべきです。 「刑事告訴を取り下げる代わりに、民事の示談金を上乗せする」という交渉も実務ではよく行われます。
「とにかく謝罪させたい」 「かかった費用と慰謝料を回収したい」 「社会的に抹殺したい(厳罰に処したい)」
被害者の方が何を最も望むかによって、選ぶべき選択肢は変わります。 特定できた段階で、弁護士とじっくり話し合い、あなたの気持ちが一番晴れる解決方法を選ぶことが重要ですが、見切り発車ですすむことにはリスクも伴います。
こんなはずではなかった、という風にならないように最初の段階で注意しながら進むことが重要です。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
相手に「お金がない」と言われたら?賠償金の回収方法と差し押さえについて
「申し訳ありませんが、お金がなくて払えません」
示談交渉や裁判の場において、加害者がこう言ってくることはよくあります。
「無い袖は振れない(資産がない人からは回収できない)」というのは法律の世界でも厳しい現実ですが、すぐに諦める必要はありません。
相手の「お金がない」が本当なのか、そしてどうやって回収するかについてみていきます。
1 本当に「無一文」なのか?資産調査
単に「払いたくない」から「金がない」と嘘をついている可能性があります。
相手の生活状況を見極める必要があります。
①職業・勤務先: 正社員で働いているなら、給与があります。
②自宅: 持ち家か賃貸か。持ち家なら不動産という資産があります。
③生活ぶり: SNSなどで豪遊している様子はないか。
弁護士会照会などの制度を使って、相手の口座情報などを調査できる場合もありますが、限界もあります。
2 強制執行(差し押さえ)
裁判で勝訴判決を得るか、公正証書で合意していれば、裁判所に申し立てて「強制執行(差し押さえ)」を行うことができます。
①給与の差し押さえ
相手の勤務先がわかれば、給料の一部(手取りの4分の1など)を毎月天引きして、直接被害者に支払わせることができます。これは相手が会社を辞めない限り続くため、非常に強力な回収手段です。また、会社にトラブルがバレるため、相手への社会的制裁にもなります。
②預金口座の差し押さえ
銀行口座を特定して、残高を没収します。タイミングによっては残高が少ないこともあります。
③動産・不動産の差し押さえ
自宅や車などを競売にかける手続きですが、費用と手間がかかるため、少額の慰謝料回収ではあまり行われません。
3 分割払いの交渉
相手が本当に資産を持っていない場合、無理に一括払いを求めても「自己破産」されてしまえば元も子もありません。
その場合、現実的な落とし所として「分割払い」での和解を検討します。
例えば、「毎月3万円ずつ、2年かけて支払う」といった合意をし、「もし支払いが2回遅れたら、残額を一括で支払う(期限の利益喪失条項)」という条件をつけることが一般的な対応です。これにより、相手に「毎月働き続けて払い続ける」という反省と責任を負わせ続けることができます。
「相手が無職の無敵の人(失うものがない人)だった」という最悪のケースもゼロではありません。しかし、開示請求を進める段階で、相手がどのような人物か(プロバイダが大手キャリアなら支払い能力がある可能性が高い、など)ある程度推測できることもあります。 回収リスクも含めて、費用対効果を弁護士とシビアに検討することが重要です。

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加害者が「未成年」だった場合の対応
開示請求の結果、届いた契約者情報を見て驚愕するケースがあります。
「書き込んでいたのが、未成年の学生(中学生・高校生)だった」
実は、ネットトラブルにおいて加害者が未成年であるケースは決して珍しくありません。
相手が未成年の場合、責任を誰に、どのように問えばよいのでしょうか?
1 未成年者本人の責任能力
日本の民法では、未成年者であっても「自分の行為の責任を弁識する能力(責任能力)」があれば、損害賠償責任を負うとされています。この能力が認められる年齢の目安は、概ね「12歳〜13歳(中学生)以上」です。
つまり、中学生以上の加害者であれば、法律上は「未成年者本人」を訴えることになります。 しかし現実問題として、中高生には数百万の賠償金を支払う経済力(資力)がありません。本人を訴えて勝訴しても、お金を回収できない可能性が高いのです。
2 親(親権者)に請求できるか?
「子供がやったことなのだから、親が払うべきだ」と考えるのが通常ですが、法律は必ずしもそうではありません。子供に責任能力がある場合(中学生以上)、原則として親は法的責任を負いません。
ただし、例外があります。「親の監督義務違反」が認められる場合です。
例えば、「子供が日常的にネットで違法行為をしているのを知っていたのに放置した」「危険な使い方を容認していた」といった事情があれば、民法714条に基づき、親に対して損害賠償請求ができる可能性があります。
3 実務上の解決:親が出てくることがほとんど
法律論では上記の通りですが、実際の示談交渉の現場では異なります。
弁護士から未成年者宛に内容証明郵便が届けば、通常は親がそれを見ます。通常であれば、「子供が迷惑をかけて申し訳ない」「子供に前科をつけたくない」「学校に知られたくない」と考え、親が子供の代わりに示談金を支払って解決するケースが大半です。
4 学校への通報はできる?
「学校に通報して反省させたい」という要望もよく頂きます。
しかし、弁護士が代理人として学校に通報することは、原則として行いません。名誉毀損事件はあくまで私人間のトラブルであり、学校は捜査機関ではないからです。また、学校へ知らせることで加害者がいじめに遭ったり退学になったりした場合、逆に「過剰な制裁だ」としてこちらが名誉毀損等で訴えられるリスクもゼロではありません。
ただし、いじめ事案などで「学校内での指導」が必要なケースでは、教育委員会や学校と連携をとることもあります。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
ネット誹謗中傷の慰謝料相場
苦労して発信者情報開示請求を行い、ついに犯人を特定した。
次に待っているのは、「相手にいくら請求できるのか」という損害賠償(慰謝料)の話です。
「数百万円とれるはずだ」 そう期待される方も多いですが、日本の裁判基準における慰謝料の相場は、残念ながら欧米に比べて決して高くはありません。今回は、権利侵害の種類ごとの慰謝料相場と、金額が増減するポイントについてみていきます。
1 権利侵害のタイプ別・慰謝料相場
裁判になった場合、認められる慰謝料の目安は以下の通りです。
①名誉毀損(個人の場合)
相場:10万円〜50万円(悪質な場合で〜100万円程度)
具体的な事実を挙げて社会的評価を低下させた場合です。
内容の悪質さ、拡散の広さ、被害者の属性(一般人か有名人か)などによって変動します。
②侮辱・名誉感情の侵害
相場:1万円〜10万円(悪質な場合で〜30万円程度)
「バカ」「ブス」などの罵倒が典型的な事例です。
事実の摘示がないため、名誉毀損に比べて低くなる傾向があります。
③プライバシー侵害
相場:10万円〜50万円
住所、氏名、病歴、ヌード写真などの流出です。
情報の内容がセンシティブであるほど(例:リベンジポルノなど)、金額は高額化し、100万円を超えるケースもあります。
④企業・法人への名誉毀損
相場:50万円〜100万円
法人の場合、「精神的苦痛」はないとされますが、「無形の損害(信用毀損)」として賠償が認められます。また、売上減少などの「実損害」を証明できれば、その逸失利益も上乗せして請求可能です。
2 慰謝料が増額される要因
以下のような事情がある場合、相場よりも高い慰謝料が認められる可能性があります。
①執拗さ: 長期間にわたり、何百回も繰り返し投稿している。
②悪質性: 脅迫めいた内容や、差別的な内容が含まれている。
③拡散力: 閲覧数の多いまとめサイトや、インフルエンサーによる拡散。
④被害の深刻さ: 投稿が原因で退職に追い込まれた、精神疾患を患った(診断書がある)、婚約破棄になったなど。
3 「調査費用(弁護士費用)」はどこまで請求できる?
慰謝料とは別に、犯人を特定するためにかかった「調査費用(発信者情報開示請求費用)」も損害として認められます。
ただし、全額認められるとは限りません。 裁判所の傾向として、実際にかかった費用の「相当額(一部)」や、「慰謝料額の1割程度」に制限されることがあります。 しかし近年の判決では、特定手続の複雑化を考慮し、調査費用を広めに認めるケースも増えてきています。

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