Twitter(X)やInstagramでよく見かける「フォロー&リポストでプレゼント」「いいね&コメントで抽選」というSNSキャンペーンは、短期間で認知度やフォロワーを増やせる有効な施策です。
しかし、手軽に実施できる一方で、法的には注意すべき点が少なくありません。特に問題となるのが、景品表示法上の景品規制、ステルスマーケティング規制、そして各SNSプラットフォームの利用規約・ガイドラインです。
「他社もやっているから大丈夫」「SNS上の企画だから法律はあまり関係ない」と考えて高額な景品を設定したり、応募条件を曖昧にしたまま実施したりすると、景品表示法違反、炎上、アカウント制限、キャンペーン中止といったリスクが生じます。大規模なキャンペーンほど、企画段階で法務チェックを行う必要があります。
景品表示法は、事業者が過大な景品を提供することにより、消費者が景品に惑わされて不利益な取引をしてしまうことや、事業者間の不健全な競争が生じることを防ぐため、景品類の最高額や総額などを規制しています。消費者庁も、景品表示法では、景品類の最高額・総額等を規制することにより、一般消費者の利益を保護し、過大景品による不健全な競争を防止していると説明しています。
このページの目次
1 景品表示法上の基本的な考え方
景品表示法上の「景品類」に該当するかどうかは、単に「プレゼントを配るかどうか」では決まりません。重要なのは、①顧客を誘引するための手段として、②自己の商品・サービスの取引に付随して、③物品、金銭その他の経済上の利益を提供しているかどうかです。
そのため、SNSキャンペーンであっても、商品購入、来店、サービス利用、レシート提出、有料会員登録、購入商品の感想投稿などを応募条件にする場合には、取引に付随する景品提供として、景品規制の対象になる可能性が高くなります。
2 フォロー&リポストは「オープン懸賞」と整理できる場合が多い
SNSキャンペーンで最初に確認すべきなのは、その企画が「オープン懸賞」なのか、それとも景品規制の対象となる一般懸賞・共同懸賞・総付景品なのかです。
消費者庁は、ウェブサイト等で広く告知され、商品・サービスの購入や来店を条件とせず、ウェブサイトや電子メール等で申し込める抽選企画については、景品規制が適用されないと説明しています。このような企画は一般に「オープン懸賞」と呼ばれ、現在、提供できる金品等について具体的な上限額は定められていません。
たとえば、商品の購入を条件とせず、誰でも公式アカウントをフォローし、対象投稿をリポストすれば応募できるキャンペーンは、一般にオープン懸賞として整理できる場合が多いです。実務解説でも、SNS上の公式アカウントをフォローしたり、特定の投稿をリツイートしたりする行為は、商品購入をしなくても可能であり、購入によって応募や当選が容易になるものでもないため、取引付随性が認められず、景品表示法の規制を受けないと整理されています。
もっとも、SNSで実施すれば常にオープン懸賞になるわけではありません。たとえば、次のような条件がある場合には、景品規制の対象になる可能性があります。
- 商品購入者だけが応募できる
- レシート画像の投稿・アップロードが必要
- 購入商品の感想投稿が応募条件になっている
- 来店者限定で応募コードを配布する
- 有料会員だけが応募できる
- 商品パッケージ内のシリアルコードが必要
- サービス利用者だけに抽選権を与える
このように、購入や利用によって応募が可能または容易になる設計では、取引付随性が認められる可能性があります。
3 一般懸賞に該当する場合の上限額
キャンペーンが一般懸賞に該当する場合、景品の最高額と総額に制限があります。一般懸賞では、懸賞に係る取引価額が5,000円未満の場合は取引価額の20倍まで、取引価額が5,000円以上の場合は10万円までが景品類の最高額とされ、総額は懸賞に係る売上予定総額の2%以内とされています。
したがって、SNSキャンペーンであっても、購入者限定の抽選や、購入商品の感想投稿を条件にする企画では、景品額の上限を必ず確認する必要があります。
一方で、購入を条件としない完全なオープン懸賞であれば、消費者庁の説明上、景品規制は適用されず、具体的な上限額はありません。ただし、高額景品を設定する場合には、法的な上限だけでなく、応募者への表示の明確性、抽選の公正性、税務上の取扱い、プラットフォーム規約、炎上リスクも含めて検討すべきです。
4 プラットフォーム規約・ガイドラインの確認
SNSキャンペーンでは、法律だけでなく、各プラットフォームの利用規約やキャンペーンガイドラインも重要です。景品表示法上問題がない場合でも、プラットフォーム側からスパム行為、不正なエンゲージメント誘導、タグ付けの乱用、複数アカウント応募の助長などと判断されると、投稿の削除、キャンペーン停止、アカウント制限・凍結につながる可能性があります。
特に注意すべきなのは、次のような設計です。
- 複数アカウントでの応募を促す
- 同じ内容の投稿を大量にさせる
- 関係のないユーザーへのタグ付けを求める
- 「いいね」「リポスト」「フォロー」を過度に対価化する
- 実際には存在しない景品や過大な当選確率を表示する
- 当選者に広告投稿をさせるのにPR表記を求めない
- 個人情報の取得目的や利用範囲を明示しない
プラットフォーム規約は変更されることがあるため、キャンペーン開始前に最新版を確認し、応募条件や禁止事項を応募規約に反映することが必要です。
5 抽選・当選者選定の公正性
「抽選で100名様に当たる」と表示した以上、実際に公正な抽選を行い、表示どおりに景品を提供しなければなりません。
たとえば、実際には抽選していない、社内関係者や特定のインフルエンサーを優先的に当選させている、当選者数を表示より少なくしている、景品を発送していない、当選発表後に条件を変更している、といった運用は重大な問題です。景品表示法上の有利誤認や不当表示の問題になり得るだけでなく、企業の信用を大きく損ないます。
実務上は、次の事項を事前に定めておくべきです。
- 応募期間
- 応募資格
- 応募方法
- 景品内容
- 当選者数
- 抽選方法
- 当選通知方法
- 当選辞退・無効条件
- 景品発送時期
- 個人情報の利用目的
- 複数応募・不正応募への対応
- キャンペーン中止・変更時の取扱い
応募規約には、「厳正なる抽選」といった抽象的表現だけでなく、不正応募を無効にできること、当選連絡期限、景品発送先の制限、個人情報の利用目的などを具体的に記載する必要があります。
6 ステルスマーケティング規制への注意
SNSキャンペーンでは、当選者やインフルエンサーに投稿を依頼する場面でも注意が必要です。
2023年10月1日から、景品表示法上の不当表示として、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示、いわゆるステルスマーケティングが規制対象となりました。これは、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す表示を問題とするものです。
事業者が第三者に対して投稿内容を依頼・指示している場合や、明示的な指示がなくても、無償の商品提供を受けた第三者が事業者の方針に沿った投稿をしていると評価される場合には、事業者の表示と判断される可能性があります。
そのため、当選者に対して「商品を使った感想を投稿してください」「指定ハッシュタグでレビューしてください」「好意的な内容で紹介してください」と依頼する場合には、投稿上、広告・PR・キャンペーン参加投稿であることが一般消費者に分かる表示を求めるべきです。
具体的には、次のような対応が考えられます。
- 「#PR」「#広告」「#キャンペーン提供」等の明確な表示を求める
- Instagramではタイアップ投稿等の機能を利用する
- 投稿依頼文にPR表記義務を明記する
- 投稿内容を事業者が事前承認する場合は特に広告性を明示する
- インフルエンサー契約にはステマ規制対応条項を入れる
- 投稿後にPR表記が抜けていないか確認する
「当選者が自発的に投稿しただけ」といえる場合と、事業者が投稿を依頼・誘導した場合とでは、リスクが異なります。景品を渡して投稿を求める設計にする場合は、ステマ規制を前提に運用するべきです。
7 応募規約に入れるべき主な項目
SNSキャンペーンを実施する場合、応募規約は必須です。少なくとも次の項目を入れてください。
- キャンペーン名
- 主催者
- 応募期間
- 応募資格
- 応募方法
- 景品内容・当選者数
- 抽選方法
- 当選通知方法
- 当選連絡期限
- 景品発送時期
- 応募無効事由
- 複数アカウント・不正応募の禁止
- 投稿内容に関する禁止事項
- 第三者の権利侵害禁止
- 個人情報の取扱い
- キャンペーンの変更・中止
- プラットフォームがキャンペーンに関与していない旨
- 問い合わせ先
- 準拠法・管轄
特に、XやInstagramのキャンペーンでは、偽アカウントによる当選連絡詐欺が発生しやすいため、当選連絡方法を明確にし、「クレジットカード情報の入力を求めない」「当選通知は公式アカウントからのみ行う」などの注意喚起も入れるべきです。
8 実施前のチェックポイント
SNSキャンペーンを始める前に、最低限、次の点を確認してください。
- 商品購入・来店・サービス利用を応募条件にしていないか
- 購入によって応募や当選が容易になる設計になっていないか
- 一般懸賞に該当する場合、景品額・総額が上限内か
- 景品内容、当選者数、応募期間が明確か
- 抽選方法が公正で説明可能か
- プラットフォーム規約に違反していないか
- 複数アカウント応募やスパム投稿を助長していないか
- 当選者に投稿を依頼する場合、PR表記を求めているか
- 個人情報の取得・利用目的を明示しているか
- 応募規約を公開しているか
- キャンペーン運用担当者が規約どおりに対応できるか
9 まとめ
フォロー&リポスト型のSNSキャンペーンは、商品購入や来店を条件とせず、誰でも応募できる設計であれば、オープン懸賞として景品表示法上の景品規制を受けないと整理できる場合が多く、具体的な景品額の上限も定められていません。
一方で、商品購入、レシート提出、来店、購入商品の感想投稿などを条件にする場合には、取引付随性が認められ、一般懸賞等として景品額の上限規制を受ける可能性があります。一般懸賞では、取引価額が5,000円未満の場合は取引価額の20倍まで、5,000円以上の場合は10万円まで、総額は売上予定総額の2%以内という制限があります。
さらに、SNSキャンペーンでは、プラットフォーム規約、抽選の公正性、個人情報管理、ステマ規制への対応も不可欠です。当選者やインフルエンサーに投稿を依頼する場合には、広告・PRであることが分かる表示を求める必要があります。ウェブ企画段階で、景品額、応募条件、投稿依頼の有無、抽選方法、応募規約を確認してから実施することが重要です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
