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1 広告関連法規に違反した場合に雑誌社や広告代理店が責任を負うかどうか
景品表示法上で禁止される優良誤認表示や有利誤認表示を行った場合に、措置命令や課徴金納付命令の対象となるのは、あくまでも広告主です。
また、特商法や健康増進法等その他の法律上も、広告規制違反をした場合に行政処分の対象となるのは、基本的には広告主です。
しかしながら、広告媒体者や広告代理店が違法な広告表示に関して民事上の責任を負うと判断された事例もありますので、本日はその内の一つの事例をご紹介いたします。
2 広告媒体者や広告代理店が責任を負うと判断された事例
大阪地判平成22年5月12日判時2084号37頁
(1)事例の紹介
事例としては、原告が、被告A社が発行するパチンコ情報を掲載する雑誌を購入し,当該雑誌に掲載されていたパチンコの「打ち子」の募集、及び高確率でパチンコに勝つ攻略法を提供するという2件の公告を見て,それぞれの広告主に電話したところ、虚偽の話に騙されて、結局、保証金等の名目で金員を詐取されたとして,被告A社及び本件各広告を雑誌に提供した広告代理店B社に対して、不法行為による損害賠償請求をした事案です。
(2)判旨の紹介
裁判所は、「雑誌広告は,雑誌上への掲載行為によって初めて実現されるものであり,その広告に対する読者らの信頼は,当該雑誌やその発行者に対する信頼と全く無関係に存在するものではなく,広告媒体業務にも携わる雑誌社及びその広告の仲介・取次をする広告代理店としては,雑誌広告の持つ影響力の大きさに照らし,広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって,読者らに不測の損害を及ぼすことを予見し,又は予見し得た場合には,真実性の調査確認をして虚偽広告を読者らに提供してはならない義務があり,その限りにおいては雑誌広告に対する読者らの信頼を保護する必要があると解され,その義務に違反した場合は不法行為が成立すると解される。」と判示し、雑誌の広告主の詐欺行為を認定した上で、被告らの過失による不法行為責任を肯定しました。
もっとも、原告側にも過失があるとして過失相殺も認めました。
この判例は、「広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情」があるかどうかを判断の前提としておりますので、必ずしも、広告媒体者や広告代理店に対して広告内容の真実性の調査確認義務を幅広く認めたとまでは言い切れません。
しかしながら、広告媒体者や広告代理店が責任を負う場合があることを判示した点は非常に参考となる裁判例であることは間違いないものと考えられます。
3 広告のリーガルチェックに関しては、まずは弁護士にご相談ください
広告のリーガルチェックは、様々な法規制を踏まえて行う必要がありますので、継続的に弁護士にご相談いただくことが重要です。
広告上のトラブルが発生した場合には、行政上の責任、刑事罰、民事上の責任、一般消費者からの信頼の低下等様々なデメリットがありますので、可能な限りそれらのデメリットの発生は避けた方がビジネスにとって望ましいことは間違いありません。
当事務所は、企業法務、インターネットトラブル、広告法務等を幅広く取り扱っておりますので、広告上のトラブルなど広告に関してお困りの場合にはまずはお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。