広告に登場する芸能人等が民事上の責任を負うと判断される場合

1 広告に登場する芸能人が民事上の責任を負うと判断されるかどうか

広告に登場する芸能人は、広告の内容に影響を与えるべき地位にはないことから、広告を信じた結果損害を被った人がいた場合でも、損害賠償責任を負うことは基本的にはないのではないか、というご質問をいただくことがあります。

結論としては、一定の場合には、単に広告に登場していた芸能人であっても民事上の損害賠償責任を負うこともあり、実際にそのような責任が認められた事例もございます。

本日は、この事例をご紹介いたします。

2 広告に登場する芸能人が民事上の責任を負うと判断された事例

大阪地判昭62年3月30日判タ638号85頁

(1)事例

事例としては、不動産の売買に関する虚偽の広告を信用して不動産を購入した結果損害を被った原告が、当該不動産の広告ビデオやパンフレットなどで不動産の優良性を強調していた芸能人に対して民事上の損害賠償請求を行った、というものです。

(2)判旨

裁判所は、被告が原告に販売した土地は利殖の対象となりえないものであり、利殖対象物件として売ること自体詐欺に該当すると判断しました。

その上で、広告に登場した芸能人についても、不動産のパンフレットに掲載した推薦文は、著名な芸能人である同人の立場から土地を推薦しており、これにより不法行為を容易にしたことは明らかであり、しかも同人はその推薦を裏付ける調査を行っていない以上過失も認められるとして、推薦文の交付を受けた上で土地を購入した原告の当該芸能人に対する民法719条2項に基づく損害賠償請求を認めました。

3 広告のリーガルチェックは非常に重要です

インターネットやSNSの普及により、広告は多種多様な態様で掲載され、また、その量も膨大なものとなっています。

広告主だけが責任を負うのだから、出演する分には特に問題ないだろうと考える方もいらっしゃいますがこれは非常に危険な考えであると言わざるを得ません。

上記の事例のとおり、広告に出演するだけで民事上の責任が認められてしまう場合がありますし、また、法的な責任だけではなく、違法な広告に登場していたということだけで、インターネットやSNS上で「悪質な人間」である旨のレッテルを貼られてしまい、一般人からの信頼性が失墜してしまいます。

このような状態になってしまうと、その後のビジネスや様々な活動に大きな支障となってしまいます。

そのため、広告のリーガルチェックは、単に広告を掲載する広告主だけではなく、出演する芸能人等にとっても非常に重要なものといえます。

当事務所は、企業法務、インターネットトラブル、広告法務等を幅広く取り扱っております。

何かお困りのことがありましたらお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

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