【輸入者のためのリスク管理】海外業者との契約書で確認すべき関税・通関に関する重要条項

1 トラブルは「契約書」から始まる:輸入者視点での関税リスク管理

輸入トラブルや事後調査での問題点の指摘の多くは、海外の売主や製造委託先との契約書の不備、あるいは関税・通関に関する条項の認識不足に起因します。

契約書は、取引が円滑に進んでいる時には大して問題になりませんが、トラブルが発生した際、または税関調査が入った際の「企業の防御壁」となります。

輸入事業者が自己のリスクを最小限に抑えるため、海外業者との売買契約書や製造委託契約書で特に確認し、明確化しておくべき重要条項を、弁護士の視点から解説します。

(1)課税価格決定の根拠:「支払いの全容」の明確化

関税評価における最大の論点は、輸入者が海外に支払った費用のうち、どこまでが輸入貨物の課税価格に算入されるか(加算要素)という点です。これを曖昧にしておくと、事後調査で追徴課税を招きます。

①ロイヤルティ(ライセンス料)に関する条項:契約書内で「ロイヤルティの支払いが、輸入貨物とは無関係であることを明確にする」ことが重要です。関税評価上、ロイヤルティが貨物の「輸入販売の条件」であると認定されると、課税価格に加算されることになります。支払いの根拠を明確に分離する記述が必要です。

②手数料に関する条項:支払う手数料が、関税評価上加算不要とされる「買付手数料」に当たるのか、加算が必要な「仲介手数料」に当たるのか、その業務内容と対価を明確に区別して記述します。

(2)HSコードと原産地:情報の提供義務

関税率やEPA適用に直結するHSコードや原産地証明書の情報は、輸入者が申告責任を負うにもかかわらず、その情報源は海外業者に依存しています。

①HSコードの提供義務:輸出者が輸出時に適用するHSコード(輸出国のコード)を、輸入者に対して事前に提供する義務を契約書に明記します。また、輸入者側でのHSコード分類(輸入国のコード)を海外業者に通知し、その相違点に関する認識を共有しておくことが望ましいです。

②原産地規則関連の協力義務:EPA(経済連携協定)を適用する場合、輸出者に対し、原産地証明書の発行および原産性を証明するための製造工程やコストに関する資料の提供に協力する義務を明確に負わせます。この資料提供が滞ると、特恵関税の適用が否認され、多額の追徴リスクに繋がります。

2 弁護士による契約書レビューの必要性

海外業者との契約書は、取引開始前の予防法務の最前線です。

関税法や関税定率法は国内法であり、その解釈は海外業者には理解されにくいものです。当事務所のような関税・通関実務に精通した弁護士(通関士資格保有)は、海外の契約書を日本の関税法、関税評価ルール、および事後調査の実務経験に基づきレビューし、輸入者のリスクを最小限に抑えるための修正案を提案します。

契約前のわずかな手間で、将来発生しうる数億円規模の追徴リスクを回避することができます。海外との取引を始める際は、必ず契約書を精査しましょう。

 

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