Archive for the ‘コラム~契約書作成・レビュー関連~’ Category
契約における期間の計算方法
本日は契約における期間の計算方法をご紹介いたします。
いずれも基本的な考え方となりますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 期間の計算方法について
(1)日単位の場合
起算日は、原則として初日を参入せずに翌日から起算します。これを初日不算入の原則といいます(民法140条本文)。もっとも、初日の起算点が午前零時から始まる場合は初日を算入します(同条ただし書)。
次に満了日についてですが、その末日の終了をもって期間は満了します(民法141条)。ただし、期間の満了の末日が休日に該当しその日に取引をしない慣習がある場合に限り、翌日で満了することになります(民法142条)。
(2)週・月・年単位によるとき
週・月・年の単位で表示される場合は暦に従って計算します(民法143条1項)。
そのため、月単位の場合にも31日まである月と30日で終わる月を区別しません。
また、年単位の場合、平年と閏年間でも区別はありません。
なお、週単位の場合には7日単位で計算します。
週・月・年の初めから期間を起算しない場合には、その期間が最後の週・月・年においてその起算日に応答する日の前日に満了することになります。
ただし、月または年によって期間を定めた場合において、最後の月に応答する日がないときは、その月の末日に満了することになります(民法143条2項)。
なお、期間の末尾が休日にあたりその日に取引をしない慣習がある場合に限り、翌日で満了します(民法142条)。
以上のとおり、契約における期間の計算方法は民法上規定されております。
正確な理解を欠き、期間の計算を間違えた場合、ビジネス上大きな問題に発展する可能性もありますので、十分ご注意ください。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、契約書の作成・レビュー、商標や著作権を含む知的財産関連の問題、労働問題、輸出入トラブルへの対応をはじめ、企業法務を幅広く取り扱っております。
日々のビジネスの中でご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。
動産の引渡の4類型について
動産の売買契約においては、どのように売買対象物である動産を買主に引き渡すかが重要です。
動産の引渡が適切に受けられない場合には、買主にとって売買契約の意味がなくなってしまうからです。
そのため、動産の売買契約においては、動産の引渡の態様を規定する必要があります。
そこで、本日は動産の引渡の4類型についてご紹介いたします。
ご参照いただけますと幸いです。
1 動産の引渡の4類型について
動産の引渡態様としては、①現実の引渡、②簡易の引渡、③占有改定による引渡、及び④指図による占有移転による引渡(民法182条から184条)の4類型があります。
①現実の引渡とは、譲渡人が譲受人に対して売買の目的物の現実の支配を移転することを指します。もっとも、一般的な引渡の態様であるものといえます。
②簡易の引渡とは、譲受人が現に対象物を所持する場合に譲渡人の意思表示のみによってする引渡しのことを指します。例えば、人から借りた物を気に入って購入する場合に、いったん物を返却した上で改めて引渡しをうけることは非常に迂遠ですので、そのような場合に利用されます。
③占有改定による引渡とは、物の占有者が、その物を手元に置いたまま、以後譲受人のために占有すべき意思を表示することによってする引渡のことを指します。例えば、自分の物を売却するものの、売却後も引き続き自分で使用する場合に利用されます。
④指図による占有移転による引渡とは、代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾することによって行う引渡のことを指します。
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請負と労働者派遣の区別について
本日は、請負と労働者派遣の区別についてご紹介いたします。
経営者にとっては、いずれに該当するかによって規制内容が異なりますので、十分注意していただく必要がありますので、ご参照いただけますと幸いです。
1 請負と労働者派遣の区別について
請負と労働者派遣の区別については、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」と題する告示(昭和61年労働省告示37号)が参考となります。
【告示の概要】
請負の形式による契約による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であっても、当該事業主が当該業務の処理に関し、①自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること及び②請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであることのいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とするものとされております。
その上で、①の判断においては、(i)業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること、(ii)労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること、(iii)労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること、(iv)企業における秩序の維持確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであることを要するとされております。
また、②の判断においては、(v)業務の処理に要する資金につき、全て自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること、(vi)業務の処理について、法律に規定された事業主としての全ての責任を負うこと、(vii)単に肉体的な労働力を提供するものではないこと、を要するものとされています。
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ウィーン売買条約の具体的な内容について
ウィーン売買条約が国際取引において非常に重要な規程であることは先日のコラムでご紹介いたしました。
そこで、本日は、ウィーン売買条約の具体的な規定内容をご紹介いたします。ご参照いただけますと幸いです。
1 ウィーン売買条約の具体的な規定内容について
(1)ウィーン売買条約は、以下の場合に適用されます(1条)。
①売買当事者の営業の場所(営業所)が異なる国にあること
②かつ、営業所の所在している国が、いずれの条約の締約国であること
②または、国際司法の準則によって、締約国の方が適用される場合
ただし、締約国によっては、条約適用の条件として、「当事者双方の営業所が締約国に所在するべき」旨の宣言を行っていることが必要な場合があります。
(2)ウィーン売買条約は、次の場合には適用されません(2条、3条、5条)。
①個人用、家族用、家庭用に購入する物品の売買
②競売
③法令(強制執行など)にもとづく売買
④有価証券(株式、投資証券など)、通過の売買
⑤船舶、航空機の売買
⑥電機の売買
⑦労働などサービスを提供する契約
⑧物品によって引き起こされた人の死亡、身体障害についての売主の責任
以上の他にも、当事者の言明、行為の解釈、慣習や慣行(8条、9条)に関する規定や、売買契約の方式を定める規定(11条、12条、13条、29条、96条)や、契約の成立に関する規定(23条、15条、16条、17条、18条、19条)等が存在します。
国際取引においては、当事者間の契約で明確に排除しない限り、本条約の規定が適用されることになります。
そのため、国際取引の当事者は、事前にウィーン売買条約を十分理解した上で売買契約を適切に締結することが非常に重要です。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
ウィーン売買条約の規定は、日本の国内法との関係性とともに理解する必要がありますので、海外業者との間で売買契約を締結する場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
売買契約における品質決定方法には様々なものがあります!
先日のコラムにおいて、売買契約における品質決定の代表的な方法のうち、見本売買と標準品売買をご紹介いたしましたが、品質決定の方法の代表的なものとしては、この他にも、銘柄売買、仕様書売買、規格売買等があります。
これらに関しても併せて理解しておくことは有益ですので、以下ご紹介いたします。ご参照いただけますと幸いです。
1 銘柄売買(Sales by Trademark or Brand)
ブランドが世界的に知られている場合、品質の決定に当該ブランドを使用する場合があります。
世界的な有名ブランド商品は高水準の品質を誇っていますので、売場契約上もブランドが高品質保証のパスポート的役割を果たしているといえるので、このような形式が採用される場合もあります。
2 仕様書売買(Sales by Specifications)
ブランドなど機械類や化学品等の工業品については、設計図をもとに構造、性能、成分、材質、耐久性などの詳細なデータを明記した仕様書に、青写真や資料等を添付して、品質を明らかにします。
仕様書売買は、品質決定方法としては、多くの人に馴染みのあるものだと思われますが、実際には仕様書通りの品質となっているかを適宜検収する必要がありますので、仕様書を明確に作成したとしても、それだけで安心できるわけではない点には注意が必要です。
3 規格売買(Sale by Grade or Type)
国際的に規格が決められている商品の場合には、その規格を条件として品質を決めることができます。
例えば、国際規格には国際標準機構(ISO : International Organization for Standardization)の定めたISO規格があります。
また、それぞれの国には公的規定によって標準規格が定められております。日本では日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)等があるので、それらの規格を条件に取引することもできます。
4 弁護士へのご相談をご希望の方へ
海外の業者との間で売買を行う場合には、売買契約を締結することが必須です。
海外の業者との間の売買契約に関しては、ウィーン売買条約等の様々な規制を踏まえた上で契約書を作成する必要がありますので、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
貿易取引における商品の品質の規定方法
貿易取引により貨物を輸出するにあたって、貨物の品質を契約書上明確に規定する場合も多いものと思われます。
日本において日本の業者間で取引をする場合には、継続的な関係性を有していることから、特に商品の品質を契約書上明記していなくても、相互の信頼関係に基づき想定範囲内の品質の商品を引渡してくれることも多いのですが、海外の業者との取引においてこのようなことを行ってしまうと、想定もしていないような劣悪な品質の商品を送ってくるということも十分考えられるので注意が必要です。
そこで、本日は売買契約における品質決定の代表的な方法のうち、見本売買と標準品売買をご紹介いたします。
1 見本売買(Sale by Sample)
見本売買とは、売手又は買手が実際に取引したい商品の見本を示して品質を決定することを指します。
この時使用されている見本を品質見本(Quality Sample)といい、また、買手が売手に提出した品質見本に対して、売手にサンプルを作って提示するように求める場合もあります。
なお、この試作品の見本を反対見本といいます。
以上のとおり、見本売買においては、見本と実際の取引商品が品質、性能、形状について一致していることが重要とされます。
そのため、見本と取引商品が相違している場合は、売主はその責任を問われることになります。
2 標準品売買(Sale by Standard Quality)
農産物、水産物、畜産物等の品質は、自然条件等に左右されます。
そのため、上記1のような見本売買とすることは非常に難しいと言わざるを得ません。貿易取引において見本と現物との正確な一致を求めることは不可能とさえいえます。
そこで、標準品を示し、当該標準品と品質のずれを価格で調整する方法を使うことが考えられます。
国際上の標準品売買には、次の2つの品質条件があります。
(i)平均中等品質条件(FAQ : Fair Average Quality Terms)
農産物等、主に穀物類の売買に用いられる品質条件で、当該季節の収穫物の中等品質であることを条件として取引基準を決めます。
(ii)適商品質条件(GMQ : Good Merchantable Quality Terms)
見本取引が困難な場合に用いられる品質条件で、売買するのに足ると認められる品質、すなわち、市場性のある品質を保証する条件を指します。
3 弁護士へのご相談をご希望の方へ
海外の業者との間で売買を行う場合には、売買契約を締結することが必須です。
海外の業者との間の売買契約に関しては、ウィーン売買条約等の様々な規制を踏まえた上で契約書を作成する必要がありますので、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
ウィーン売買条約について
海外から商品を仕入れる場合、海外業者との間で売買契約を締結することになりますが、その際に非常に重要となるのが、ウィーン売買条約の規定の理解です。
ウィーン売買条約の規定を理解した上で必要に応じて海外業者との間で個別の合意を的確に締結しておかないと、想定していない事態に陥る可能性がありますので注意が必要です。
以下では、ウィーン売買条約の概要をご紹介いたします。
1 ウィーン売買条約について
(1)概要
ウィーン売買条約(「CISG」と略されることがあります。)は、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)が制定した国際物品売買契約に関する条約で、1988年に発行されました。
日本は2008年8月に加盟し、2009年8月1日から、本条約が発効しております。
本条約は、前文と本文101条からなる4部構成となっており、貿易取引における売場契約成立の有無と売主・買主の権利義務について定めております。
それ以外の事項、例えば所有権の移転時期などについては売買契約の準拠法に規律されます。
(2)ウィーン売買条約の適用の排除
ウィーン売買条約は、企業間の物品の売買契約に適用されますので、貿易取引の相手国が本条約の加盟国である場合には、条約が適用されます。
一方で、この条約は強行法規ではなく任意法規に該当しますので、契約当事者が合意することによって、本条約の適用を排斥又は変更することが出来ます。すなわち、契約当事者がインコタームズの適用を契約書で合意すれば、インコタームズ規定が本条約に優先して適用されるということです。
ただし、本条約が規定している範囲はインコタームズよりも広いので、契約成立の要件や契約違反に関わる事項等インコタームズの規定外の事項は本条約が適用される点には注が必要です。
(3)日本の国内法との関係性
ウィーン売買条約と日本の国内法との関係性についていえば、本条約の規定には日本の民法や商法と異なる点があります。
たとえば、契約成立の時期は、日本の民法では承諾の意思表示が発信された時ですが、その他、本条約では承諾の意思表示が申込者に到達した時と規定されております。
その他、瑕疵担保(契約不適合責任)や契約解除等の規定にも違いがあります。
これらの相違点は当事者間の契約で明確に排除しない限り、本条約の規定が適用されることになる点には十分注意する必要があります。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
ウィーン売買条約の規定は、日本の国内法との関係性とともに理解する必要がありますので、海外業者との間で売買契約を締結する場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
秘密保持契約について
秘密保持契約では、秘密保持条項の定義を具体的に記載した上で、秘密保持義務の射程外、すなわち、例外的に開示が許容される場合を規定することが通常です。
例えば、開示時点で既に公知の事実や、弁護士や会計士等の法律上秘密保持義務を負う専門家への開示や、また、裁判所や官公庁からの開示要請その他法令に基づく場合等を指します。
本日は、このうち、公知の事実の該当性に関して争いとなった裁判例を紹介します。
1 カードシステム事件(LLI/DB 判例秘書登載)
事案の概要としては、特定の小売店へのカードシステム導入のために、原告が被告に対してカードシステムに関する技術情報を開示したところ、被告が他の小売店にも当該技術を使用したカードシステムを利用させたことが、原告と被告間の秘密保持契約に違反しているのではないかが問題となったものです。
結論としては、秘密保持契約には「相手方から開示を受けまたは知得した際にすでに公知または公用の情報」は秘密保持義務から除外される旨の規定があるところ、「公知または公用の情報」を秘密情報から除外した趣旨は、契約当事者以外の第三者が現に知りまたは容易に知り得る情報の開示を禁止しても実益がないことに加え、そのような情報まで秘密保持義務の対象とすると契約当事者に過大な負担を課すことになるためであると認定した上で、その情報が全体として公然と知られまたは公然と実施されている情報を組み合わせることによって容易に相到し得る情報も含まれる、と判断しました。
上記裁判例は、形式的には秘密保持義務違反に該当するようにも考えられるところ、当事者間の具体的な事情等を踏まえたあくまでも事例判断とは考えられますが、上記裁判例のような判断がなされることがある点には十分に注意をして秘密保持契約を作成・締結することが非常に重要です。
上記の裁判例の他にも、原価セール事件(東京高判平成16・9・29(判例タイムズ1173・68))、公共土木工事積算システム事件(東京地判平成14・2・14(LLI/DB 判例秘書登載))、メリルリンチ・インベストメント・マネージャーズ事件(東京地判平成15・9・17労判858・57)等が参考となります。
2 弁護士へのご相談をご希望の方へ
当事務所は、各種契約書の作成やレビューを幅広く取り扱っております。
秘密保持契約をはじめ、各種契約書の作成や修正に関してご不明な点やご不安な点等ございましたら、ご遠慮なく当事務所までご相談ください。