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【解決事例】荷物を預かっただけなのに…薬物密輸の容疑で逮捕、しかし不起訴に
「夫が自宅で海外からの荷物を受け取った直後、警察と税関職員が踏み込んできて、麻薬特例法違反の容疑で現行犯逮捕されました。夫は『友人の荷物を預かっただけ』と言っていますが、中身は覚醒剤だったそうです。このままでは、夫は刑務所に行くことになってしまうのでしょうか?」
これは、当事務所に寄せられた、ある会社員Kさんのご家族からの悲痛なご相談です。海外からの荷物を受け取ったことをきっかけに、突然逮捕される場合があります。ご家族が逮捕されるという現実は、計り知れない衝撃と混乱をもたらします。何を信じて良いのか、誰を頼れば良いのか分からず、絶望的な気持ちに苛まれていることでしょう。
しかし、どうか諦めないでください。このような絶望的な状況からでも、適切な初期対応により、不起訴処分や身柄解放を目指せる場合があります。
当職は、このKさんの事件において、直ちに警察署へ急行し、ご本人と接見しました。そして、取調べに対しては「中身を知らなかった」という事実を明確にしつつ、不用意な供述で不利な状況に陥ることを避けるため、黙秘権を行使するよう強く助言しました。
次に、検察官に対して「故意」がなかったことを徹底的に主張しました。Kさんと、後に密輸組織の一員と判明した友人とのLINEや通話記録を詳細に解析。「荷物を預かってくれたらバイト代を出す」といったやり取りはあったものの、それが「違法薬物である」という認識(故意)に繋がる直接的な証拠がどこにも存在しないことを、客観的な証拠を積み上げて立証したのです。
結果として、検察官は「未必の故意」さえ立証することができず、Kさんは嫌疑不十分で不起訴処分となり、無事に釈放されました。前科がつくことなく、ご家族の元へ帰ることができたのです。
もし、あなたやあなたの大切なご家族が同じような状況に置かれているのなら、まず知っていただきたいのは、適切な弁護活動を尽くせば、未来は変えられる可能性があるということです。
このテーマの全体像については、身に覚えのない荷物が届いたら?で体系的に解説しています。
なぜ逮捕された?「コントロールド・デリバリー」という捜査手法
「ただ荷物を受け取っただけなのに、なぜ警察がタイミングよく現れたのか?」
これは、多くの方が抱く最大の疑問でしょう。その答えは、「コントロールド・デリバリー(Controlled Delivery/CD)」と呼ばれる、極めて計画的な捜査手法にあります。
コントロールド・デリバリーとは、税関などの捜査機関が、国際郵便物などに違法な薬物が隠されていることを発見した場合でも、すぐには押収せず、監視下でそのまま名宛人に配達させ、荷物を受け取った人物を現行犯逮捕するというものです。
つまり、ご家族が荷物を受け取るずっと前から、捜査機関は荷物の中身を把握し、監視カメラや捜査員を周囲に配置して、まさに荷物の配達状況を監視し、受取人の対応を確認できる態勢を整えていたと考えられます。これは、末端の受け取り役だけでなく、背後にいる密輸組織全体を摘発することを目的とした、大掛かりな捜査の一環といえます。

この捜査手法には、大きく分けて2つの種類があります。
- クリーンCD:捜査機関が薬物を無害な別の物(砂糖や塩など)にすり替えて配達させる手法。
- ダーティCD:薬物をそのままの状態で配達させる手法。
近年の薬物密輸事件では、ダーティCDが用いられるケースが多く見られます。なぜなら、受け取った人物が荷物を開封し、中身が薬物であることを確認した(と捜査機関が判断した)時点で逮捕できれば、「故意」の立証が容易になると考えられているからです。
このように、コントロールド・デリバリーによる逮捕は、個人が独力で立ち向かえるような状況ではありません。捜査機関は、受取人の認識や関与を立証するため、事前に捜査計画を立てていることがあります。だからこそ、逮捕直後から、この特殊な捜査手法を熟知した弁護士による専門的な防御活動が不可欠となるのです。税関による犯則調査は、こうした薬物事件だけでなく、様々な輸入ビジネスにおいてリスクとなり得ます。
逮捕後72時間の対応が重要です!ご家族が今すぐすべき3つのこと
ご家族が逮捕されたという知らせを受け、パニックに陥るのは当然のことです。しかし、これからの72時間、つまり3日間の対応が、その後の人生を大きく左右する極めて重要な期間となります。この間に、ご家族が冷静に行動を起こせるかどうかで、不起訴処分を目指すうえで、初期対応が重要になる場合があります。
ステップ1:すぐに弁護士に連絡し、初回接見を依頼する
ご家族が今すぐ、そして何よりも優先してすべきことは、弁護士に連絡し、逮捕されたご本人との接見(面会)を依頼することです。
逮捕されると、ご本人は外部との連絡を一切絶たれ、たった一人で経験豊富な取調官と対峙しなければなりません。孤独と不安の中で、「本当のことを話せば分かってもらえるはず」「黙っていると怪しまれる」といった誤った判断から、不利な内容の供述調書に署名してしまうケースが後を絶ちません。そして、一度作成された供述調書の内容を後から覆すことは、極めて困難です。
弁護士は、逮捕直後からご本人と面会できる唯一の存在です。すぐに接見に向かうことで、以下の重要な役割を果たします。
- 精神的な支えとなる:ご本人の孤独と不安を和らげ、冷静さを取り戻させます。
- 適切なアドバイスを与える:取調べにどう対応すべきか、特に後述する黙秘権の重要性について具体的に助言します。
- ご家族の伝言を伝える:ご家族からのメッセージを伝え、外の世界との繋がりを保ちます。
「当番弁護士」という制度もありますが、必ずしも薬物事件や否認事件に精通した弁護士が担当するとは限りません。コントロールド・デリバリーのような特殊な事件では、通関士資格をもつ弁護士など、税関の捜査手法や薬物事犯特有の弁護戦略に深い知見を持つ私選弁護人を選ぶことが、不起訴処分を目指すうえで重要な判断要素となります。
ステップ2:弁護士から「黙秘権」の正しい使い方を伝えてもらう
逮捕された方には、憲法で保障された「黙秘権」という強力な権利があります。これは、自分の意に反する供述を強要されない権利であり、取調べに対して終始黙っていることも、個々の質問に対して回答を拒否することもできます。
しかし、多くの方は「黙っていると、反省していないと思われて不利になるのではないか」と不安に感じ、捜査官の誘導に乗って曖昧な供述をしてしまいがちです。
「中身ははっきり知らなかったが、もしかしたら違法なものかもしれないと少し思った」
このような供述は、このような供述は、未必の故意を認定する方向で評価されるおそれがあります。これは後に「未必の故意」があったと認定され、有罪の決定的な証拠になりかねません。黙秘権は、意図しない不利な供述を避けるための重要な権利です。
弁護士は接見の場で、ご本人に黙秘権の正しい意味と戦略的な使い方を丁寧に説明します。「話すべきこと」と「絶対に話すべきでないこと」を明確に区別し、不利な供述調書が作成されるのを防ぎます。ご家族の未来を守るためにも、まずは弁護士を通じて、この重要な権利を行使するよう伝えてもらうことが不可欠です。こうした対応は、関税法違反で刑事告発された場合にも同様に重要となります。
ステップ3:今後の証拠となるものを保全する
弁護士がご本人への対応を進める一方で、ご家族にしかできない重要な役割があります。それが、「故意」がなかったことを裏付ける客観的な証拠の保全です。
捜査機関は、ご本人に薬物密輸の意図があったことを立証しようと、あらゆる証拠を探します。それに対抗するためには、弁護側も「知らなかった」「騙された」という主張を裏付ける証拠を集めなければなりません。

ご家族にお願いしたいのは、以下のような情報を探し、決して消去したり捨てたりせずに保管しておくことです。
- 通信履歴:逮捕されたご本人と、荷物の送り主(依頼主)との過去のやり取り(LINE、メール、Facebookメッセンジャー、InstagramのDMなど)
- 経済状況がわかる資料:給与明細、預金通帳のコピー、確定申告書など、ご本人の収入や資産状況がわかるもの
- その他:ご本人の人柄や交友関係、事件前の様子などがわかる情報
これらの情報は、後に「報酬目当てで密輸に加担したわけではない」「相手からこのように説明され、信じてしまった」といった主張を組み立てる上で、重要な資料となります。弁護士と連携し、証拠を保全することが、ご本人を救うための大きな助けになるのです。
「知らなかった」を証明する弁護活動の核心
薬物密輸のような否認事件において、無罪や不起訴を勝ち取るための最大の争点は、「故意」、つまり「中身が違法薬物だと知っていたかどうか」を証明することにあります。検察官は「知っていたはずだ」と主張し、弁護人は「知らなかった」と反論します。この「知らなかった」という内心の事実を、客観的な証拠に基づいていかに説得的に証明できるかが、弁護活動において重要な検討事項です。当事務所へ薬物密輸事件の弁護相談からご相談ください。
「未必の故意」とは?なぜ「怪しいと思った」が不利に評価される可能性があるのか
故意には、「確定的故意」と「未必の故意」の2種類があります。
- 確定的故意:「これは覚醒剤だ」と明確に認識している場合。
- 未必の故意:「はっきりとは分からないが、もしかしたら違法な薬物かもしれない。それでも構わない」と認識しながら、その結果を容認している場合。
コントロールド・デリバリーで逮捕される方の多くは、確定的故意まではなくとも、「少し怪しいと思っていた」「高額な報酬に目がくらんでしまった」というケースが少なくありません。そして、このような曖昧な認識が、まさに未必の故意と認定されるリスクがあります。
判例(最高裁平成2年2月9日決定など)も、「違法な薬物である可能性を認識しながら、それでも構わないと受け入れた」場合には未必の故意が成立する、と示しています。取調べで「少し怪しいとは思った」と少しでも漏らしてしまうと、それが未必の故意を認定する事情として評価され、有罪方向の証拠とされるおそれがあります。特に、安易な気持ちで海外からの荷物の受け取りを引き受けてしまう若者が巻き込まれる密輸の現状は深刻な問題となっています。
通信履歴の解析:騙された経緯を客観的証拠で示す
「知らなかった」ことを証明する最も強力な武器の一つが、荷物の送り主との通信履歴です。弁護士は、押収されたスマートフォンやパソコンのデータを解析し、あるいはご家族から提供された履歴を時系列に沿って精査します。
その中から、
- 「これは友人に頼まれたサプリメントだ」といった虚偽の説明を受けていたやり取り
- 友人関係や恋愛感情に付け込まれ、断り切れない状況で依頼を引き受けてしまった経緯
- 報酬が一般的なアルバイト代の範囲であり、リスクに見合わない不自然な高額報酬ではないこと
といった、ご本人に故意がなかったことを示す具体的な会話内容を抽出します。これらの客観的な証拠を意見書としてまとめ、検察官に提出することで、「本人は騙された被害者である」という構図を明確に示していくのです。より具体的な手順については、ロマンス詐欺に関する注意点をご覧ください。
経済状況の立証:報酬目当ての犯行ではないことを明らかにする
検察官は、薬物密輸の動機として「金に困って、報酬目当てで犯行に及んだ」というストーリーを描きがちです。この主張を覆すため、ご本人の経済状況を立証することも重要な弁護活動となります。
弁護士は、ご家族の協力を得て、以下のような客観的な資料を収集します。
- 給与明細や確定申告書
- 預金通帳の写し
- 借入金の状況がわかる資料
これらの資料から、「安定した収入があり、多額の借金もない」「わずか数万円の報酬のために、無期懲役のリスクを冒すような動機は存在しない」ということを論理的に主張します。犯行の動機という側面から「故意」の存在を否定することで、検察官の主張に対し、動機の面から反論していきます。
薬物密輸の疑いで逮捕された方へ、よくあるご質問
突然ご家族が逮捕され、多くの疑問や不安が頭をよぎっていることでしょう。ここでは、よくあるご質問にお答えします。
Q. このまま有罪になると、どのような刑罰が科されるのですか?
A. 非常に重い刑罰が科される可能性があります。例えば、覚醒剤を営利目的で密輸した場合、覚醒剤取締法により「無期若しくは3年以上の拘禁刑、または情状により無期若しくは3年以上の拘禁刑及び1,000万円以下の罰金」という重い罰則が定められています。営利目的がなくても「1年以上の有期拘禁刑」となります。関税法違反も併合されることが多く、禁制品や金地金の密輸と同様に、決して軽い罪ではありません。だからこそ、有罪判決を回避するための初期段階での弁護活動が何よりも重要になるのです。
Q. 弁護士費用が払えるか心配です…
A. 経済的な理由で弁護士を依頼できない方のために、「国選弁護人制度」があります。この制度を利用すれば、国が費用を負担して弁護人を選任してくれます。ただし、国選弁護人は自分で選ぶことはできず、勾留が決定してからでなければ選任されません。逮捕直後の最も重要な72時間に迅速に対応できない可能性があることや、必ずしも薬物事件の専門家が担当するとは限らないという側面もあります。一方、私選弁護人は、逮捕直後からすぐに接見に向かい、一貫して専門的な弁護活動を行うことができます。当事務所では、ご状況に応じて柔軟な弁護士報酬プランをご提案しておりますので、まずは費用面も含めてご相談ください。
Q. 家族として、他にできることはありますか?

A. ご家族の支えは、ご本人が厳しい状況を乗り越える上で非常に大きな力になります。具体的には、衣類や現金、書籍などの差し入れをしたり、励ましの手紙を書いたりすることが可能です。何より重要なのは、弁護士と密に連携を取ることです。ご本人の性格や事件前の様子、交友関係など、ご家族だからこそ知っている情報が、弁護活動の思わぬ突破口になることも少なくありません。ご家族と弁護士が一体となって、ご本人のために戦っていくことが大切です。
参照:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律
まとめ:絶望的な状況でも、諦めないでください
身に覚えのない荷物を受け取ったことをきっかけに、薬物密輸への関与を疑われる場合があります。コントロールド・デリバリーは、捜査機関が事前に計画して行う捜査手法であり、法律知識がないまま一人で対応することには大きなリスクがあります。取調室という密室で、連日厳しい追及を受ければ、誰しも心が折れそうになるでしょう。
しかし、冒頭でお話しした解決事例のように、適切な初期対応と、薬物事件の弁護に精通した専門家による徹底した弁護活動があれば、不起訴処分や早期の身柄解放を目指せる場合があります。
逮捕されたご本人は、外部との連絡が制限された状況で取調べに対応している可能性があります。ご家族が感じている不安や絶望は、ご本人も同じか、それ以上に感じているはずです。その未来を守れるかどうかは、これからの行動にかかっています。
一人で抱え込まず、どうか今すぐ私たち専門家にご相談ください。それが、ご家族とご本人の今後を考えるうえで重要な第一歩となります。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

