【相談内容】
オンラインゲームのチャット欄やXのリプライで、特定のユーザーから毎日のように暴言を受けています。
きっかけはゲーム内でのプレイ内容のようですが、相手は「死ね」「ゴミ」「今すぐ消えろ」「生きている価値がない」など、人格を否定する言葉を繰り返し投稿しています。
「殺すぞ」と直接言われたわけではありません。このような「死ね」という言葉だけでも法的措置を取ることはできるのでしょうか。
【弁護士の回答】
結論として、「死ね」という言葉だけで直ちに脅迫罪が成立するとは限りません。しかし、公開チャットやSNS上で、特定の相手に対して「死ね」「ゴミ」「消えろ」「生きている価値がない」といった暴言を執拗に繰り返している場合、侮辱罪や民事上の不法行為として責任追及できる可能性があります。
法務省の侮辱罪事例集でも、喫茶店で「バカ、ブス、死ね」などと大声で言った事案や、SNSに「死ね死ね死ね」などを含む投稿をした事案が、侮辱罪として処理された例として紹介されています。また、別の事例集でも、SNS配信動画で「ブスう、死ね」などと発言した事案や、路上で「くそばばあが。死ね。」などと大声で言った事案が、侮辱罪の事例として挙げられています。
したがって、「ゲームだから」「熱くなっただけ」という言い訳で当然に免責されるわけではありません。オンライン上でも、相手は現実の人格を持つ一人の人間であり、暴言が一定限度を超えれば法的責任が生じます。
このページの目次
1 「死ね」は脅迫罪になるのか
脅迫罪は、相手またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対して害を加える旨を告知した場合に成立します。たとえば、「殺す」「家に行って殴る」「住所を調べて襲う」など、自分が相手に危害を加える意思を示す発言は、脅迫罪に当たり得ます。
一方で、「死ね」という言葉は、通常は「自分が相手を殺す」という害悪の告知というより、「死んでほしい」という呪詛・罵倒の表現と評価されることが多く、単独では脅迫罪に当たりにくいと考えられます。実務解説でも、「死ね」という言葉は直接的に害を加えることを意味せず、脅迫罪には該当しないのが基本とされています。
もっとも、次のような事情がある場合は、脅迫罪や警察相談の対象になり得ます。
- 「殺す」「刺す」「殴る」などの直接的な加害予告がある
- 「家に行く」「住所を知っている」と言っている
- 「夜道に気をつけろ」など、具体的危害を示唆している
- 家族や勤務先、学校を持ち出している
- 現実の住所、学校、職場などを特定している
- ゲーム外でもSNS、DM、メール等で追いかけてくる
- ストーカー的に執着している
このような場合は、単なる暴言ではなく、安全確保の問題です。スクリーンショットを保存したうえで、警察への相談も検討してください。警察庁も、インターネット上の誹謗中傷等への対応として、相手方の処罰を望む場合の警察への通報・相談を案内しています。
2 脅迫罪にならなくても侮辱罪になり得る
「死ね」が脅迫罪になりにくいとしても、法的に何もできないわけではありません。
公開チャット、掲示板、Xのリプライなど、第三者が見る可能性のある場で、特定の相手に対して「ゴミ」「死ね」「消えろ」「生きている価値がない」といった人格攻撃を行う場合、侮辱罪が問題になります。
侮辱罪は、公然と人を侮辱した場合に成立します。ここでいう「公然」とは、不特定または多数の人に伝わる可能性があることを意味します。SNSやインターネット掲示板など、多くの人が目にする場所での誹謗中傷は、公然性を満たしやすいとされています。
今回のように、オンラインゲームのチャット欄やXのリプライで、他のプレイヤーや第三者が見られる状態で暴言が繰り返されている場合、「公然」の要件を満たす可能性があります。
3 「ゲーム内の喧嘩」は免罪符にならない
相手は「ゲーム中に熱くなっただけ」「プレイが下手だから注意しただけ」と言い訳するかもしれません。
確かに、ゲーム内では勝敗やプレイ内容をめぐり、強い言葉が出ることがあります。単発で「下手」「ミスするな」と言われた程度で、直ちに違法と評価されるとは限りません。
しかし、次のような場合は、単なるゲーム内のやり取りを超えます。
- 毎日のように暴言を送っている
- 同じ相手を狙って粘着している
- 「死ね」「ゴミ」など人格否定が中心である
- プレイ内容への批判ではなく存在そのものを否定している
- Xなどゲーム外のSNSまで追いかけている
- 他人にも見える場所で晒している
- ブロックや拒否後も別アカウントで続けている
オンラインゲーム内での誹謗中傷や暴言も、名誉毀損罪、侮辱罪、脅迫罪などの刑事責任を問われる可能性があるとされています。画面の向こうにいるのは現実の人間です。ゲーム空間であっても、人格攻撃を繰り返せば、現実の法的責任が発生します。
4 民事上の損害賠償請求も検討できる
刑事事件として侮辱罪や脅迫罪が問題になるだけでなく、民事上も不法行為に基づく損害賠償請求を検討できます。
民事では、暴言の内容、回数、期間、公開範囲、相手の執拗さ、被害者の精神的苦痛、生活への影響などを総合的に見ます。
特に、次の事情があると、違法性を主張しやすくなります。
- 数日ではなく長期間続いている
- 1回ではなく多数回投稿されている
- 暴言が具体的に記録されている
- 被害者がやめてほしいと伝えても続けている
- SNSで第三者に見える形で投稿している
- 別アカウントを使って継続している
- 精神的苦痛により通院や生活への支障がある
ただし、慰謝料額は、投稿内容や被害の程度によって大きく変わります。法的措置を取るかどうかは、証拠の量、相手の特定可能性、費用対効果も踏まえて判断します。
5 まずは運営会社への通報とブロック
オンラインゲームの場合、最初に行うべき対応は、ゲーム運営会社への通報です。
多くのゲームでは、ハラスメント、暴言、差別的発言、粘着行為、迷惑行為を禁止しています。運営会社に通報すれば、警告、チャット制限、アカウント停止、BANなどの措置が取られることがあります。
対応としては、次の順序が現実的です。
- 暴言の証拠を保存する
- ゲーム内通報機能を使う
- 相手をブロック・ミュートする
- フレンド申請やDMを拒否する
- Xなど外部SNSでもブロック・通報する
- それでも続く場合は、弁護士に相談する
- 必要に応じて発信者情報開示請求や警察相談を行う
ただし、通報やブロックの前に証拠を保存してください。通報後にアカウントが停止されたり、チャットログが消えたりすると、後から法的措置を取る際の証拠が不足することがあります。
6 発信者情報開示請求で相手を特定できるか
相手が匿名アカウントの場合、損害賠償請求や刑事告訴をするには、投稿者の特定が必要になることがあります。
オンラインゲーム内の暴言でも、発信者情報開示請求を使って相手を特定できる可能性があります。ただし、オンラインゲームの場合は、ゲーム運営会社がどのログを保有しているか、チャットが保存されているか、投稿時のIPアドレスやログイン情報を取得できるかが問題になります。
オンラインゲームで誹謗中傷を受けた場合、まずゲーム提供者に対して発信者の通信ログ等の開示を求め、その後、経由プロバイダに対して住所・氏名等の開示を求める流れが説明されています。
また、発信者情報の保存期間には限りがあり、投稿から3か月から6か月が経過すると、投稿者特定に必要な記録が消去されることがあります。そのため、相手を特定したい場合は、早めに弁護士へ相談することが重要です。
7 証拠の集め方
この種の事案では、証拠の質が非常に重要です。
保存すべき証拠は次のとおりです。
- チャットログのスクリーンショット
- Xのリプライや引用投稿のスクリーンショット
- 投稿URL
- 投稿日時
- 相手のアカウント名・ID
- プロフィール画面
- 暴言の全文
- 前後の会話
- こちらがやめてほしいと伝えた記録
- 通報履歴
- ブロック後も続いた証拠
- 別アカウントからの接触記録
- 期間と頻度が分かる一覧表
- 画面録画
特に、日付が分かる形で保存することが重要です。単発のスクリーンショットだけでは、「その場限りの口論だった」と反論される可能性があります。毎日のように続いていること、同じ相手が粘着していること、内容がプレイ批判ではなく人格攻撃であることを示せるようにしましょう。
8 警察に相談すべき場合
次のような場合は、弁護士相談と並行して、警察への相談を検討してください。
- 「殺す」「刺す」「殴る」などの発言がある
- 住所、学校、勤務先を特定された
- 家族への危害を示唆された
- 現実世界で接触をほのめかされた
- ストーカー的に複数のSNSで追跡されている
- 自傷を誘導するような投稿が執拗に続いている
- 精神的に追い詰められている
「死ね」という言葉だけでは脅迫罪になりにくい場合でも、回数、文脈、相手の執着、現実の特定情報の有無によって危険性は変わります。身の危険を感じる場合は、早めに相談してください。
9 まとめ
「死ね」という言葉だけで直ちに脅迫罪が成立するとは限りません。脅迫罪は、基本的には「自分が相手に危害を加える」という害悪の告知が必要だからです。
しかし、オンラインゲームのチャット欄やXのリプライで、「死ね」「ゴミ」「消えろ」「生きている価値がない」といった暴言を毎日のように繰り返す行為は、侮辱罪や民事上の不法行為に当たる可能性があります。法務省の事例集でも、「死ね」を含む発言が侮辱罪として処理された例があります。
まずは、スクリーンショットや画面録画で、日時・アカウント名・投稿内容・頻度が分かる証拠を保存してください。そのうえで、ゲーム運営会社やSNSへの通報、ブロック、必要に応じた発信者情報開示請求、損害賠償請求、警察相談を検討します。
「ゲーム内のことだから」は通用しません。オンライン上の暴言でも、相手の人格を執拗に攻撃すれば、現実の法的責任を問われる可能性があります。
【お問合せは、こちらから】
・・・・・・・・・・・
執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
