本日は、広告制作の現場で実際にどのようにリーガルチェックを組み込むべきか、実務的な観点からご紹介いたします。
前提として、広告制作はスピード感が求められる業務です。
企画・デザイン・マーケティング等の複数の部門、担当者が関わり、加えて外部の制作会社や広告代理店といった存在が関与するケースも一般的です。
そうした中で、リーガルチェックのタイミングや方法を誤間違えると、せっかく制作した広告が法的リスクを抱えたまま公開され、後から修正・差し止め・行政指導等といった事態に発展しかねません。
そこで重要なのが、「広告制作フローの中に、リーガルチェックを当然のものとして先に組み込んでおく」という考えになります。
1 体制構築について
例えば、以下のような体制構築が考えられます。
①企画段階から法務部門が関与する体制をつくる
広告表現の自由度が高い初期段階にこそ、法務の観点を取り入れることがリスク回避につながります。例えば「業界No.1」や「医師推奨」などの表現を使いたいという提案が出た時点で、根拠資料の有無を検討し、対応可能かどうかを判断します。
② 表現案ごとに裏付け資料(エビデンス)を整理しておく
「合理的根拠資料」の提出を求められるケースに備え、試験データや調査報告書、販売実績などの裏付け資料を整理・保管しておくことが不可欠です。これにより、行政からの問い合わせや社内監査への対応もスムーズになります。
③ 定型チェックリストを活用して広告ごとの確認をルーティン化する
毎回弁護士に個別相談をするのは現実的でない場合もあります。
そうした場合には、社内用のチェックリスト(景表法対応、価格表示、ステマ対応など)を作成し、広告担当者自身が初期的なスクリーニングを行えるようにすることで、効率的かつ一貫したチェック体制が構築できます。
④ 外部の専門家(弁護士等)との連携体制を整備する
判断が難しい表現や新しい広告手法に対応するには、専門家の知見が不可欠です。広告の公開前に短時間で確認を依頼できるフローや契約関係を整えておくと、万一の際にも迅速に対応できます。
これらの体制を整えることで、単なる「リスク回避」にとどまらず、広告の信頼性やブランド価値の向上にもつながります。消費者の信頼を得るうえでも、正確かつ誠実な広告表現は企業にとって重要な資産です。
広告表現と法規制は年々複雑化していますが、適切なリーガルチェック体制を持つことで、トラブルを未然に防ぎながら、安心して効果的な広告展開を行うことが可能になるでしょう。