Archive for the ‘広告関連法務’ Category
Webマーケティング業界の広告と法的注意点
SEO対策、SNS運用代行、広告運用代行、LPO、Web制作など、Webマーケティング業界では「成果報酬型」の契約形態が増えており、広告においても「成果」や「改善率」を前面に押し出した訴求が多く見られます。しかし、こうした表現が景品表示法や特定商取引法の規制対象となるケースも多く、裏付けのない“成果保証”は法的リスクが極めて高いことに注意が必要です。
1 「売上2倍」「改善率98%」などの表示には根拠が不可欠
Webマーケティング業界で多用される成果表現の例として、以下のようなものが挙げられます。
①「導入後3カ月で売上2倍!」
②「広告費を30%削減」
③「離脱率98%改善」
④「95%のクライアントが効果を実感」
これらは一見インパクトがあり、依頼主の意思決定を促す表現ですが、表示の裏付けとなる『合理的根拠資料』がなければ、優良誤認表示として景表法違反に該当するおそれがあります。
特に問題になりやすいのは以下のようなケースです。
①一部の成功事例のみを取り上げ、あたかも全ての顧客に共通するかのような表示
②数値の根拠となる調査方法が不明確(例:母数・対象・期間を記載していない)
③自社計測のデータに過ぎず、第三者の検証が困難
広告にこうした表現を使用する際は、出典・調査方法・対象期間・対象者数などを明示することが望ましく、根拠資料を保存・管理しておくことも重要です。
2 「成果保証」「返金保証」には特定商取引法の注意が必要
「必ず成果が出ます」「成果が出なければ全額返金」といった保証表現も見かけますが、これは景表法のみならず、特定商取引法(特商法)上の不実告知や誇大広告に該当する可能性があります。
特に以下のような場合、法的リスクが高まります。
①実際には厳格な条件(例:○日以内申請、アクセス解析提出など)があるにもかかわらず、広告上で明示していない
②保証内容に例外条項が多数あるが、利用者には事前に伝えられていない
③成果の定義が曖昧で、契約後に一方的な解釈変更がされる
これらは、消費者契約法違反や不当表示としてトラブルの火種になりやすいため、必ず契約条件と広告表示を整合させる必要があります。
3 「導入実績」「クライアントの声」も実在性・出典の明示を
「1,000社導入」「有名ブランドも導入」などの表示は、信頼感を与える一方、実際の導入実績と異なる場合や許諾を得ていない掲載は不正表示・著作権侵害・名誉権侵害につながる可能性があります。
また、「クライアントの声」として実際の感想を掲載する場合も、以下の点を確認しておきましょう。
①掲載許可の取得(書面が望ましい)
②記載内容が誇張や改変なく、実際の内容と一致しているか
③顔写真や企業ロゴを使用する際の知的財産権への配慮
Web業界だからこそ、「数値」や「効果」で判断される世界です。しかし、だからといって“盛った”表現で短期的に契約を取っても、長期的には法的リスクと信用失墜を招く可能性があります。根拠ある成果、誠実な表現が、真に選ばれるサービスを築く鍵です。
弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
スポーツ・フィットネス業界の広告と法的リスク
パーソナルジム、フィットネスクラブ、ヨガ・ピラティススタジオ、オンラインフィットネスなど、健康志向の高まりとともにスポーツ・フィットネス業界は成長を続けています。集客のために「短期間で理想の体に!」「絶対に痩せる!」といった成果訴求型の広告が多く見られますが、こうした表現には景品表示法や健康増進法に基づく厳しいルールがあり、違反すると行政指導・処分の対象になりかねません。
1 「成果保証」「短期間で痩せる」などの断定表現は危険です
この業界で最も問題となりやすいのは、「体重減少」や「筋肉増加」などの身体的変化を断定的に表現する広告です。たとえば以下のような表現は、根拠資料のないまま使用すると、景表法の優良誤認表示に該当するおそれがあります。
①「2カ月でマイナス10kg確実」
②「1回でウエスト-5cm!」
③「週1通うだけで腹筋が割れる」
④「返金保証付き!絶対に結果が出ます」
これらの表現を行う場合には、統計的に再現可能なデータや試験結果など、合理的な根拠資料が求められます。また、「保証」とうたう場合は、その保証条件(例:出席率、食事指導の遵守等)を明示しなければ、誤認を招くリスクが高まります。
2 ビフォーアフター写真の使用には特に注意が必要です
ビジュアルによる訴求が強いこの業界では、「ビフォーアフター写真」がよく使用されますが、これも誤認を招く表示として過去に多数の行政処分がなされています。
リスクのある使い方としては、
①特殊な条件で成功した一例を、全員に当てはまるように見せる
②照明・衣装・角度などを調整し、実際以上の変化があるように見せる
③加工アプリなどで画像を修正している
こうした写真を使用する場合は、「個人の結果であり、全ての方に効果を保証するものではありません」などの注意書きを明示することが最低限必要です。また、加工の有無を含め、誠実な表示であることが求められます。
3 体験談・口コミの活用とステマ規制
「私は3カ月で10kg痩せました!」「人生が変わった!」といった体験談・口コミも有効な広告手段ですが、消費者が実際の利用者の声だと信じてしまうため、内容の真実性・実在性が厳しく問われます。
さらに、インフルエンサーを起用して広告投稿を行う場合には、ステルスマーケティング規制(2023年景表法改正)の対象となるため、企業が関与している投稿には「#PR」など広告である旨の明示が必要です。
4 リーガルチェックのポイント
スポーツ・フィットネス広告における法務チェック項目としては、
①「確実に痩せる」「絶対成果」といった断定表現を使用していないか
②表示されている成果(体重減少・筋肉量等)に根拠資料があるか
③ビフォーアフター写真に加工や演出が含まれていないか、注意書きがあるか
④保証制度の表示に条件や免責の明示があるか
⑤口コミ・体験談が実在の声かつ許諾を得ているか
⑥インフルエンサー投稿にステマ表示(#広告等)がなされているか
スポーツや健康に関するサービスは、身体的・精神的影響が大きいため、誠実な情報提供が不可欠です。信頼を得る広告とは、単に成果を約束するものではなく、そのプロセスや前提条件を丁寧に伝えることによって生まれます。
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エンタメ・イベント業界の広告と法的注意点
コンサート、演劇、展示会、テーマパーク、オンライン配信イベントなど、エンタメ・イベント業界では、非日常的な体験や感情に訴える広告が多用されます。その表現は自由度が高く、キャッチーであることが求められますが、「満足度」「限定」「話題沸騰」などの表現には、景品表示法をはじめとする法的リスクが潜んでいます。
1 「満足度○%」「話題沸騰」などの実績表示は根拠が必要
エンタメ広告でよく見られる「観客満足度98%!」「リピーター続出」「SNSで話題沸騰中」などの表現は、魅力的ではあるものの、根拠が不明確な場合は優良誤認表示に該当するおそれがあります。
リスクがあるケースとしては、
①アンケート調査の母数が極端に少ない、または自社スタッフによる調査のみ
②「話題沸騰」は一部SNS投稿や自社アカウントの発信にとどまる
③実際は再演なしの単発公演なのに「大好評につき再演決定」のような印象操作
また、満足度や評価、話題性を表示する際には、以下の情報を可能な限り明示することが推奨されます。
①調査実施主体・時期・対象人数・調査方法
②使用しているSNSやメディアの名称(例:X(旧Twitter)、Instagramなど)
③具体的なデータの引用(例:ハッシュタグ投稿数、視聴回数等)
2 「限定」「先着順」「残りわずか」の表示に潜む『誤認誘引』
「限定100名様」「チケット残りわずか」「先着特典あり」など、限定性を強調する表現は、ユーザーの購買意欲を刺激する効果が高い一方で、実態が伴っていない場合には有利誤認表示となり、景表法違反の対象となります。
問題となる例としては、
①実際には人数制限がないにもかかわらず「先着100名」などと表示
②「残りわずか」と表示しておきながら、在庫数は十分に存在
③「1日限り」と告知しつつ、同内容を複数日開催
これらの表示を行う場合には、数量・期間の根拠となる証拠資料を保管しておき、適切に更新・運用する体制が求められます。
3 体験談・インフルエンサー投稿にもステマ規制の影響
近年では、イベント来場者の「体験談」や「SNSでの感想」をそのまま広告に転用したり、インフルエンサーにPR投稿を依頼したりするケースが増えています。ここでも注意すべきは、ステルスマーケティング(ステマ)規制です。
2023年の景表法改正により、「広告であるにもかかわらず、それと分からない表示」は不当表示に該当することとなりました。
ポイントとしては、
①インフルエンサーに金銭や招待等の対価を提供した場合は、「#PR」「広告」などの明示が必要
②一般客の体験談を広告に使用する場合、実在性の確認と本人の許諾が必要
③投稿内容を広告主が編集・指示している場合、「広告表示義務」が発生
4 チェックポイントまとめ
エンタメ・イベント広告での主な法的チェックポイントとしては、
①「満足度」「話題性」の表示に客観的データや調査根拠があるか
②限定性・数量・期間表示が実際の運用と一致しているか
③チケット価格・座席・サービス内容が広告表示と齟齬がないか
④体験談・SNS投稿の転用が許諾・ステマ表示を適切に行っているか
エンタメ業界は感性を刺激する表現が命ですが、その自由な発想が誤認や誇張につながらないよう、法的リスクを常に意識した表現運用が求められます。“楽しかった”の記憶を“また行きたい”に変えるには、広告への信頼が欠かせません。
次回は、「スポーツ・フィットネス業界における広告と“成果保証”“身体変化”の表示リスク」を解説いたします。
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建設・住宅リフォーム業界の広告と法的留意点
戸建て建築、マンションリフォーム、外壁塗装、水回り工事など、建設・リフォーム業界では、インターネットや折込チラシを通じた広告が盛んに行われています。住宅という高額な取引対象を扱うこの業界では、施工実績や価格、保証制度などに関する表示が消費者の判断に大きな影響を与えるため、景品表示法や建設業法、消費者契約法などの法的リスクに特に注意が必要です。
1 「施工実績」「地域No.1」の表示には客観的根拠を
建設・リフォーム業界では、信頼性や安心感を与えるために「年間施工実績1,000件以上」「地域シェアNo.1」などの表示が多用されます。こうした実績・優位性の表示は、消費者に大きな訴求力を持ちますが、裏付けとなる合理的根拠資料がなければ、優良誤認表示として景表法違反となるおそれがあります。
典型的なNG例としては、
①実際には対応件数ベースなのに「施工件数1,000件」と誇張
②特定の狭い地域(自社営業エリア)のみを母集団にした「No.1」表示
③自社アンケートや顧客満足度調査を客観的ランキングのように見せる
これらの表現を行う場合、出典・調査機関・調査期間・対象範囲を明確に記載し、必要に応じて根拠資料を提示できる体制を整えておくことが求められます。
2 「価格比較」「○○円~」の表示の落とし穴
「他社より30%安い!」「水回りリフォーム一式98,000円~」などの価格訴求は非常に効果的ですが、実際の契約価格と著しく乖離している場合や、適用条件が明確でない場合、有利誤認表示に該当します。
注意すべき点としては、
①表示された価格での施工実績がごく少数しか存在しない
②条件付き価格であるにもかかわらず、適用条件が小さく表示されている
③「比較対象の他社」の具体性がなく、比較根拠が不明確
こうした価格表示を行う際には、「最低価格」「標準価格」の定義や条件を明確にし、適用実績を保管することが重要です。
3 「保証付き」「安心施工」の表示にも誤認リスク
「10年保証」「安心の自社施工」「施工後も安心フォロー」といった保証・サポート体制の訴求もよく見られますが、実態と広告表示に乖離があると問題になります。
以下のようなケースでは注意が必要です。
①実際には「一部部位のみ保証」だが「全体10年保証」と誤認させる表示
②アフター対応が委託業者によるものであるにもかかわらず「自社対応」と表示
③保証を受けるには有料点検契約が必要なのに、その条件を明示していない
保証制度は、契約後のトラブルにもつながりやすいため、条件・範囲・期間などを広告上で正確に表示する必要があります。
4 チェックポイントまとめ
建設・住宅リフォーム広告での法務チェック項目としては、
①実績・No.1表示に客観的な根拠(出典・範囲・時期)があるか
②表示された価格は、現実に適用された例が十分に存在するか
③比較表示は、どの競合と比較しているか、根拠を説明できるか
④保証制度・施工体制の表示が誇張されていないか・条件が明示されているか
⑤リスティング広告・ランディングページでも、広告であることの明示(ステマ対策)がなされているか
建設・住宅リフォーム業界では、「一生に一度」の買い物を支える立場として、広告に対する誠実さが企業の信頼を左右します。売上重視の過剰表現ではなく、根拠ある安心の提示が選ばれる理由になるのです。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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ペット・動物関連業界の広告と法的リスク
ペットフード、動物病院、トリミングサロン、ブリーダー販売、ペット保険など、ペット関連市場は近年拡大を続けており、広告展開も多様化しています。しかし、動物を取り扱うこの業界では、誤認を招く健康効果の表示や、希少性の強調、販売方法の不適切な表現が問題となりやすく、景品表示法、動物愛護法、健康増進法などの複数の法規制に注意が必要です。
1 ペットフード・サプリの「健康効果表示」は特に注意
近年、犬猫向けの健康食品やサプリメント、機能性フードが注目されていますが、「関節が強くなる」「毛並みがツヤツヤに」「涙やけが改善」などの効果表示は、人間向けの健康食品と同様に、裏付けのない表示は景品表示法違反となる可能性があります。
また、「医師監修」「動物病院推奨」などの表現も、監修・推奨の事実や内容が明確でない場合には誤認表示とみなされます。
特に注意が必要な点としては、
①「老犬にもおすすめ!関節がよく動くように!」→ 効能効果の科学的根拠が必要
②「獣医師が開発」→ 実際には名義貸しである場合、優良誤認のおそれ
③「○○成分で長生きサポート」→ 長寿との因果関係が不明瞭であれば不当表示
ヒト用サプリメント同様、「機能性表示食品」等の制度はペットには適用されません。そのため、より慎重な表現運用が必要です。
2 ペットの販売における「希少性」「人気」「血統」表示のリスク
ペットショップやブリーダーサイトなどでは、「希少犬種」「血統書付き」「TVで話題の人気猫種」などの表現が多く見られますが、これらも根拠が不明確な場合、景表法違反のリスクがあります。
以下のような表示は特に注意が必要です。
①「国内に数頭のみ」→ 出典・調査基準が不明
②「チャンピオン犬の子」→ 実際の血統証明が確認できない
③「人気No.1猫種」→ ランキングや根拠を明示していない
また、動物の販売にあたっては、動物愛護法に基づく表示義務(販売業者情報、生年月日、親の情報など)があり、それらが広告上に適切に記載されていない場合、行政処分や業務停止命令の対象になることもあります。
3 トリミングやペットホテルの「安心・安全」表示にも根拠を
「24時間スタッフ常駐」「動物看護師が常勤」「安心・安全な施設」といった表現も多く見られますが、実際には一時的な対応や外部委託である場合、消費者に誤認を与える表現とされるリスクがあります。
また、「○○検定取得」「認定サロン」などの資格表示も、実在する団体の認証か、一般社団法人を名乗る私的団体による自称資格なのかで、信頼性に大きな差があります。
4 チェックポイントまとめ
ペット業界の広告で確認すべきポイントは次のとおりです。
①健康効果を示唆する表現に明確なエビデンス(試験データなど)があるか
②医師・専門家・団体名の表示に承諾・実態の裏付けがあるか
③「希少種」「血統」などの表示に公的証明や第三者による確認があるか
④表示義務事項(動物愛護法の販売情報等)を広告上に適切に掲載しているか
⑤サービスの安心・安全表示に客観的裏付けや条件明示があるか
ペットは“家族の一員”であり、その広告が不誠実であれば、消費者の感情的反発や信用失墜を招きかねません。だからこそ、動物への思いやりと法令遵守を両立させた広告表現が、信頼される企業の証しとなります。
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出版・メディア業界の広告と法的留意点
出版・メディア業界では、新刊書籍・雑誌・電子書籍などの販売促進のために、帯コメント・ランキング表示・書評の抜粋などを活用した広告が広く用いられています。
表現の自由度が高く、感性や印象に訴える手法が多い一方で、事実に基づかない実績表示や誤解を与える引用表現は、景品表示法などの法的規制の対象となることがあります。
1 ランキング表示のリスク
書籍広告では、「◯◯書店ランキング第1位」「Amazonでベストセラー1位獲得」といった表示がよく使われます。消費者にとって“売れている”印象を与える有力な訴求ですが、実態と異なる場合や根拠が不明確な場合には、優良誤認表示に該当するおそれがあります。
注意が必要なケースとしては、
①一時的なランキング1位(例:深夜帯のみ)を恒常的な実績であるかのように表示
②ランキングの対象期間・部門・販売形式(紙/電子)などが不明確
③調査元(書店/ECサイト)を記載せず「ランキング1位」とのみ記載
ランキングを表示する際は、必ず以下の情報を明確に表示する必要があります。
①調査対象(例:◯月◯日~◯月◯日の売上)
②調査主体(例:Amazon/楽天/特定書店チェーン)
③ランキングの部門(文芸、ビジネス、電子書籍など)
2 書評の抜粋・帯コメントの注意点
「涙が止まらなかった」「全ビジネスパーソン必読」「◯◯先生大絶賛」など、書評や推薦コメントを広告に使うことは一般的ですが、その出典や文脈を正確に伝えない場合、消費者を誤認させる表示として問題になる可能性があります。
よくあるリスク例としては、
①実際には“やや好意的”程度の評価を、極めて高評価であるかのように引用する
②コメントの一部を切り取り、本来の文脈と異なる印象を与える
③芸能人・著名人のコメントを掲載するが、本人から承諾を得ていない
③AI書評や一般ユーザーのレビューを、第三者の評価として誤認させる
引用する場合は、出典(媒体名・発行日など)を明記し、文脈を変えずに使用することが原則です。また、許諾を得たコメントであるかどうかも、使用前に必ず確認すべきです。
3 キャッチコピー・誇張表現の扱い
「今年一番泣ける恋愛小説」「10年に一度の衝撃作」など、印象的なキャッチコピーも多く見られます。これらは読者の主観に委ねられる“感想的表現”として認められるケースもありますが、特定の実績(売上・評価)や事実と結びつける場合は、根拠が求められます。
例:「書店員が選ぶ1位の小説」→ 実際にそうしたランキングが存在しているか、確認・表示が必要。
4 出版広告のチェックポイントまとめ
①ランキング表示には、調査主体・対象期間・部門の明示があるか
②書評の引用は、出典・文脈・許諾の有無を確認しているか
③芸能人や著名人の推薦コメントは、本人からの承諾があるか
④感性的キャッチコピーでも、事実に基づく表現か否かを区別して使い分ける
⑤SNS・電子広告では、広告であることの明示(ステマ対策)が行われているか
出版・メディア業界では、読者の感情に訴える「言葉の力」が広告の要となりますが、だからこそ「信頼性」と「根拠」が伴ってこそ、本当に響く広告になります。
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旅行・観光業界の広告と法的リスク
旅行代理店、宿泊施設、ツアー企画会社、観光PR事業者など、旅行・観光業界では「非日常」や「感動」をテーマにした広告が多く見られます。SNSや動画を活用した訴求が盛んであり、消費者の期待も高い分野ですが、その一方で、実態との乖離がある表現や誤認を招く価格表示は、景品表示法違反などの法的リスクを招く可能性があります。
1 優良誤認表示の典型例:「体験談」「絶景」「ラグジュアリー」
観光業界では、視覚的な訴求力が重視され、「実際よりも良く見せたい」という誘惑に駆られがちです。ですが、過度に誇張された写真やキャッチコピーは、優良誤認表示に該当するおそれがあります。
たとえば以下のような表現には注意が必要です。
①加工した写真を使用し、実際の宿泊施設や景色と著しく異なる印象を与える
②期間限定の特別仕様(例:特別装飾や演出)を通年実施のように表示する
③「お客様満足度98%」「最高の思い出になりました!」といった体験談を広告に掲載しているが、裏付けとなるアンケート調査や実在性の確認がない
旅行広告では、感動を演出する体験談やレビューが多用されますが、これらが事実でなかったり、過度に一般化された「お客様の声」である場合は、消費者に誤認を与えるリスクがあります。
2 有利誤認表示の典型例:料金・キャンペーン表示
「〇月限定!今だけ30%OFF!」「3泊4日航空券・ホテル込みで29,800円!」など、価格訴求は非常に効果的ですが、実際の料金条件や適用範囲が小さく明記されているだけの場合、有利誤認表示に該当する可能性があります。
以下のようなケースが典型例です。
①「29,800円~」と表示しつつ、実際にはほとんどの日程でその価格のプランが存在しない
②表示価格に含まれない費用(例:空港税、入湯税、施設使用料など)が多く、総額との乖離がある
③「無料送迎」「朝食付き」と表示しているが、予約条件付き(例:◯泊以上)であることを目立たない場所に記載
旅行業界では、価格が決め手になることが多いため、価格表示は特に厳格な審査を経て表記する必要があります。
3 リーガルチェックのポイント
旅行業界では、景品表示法だけでなく、旅行業法・消費者契約法の適用もあります。広告における「取消料」や「キャンセルポリシー」などの表示内容が明確でないと、不当条項や情報不足による契約トラブルに発展することもあります。
チェックすべき主なポイントは以下のとおりです。
①写真や動画は実際の風景・施設と著しい乖離がないか
②「体験談」「レビュー」は実在する利用者の声かつ脚色されていないか
③表示価格に含まれる内容・除外される費用を明確に示しているか
④キャンペーンや特典表示は適用条件を大きくわかりやすく記載しているか
⑤キャンセル料・変更手数料などの条件が誤認なく説明されているか
旅行・観光業界の広告は、夢や非日常を売る仕事だからこそ、事実に即した誠実な情報提供が求められます。誤解を招かない、正確で信頼ある広告こそが、「また利用したい」というリピーターを生み、長期的なブランド価値に繋がるのです。 弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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アパレル・ファッション業界の広告と法的リスク
アパレル・ファッション業界では、季節ごとの新作プロモーション、SNSを活用した販促、ECサイトでのセール表示など、多彩な広告展開が行われています。デザイン性や感性を訴求する業界である一方、表示に法的な裏付けがない場合、景品表示法や家庭用品品質表示法等の法令に抵触するリスクがあるため、注意が必要です。
本業界で特に問題となりやすいのが、以下の3つの表示です。
①素材や原産国に関する表示
②価格(割引)表示
③機能性(防水・UVカットなど)の表示
1 素材表示と原産国表示の注意点
アパレル製品の品質表示には、「家庭用品品質表示法」が適用され、素材(繊維の組成)、洗濯表示、原産国などの正確な表示が求められます。たとえば、以下のような表示は問題になります。
①実際にはポリエステル混紡であるにもかかわらず「100%コットン」と記載
②中国製である商品に「Made in Japan」と表示
③特定の高級素材(例:カシミヤ)を一部しか使用していないのに、製品全体がその素材であるかのような表記
これらは景表法の優良誤認表示、品質表示法違反の両方に該当する可能性があります。
2 セール・割引表示の落とし穴
ECサイトや店頭ポスターで頻繁に見かける「通常価格から○%オフ」「今だけタイムセール」といった表示にも、法的リスクが潜んでいます。
景表法上、「通常価格」とは、過去に相当期間実際に販売された価格でなければならず、存在しない価格を“定価”として大幅割引を訴求すると、有利誤認表示として違法となるおそれがあります。
①常に「タイムセール」「ラスト1点」と表示している
②「通常9,800円→今だけ3,980円!」だが、実際に9,800円で販売された期間が極端に短い
③セール価格を継続的に使用しており、実質的に通常価格となっている
これらは、過去に消費者庁からの措置命令が出された事例もあります。
3 機能性表示・ナンバーワン表示
「UVカット90%」「防水加工済」「業界No.1のリピート率」など、機能性や実績を訴求する表現も人気ですが、これらの表示には合理的根拠資料が必要です。
特に「No.1」「人気ランキング1位」などの表現は、出典・調査機関・時期・調査方法の明示が不可欠です。根拠が不明確な場合、優良誤認表示として規制の対象になります。
4 チェックポイント
アパレル広告でリーガルチェックすべきポイントは以下のとおりです。
①素材や原産国の表示は、実際の商品と完全に一致しているか
②セールや割引価格に使用している「通常価格」は過去に実績があるか
③「限定」「ラスト1点」「人気」などの煽り表現は、実態に即しているか
④機能性表示には、第三者試験・社内試験などの根拠資料があるか
⑤ランキング・No.1表示の際は、出典・条件を明示しているか
アパレル業界では“感性に訴える表現”が中心になりがちですが、だからこそ信頼性ある表示とのバランスが求められます。ファッションの価値は、素材・デザインと同様に、“誠実な伝え方”にも宿ります。
次回は、「旅行・観光業界における広告と『体験談』『価格表示』の法的注意点」を解説いたします。
弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
IT・SaaS業界の広告と法的リスク
クラウドサービス、業務システム、アプリケーションなど、IT・SaaS業界の広告は、デジタル領域の拡大とともにますます活発化しています。導入実績や機能の優位性、コスト削減効果など、企業の経営層や担当者の目を引くような訴求がなされる一方で、根拠のない実績表示や誤解を招く機能比較などは、景品表示法違反につながるリスクがあるため注意が必要です。
1 主とした法規制
IT・SaaS業界で広告に関わる主な法律は、以下のとおりです。
①景品表示法(優良誤認・有利誤認表示)
②不正競争防止法(誤認惹起表示・営業秘密の不正使用)
③特定商取引法(BtoC向けの継続課金型サービスなど)
2 リスクのある広告表現
たとえば、次のような広告表現はリスクがあります。
①「導入社数10,000社突破!」→ 実際は無料トライアル登録を含む数字で、有償契約数ではない
②「業界No.1」「国内シェア1位」→ 出典不明、調査主体・調査方法が非公開
③「年間100時間の業務削減に成功!」→ 自社ユーザー1社の事例であり、一般的な効果ではない
④「競合より安く、高機能」→ 他社製品の機能比較が客観的でなく、根拠の提示がない
これらはいずれも、優良誤認表示や有利誤認表示に該当する可能性がある広告例です。SaaSの特性上、サービスの実体が目に見えないため、広告上の表現がユーザーの判断材料のほとんどを占めることになります。そのため、表現の裏付けとなる合理的根拠資料(エビデンス)を準備し、開示できる状態にしておくことが重要です。
さらに、よくあるトラブルとして、利用規約に記載された条件と広告表示の齟齬があります。たとえば「いつでも解約可能」と広告で訴求しているにもかかわらず、実際は年間契約のみ、途中解約は不可とされている場合、消費者から「詐欺的」と批判されるだけでなく、景表法違反または特商法違反の対象になる可能性があります。
3 リーガルチェックのポイント
SaaS業界における広告のチェックポイントは、以下のとおりです。
①実績表示(導入数、満足度、業界シェア等)は出典・調査方法・調査時期を明示しているか
②利用条件(価格、機能制限、解約条件など)は、広告上で正確かつ明確に表示されているか
③比較広告を行う場合、客観性と公平性が確保されているか
④他社名・ロゴを無断使用していないか(著作権・不正競争防止法への配慮)
⑤ユーザーの声・体験談が実在するものかつ脚色されていないか
また、最近ではYouTubeやオウンドメディア、比較サイトを使ったマーケティングも盛んですが、それらが広告であるにもかかわらず「中立レビュー」を装っている場合、ステマ規制の対象となる可能性もあります。
IT・SaaS業界では、製品そのものの“見た目”で差別化することが難しいからこそ、「広告で信頼を築く」姿勢が、契約継続や評判維持に直結します。
弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

有森FA法律事務所は、「広告表現に不安があるけれど、何から始めていいか分からない」という方々の力になりたいと考えています。インターネット広告やSNSの普及で、広告に関する法律リスクも多様化してきました。広告チェックに関しては、全国からのご相談に対応しており、WEB会議や出張相談も可能です。地域を問わず、さまざまなエリアの事業者様からご相談をいただいています。身近な相談相手として、お気軽にご連絡ください。
飲食・外食業界の広告と法的リスク
レストラン、カフェ、ファストフードチェーン、デリバリーサービス、食品メーカーなど、飲食・外食業界では、日々さまざまな広告が展開されています。SNSや動画広告、ポスターなど多彩な媒体で魅力的に訴求される一方で、食品に関する表示には厳格なルールが課されており、違反すると行政処分や社会的信用の低下を招くリスクがあります。
1 飲食業界における広告規制
まず、飲食業界における広告で注意すべき主要な法令は、以下の3つです。
①景品表示法(景表法)
②食品表示法
③健康増進法(特定保健用食品等)
2 景表法上の規制
特に景表法では、「優良誤認表示」や「有利誤認表示」が禁止されており、実際より著しく優れている、有利であると誤認される表現を使うと違法になります。
たとえば、以下のような表現が問題となる可能性があります。
①「無添加」「オーガニック」「国産100%」などの表示に根拠がない
②「他店の倍の量!」などの比較広告に客観的裏付けがない
③「今だけ半額」などの価格表示に、実際は“常時キャンペーン状態”で通常価格が存在しないケース
こうした表現は、根拠資料がない場合や表示が曖昧な場合に措置命令・課徴金納付命令の対象となることがあります。
2 食品表示法上の規制
次に、食品表示法にも注意が必要です。この法律は、原材料名、栄養成分、アレルゲン表示、消費期限などについて詳細に定められています。
たとえば、以下のような誤表示は法令違反です。
①実際には使用していない食材を「使用」と表示する(例:「北海道産バター使用」)
②加工食品において、加熱処理の有無を誤認させる表示をする(例:「生ハム風」なのに“生”と誤認させる)
③内容量をごまかす(例:「お肉たっぷり」と書かれているが、実際には少量しか使用していない)
また、健康訴求(ヘルスクレーム)に関する表現は、健康増進法の規制対象となります。「○○を食べると痩せる」「血圧が下がる」といった表示は、特定保健用食品や機能性表示食品でなければ使うことができません。
一般の食品でこのような表現を行うと、違法表示と判断されます。
3 リーガルチェックのポイント
飲食業界の広告でリーガルチェックすべきポイントは以下の通りです。
①「無添加」「国産」などの表示に根拠資料はあるか(証明可能か)
②価格表示は実態と合致しているか、キャンペーンは一時的なものか
③栄養成分や原材料の表記に誤りや誇張はないか
④健康効果を示唆する表現は、法的に許容される商品かどうか
⑤ビジュアルと実物の乖離が著しくないか(例:写真と実物のサイズ・量の差)
飲食業界では、広告が「美味しそう」「安心できそう」といった印象を左右します。しかし、印象操作に頼りすぎた表現は、違法リスクとブランド毀損の二重のリスクを招きかねません。
法令に則った誠実な広告こそが、「また食べたい」「信頼できる」という顧客の声につながります。
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