ペット・動物関連業界の広告と法的リスク

ペットフード、動物病院、トリミングサロン、ブリーダー販売、ペット保険など、ペット関連市場は近年拡大を続けており、広告展開も多様化しています。しかし、動物を取り扱うこの業界では、誤認を招く健康効果の表示や、希少性の強調、販売方法の不適切な表現が問題となりやすく、景品表示法、動物愛護法、健康増進法などの複数の法規制に注意が必要です。

1 ペットフード・サプリの「健康効果表示」は特に注意

近年、犬猫向けの健康食品やサプリメント、機能性フードが注目されていますが、「関節が強くなる」「毛並みがツヤツヤに」「涙やけが改善」などの効果表示は、人間向けの健康食品と同様に、裏付けのない表示は景品表示法違反となる可能性があります。

また、「医師監修」「動物病院推奨」などの表現も、監修・推奨の事実や内容が明確でない場合には誤認表示とみなされます。

特に注意が必要な点としては、

①「老犬にもおすすめ!関節がよく動くように!」→ 効能効果の科学的根拠が必要

②「獣医師が開発」→ 実際には名義貸しである場合、優良誤認のおそれ

③「○○成分で長生きサポート」→ 長寿との因果関係が不明瞭であれば不当表示

ヒト用サプリメント同様、「機能性表示食品」等の制度はペットには適用されません。そのため、より慎重な表現運用が必要です。

2 ペットの販売における「希少性」「人気」「血統」表示のリスク

ペットショップやブリーダーサイトなどでは、「希少犬種」「血統書付き」「TVで話題の人気猫種」などの表現が多く見られますが、これらも根拠が不明確な場合、景表法違反のリスクがあります。

以下のような表示は特に注意が必要です。

①「国内に数頭のみ」→ 出典・調査基準が不明

②「チャンピオン犬の子」→ 実際の血統証明が確認できない

③「人気No.1猫種」→ ランキングや根拠を明示していない

また、動物の販売にあたっては、動物愛護法に基づく表示義務(販売業者情報、生年月日、親の情報など)があり、それらが広告上に適切に記載されていない場合、行政処分や業務停止命令の対象になることもあります。

3 トリミングやペットホテルの「安心・安全」表示にも根拠を

「24時間スタッフ常駐」「動物看護師が常勤」「安心・安全な施設」といった表現も多く見られますが、実際には一時的な対応や外部委託である場合、消費者に誤認を与える表現とされるリスクがあります。

また、「○○検定取得」「認定サロン」などの資格表示も、実在する団体の認証か、一般社団法人を名乗る私的団体による自称資格なのかで、信頼性に大きな差があります。

4 チェックポイントまとめ

ペット業界の広告で確認すべきポイントは次のとおりです。

①健康効果を示唆する表現に明確なエビデンス(試験データなど)があるか

②医師・専門家・団体名の表示に承諾・実態の裏付けがあるか

③「希少種」「血統」などの表示に公的証明や第三者による確認があるか

④表示義務事項(動物愛護法の販売情報等)を広告上に適切に掲載しているか

⑤サービスの安心・安全表示に客観的裏付けや条件明示があるか

ペットは“家族の一員”であり、その広告が不誠実であれば、消費者の感情的反発や信用失墜を招きかねません。だからこそ、動物への思いやりと法令遵守を両立させた広告表現が、信頼される企業の証しとなります。

弊事務所では広告法務に関して総合的にサポートを提供しております。広告法務に関してお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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