5Gの普及に伴い、YouTubeやTikTok、Instagramなどの「動画広告」は、企業のマーケティング活動において中心的な役割を果たすようになりました。しかし、動画制作は静止画(バナー)に比べて、権利処理が複雑になる傾向にあることをご存知でしょうか。
特にトラブルが多いのが、動画に使用する「音楽(BGM)」と「テロップ(フォント)」の権利です。「制作ソフトに入っていたから」、「フリー素材サイトから落としたから」という理由で安易に使用し、後日、著作権者から動画の削除要請や損害賠償請求を受けるケースが後を絶ちません。
本記事では、動画広告を制作・配信する際に必ず確認すべき権利関係の落とし穴についてみていきます。
このページの目次
1 音楽(BGM)の「著作権」と「原盤権」
動画に音楽を使う場合、クリアしなければならない権利は大きく分けて2つあります。「楽曲そのものの権利(著作権)」と、「音源の権利(原盤権)」です。
例えば、有名なクラシック音楽(ベートーヴェンなど)は、作曲者の死後70年が経過しているため著作権は消滅していますが、それを演奏して録音したCDには、レコード会社や演奏家の「原盤権」が残っています。したがって、市販のクラシックCDの音源を勝手に動画のBGMとして使うことは違法です。また、「著作権フリー(ロイヤリティフリー)」を謳う音楽素材サイトであっても、利用規約で「商用利用(広告利用)」を禁止していたり、法人利用の場合は別途ライセンス料が必要だったりするケースが多々あります。
2 フォント(書体)のライセンス範囲
意外と見落とされがちなのが、テロップに使用する「フォント」の権利です。 パソコンにプリインストールされているフォントや、デザインソフトに付属しているフォントであっても、その利用規約において「動画への使用」や「商用利用」が制限されていることがあります。
例えば、「印刷物への使用はOKだが、動画のテロップとして画面に表示させるには別途放送用ライセンスが必要」といった契約になっているフォントメーカーも存在します。
また、フリーフォントであっても、「YouTubeでの収益化動画には使用不可」や「企業案件には使用不可」といった条件がついていることが珍しくありません。動画広告は当然ながら営利目的の商用利用にあたるため、これらの規約に違反すれば、フォントメーカーから高額な損害賠償を請求されるリスクがあります。制作会社に外注する場合も、「商用利用可能なフォントを使っているか」を必ず確認する必要があります。
3 写り込みと肖像権
ロケ撮影を行う場合、背景に他人の著作物(ポスターや絵画)や、通行人が写り込んでしまうことがあります。日本の著作権法では、付随的な写り込みとして、一定の範囲内であれば権利侵害にならない例外規定がありますが、あくまで「メインの被写体と分離困難な場合」などに限られます。意図的に背景としてキャラクター商品などを配置したり、通行人の顔がはっきり判別できる状態で広告に使用したりすれば、著作権や肖像権の侵害となります。

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