アフィリエイターが勝手に「癌が治る」と書いた場合、広告主も薬機法違反の責任を問われるのか

健康食品やサプリメントの販売では、アフィリエイト広告を活用して集客を行うケースが多くあります。

アフィリエイト広告は、成果報酬型で販売促進を行える便利な仕組みです。
一方で、広告主が直接作成していない記事やLPであっても、過激な効能効果表現が使われた場合、薬機法や景品表示法上の責任を問われるリスクがあります。

特に、健康食品について「癌が治る」「医者も驚く効果」「血糖値が正常化する」など、医薬品的な効能効果を標ぼうする表示は、薬機法違反として刑事事件に発展する可能性があります。

今回は、サプリメント販売会社から相談を受けた事例をもとに、アフィリエイターが作成した違法記事について、広告主が警察から事情聴取を求められた場合の対応を解説します。

相談内容:面識のないアフィリエイターの記事について大阪府警から連絡が来た

サプリメント販売会社の社長であるKさんから、次のようなご相談を受けました。

大阪府警から電話があり、当社の商品を紹介しているアフィリエイトサイトについて事情聴取したいと言われました。
確認すると、当社とは面識のないアフィリエイターが勝手に作ったサイトで、「癌が消えた」「医者も驚く効果」といったデタラメな体験談とともに、当社の商品が紹介されていました。
警察は「広告主である御社の指示ではないか」と疑っていますが、私は本当に指示していません。
ASPを通しているだけで、誰が記事を書いたのかも知りません。
それでも、広告主である私が逮捕されるのでしょうか。

Kさんとしては、「アフィリエイターが勝手に書いた記事であり、自社は関係ない」という認識でした。

しかし、現在の広告規制実務では、「アフィリエイターが勝手にやった」「ASPに任せていた」という説明だけでは十分とはいえません。

アフィリエイト広告でも薬機法違反になり得る

薬機法では、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器などの効能効果に関する虚偽・誇大広告が禁止されています。
また、未承認医薬品について効能効果を広告することも禁止されています。

健康食品やサプリメントは、原則として医薬品ではありません。
そのため、健康食品について「癌が治る」「肝臓病が改善する」「糖尿病に効く」など、疾病の治療・予防効果をうたうと、未承認医薬品の広告と評価されるおそれがあります。

今回の記事では、次のような表示が使われていました。

  • 癌が消えた
  • 医者も驚く効果
  • 末期でも改善した
  • 薬に頼らず治った
  • 利用者の体験談として、病気が治ったかのように記載している

これらは、健康食品の広告表現として極めて危険です。

「アフィリエイターが勝手に書いた」では済まない理由

かつては、広告主側が「アフィリエイターが勝手に作った記事であり、当社は関与していない」と主張するケースも少なくありませんでした。

しかし、現在では、アフィリエイト広告に対する行政・警察の見方は厳しくなっています。

アフィリエイト広告では、広告主がASPを通じて商品紹介を依頼し、成果に応じて報酬を支払う仕組みになっています。
広告主が記事の細部を直接作成していなくても、自社商品の販売促進のために広告ネットワークを利用している以上、広告主が全く責任を負わないとは限りません。

つまり、「直接書いていない」というだけでは、広告主の責任を否定する決定的な理由にはなりません。

ステラ漢方事件以降、警察の見方は厳しくなっている

アフィリエイト広告と薬機法違反の関係で特に重要なのが、いわゆるステラ漢方事件です。

この事件では、健康食品について、医薬品として承認されていないにもかかわらず、「肝臓疾患の予防に効果がある」などと広告した疑いで、広告主である健康食品販売会社の従業員だけでなく、広告代理店や制作会社の関係者も薬機法違反容疑で逮捕されましたウェブ。

報道では、問題となった広告はアフィリエイト広告であり、第三者の体験談を装った記事風広告で、「脂肪肝が正常値に」「肝臓が半年で復活」といった医薬品的な効果が表示されていたとされていますウェブ。

この事件が広告業界に与えた影響は大きく、広告主、代理店、制作会社、アフィリエイターのいずれも、薬機法違反の責任を問われ得ることが明確になりました。

警察が見るポイントは「認識」と「黙認」

警察が広告主の関与を調べる際に重視するのは、単に記事を誰が書いたかだけではありません。

重要なのは、広告主が違法な広告の存在や内容を認識し、それを黙認または承認していたといえるかどうかです。

例えば、次のような事情があると、広告主の関与を疑われる可能性があります。

  • ASPの管理画面で、問題サイトからの流入や獲得件数を確認していた
  • 違法表現を含む記事のURLを社内で共有していた
  • 「表現は強いが獲得できているので止めない」といったメールやチャットがある
  • アフィリエイターに特別単価を出していた
  • 過去に同様の違法表現を指摘されていたのに放置していた
  • 広告代理店やASPに対して、強い訴求を求める指示をしていた
  • 記事内容を事前に確認し、修正指示を出していた
  • 苦情や行政指導を受けた後も掲載停止しなかった

このような証拠がある場合、「広告主は知らなかった」という説明は通りにくくなります。

特に、違法な表現で獲得が伸びていることを認識しながら放置していた場合、明示的な指示がなくても、黙示の共謀が疑われるリスクがあります。

まず行うべきこと:関与していないことを客観的に整理する

警察から事情聴取を求められた場合、最初に行うべきことは、事実関係の整理です。

感情的に「知らない」「関係ない」と主張するだけでは不十分です。
K社が違法記事の作成や掲載に関与していなかったことを、客観的資料に基づいて説明できるようにする必要があります。

今回のケースでは、次の資料を確認しました。

  • ASPとの契約書
  • 広告代理店との契約書
  • アフィリエイト運用に関するメール・チャット
  • ASP管理画面の閲覧権限やログ
  • 成果承認のフロー
  • 広告審査ルール
  • 社内の広告チェック記録
  • 過去にASPへ送付した法令遵守依頼
  • 問題サイトを認識した日時
  • 認識後に行った提携解除・掲載停止依頼の記録
  • 当該アフィリエイターとの直接連絡の有無
  • 特別単価交渉の有無

重要なのは、「知らなかった」という主張を、時系列と証拠で裏付けることです。

警察への対応方針:弁護士意見書で関与の不存在を説明

今回のケースでは、弁護士が意見書を作成し、警察に対して次の点を説明しました。

  • K社は、ASPに対して法令遵守を求める契約・運用ルールを設けていた
  • 問題となったアフィリエイトサイトの作成者とは直接の接点がなかった
  • K社は、当該記事の内容を事前に確認・承認していなかった
  • K社が「癌が治る」などの表現を指示した事実はない
  • 問題サイトを認識した後、直ちにASPに掲載停止と提携解除を依頼した
  • 同様の再発防止策として、アフィリエイト広告の審査体制を強化した

警察対応では、捜査機関に対して不必要に敵対的な姿勢を取るべきではありません。
一方で、事実と異なる疑いに対しては、証拠に基づいて明確に反論する必要があります。

刑事事件を回避できても、行政処分リスクは残る

仮に刑事事件として不起訴になったとしても、それで全てが終わるわけではありません。

薬機法、景品表示法、健康増進法などの広告規制では、行政からの指導、広告中止命令、措置命令、課徴金などのリスクが残ります。

特に景品表示法では、自社が供給する商品の表示について、広告主が責任を問われやすい構造になっています。
アフィリエイト広告であっても、自社商品の販売促進に使われている以上、表示管理体制が不十分であれば、広告主が行政対応を迫られる可能性があります。

また、薬機法についても、健康食品について医薬品的効能効果をうたう広告が出ていた場合、広告主としての管理体制が問題視される可能性があります。

そのため、警察対応と並行して、行政処分リスクを見据えた再発防止策を整える必要があります。

広告主に求められる管理体制

アフィリエイト広告を運用する広告主には、単にASPに任せるだけでなく、実効的な管理体制が求められます。

今回のケースでは、次のような体制を整備しました。

1. アフィリエイト広告の事前審査制

アフィリエイターが自由に記事を公開する方式を改め、事前に広告内容を確認する制度に変更しました。

具体的には、次のルールを設けました。

  • アフィリエイターが作成した記事・LPは、公開前にK社へ提出する
  • K社または弁護士が薬機法・景品表示法の観点から確認する
  • 承認済みの広告だけを掲載可能とする
  • 未承認広告から発生した成果は承認しない
  • 違反広告を掲載したアフィリエイターは提携解除の対象とする

特に健康食品、サプリメント、化粧品、医薬部外品などは、表現規制が厳しい分野です。
成果報酬型だからといって、広告内容を事後確認だけにする運用は危険です。

2. 禁止表現リストの整備

アフィリエイター向けに、使用禁止表現のリストを作成しました。

例えば、サプリメント広告では、次のような表現を禁止しました。

  • 癌が治る
  • 糖尿病に効く
  • 血圧が下がる
  • 医師も認めた治療効果
  • 薬をやめられる
  • 病院に行かずに改善
  • ○日で完治
  • 副作用なし
  • 体験談として疾病の改善を示す表現
  • 医薬品と誤認させる表現

禁止表現リストは、契約書や管理画面に載せるだけでなく、アフィリエイターが実際に理解できる形で配布することが重要です。

3. 定期的なパトロール

公開後の広告についても、定期的に巡回監視を行う体制を構築しました。

具体的には、次の方法を組み合わせました。

  • 商品名での検索
  • 広告主名での検索
  • ASP管理画面上の高成果メディアの確認
  • SNSや動画サイトでの商品紹介の確認
  • 外部業者による広告パトロール
  • 違反疑義サイトのスクリーンショット保存
  • 違反発見時の削除依頼・提携解除記録の保存

重要なのは、単に「監視している」と言うだけでなく、監視記録を残すことです。
後に行政や警察から説明を求められた際、いつ、どの範囲を確認し、どのような対応をしたのかを示せるようにしておく必要があります。

4. ASP・代理店との契約改訂

ASPや広告代理店との契約も見直しました。

新たに、次のような条項を追加しました。

  • 薬機法、景品表示法、健康増進法、特定商取引法等を遵守する義務
  • アフィリエイターにも同等の遵守義務を課す義務
  • 広告素材・記事・LPの事前提出義務
  • 未承認広告の掲載禁止
  • 違反発覚時の即時削除義務
  • 違反アフィリエイターの提携解除義務
  • 違反広告から発生した成果報酬の不払い
  • 広告主が被った損害、弁護士費用、調査費用の賠償義務
  • 調査協力義務
  • 掲載媒体・アフィリエイター情報の開示義務

契約で責任分担を明確にしておくことは、違反発生時の対応だけでなく、平時の抑止力としても重要です。

5. 成果承認フローの見直し

従来は、売上が発生すれば機械的に成果承認していました。

しかし、違法広告から発生した売上に報酬を支払ってしまうと、違法広告を事実上後押ししていたと評価されるおそれがあります。

そこで、次のような成果承認フローに変更しました。

  • 高成果メディアは成果承認前に広告内容を確認する
  • 未承認記事からの成果は保留する
  • 違反表現が確認された場合は成果否認する
  • 違反が重大な場合は提携解除する
  • 成果承認・否認の理由を記録する

「成果が出ているから放置する」という運用は、最も危険です。
むしろ、成果が急増している広告ほど、表現が過激になっていないか確認する必要があります。

今回の解決:不起訴となったが、運用体制を全面的に見直し

今回のケースでは、K社が違法記事の作成に関与していなかったこと、当該サイトを認識した後に速やかに掲載停止を求めたこと、ASPに対して法令遵守を求める運用をしていたことなどを説明し、結果としてK社長は不起訴となりました。

もっとも、警察から事情聴取を受けること自体、経営者にとって大きな負担です。
また、不起訴になったからといって、アフィリエイト広告の管理を従来どおりに戻すことはできません。

K社では、その後、アフィリエイト広告を全面的に見直し、事前審査、定期パトロール、契約改訂、成果承認フローの変更を実施しました。

アフィリエイト広告を運用する企業のチェックポイント

サプリメント、健康食品、化粧品、医薬部外品などを扱う企業は、少なくとも次の点を確認する必要があります。

  • アフィリエイターが作成する記事を事前に確認しているか
  • ASPや代理店に任せきりになっていないか
  • 薬機法・景品表示法上の禁止表現リストを整備しているか
  • 「癌が治る」「医師も認めた」などの疾病・治療効果表現を禁止しているか
  • 高成果メディアの広告内容を定期的に確認しているか
  • 違反広告を発見した場合の削除・提携解除フローがあるか
  • 違反対応の記録を残しているか
  • ASP・代理店契約に法令遵守義務や損害賠償条項を入れているか
  • 未承認広告からの成果を否認できる仕組みがあるか
  • 広告審査を弁護士や専門部署が確認する体制があるか
  • 警察・行政から連絡があった場合の初動対応フローがあるか

まとめ:アフィリエイト広告は「任せる広告」ではなく「管理する広告」

アフィリエイト広告は、広告主が直接記事を書かなくても、多数の媒体で商品を紹介してもらえる強力な広告手法です。

しかし、その一方で、アフィリエイターが成果を上げるために過激な表現を使うリスクがあります。
特に健康食品やサプリメントについて、疾病の治療・予防効果をうたう表現が使われると、薬機法違反として刑事事件に発展する可能性があります。

「アフィリエイターが勝手に書いた」
「ASPに任せていた」
「広告主は記事を作っていない」

このような説明だけでは、広告主の責任を免れるには不十分です。

広告主としては、アフィリエイト広告を開始する段階から、事前審査、禁止表現リスト、定期パトロール、契約条項、成果承認フローを整備し、違法広告を発生させない仕組みを作る必要があります。

「売れれば何でもいい」という広告運用は、もはや通用しません。
アフィリエイト広告は、強力な集客手段であると同時に、管理を誤れば刑事事件や行政処分につながる諸刃の剣です。
サプリメントや健康食品の広告主は、薬機法・景品表示法に適合した管理体制の下で、慎重に運用することが重要です。

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