【相談事例】「海外の画期的な製品を輸入したいが、英語も通関も不安……」
相談者: 国内で輸入雑貨の販売を検討しているA社・代表取締役
お悩み:「海外の展示会で見つけた素晴らしい製品を自社で扱いたいと考えています。しかし、相手企業とは英語でのやり取りが必要ですし、何より『輸入通関』や『関税』といった専門的な手続きが全く分かりません。自社で直接輸入すべきなのか、それとも間に専門業者を入れるべきなのか……。リスクを最小限に抑えてビジネスを始めるにはどうすれば良いでしょうか?」
このページの目次
1 結論―取引形態の選択がビジネスの成否を分ける
海外企業とのビジネスを検討する際、多くの企業が「言葉の壁」や「通関手続の複雑さ」を理由に二の足を踏んでしまいます。しかし、海外取引は必ずしも自社で全てを完結させる必要はありません。
結論から申し上げますと、利益率を最大化したいなら「直接取引」、初期リスクと実務負担を軽減したいなら商社等を介した「間接取引」を選択する方法が定石です。
どちらの方法を選ぶにせよ、関税法や輸入規制といった「専門的な知見」を踏まえた論点をあらかじめ整理しておくことが、不測の事態(貨物の差し止めや過少申告罰則)を防ぐ有効な手段となります 。
2 海外企業との「直接取引」:メリットと見えないリスク
日本のメーカーや販売店が、海外の会社との間に第三者を挟まずに契約を結ぶ形態です。
(1)直接取引のメリット
①中間コストの削減
仲介者に支払う手数料が発生しないため、仕入れ価格を抑え、利益率を高く保つことが可能です。
②意思決定のスピード
取引条件や価格交渉を直接行えるため、市場の変化に応じた迅速な対応が期待できます。
③情報の透明性
相手方と直接繋がることで、製品の改良要望やトラブル時の確認がスムーズ(正しく伝われば)になります。
(2)潜むデメリットと実務の壁
一方で、全ての責任は自社に帰属してしまいます。
①通関実務の負担
輸入申告や関税の支払い、他法令(食品衛生法や薬機法など)の確認を自社で管理しなければなりません。
②為替・物流リスク
輸送中の事故や為替変動による損失を直接被ることになります。
③専門知識の欠如による罰則
悪意がなくとも、関税法に抵触すれば「事後調査」などで厳しいペナルティを課されるリスクがあります。
3 海外企業との「間接取引」―商社活用の戦略的意義
間接取引とは、主に商社などの専門業者を介して行う取引を指します。多くの場合、輸出入の名義は商社側となります。
(1)間接取引のメリット
①専門知見の活用
商社が蓄積してきた「通関のノウハウ」や「現地情勢」を利用できます 。自社に専門部署を置く必要がありません。
②交渉力の代行
取引条件を有利にするための交渉をプロに任せられるため、言語の壁を気にする必要がありません。
③リスクの分散
代金回収リスクや物流トラブルの一部を商社が担保してくれるケースが多いと言えます。
(2)慎重に検討すべきコスト
最大の懸念点は、当然ながら「コスト」です。商社への手数料を差し引いても、自社でビジネスを継続するだけの利益が残るのかを精緻にシミュレーションしなければなりません。
4 専門家の知見を加えることの重要性
海外取引を検討する際、多くの企業が「契約書の言語」や「相手企業の信用」ばかりに目を向けがちです。しかし、通関実務の視点から見れば、真のリスクは「貨物が日本の港に届いた後」にも多数存在しています。
(1)実行前に必ず行うべき「関税分類(HSコード)」の特定
直接取引を選択する場合、自社で輸入申告を行う(または通関業者に指示を出す)ことになります。ここで最も重要なのが、商品の「住所」とも言えるHSコードの特定です。
①関税率の確定
コードの選択一つで関税率が0%から10%以上まで変動します。
②他法令の非該当証明
食品衛生法や薬機法に該当するか否かは、このコードに基づき判断されます。
実務上、自己判断で輸入を進め、税関から「区分が違う」と指摘されれば、過去数年分に遡って追徴課税を課されるリスク(事後調査リスク)もあります。
そのため、検討段階で、税関への「事前教示制度」を活用する等の対策が不可欠です。
(2)商社(間接取引)を利用する際の「手数料」以外のチェックポイント
間接取引は「楽」ですが、丸投げは危険です。商社を利用する際は、以下の実務的視点を持ってください。
①物流ルートの透明性
どの船会社を使い、どこに保管されているか。トラブル時に商社が迅速に回答できる体制かを確認してください。
②該非判定書の入手
将来的に自社での直接取引に切り替える可能性を見据え、商社が取得した法令上の許可証や判定書のコピーを共有してもらえる契約にしておくべきです。
(3)逆ピラミッド型で考える「トラブル発生時」の初動
万が一、貨物が税関で止まった、あるいは事後調査の通知が来た場合、小説のような「起承転結」で経緯を説明することが必ずしも適しているとは言えません。税関職員が求めているのは、以下の3点に集約された「結論」です。
①何が起きているか(事実)
「輸入申告に対して、評価(価格)の妥当性が問われている」など。
②根拠は何か(証拠)
「メーカーとの基本合意書および送金控えに基づいている」など。
③どう対応するか(方針)
「指摘箇所を精査し、速やかに修正申告または疎明資料を提出する」など。この順序で誠実に対応することが、税関からの信用を獲得し、調査や手続を早期に終了させる鍵となります。
5 まとめ:最初の一歩を「確信」に変えるために
直接取引であっても間接取引であっても、海外ビジネスを成功させる鍵は「事前の制度把握」にあります。「会社設立の資本金はいくらが妥当か?」、「この製品の関税率は?」、「事後調査に備えた帳簿の書き方は?」といった「よくある質問」の中にこそ、成功のヒントが隠されています 。
「海外取引に興味はあるが、何から手をつければいいか分からない」、「今の提携商社との関係が最適か不安」とお悩みの方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください 。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

