「通関業者が決めたHSコードだから間違いないはずだ」
「これまで何年も同じコードで輸入できていたから、今さら指摘されるはずがない」
税関事後調査において、多くの輸入者が陥る「油断」がここにあります。
しかし、税関事後調査の現場で調査官が最も慎重に確認し、かつ多額の追徴課税(関税率の差額)が発生する部分の1つが、この「品目分類(HSコード)」を巡る争いです。
実際にこれまでも知らぬ間に通達が出されており、輸入者も通関業者も知らぬ間に運用が変わったため、税関事後調査において多額の追徴課税が発生したケースがありました。
本記事では、なぜHSコードのミスが税関事後調査で発覚するのか、そして「解釈の相違」によって生じる巨額の追徴課税から自社を守るための、通関士資格を有する弁護士の視点による対策を開設していきます。
このページの目次
1 なぜ「今まで大丈夫だった」が通用しないのか
事後調査において、調査官は輸入申告書だけでなく、実際の商品のカタログ、仕様書、製造工程表、さらには現物を確認します。
注意すべきことは、「輸入許可」=「正しい」ではない、ということです。
日本の通関制度は「申告納税方式」です(固定資産税などの賦課課税方式とは異なります。)。税関は輸入申告時にすべてを精査しているわけではなく、形式的な不備がなければ許可を出します。しかし、税関事後調査は「許可した内容が、後から見ても法的に正しかったか」を数年分(通常は5年)遡って検証する場です。「今まで一度も止められなかった」事実は、法的な正当性を保証するものではありません。
そのため、税率の「逆転」による追徴、という事態が発生するのです。
例えば、関税率0%の「機械部品」として申告していたものが、事後調査で「家具の一部(関税率3.8%)」と再分類された場合、過去5年分の輸入額に対する差額関税と、それに伴う消費税、さらに加算税(過少申告加算税+延滞税)が課されます。
2 注意すべき「品目分類」の3つの落とし穴
HSコードの判定は、単なる「物の名前」ではなく、世界共通の「解釈のルール(実行関税率表の解釈に関する通則)」に基づきます。調査時は以下のポイントを突いてきます。
①「用途」か「材質」か
「この商品はプラスチック製だから第39類(プラスチック製品)だ」と思っていても、その用途が「自動車の専用部品」であれば第87類(自動車の部品)に分類されるべきケースがあります。この「通則」の適用ミスは、事後調査で頻繁に指摘されるポイントです。
②「セット製品」の主たる特性
複数の異なる製品がセットになっている場合、どれが「主たる特性」を与えているかの判断は極めて主観的になりがちです。調査官の中にはより税率の高いコードへ誘導する方も稀にいますが、これに論理的に反論できる準備が必要です。
③過去の「事前教示」との不一致
他社の事例や古いマニュアルに基づいてHSコードを選択している場合、最新のHS条約改正や税関の分類事例(コンピレーション)と乖離していることがありますので十分注意が必要です。
3 弁護士が教える、事後調査当日の「論理的防衛術」
調査官から「このHSコードは誤りです」と指摘された際、感情的に反論しても効果はありません。以下の3段階の法的アプローチが不可欠です。
①「関税率表解説」への準拠:世界税関機構(WCO)が発行する「解説」や「分類意見書」を引用し、自社の分類が国際基準に合致していることを証明します。
②客観的な証拠(エビデンス)の提示:「この部品がなければ機械が作動しない」ことを示す設計図面や、成分分析表を提示し、用途や材質を法的に確定させます。
③「記録書」の精査:調査官が「輸入者もミスを認めた」という文脈で記録を作ろうとした場合、弁護士として「解釈の相違であり、過失(隠蔽・仮装)ではない」ことを明確に記録に残させます。
また、記憶や認識が曖昧な部分は曖昧なまま回答しないということも、当然のように思えるかもしれませんが重要なポイントの一つです。
4 日常から取り組むべき「品目分類コンプライアンス」
事後調査で不測の事態を発生させないためには、日常の業務フローに以下の「守り」を組み込むべきです。
①「事前教示制度(文面回答)」の戦略的活用
判断が分かれそうな新商品については、事前に税関から公式な見解を得ておきます。これがあれば、事後調査で覆されるリスクをほぼゼロにできます。
②通関業者への「判断根拠」の確認
HSコードの判断を業者任せにせず、「なぜこのコードを選んだのか」の根拠(通則の適用理由など)を社内で記録保管しておきます。
③定期的な「HSコード監査」
通関士資格を持つ外部の専門家に、過去の申告データをレビューさせ、リスクの高い項目を抽出・修正します。
5 まとめ
HSコードの争いは、最終的には「言葉の定義」と「法の適用」の戦いです。通関士資格を有するとともに弁護士として法の論理を構築できる専門家が介在することで、税関の解釈による追徴を食い止めることが可能になります。
「税務署の調査とは違う、税関特有のロジック」に対応できる準備はできていますか?少しでも不安がある場合は、調査通知が届く前に、弊事務所までご相談いただき、事前診断の実施をご検討ください(お問合せは、こちらから)。
・・・・・・・・・・・
執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(プロフィールは、こちら)

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

