原産地証明書の重要性と実務上の留意点について

0 はじめに

まずは、当事務所に寄せられた具体的な相談事例をご紹介いたします。

「私は都内で輸入卸売業を営んでおりますが、この度、東南アジアのEPA締約国から加工食品を輸入することになりました。基本税率よりも低いEPA税率の適用を受けたいと考えておりますが、相手国の輸出者から送られてきた原産地証明書の有効期限や、日本の税関への提出要件が複雑で困惑しております。特に、どのような場合に提出が免除されるのか、また、自己証明制度と第三者証明制度の違いが実務にどう影響するのかを専門的な視点から教えていただけないでしょうか」

このようなご相談は、非常に多く見受けられます。

原産地証明書は、単なる書類の一つではなく、コスト削減やコンプライアンスに直結する重要な文書です。本日は、原産地証明書の概要から実務上の注意点まで、解説いたします。

 

1 原産地証明書の内容と役割

原産地証明書とは、最も典型的なものとしては、輸出入貨物について一国の政府や公的機関が、その国が原産地であることを証明して発行する文書を指します。

輸出入をビジネスで行っている方にとっては、避けては通れない書類といえます。もっとも、名称は知っていても、具体的な法的根拠や効果までは十分に把握していないケースも少なくありません。原産地証明書の主な役割は、輸入国における関税の譲許(減免)を受けるための資格を証明することにあります。

 

2 輸出貨物における原産地証明書の手続

日本では、輸出通関の際に原産地証明書を必ず提出しなければならないという法的義務はありません。しかし、輸入国側の法令や輸入者からの契約上の要請に基づき、発行が必要となる場面が多々あります。日本からの輸出貨物に関する原産地証明書の発行主体については、商工会議所法第9条第6号において、商工会議所が「輸出品の原産地証明を行うこと」と規定されています。

ただし、一般的にEPA関連においては原産地証明の発行の形式には大きく分けて二つの制度が存在します。

【表1 証明制度の比較と特徴】

制度の名称

証明の主体

主な適用協定

第三者証明制度

商工会議所等の公定機関

多くのEPA(日アセアン、日インド等)

自己証明制度

輸出者、生産者または輸入者

CPTPP、日豪EPA、日EUEPA、RCEP

 

上記のように、第三者が証明を行う形式だけでなく、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)などのように、自ら原産品であることを証明する自己証明制度も採用されている協定が増えております。この場合、作成者の責任や税関の審査がより重くなるため、根拠資料の保管義務を含めた厳格な管理が求められます。

 

3 輸入貨物における原産地証明書と関税の減免

輸入者が税関に対して原産地証明書を提出する必要があるのは、主に優遇税率の適用を受ける場合です。

【EPA税率の適用】

EPA(経済連携協定)税率の適用を受ける場合、関係法令及び各協定に基づき、適切な証明書を提出する必要があります。

具体的には、

①各締約国の権限ある機関が発給したものであること

②原則として発給日から一年を経過していないものであること

といった条件がありますが、以下の要件を満たす場合は、原産地証明書の提出が免除される場合があります。

(i)貨物の種類や形状により、原産地が明らかであると税関長が認めるもの

(ii)一つの輸入申告における課税価格の総額が二十万円以下であるもの

 

4 輸入通関の流れ

輸入時に原産地証明書を使用する際の大まかな流れは以下の通りです。

【表2 輸入通関における原産地証明書の処理フロー】

手順/実施内容/留意事項

1 輸出者から証明書を入手 有効期限(一年)を確認

2 適用税率の確認 実行関税率表で確認

3 輸入申告時に提示 二十万円以下は省略可

4 税関による審査 形式不備は否認のリスクあり

 

5 実務上のトラブル事例と対策

原産地証明書を巡っては、以下のようなトラブルが発生しがちです。

第一に、書類上の記載ミスです。インボイスに記載された品名や数量と、原産地証明書の記載が一致しない場合、税関での審査が滞り、最悪の場合は優遇税率の適用が認められない可能性もあります。

第二に、直接運送原則の違反です。原産国から日本へ直送されず、第三国を経由して積み替えられた場合、その第三国で加工が施されていないことを証明する「通し船荷証券」等の追加書類が必要になることがあります。

 

6 弁護士へのご相談のメリット

当事務所の代表弁護士は、法律の専門家であると同時に、輸出入や通関手続きに関する国家資格である通関士試験に合格し通関士の資格を保有しております。一般的な法律事務所では対応が難しい、以下のような領域についてもサポートが可能です。

①税関による事後調査への対応

②実行関税率の適用区分に関する不服申立て

③EPA原産地規則の解釈と該非判定の助言

④通関業者との連携によるスムーズな手続きの構築

 

原産地証明書は、貿易コストの最適化を図る上で欠かせないツールです。しかし、その運用には緻密な法令理解と実務知識が求められます。複雑な制度を正しく活用し、ビジネスの競争力を高めるために、ぜひ専門家の知見をご活用ください。

輸出入や通関上のトラブル、あるいは税関との見解の相違に関してご不安な点があれば、お気軽に当事務所までご相談ください。

 

【お問合せは、こちらから】

 

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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら

 

(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定

本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

 

 

 

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