国際取引において「原産地(Country of Origin)」は、関税率の適用、輸入制限の有無、統計分類等に大きな影響を与える重要な要素です。
しかしながら、誤った原産地を申告してしまった場合、たとえ意図的でなくても重大な法的リスクを招く可能性があります。
今回は、原産地に関して虚偽申告をしてしまった具体的なケースと、その法的リスク・罰則について解説いたします。
このページの目次
1 そもそも原産地とは何を意味するのか?
「原産地」とは、商品の実質的な『生産が行われた国』を指します。
単に出荷された国や中継地ではなく、実質的な価値が形成された場所が『原産地』となると考えることになります。
例えば、中国で生産された商品を一度ベトナムに移し、そこから日本に輸出しても、実質的な加工が一切行われていなければ「中国」が原産地となります。
2 原産地を偽るとどうなるか?
関税法では、輸入申告に際して虚偽の記載を行った場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されると定められています。
たとえば、FTAやEPAを利用する際に、原産地証明書を偽造・誤記して関税免除を受けると、それ自体が関税法違反となることは改めて留意が必要です。
3 誤った原産地に基づく申告の典型例
①三国間取引での誤解
ベトナムから商品が届いたが、実際の製造は中国だったケース
②梱包・ラベリングの国を原産地と誤認
実際の加工は別の国であったケース
③委託加工による原産地の錯誤
部品は日本製だが、組立はタイで行われていたケース
4 輸入税関事後調査で発覚するリスク
原産地に関する虚偽の申告は、輸入時には見逃されていても、後日の輸入税関事後調査で発覚するケースが多いです。
この際、仕入契約書・製造工程・インボイスなどを求められ、証明できない場合には過去数年分にわたる未納税分と追徴課税を課されることがあります。
これだけでも、場合によっては高額になり、ビジネスのその後に大きな悪影響が発生することになり得ます。
5 防止策:実態確認と記録の保存
原産地の申告ミスを防ぐためには、次のような体制を整備することが重要です。
①仕入先からの製造工程の情報・証拠を取得
②原産地証明書の真偽や発行機関を確認
③社内での品目別原産地管理台帳の作成
④不明点があれば、税関の「事前教示制度」を利用して原産地を確認する
原産地の虚偽申告は、知らずに行っていたとしても重い責任が問われる可能性があります。輸入事業においては、形式上の書類だけではなく実態に基づいた確認と記録の保存が求められます。
原産地に関するリスクを事前に回避したい方や、調査対応でお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。輸入法務の視点から、正確で安全な輸入体制づくりをお手伝いします。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。