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輸入申告価格の誤りに気づいた場合
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
本日は、輸入実務において最も頻繁に発生し、かつ税関から指摘を受けやすい「輸入申告価格(課税価格)の誤り」とその救済・修正手続きについて詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。輸入ビジネスの現場で、どのような経緯でミスが発生し、どのような法的リスクに直面するのかを理解する一助となります。
【相談者】
東京都内で海外製精密機器およびソフトウェアの輸入卸売業を営むA社 代表取締役 B氏
【相談内容】
「当社は過去三年間にわたり、欧州のメーカーから最新の測定装置を継続的に輸入してまいりました。輸入時の申告価格については、仕入先から発行されたインボイスの金額に基づき、CIF条件(運賃・保険料込み価格)で適正に申告を行っているものと確信しておりました。しかし先日、社内の内部監査を実施したところ、当該装置の稼働に不可欠な専用ソフトウェアのライセンス料(ロイヤリティ)として、年間数千万円を別途海外メーカーに支払っていたことが判明いたしました。このライセンス料は商品代金のインボイスには含まれておらず、輸入申告時の価格からも漏れていました。顧問税理士からは、この支払いは関税法上の加算要素に該当し、申告価格を過少に報告していた可能性があると指摘されました。B氏は、意図的な隠蔽ではないものの、数年分を遡ると多額の関税・消費税の未払いが生じていることに大きな不安を感じています。税関の事後調査を受ける前に、自発的にどのような手続きを取るべきでしょうか。また、延滞税や加算税といったペナルティを最小限に抑える方法はあるのでしょうか。専門的な見地からの詳細な解説を求めています」
このような事例は、特にロイヤリティや金型代、あるいは無償提供された原材料費などが絡む複雑な取引において、非常によく見受けられます。輸入事業者の皆様は日常的に多数の貨物を輸入しておりますので、HSコードが正確かどうか、また輸入申告価格が適切であったかどうかについては日常的に注意を払われているものと思います。ただ、どれほど注意をしていても、人間の行う作業である以上ミスはつきものであり、輸入申告価格に誤りがあった場合には、迅速かつ適切に対応することが必要です。不適切な申告価格が税関により指摘された場合、ペナルティや追徴課税が発生する可能性があるからです。本日は、主に関税法に基づく「修正申告」と「更正の請求」という二つの方法を中心に、実務的な対応策を詳述いたします。
1 輸入価格決定の原則と加算要素の重要性
誤りへの対応を理解する前に、そもそも「正しい輸入申告価格」がどのように法律で定義されているかを確認する必要があります。日本の関税制度は、輸入者が自ら税額を計算して申告する「申告納税方式」を採用しています。
第一項 輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた時の価格(中略)に、その価格に含まれていない限度において、次に掲げる費用の額を加算した価格とする。
一 当該輸入貨物の輸入港までの運賃、保険料その他運送に関連する費用
二 当該輸入貨物の輸入取引に関連して買手により負担される次に掲げる費用
イ 仲介料その他の手数料
ロ 当該輸入貨物と一体のものとして取り扱われる容器の費用
ハ 当該輸入貨物の包装に要する費用
三 (中略)当該輸入貨物の生産及び輸入取引に関連して、買手により直接又は間接に、無償で、又は値引きして提供された次に掲げる物品又は役務の費用(中略)
四 当該輸入貨物に係る特許権、実用新案権、意匠権、商標権(中略)その他これらに類するものを使用する権利の対価として買手により直接又は間接に支払われる公表された価格
B氏の事例のように、インボイス価格以外に別途支払われるロイヤリティや、無償提供した部材の費用などは、この条文に基づき「加算要素」として価格に含めなければなりません。これを見落とすと、結果として過少申告を構成することになります。
2 修正申告(過少申告時の手続き)の詳細
修正申告とは、当初行った申告価格が実際よりも低額であった場合、あるいは納付すべき税額が不足していた場合に、輸入者が自らその誤りを修正して不足分を納付する手続きです。
第一項 納税申告をした者は、当該申告に係る税額等(中略)を修正する必要があるときは、次項の規定による更正があるまでは、修正申告をすることができる。
(1)修正申告を行うタイミング
修正申告は、税関から「更正(当局による税額の決定)」を受ける前であればいつでも行うことが可能です。特に、税関による事後調査(税務署の税務調査に相当するもの)の通知を受ける前に行う「完全な自主的修正申告」の場合、後述する過少申告加算税が免除されるという極めて大きなメリットがあります。
(2)修正申告の実務フロー
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修正申告手続きの実務プロセス一覧表
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ステップ|具体的な作業内容|法的な重要性と留意点
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一 誤りの特定|インボイス、契約書、送金記録の再精査|加算要素(運賃、ロイヤリティ等)の漏れを確認
二 課税価格の再計算|関税定率法に基づき正しい価格を算出|為替レートは当初輸入時の「公示レート」を使用
三 修正申告書の作成|税関様式に当初申告と修正後の数値を記載|誤りが発生した「理由」を客観的に記述する
四 税関への提出|管轄税関の輸入審査部門へ提出|NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を利用
五 不足税額の納付|修正申告と同時に、関税・消費税を納付|延滞税の計算も併せて行う必要がある
六 記録の保存|修正申告の控えと根拠資料を七年間保存|次回の事後調査において「適正な修正」を証明するため
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(3)過少申告加算税と延滞税の取り扱い
修正申告を行う際、最も懸念されるのが付帯税(ペナルティ)です。
一 過少申告加算税(関税法第十二条の二)
原則として不足税額の十パーセント(一定額を超えると十五パーセント)が課されます。しかし、税関の調査を受ける前に自主的に修正申告をした場合は、この加算税は課されません。
二 延滞税(関税法第十二条)
本来の納期限(当初の輸入許可日)から納付日までの期間に応じて、利息に相当する延滞税が課されます。これは自主的な修正であっても免除されませんが、修正が早ければ早いほど負担は軽減されます。
3 更正の請求(過大申告時の手続き)の詳細
更正の請求は、修正申告とは逆に、当初の申告価格が実際よりも高すぎた場合や、計算ミスにより税金を多く払いすぎてしまった場合に、税関に対して払いすぎた税金の還付を求める手続きです。
第一項 納税申告をした者は、次の各号のいずれかに該当するときは、当該申告に係る貨物の輸入許可があるまで(中略)又は輸入許可の日から五年以内に限り、税関長に対し、更正をすべき旨の請求をすることができる。
一 当該申告に係る税額等が過大であるとき。
二 当該申告に係る税額等の計算が関税に関する法律の規定に従つていなかつたとき。
(1)更正の請求ができる期限
原則として「輸入許可の日から五年以内」です。かつては一年以内という非常に短い期間でしたが、納税者の権利保護の観点から現在は五年に延長されています。ただし、五年を過ぎると、どれほど明白な過払いであっても返還を求める法的な権利が失効いたします。
(2)更正の請求の実務フロー
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更正の請求(税金還付)手続きの実務一覧表
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プロセス|具体的な対応事項|必要となる証拠資料
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一 還付事由の確認|過大申告となった原因を特定する|価格の誤記、インボイスの二重計上、値引きの未反映等
二 請求書の提出|更正の請求書を税関長に提出|当初申告の申告番号、還付を求める金額を明記
三 疎明資料の添付|過大申告を証明する客観的資料|修正後のインボイス、送金証明、契約書の原本等
四 税関による審査|税関担当官による事実関係の調査|必要に応じて追加の資料提出や対面説明を求められる
五 更正通知|税関長から更正(還付決定)の通知|却下された場合は「不服申立て」の手続きへ
六 還付金の受領|指定の銀行口座に税金が還付される|還付加算金(利息相当)が付加される場合もある
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4 不適切な対応が招く深刻なリスク
申告価格の誤りを知りながら放置したり、適当な修正で済ませたりすることは、輸入業者の信頼を根本から破壊し、再起不能な打撃を与えることになります。
(1)重加算税の賦課
事実を隠蔽したり仮装したりして過少申告を行っていたと税関に判断された場合、過少申告加算税に代えて「三十五パーセント」という極めて重い重加算税が課されます。
第一項 (中略)納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは、過少申告加算税に代え、不足税額の百分の三十五に相当する重加算税を課する。
B氏の事例においても、もしライセンス料の支払いを意図的に隠していたとみなされれば、この重加算税の対象となります。
(2)通関スピードの低下と全件検査
一度「悪質な申告ミス」があったと税関のデータベース(通関情報処理システム)に登録されると、その後の当該企業の全貨物に対して現品検査が行われるようになります。これにより、通常の通関が一日で済むところを一週間以上要することになり、物流コストの増大と納期遅延を招きます。
(3)社会的信用の失墜
法令違反の事実は公表されることがあり、金融機関からの融資停止や、既存の取引先からの契約解除を招くことになります。コンプライアンスを重視する現代のグローバル市場において、一度損なわれた信用を回復するには、多大な時間と労力が必要となります。
5 実務上の各手続きの比較と使い分け
修正申告と更正の請求は、表裏一体の関係にあります。輸入実務における位置づけを以下の比較表にまとめました。
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修正申告と更正の請求の機能比較表
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比較項目|修正申告|更正の請求
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申告の方向|税金を「増やす」手続き|税金を「取り戻す」手続き
主導権|輸入者の権利(義務でもある)|輸入者の権利
期限|更正があるまで(事実上制限なし)|輸入許可日から五年以内
ペナルティ|延滞税が必要。加算税は状況次第|なし。逆に還付加算金がつく場合あり
税関の審査|比較的速やかに受理される|厳格な事実確認と証拠の提示が求められる
不服申立て|原則としてできない|却下された場合に可能
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6 専門家による法的サポートの重要性と当事務所の役割
いずれの手続きにおいても、正確な証拠資料の提出が重要です。輸入に関わる書類の保管や記録は、適切な対応のための出発点となります。修正申告や更正の請求を迅速かつ適切に行うことは、輸入事業者の法的リスクを低減し、適正な税務処理を実現するポイントとなります。当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知見を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提示することができます。
【当事務所が提供できる主な支援内容】
一 課税価格(加算要素)の精緻な再計算とリーガルチェック
二 修正申告・更正の請求における税関への疎明資料の作成支援
三 税関事後調査に対する事前シミュレーションおよび調査当日の立ち会い
四 不当な更正に対する審査請求(不服申立て)の代理
五 社内輸入管理体制(ICP)の構築およびコンプライアンス研修の実施
六 海外取引先との契約書における課税価格決定に関連する条項の整備
7 まとめ:適正な価格申告こそがビジネスを安定させる唯一の道
輸入申告価格の内容を含めて輸入手続に不明点がある場合は、まずは専門家に相談することをおすすめします。企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。どのような些細なことでも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。貴社の海外ビジネスが、確かな法的安全性の下でさらなる発展を遂げることを心より願っております。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
ワシントン条約の概要と注意点
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
本日は、グローバルなビジネス展開において見落としがちな、絶滅のおそれのある動植物やその製品の取扱い、いわゆるワシントン条約(CITES)に基づく輸出規制について詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。環境保護への意識が高まる現代において、意図せぬ法令違反を防ぐための重要な示唆が含まれています。
【相談者】
東京都内で高級家具の製造販売および輸出入を行うA社 代表取締役 B氏。
【相談内容】
「当社はこの度、東南アジア諸国連合の富裕層向けに、希少な木材であるローズウッド(ツルサイカチ属)を贅沢に使用した特注の高級ダイニングテーブルと椅子のセットを輸出する計画を立てました。当該木材は、数十年前に国内の材木商から正当に買い付けた在庫であり、国内での製造・販売には何ら問題のないものです。B氏は、既に国内にある製品を海外へ送るだけであり、かつ数十年も前の古い木材を使用しているため、特別な許可は不要であると考えていました。しかし、船積みの直前になって、通関業者から『ワシントン条約の規制対象品目に該当する可能性があり、経済産業省の輸出許可証がなければ税関を通せない』と指摘を受け、輸出がストップしてしまいました。B氏は、なぜ国内で自由に流通しているものが輸出の際には厳格に規制されるのか、また、古い在庫であることを証明すれば許可なしで輸出できるのかについて、専門的な見地からの詳細な解説を求めています」
このような事例は、楽器や家具、宝飾品などを扱う事業者において非常に多く見受けられます。絶滅のおそれのある動植物やその製品の取扱いについては「ワシントン条約(CITES)」を踏まえた規制が設けられております。ワシントン条約の概要と注意点について、法令の条文を交えながら詳細にご説明いたします。
1 ワシントン条約(CITES)の目的と法的枠組み
ワシントン条約(正式名称:「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」)は、絶滅の危機に瀕した野生動植物の種が国際取引によって過度に利用されるのを防ぐことを目的とした国際条約です。一九七三年にワシントンD.C.で採択され、日本も一九八〇年に加盟いたしました。本条約は、対象となる動植物の個体だけでなく、その卵、種子、あるいはそれらの一部を使用した加工品(皮革製品、家具、漢方薬、楽器など)も広く規制の対象としています。
(ワシントン条約第二条 基本原則)
第一項 附属書一には、絶滅のおそれのある種であって取引による影響を受けており又は受けるおそれのあるすべての種を掲げる。これらの種の標本の取引は、それらの種の存続を更に危うくすることのないよう特に厳格に規制しなければならず、また、極めて例外的な場合にのみ許可されるものとする。
第二項 附属書二には、次のすべての種を掲げる。
(a)現在においては必ずしも絶滅のおそれはないが、それらの種の存続を危うくするような利用を避けるためにその標本の取引を厳格に規制しなければ、絶滅のおそれのある種となるおそれのあるすべての種
日本国内においては、この国際条約を誠実に履行するため、外国為替及び外国貿易法(以下、外為法といいます。)に基づき、輸出入の管理が行われています。
2 外為法における輸出規制の具体的根拠
貨物を輸出する際、ワシントン条約の対象品目は、外為法第四十八条第一項および輸出貿易管理令(以下、輸出令といいます。)に基づき、経済産業大臣の許可を要するものとされています。
国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物を輸出しようとする者又は国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の種類の貨物を輸出しようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
(輸出貿易管理令第一条第一項)
法第四十八条第一項の規定による許可を受けなければならない貨物は、別表第一の中欄に掲げる貨物とする。
ワシントン条約対象品目は、輸出令別表第一の二の項(二)や、その他の省令によって具体的に指定されています。これにより、たとえ国内で合法的に購入したものであっても、国境を越える際には経済産業大臣の厳格な審査が必要となるのです。
3 ワシントン条約における三つの附属書と規制区分
条約では、希少性の度合いに応じて動植物を三つのカテゴリー(附属書)に分類しています。B氏のような実務者が最も注視すべきは、自社の製品がどの附属書に該当するかという点です。
(1)附属書一:絶滅のおそれのある種で取引による影響を受けているもの。商業目的の輸出入は原則として全面的に禁止されています。学術研究目的などの極めて例外的な場合に限り、輸出国の輸出許可証と輸入国の輸入許可証の両方が必要となります。
(2)附属書二:現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を厳格に規制しなければ絶滅のおそれが出てくるもの。商業目的の取引は可能ですが、輸出国の政府が発行する輸出許可証(または再輸出証明書)が必須となります。B氏の事例にあるローズウッドの多くは、この附属書二に掲載されています。
(3)附属書三:特定の締約国が自国内の資源保護のために国際的な協力を求めているもの。当該国からの輸出には輸出許可証が必要となり、それ以外の国からの輸出には原産地証明書等が必要となります。
4 実務上の確認フローと輸出許可申請の手続
貨物を輸出する際、次の点に注意して実務を進める必要があります。
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ワシントン条約該否判定および輸出実務フロー
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一 貨物の原材料・成分の特定
製品に使用されている動植物の学名(属名・種名)を確認する
二 附属書の該当性確認
条約の最新の附属書リスト、または経済産業省のウェブサイトで該否を判定する
三 例外規定の確認
条約適用前(プレ・コンベンション)の取得証明が可能か等を検討する
四 書類の整備
輸入元や国内仕入先からのインボイス、製造証明書、学名を記した書類を揃える
五 経済産業省への申請
輸出許可申請書、原材料を特定する書類、附属書該当性を疎明する資料を提出する
六 輸出許可証の発行
経済産業大臣よりワシントン条約輸出許可証の発行を受ける
七 税関への申告
輸出許可証を税関へ提示し、現品との相違がないか検査を受け、許可を得る
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B氏の事例のように、古い在庫(条約適用前に取得したもの)を輸出する場合であっても、自動的に免除されるわけではありません。経済産業省に対して「条約適用前取得(プレ・コンベンション)」であることを証明する客観的な資料を提出し、許可証を得る必要があります。この証明ができない場合、たとえ「古いものだ」と主張しても輸出は認められません。
5 ワシントン条約規制品目のカテゴリー別一覧
以下に、ビジネスにおいて誤って取り扱いやすい代表的な規制対象品目を整理いたしました。
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ワシントン条約主要規制対象品目一覧表
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カテゴリー|対象となる代表的な例|主な製品形態
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哺乳類|ゾウ、サイ、トラ、クジラ|象牙の印鑑・装飾品、毛皮、骨格標本
爬虫類|ワニ、ヘビ、トカゲ、カメ|皮革製バッグ、靴、時計ベルト、鼈甲細工
鳥類|オウム、タカ、フクロウ、羽根|装飾用羽毛、ペット用生体
魚類・貝類|チョウザメ、シャコガイ、サンゴ|キャビア、宝飾品、インテリア
植物(木材)|ローズウッド、マホガニー、黒檀|家具、バイオリン等の楽器、床材
植物(その他)|ラン、サボテン、アロエ、沈香|化粧品原材料、香木、盆栽、植物エキス
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6 輸出時の落とし穴:製品の一部に使用されている場合
知らずに対象となる原材料や部品が使用されている製品を輸出し、税関で没収される事例が増えています。
一 楽器に使用されている素材
バイオリンの弓に使用されるフェルナンブコや、ギターの指板に使用されるローズウッド、あるいは装飾に使われる白蝶貝などは、製品のごく一部であっても規制の対象となります。
二 時計やバッグの皮革
クロコダイルやリザードなどの皮革を使用した製品は、その部位や種によって附属書一または二に分類されます。
三 伝統工芸品
三味線の撥に使われる象牙や、和家具に使われる希少木材などは、日本の伝統文化であっても、国際取引の場ではワシントン条約が優先されます。
四 化粧品や漢方薬
アロエベラ(一部を除く)や沈香、麝香などの成分が含まれる製品は、成分表に基づいて厳格に判定されます。
これらの品目について、事前の該否判定を怠り「一般に売られているものだから」という思い込みで輸出を試みることは、極めて高いリスクを伴います。
7 外為法違反に伴う重い罰則と社会的責任
ワシントン条約の規制対象品目を無許可で輸出した場合、外為法に基づき、刑事罰および行政処分の対象となります。これは単なる事務的なミスではなく、重大な国際法違反として扱われます。
(行政処分)
経済産業大臣は、外為法違反者に対して、一定期間(最長で三年間)の輸出入の禁止処分を科すことができます。貿易を主軸とする企業にとって、三年の業務停止は事実上の倒産宣告に近い重みを持つことになります。
知らなかったでは済まされず、重大な犯罪行為(ひいては国際的な平和を損なう行為にもなりかねないことはくれぐれも気を付けるべきです。)となってしまいます。自社の信頼を守るためにも、厳格なコンプライアンス体制が求められます。
8 適切な輸出管理のための社内体制構築のポイント
B氏のような事態を未然に防ぎ、適正な輸出管理を継続するためには、以下の三つの柱を確立することが重要です。
一 社内の確認体制の強化
ワシントン条約対象の製品・原材料リストを常に最新の状態(附属書は数年ごとに更新されます)に保ち、輸出前には製造担当、購買担当、法務担当などの複数名でクロスチェックを行うフローを構築してください。
二 通関業者との緊密な連携
税関申告時に通関業者と正確な情報のやり取りを行うことがポイントとなります。使用されている木材の学名や、取得時期の証拠書類を事前に共有しておくことで、税関検査の際のトラブルを回避できます。
三 専門家への相談
対象品かどうか不明な場合や、経済産業省への許可証取得の手続きに不安がある場合は、ワシントン条約に精通した弁護士や専門家に相談することが重要です。
当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知見を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提示することができます。
9 まとめ:適正な管理こそが持続可能なビジネスの基盤
ワシントン条約に基づく輸出規制は、絶滅危惧種や希少な動植物を保護するために非常に重要な制度です。対象製品の輸出は事前の許可の取得が必須であり、違反した場合には重い罰則が科せられます。企業としては、輸出する貨物の内容や取引相手の意向のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。
当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
【お問合せは、こちらから】
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
ロマンス詐欺にはご注意ください
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
本日は、近年、SNSやマッチングアプリの普及に伴い社会問題化している「ロマンス詐欺」について、特に「税関での荷物の差し止め」を口実にした卑劣な手口を詳しく解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。被害者の方がどのような心理状況で陥りやすいのか、実務的な課題が示されています。
【相談者】
神奈川県内に住む50代の女性、A氏
【相談内容】
「数ヶ月前、SNSを通じてイエメンで国連の医師として勤務しているというイギリス人男性、B氏と知り合いました。毎日のように甘いメッセージが届き、将来は日本で一緒に暮らしたいと約束されました。ある日、B氏から『私の全財産と、君へのプレゼントを詰めた箱を日本へ送った。安全のために医師仲間のエージェントに預けた』と言われました。その後、ロンドンの運送会社を名乗る者からメールが届き、『箱の中身に多額の現金が含まれているため、日本の税関でマネーロンダリングの疑いをかけられ、差し止められた。解除するためには非テロ証明書の発行手数料として200万円が必要だ』と要求されました。B氏に相談すると『今すぐ払わないと箱が没収され、私も逮捕される。助けてくれ』と懇願されました。A氏はB氏を信じて送金しようとしていますが、本当に日本の税関でそのような手続きがあるのか、法的な助言を求めています」
このような事例は、国際的な物流知識の不足と、恋愛感情や信頼を巧みに利用した国際的詐欺グループによる典型的な手法です。ロマンス詐欺は、非常に巧妙な手口で被害者の心理を操り、多額の金銭を騙し取る悪質な犯罪です。本日は、税関実務と法的な観点から、この詐欺の嘘を暴き、被害を未然に防ぐための詳細な解説をいたします。
1 ロマンス詐欺の構造と刑法上の評価
ロマンス詐欺は、被害者の財産を不正に取得することを目的としており、日本の刑法においては「詐欺罪」に該当いたします。
第一項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
第二項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
この詐欺の典型的な流れは以下の四つのステップで構成されます。
一 SNSでの接触
詐欺師は、親切で魅力的な人物を装って接触してきます。例えば「自分は海外でビジネスをしている」や「軍人として紛争地で勤務中だ」というプロフィールが多いです。B氏のような国連医師や、米軍大尉、石油掘削エンジニアなどを名乗るケースが散見されます。
二 信頼関係の構築
数週間から数か月かけて、甘い言葉や親密な会話を通じて被害者の信頼を得ます。相手は結婚や将来の話題にまで触れることで、被害者に強い期待感を持たせ、心理的な依存状態を作り出します。
三 荷物を送ったという嘘
ある日、詐欺師は「あなたに感謝の気持ちとして貴重なプレゼントを送った」や「退職金や相続した多額の現金を君に預けたい」と伝えます。さらに、荷物には現金や貴金属、その他高価な品物が入っていると説明し、運送会社の追跡サイトを模した偽のURLを送付することもあります。
四 税関で荷物が止められたという虚偽の連絡
しばらくして、詐欺師またはその共犯者が「荷物が日本の税関で止められた」、「多額の金や手数料を支払わなければ荷物が処理されない」といった嘘の連絡をしてきます。A氏の事例のように「非テロ証明書」や「アンチ・マネーロンダリング・クリアランス」といった、実在しない名称の手数料を要求するのが特徴です。そして、「荷物を受け取るために」と称して、指定された個人名義の口座へ多額の金銭を送金するよう要求します。
2 税関実務から見た「嘘」の徹底解明
ここで強調したいのは、日本の税関がこのような金銭を要求することは絶対にないという点です。関税法に基づく正規の輸入手続きを理解すれば、詐欺師の言葉がいかに荒唐無稽であるかが分かります。
(一)税金の支払い方法
税関で輸入品に課される税金(関税および消費税)は、通常、輸入者本人が税関長に対して納税申告を行い、納付書に基づいて銀行等で支払うか、あるいは宅配業者や配送業者が立て替えて配達時に代金引換(代引き)の形で適切に請求されます。税務当局が直接的に個人の銀行口座(特に全く関係のない個人名の口座)に送金を求めることはまずありません。
(二)連絡の主体
税関が個人に直接電話やSNSで連絡を取り、金銭を要求することも非常に稀です。通常、貨物に不備がある場合の連絡は、運送会社(郵便局、国際宅急便業者)や通関業者を介して行われます。「税関職員」や「空港職員」を名乗って直接的に金銭の振り込みを迫る連絡を受けた場合、その時点で詐欺を確信すべきです。
(三)貨物の差し止め理由
関税法上、貨物が差し止められるのは、輸入が禁止されている物品(麻薬、銃砲、知的財産権侵害物品等)である場合や、申告内容に不備がある場合に限られます。
貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、当該貨物の品名並びに数量及び価額その他必要な事項を税関長に申告し、当該申告に係る検査が必要と認められるものについては、その検査を受け、その許可を受けなければならない。
詐欺師が主張するような「多額の現金が入っているから罰金を払え」というロジックは、法的には成立いたしません。そもそも、多額の現金を無申告で持ち込もうとした場合、それは没収や刑事罰の対象となるものであり、個人間の送金で解決できる事務手続きではないからです。
3 正規の手続きと詐欺の手口の比較対照
被害者の方が冷静に判断できるよう、実務上の違いを以下の表にまとめました。ワードデータ等に貼り付けて、周囲の注意喚起にもご活用いただけます。
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正規の税関手続とロマンス詐欺の手口の比較対照表
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項目|正規の通関手続(税関・正規業者)|ロマンス詐欺(詐欺グループ)
--|----------------|----------------
連絡手段|ハガキ(通知書)または登録業者からの電話|LINE、メール、SNSのダイレクトメッセージ
送金先|国庫(日本銀行)への納付または代引き|個人名義の銀行口座、暗号資産(仮想通貨)
要求の名称|関税、輸入消費税、通関手数料|証明書発行代、罰金、賄賂、保険料、保管料
言葉のトーン|事務的、淡々とした説明|感情的、緊急性を強調、愛や恐怖を煽る
証明書の要求|インボイス、領収書等の客観的資料|非テロ証明、所有権移転証明等の架空書類
根拠法令|関税法、関税定率法等|「国際規定」「国連のルール」等の曖昧な表現
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4 被害を回避するための具体的な法的チェックポイント
このような詐欺から身を守るためには、以下の点に注意してください。
(1)オンラインのみの関係に対する警戒
短期間で急に親密になろうとする相手や、一度も会ったことがないのに多額の贈り物を約束する相手には、最初から警戒すべきです。特に、相手のプロフィール画像がインターネット上のフリー素材や他人の盗用であるケースが非常に多いため、画像検索などで確認することも有効です。
(2)絶対に「個人名義の口座」に送金しない
理由が何であれ、直接的な送金要求には応じないことが重要です。日本の公的機関や正規の物流会社が、代表者でもない個人の銀行口座への振り込みを指示することは、コンプライアンス上あり得ません。
(3)税関への直接確認
税関に関する連絡内容に疑義がある場合、必ず各地の税関の窓口(税関相談官)に直接問い合わせて真偽を確認してください。その際、詐欺師から教えられた電話番号ではなく、税関の公式サイトに掲載されている代表番号に掛けるようにしてください。
(4)外国為替及び外国貿易法(外為法)の視点
海外へ送金する場合、一定の金額を超える場合には、銀行から送金の目的を厳しく問われることになります。これはマネーロンダリング防止のための法的な義務です。
主務大臣は、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、又は我が国の国際収支の均衡を維持するため特に必要があると認めるときは、居住者若しくは非居住者による支払(中略)をしようとする者に対し、許可を受ける義務を課することができる。
詐欺師は、この銀行のチェックを逃れるために、少額に分けて送金させたり、暗号資産を利用させたりしようとします。不自然な送金指示そのものが、違法行為の兆候です。
5 被害に遭ってしまった場合の救済と民事上の責任
もし金銭を振り込んでしまった場合、迅速な対応が必要です。
(一)振込先の銀行および警察への連絡
「振り込め詐欺救済法」に基づき、口座の凍結を行うことで、残高がある場合には一部でも取り戻せる可能性があります。
(二)不法行為に基づく損害賠償
詐欺師が特定できた場合(非常に困難ではありますが)、民法第七百九条に基づき、損害賠償を請求することが可能です。
故意又は過失によつて他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによつて生じた損害を賠償する責任を負う。
(三)専門家への相談
被害に遭ってしまった場合は、速やかに警察や弁護士に相談してください。一人で悩むことは、精神的な二次被害を拡大させるだけでなく、法的手段を講じる貴重な時間を奪うことになります。
6 「非テロ証明書」等の架空の証明書の正体
詐欺師がよく用いる「非テロ証明書(Anti-Terrorism Certificate)」や「マネーロンダリング回避証明書」といった書類は、国際貿易の実務には存在いたしません。これらは、テロ資金供与や犯罪収益の移転を防ぐための「国際的な監視」があるという事実を逆手に取り、被害者を不安にさせるために捏造されたものです。
実際には、テロ資金等の疑いがある貨物は、証明書一枚でお金で解決できるようなものではなく、捜査当局による厳格な捜査対象となります。したがって、「お金を払えば解決する」という申し出自体が、国際的な法秩序に反する詐欺の証拠なのです。
7 不適切な情報管理に伴うさらなるリスク
詐欺師に自分の住所、電話番号、パスポートのコピー、免許証の画像などを送ってしまうと、それらが別の詐欺の「なりすまし」に悪用されたり、闇名簿に掲載されたりする恐れがあります。個人情報は、物理的な金銭と同様に、あるいはそれ以上に慎重に扱うべき財産です。一度送ってしまった情報は取り戻すことができないため、相手を信じ切る前に、必ず第三者の冷静な意見を取り入れるべきです。
8 輸入ビジネスにおける他法令との関連性と適正な通関
本件はロマンス詐欺という文脈ですが、輸入実務全般において、「他法令」の確認は非常に重要です。
他の法令の規定により輸出又は輸入に関して許可、承認その他の処分又は検査、検定その他の手続を必要とする貨物については、第六十七条の申告の際、当該許可、承認等を受けていること又は当該検査、検定等を終了していることを税関に証明し、その確認を受けなければならない。
正規の輸入であれば、食品衛生法や薬機法、植物防疫法などの確認が必要になることがありますが、これらは日本の公的な制度として運用されており、不透明な手数料の支払いでパスできるものではありません。正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
9 まとめ:冷静な事実確認が自分を守る盾となる
ロマンス詐欺は、非常に巧妙な手口で被害者の心理を操り、多額の金銭を騙し取る悪質な犯罪です。「税関で荷物が止められている」というシナリオが典型的な手口ですので、このような話を持ち掛けられたら即座に疑うべきです。企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手の意向のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。通関手続きや貨物の運送などの手続き面について、専門家に任せることは非常に有用ですが、個人であっても企業であっても、それらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入品の特許権侵害のリスク
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
本日は、輸入ビジネスを営む上で最も高度な専門性と注意力が求められる知的財産権の一つ、特許権の侵害について、その法的構造から実務的な回避策までを網羅的に解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。最先端の製品を海外から導入しようとする企業様にとって、非常に重要な示唆が含まれています。
【相談者】
神奈川県内で医療機器及び精密測定装置の輸入卸売業を営むA社 代表取締役 B氏
【相談内容】
「当社はこの度、ドイツの医療ベンチャー企業が開発した新型の血液分析装置を日本国内の病院向けに独占的に輸入販売する契約を締結いたしました。当該装置は欧州で高い評価を得ており、ドイツ国内での特許も取得されています。B氏は、開発元のライセンスがある以上、日本での販売も問題ないと考えておりました。ところが、輸入申告を終えて国内でのプロモーションを開始した直後、国内の大手精密機器メーカーC社から、当該装置のセンサー技術が同社の保有する日本国内の特許権を侵害しているとして、即時の輸入・販売停止と在庫の廃棄、並びに過去のデモ機貸し出しに伴う損害賠償を求める警告書が届きました。ドイツのメーカーに確認したところ、同社は日本での特許出願は行っていないものの、独自の技術であると主張しています。B氏は、他国の特許が日本でどのように影響するのか、また、C社の請求に対しどのような法的防御が可能なのか、専門的な見地からの詳細な解説を求めています」
このような事例は、技術革新が激しい現代の貿易実務において、非常に多く見受けられます。輸入ビジネスでは、特許権侵害のリスクを軽視することはできません。特許権は、発明を保護する独占的権利であり、特許権を侵害する商品を輸入してしまうと、多額の賠償金や業務停止といった深刻な法的責任を問われる可能性があります。本日は、特許権侵害のリスクと輸入業者が取るべき対策について、条文に基づきご説明いたします。
1 特許権の定義と属地主義の原則
日本の特許法において、特許権は特許発明を独占的に実施する権利とされています。まず、特許法の根拠となる条文を確認しましょう。
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。(後略)
ここでいう「実施」の内容については、特許法第二条第三項に定義されています。
この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 物の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
(中略)
このように、特許法上、特許発明に係る物品を「輸入」する行為そのものが発明の実施に該当し、権利者の許諾がない場合は侵害を構成いたします。また、B氏の事例で重要なのが「属地主義」です。特許権は国ごとに独立して発生・存続するものであり、ドイツで特許があっても日本で有効とは限りません。逆に、日本で他社が特許を保有していれば、海外で合法的に製造された製品であっても、日本への輸入は侵害となります。
2 特許権侵害の具体的な態様
特許権侵害には、大きく分けて「直接侵害」と「間接侵害」の二つの態様が存在します。
(一)直接侵害。特許発明の技術的範囲に含まれる製品をそのまま輸入・販売する行為です。
(二)間接侵害。特許発明の実施にのみ使用する部品や、侵害を引き起こす蓋然性が高い物品を輸入する行為です。これについて特許法第百一条は次のように規定しています。
次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
一 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の製造、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
(中略)
これにより、完成品だけでなく、その核心的な部品を輸入する場合であっても、特許権侵害を問われるリスクが生じます。B氏の事例において、血液分析装置そのものだけでなく、その専用カートリッジや交換用センサーを個別に輸入する場合も、この間接侵害の規定に抵触する可能性があるのです。
3 特許権侵害に伴う深刻な法的リスクと実務的影響
特許権侵害が指摘された場合、輸入業者が被る不利益は極めて甚大です。
(1)差止請求のリスク
特許権者は、特許法第百条に基づき侵害の停止を請求できます。
特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を構成した物(プログラム等を含む。以下同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
これが認められると、輸入した商品の販売は即座に禁止され、高価な医療機器であってもすべて廃棄処分となる恐れがあります。
(2)損害賠償請求のリスク
特許権侵害については過失が推定されるため、輸入業者が「特許の存在を知らなかった」という主張をしても、賠償責任を免れることは困難です。
他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。
損害額の算定については、特許法第百二条に規定があり、侵害者の利益額やライセンス料相当額が基準となります。医療機器のように単価が高い製品の場合、賠償額が数億円に達することも珍しくありません。
(3)税関での輸入差し止め
関税法第六十九条の十一に基づき、特許権を侵害する物品は「輸入してはならない貨物」として指定されています。税関は、権利者からの申立てに基づき、水際で貨物を差し止める「認定手続」を開始いたします。これにより、商品は国内に持ち込まれる前にストップし、多額の保管料や納期遅延による違約金が発生することになります。
4 特許権と他の知的財産権の比較
輸入業者が把握しておくべき各権利の性質を以下の表にまとめました。
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知的財産権の性質比較および輸入時リスク一覧表
====================================
権利の名称|保護の対象|権利の発生|主な輸入リスク
-----|------------|------|------------
特許権|高度な技術的思想(発明)|特許庁への登録|技術的構成の模倣、差止
実用新案権|物品の形状等の考案|無審査登録|ライフサイクルの短い製品の模倣
意匠権|物品の外観・デザイン|特許庁への登録|見た目の類似、差止
商標権|ブランド名・ロゴマーク|特許庁への登録|名称・マークの混同
著作権|思想・感情の創作的表現|創作時に自動発生|マニュアル、ソフトの無断コピー
====================================
特許権はこれらの権利の中でも特に「技術の内容」を保護するため、外見からは判別しにくいという特徴があります。そのため、事前調査の重要性が他よりも格段に高いのです。
5 リスク回避のための戦略的対応策
輸入業者として特許権侵害を防ぎ、安全なビジネス運営を実現するためには、次の対応策を組織的に実施することが重要です。
(1)精緻な事前調査の実施
輸入予定の商品が日本国内で特許権を侵害していないか、特許庁が提供する特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)を活用して徹底的に調査しましょう。ただし、特許請求の範囲(クレーム)の解釈は極めて専門的であるため、キーワード検索だけでなく、弁理士や弁護士による「FTO(自由実施可能性)調査」を行うことが推奨されます。
(2)海外メーカーとの契約管理
海外の仕入先に対して、当該製品に関する日本国内での特許状況を照会し、第三者の権利を侵害していないことを保証(表明保証)させる必要があります。また、万が一侵害が発生した際、海外メーカーが損害を補償する「インデムニティ条項」を売買契約書に盛り込むことが不可欠です。
(3)弁護士・通関士への相談
特許法は専門的かつ複雑です。輸入を検討している商品について少しでも不安がある場合は、事前に専門家に相談し、リスク評価を行いましょう。当事務所は、代表弁護士が通関士資格も保有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。
6 特許法における損害賠償額の推定規定(第百二条)の詳細
損害賠償請求を受けた際、どれほどの金銭的リスクがあるのかを把握するために、第百二条の内容を整理いたします。
権利者が自ら販売している場合、侵害者の販売数量に権利者の単位利益を乗じた額を損害とすることができます。
(同第二項)
侵害者が得た利益の額を、権利者が受けた損害の額と推定します。
(同第三項)
いわゆる「ライセンス料相当額」を最低限の損害として請求できます。
2026年現在の運用では、このライセンス料相当額が従来よりも高く見積もられる傾向にあり、さらに「故意」の侵害と認められた場合には、懲罰的な賠償が検討される可能性もあります。輸入業者は、単に「利益を返せばよい」という認識ではなく、企業の存続を揺るがす賠償リスクとして捉えるべきです。
7 特許権侵害貨物の輸入に関する厳格な注意喚起
企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。
8 実務で役立つ輸入前特許リスクチェックリスト
B氏のような経営者が現場で活用できる具体的な確認事項をまとめました。
====================================
輸入貨物特許権侵害リスク・セルフチェック表
========================----------==
確認項目|具体的な実施内容|実施状況
----|----------------|--------
技術の特定|製品の核心となる技術的特徴をリストアップしているか|
特許調査|日本国内で同一技術の特許が登録されていないか|
ライセンス|海外メーカーは正当な権利者からライセンスを受けているか|
表明保証|契約書に「第三者の特許権を侵害しない」旨の条項があるか|
専門家評価|侵害の可能性がある場合、鑑定書を取得しているか|
税関事前照会|必要に応じて、税関に侵害物品該当性を相談しているか|
====================================
9 まとめ:適正な知的財産管理こそがビジネスを安定させる礎
特許権侵害は輸入ビジネスにおいて避けられない重大なリスクです。海外で合法的に流通している商品であっても、日本国内では特許権の保護対象となる場合があります。輸入業者としては、法律を遵守しつつ、リスクを十分に評価し、安全なビジネス運営を目指すことが求められます。事前の調査と適切な対策を講じることで、特許権に関連するトラブルを未然に防ぐことが可能です。
当事務所は、あなたのビジネスの強力な盾として、常に寄り添い続けます。どのようなお悩みでも、まずは当事務所にお気軽にご相談ください。共に、誠実で誇りあるビジネスの形を追求してまいりましょう。適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入品の意匠権侵害のリスク
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
本日は、輸入ビジネスを営む上で避けては通れない重大な課題である意匠権(デザイン権)の侵害について、その法的構造から実務的な回避策までを網羅的に解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。デザイン性を武器に市場参入を試みる企業様にとって、極めて重要な教訓が示されています。
【相談者】
神奈川県内で輸入家具及び生活雑貨のセレクトショップを運営するA社 代表取締役 B氏
【相談内容】
「当社はこの度、北欧の若手デザイナーが手掛けたという独創的な形状の照明器具や小型家電を、現地のメーカーから直接輸入し、日本国内での販売を開始いたしました。B氏は、現地では正当に販売されている製品であり、かつブランド名(商標)も自社で確認していたため、法的な問題はないと確信しておりました。ところが、販売開始から一ヶ月後、国内の大手家電メーカーから、当該製品の形状が自社の登録意匠を侵害しているとして、販売の中止と在庫の廃棄、さらには損害賠償を求める警告書が届きました。B氏は、製品の機能は全く別物であり、単に外観が似ているだけでなぜ法的な責任を問われなければならないのか、納得がいきません。もし侵害と判断された場合、どのような不利益を被るのか、また、今後このような事態を防ぐにはどうすればよいのか、専門的な見地からの詳細な解説を求めています」このような事例は、特に近年、意匠法の改正により保護範囲が拡大したこともあり、非常に多く見受けられます。輸入ビジネスを営む際、意匠権侵害のリスクは避けて通れない問題です。意匠権は商品のデザインに関する独占的権利を保護するものであり、これを侵害する貨物を輸入してしまうと、差止請求や損害賠償請求といった法的トラブルに発展する可能性があります。本日は、具体例を交えつつ、意匠権侵害のリスクを詳細にご説明いたします。
1 そもそも意匠権侵害とはどのような状態を指すのか
日本の意匠法は、意匠(デザイン)を独占的に使用する権利を保護するための法律です。
意匠法第二条第一項では「意匠」を「物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物の形状等又は画像であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう」と定義しています。ここで重要なのは、単なる機能性だけでなく、人間の視覚に訴え、美しさを感じさせる外形的な特徴すべてが保護の対象となり得る点です。
さらに、意匠法第二十三条では「意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する」と規定されています。この「専有する」という文言は、他人が無断でそのデザインを使用することを一切禁じる強力な独占力を意味します。
また、意匠法第三十七条には、侵害に対する救済手段が明文化されています。
意匠権者又は専用実施権者は、自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。特に重要なポイントとして、登録意匠と「同一」である場合はもちろん、「類似」の範囲であっても無断で使用する行為は意匠権侵害に該当いたします。この「類似性」の判断は、一般消費者の視点に立ち、全体の美感に共通性があるかどうかが基準となるため、素人判断での「少し違うから大丈夫だ」という考えは極めて危険です。
2 具体例『海外製品の輸入と意匠権の属地主義』の詳細
例えば、ある輸入業者が海外の市場で人気のある家電製品を大量に仕入れ、日本で販売しようとしました。その家電製品は海外メーカーが独自にデザインしたものですが、日本では別の企業が同様のデザインを登録意匠として意匠権を取得していました。これを「属地主義の原則」と呼びます。意匠権は、その国ごとに独立して存在する権利であり、海外で合法的に製造・販売されているからといって、日本国内でも自由に販売できるとは限りません。この場合、輸入業者が販売を目的として商品を輸入した行為が、意匠法第三十七条に基づく「登録意匠と同一又は類似の意匠を実施する行為」に該当し、次のような法的トラブルが生じる可能性があります。
(一)差止請求による営業停止
意匠権者が輸入品の販売差止めを請求し、在庫が販売できなくなる恐れがあります。差止請求には、現に存在する商品の廃棄や、製造設備の除却、さらには広告の削除なども含まれます。これにより、仕入れに要した多額の資金が回収不能となり、企業の経営を圧迫することになります。
(二)損害賠償請求による経済的打撃
輸入品の販売により意匠権者に損害が生じた場合、その損害を賠償する責任を負う可能性があります。意匠法第三十九条に基づき、侵害者の利益額が損害額と推定されるなど、権利者側の立証負担を軽減する規定が存在するため、輸入業者は非常に高額な賠償金を支払わなければならないリスクがあります。
(三)税関での輸入差し止め
関税法第六十九条の十一第一項第九号に基づき、意匠権を侵害する物品は「輸入してはならない貨物」として指定されています。意匠権者が税関に対して輸入差止申告を行っている場合、貨物が日本に到着した時点で差し止められ、認定手続に移行いたします。侵害と認定されれば、貨物は没収・廃棄されることになります。
(四)刑事罰の適用
悪質な場合には、意匠法第六十九条に基づき、刑事罰が科されることもあります。(意匠法第六十九条)意匠権又は専用実施権を侵害した者は、十年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。法人に対しても、意匠法第七十四条に基づき、三億円以下の罰金刑という非常に重い両罰規定が存在いたします。
3 意匠権と他の知的財産権の比較
輸入実務において、意匠権が他の権利とどのように異なるのかを理解しておくことは、リスクマネジメントの第一歩です。以下の表に、実務上重要な知的財産権の比較をまとめました。
====================================
知的財産権の性質比較一覧表
====================================
権利の名称|保護の対象|権利の発生方法|輸入時の主なリスク
-----|------------|--------|--------
意匠権|物品の外観・デザイン|特許庁への登録|デザインの類似による差止
商標権|ブランド名・ロゴ|特許庁への登録|名称・マークの混同
著作権|思想・感情の創作的表現|創作時に自動発生|イラスト・画像・音楽の無断利用
特許権|発明・技術的思想|特許庁への登録|技術的構成の模倣
不正競争|周知な表示・商品形態等|事実の発生|他人の商品との混同、デッドコピー
====================================
意匠権の特徴は、技術的な中身(特許)ではなく、「見た目」そのものが法的な武器になる点にあります。したがって、製品の性能がどれほど優れていても、あるいは異なっていても、デザインが似ていれば侵害を免れることはできません。
4 意匠権侵害を未然に防ぐための戦略的対応策
輸入業者として意匠権侵害リスクを回避するためには、以下のポイントを組織的に実施することが重要です。
(1)慎重かつ精緻な事前調査の実施
輸入予定の商品が日本国内で意匠権を侵害しないかどうか、特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を活用して事前に確認しましょう。ただし、意匠の検索はキーワードだけでなく、図形分類(意匠分類)を用いる必要があるため、専門的な知識が求められます。
(2)デザインのライセンスおよび権利関係の確認
海外メーカーや仕入先に対し、輸入予定の商品のデザインが合法的に使用されているか、あるいは自社が権利を保有しているかを確認し、必要であればライセンス契約書や、第三者の権利を侵害していない旨の保証書(表明保証)を入手することが不可欠です。
(3)税関への事前照会制度の活用
輸入品が意匠権を侵害していないか不安な場合、税関に対して「知的財産侵害物品に該当するかどうかの照会」を行うことができます。これにより、輸入時点での不意な差止めリスクを軽減し、予見可能性を高めることが可能です。
(4)契約書のリーガルチェック
輸入元との契約書に、意匠権侵害が発覚した場合の責任分担、損害賠償の負担、及び商品の返品・返金対応について詳細に記載しておくことで、万が一の際の経済的損失を最小限に抑えることができます。これを「インデムニティ(補償)条項」と呼びます。
(5)弁護士等の専門家への相談
意匠権侵害の判断、特に類似性の判断は、過去の裁判例や特許庁の審査基準に照らした高度な法的評価を必要とします。疑わしい場合は、意匠法に詳しい弁護士や通関士に相談することをお勧めします。当事務所は、代表弁護士が通関士資格を保有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。
5 意匠法改正による新たなリスク:関連意匠と画像意匠の保護
2020年及び2024年の法改正により、日本の意匠権はより強力になっています。輸入業者が特に注意すべきは、以下の二点です。
一 関連意匠制度の拡充
一つの基本デザインから派生したバリエーション(関連意匠)も、長期間(本意匠の登録から十年間)にわたって登録できるようになりました。これにより、大手メーカーは自社のデザインラインナップを網羅的に保護しており、輸入業者が「少し形が違うバリエーションだから大丈夫だ」と判断しても、関連意匠の一つに抵触するリスクが高まっています。
二 建築、内装、画像の保護
これまでは「物品」に限定されていた意匠の対象が、建物の外観や店舗の内装、さらにはスマートフォン等の操作画面(画像)にも拡大されました。輸入するハードウェアだけでなく、そこに搭載されたソフトウェアのインターフェースが意匠権を侵害しているケースも想定されるため、デジタル製品の輸入に際しても細心の注意が必要です。
6 不適切な管理が招くビジネス上の損害と社会的責任
意匠権侵害は、金銭的な損失だけに留まりません。B氏が懸念している通り、企業としての存続に関わる重大な悪影響を及ぼします。
(一)社会的信用の失墜
税関での差し止めや、権利者からの警告書の送付が取引先や顧客に知れ渡った場合、「模倣品を扱う会社」というレッテルを貼られ、長年築き上げた信用を一瞬で失うことになります。
(二)全件検査の対象
一度知的財産権侵害品を輸入しようとした履歴が税関のシステムに残ると、その後のすべての輸入貨物に対して厳格な検査が行われるようになります。これにより、納期の遅延や保管料の増大など、物流のスピードが著しく低下し、競争力を失うことになります。
(三)AEO認定の剥奪
特定輸入者(AEO)などの優遇措置を受けている場合、法令違反が発覚すれば認定は即座に取り消されます。信頼の回復には多大な時間と労力が必要となります。
7 専門家による法的防御とコンプライアンス支援
意匠権の問題は専門的で複雑です。輸入を検討している商品がある場合は、事前に弁護士等の専門家にご相談いただき、リスク評価を行いましょう。当事務所では、代表弁護士が通関士資格を併せ持つ強みを活かし、法務と実務の双方向から強力なバックアップを提供しております。
【当事務所が提供できる具体的な支援内容】
一 製品のデザインに基づいた精緻な意匠権侵害該否判定。
二 J-PlatPatを用いた網羅的な先行意匠調査の代行。
三 海外サプライヤーとの売買契約書における知的財産保護条項の策定支援。
四 税関での認定手続に対する意見書の作成および当局との交渉。
五 意匠権者からの警告書に対する法的な反論、折衝、および訴訟代理。
六 最新の意匠法改正情報を反映した社内コンプライアンス体制(ICP)の構築。
弁護士でありながら通関実務の深い知見を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提示することができます。
8 まとめ:適正な管理こそがビジネスを安定させる唯一の道
本日は、輸入ビジネスにおける意匠権侵害のリスクと、その回避策について解説いたしました。B氏のようなケースであっても、当初から正しい法令知識に基づき、デザインの独自性を精査し、専門家のアドバイスを受けていれば、法的トラブルを未然に防ぐことができました。意匠権侵害は、輸入業者にとって見過ごせない経営リスクです。合法的に購入した商品であっても、日本国内では意匠権侵害に該当するケースがあります。企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手の意向のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。通関手続きや法的権利の確認について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。
当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。
適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入品と著作権侵害のリスク
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
輸入ビジネスを営む際、著作権法侵害のリスクを軽視することはできません。輸入する商品が知らないうちに著作権を侵害している場合、輸入した事業者が法的責任を問われることになります。本日は、具体例を交えつつ、著作権侵害のリスクを詳細にご説明いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。グローバルな取引を志す企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっております。
【相談者】
神奈川県内でインテリア雑貨の輸入販売を行うA社 代表取締役 B氏。
【相談内容】
「当社はこの度、東南アジアの製造業者から、独特の形状をした木彫りの置物や、美しいイラストが描かれたランプシェードを大量に仕入れ、日本国内の店舗およびオンラインショップで販売する計画を立てました。現地ではこれらの製品が広く一般的に販売されており、意匠登録や特許の存在も確認されなかったため、B氏は法的に問題ないものと判断いたしました。しかし、商品を日本へ輸入しようとしたところ、税関から著作権侵害の疑いがあるとして輸入差し止めの認定手続が開始されました。聞けば、ランプシェードに描かれたイラストが、日本国内の著名な芸術家が創作した美術の著作物に酷似しているとの指摘を受けたのです。B氏は、現地で正規に購入した商品であるにもかかわらず、なぜ日本で著作権侵害を問われなければならないのか、また、もし侵害と判断された場合にどのような法的責任を負い、どのような損害が発生するのかについて、専門的な見地からの詳細な解説を求めています」
このような事例は、知的財産権の国際的な保護制度を正しく理解していない場合に、非常に多く見受けられます。現代社会はECサイトの普及によりモノの行き来が自由ですが、著作権の保護という観点から、輸入には厳格な法的チェックが存在します。本日は、著作権侵害の基本から実務的な回避策までを解説いたします。
1 著作権侵害の法的定義と「著作物」の概念
日本の著作権法は、著作者の権利を保護するため、著作物の無断使用を禁止しています。そもそも著作権侵害とは、著作権者の許諾を得ることなく、著作権の専有する権利を行使する行為を指します。具体的には、著作権法第二条第一項第一号において、「著作物」を次のように定義しています。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
この定義に基づき、単なるデータや事実、あるいはありふれた表現は著作物には該当しませんが、そこに「創作性」が認められる場合には、法的な保護の対象となります。さらに、著作権法第十条では、著作物の例示がなされています。
一 小説、脚本、論文、講演その他の文芸上の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
(中略)
B氏の事例において問題となったランプシェードのイラストは、まさにこの「美術の著作物」に該当する可能性が高いといえます。また、実用的な製品であっても、その装飾部分に創作性が認められれば、著作権法上の保護を受ける「応用美術」として扱われることがあります。
2 輸入行為が著作権侵害とみなされる法的根拠
輸入ビジネスにおいて特に注意すべきは、実際に販売を開始する前の「輸入」という行為そのものが侵害とみなされる規定です。著作権法第百十三条第一項は、次のような場合に著作権侵害とみなすと規定しています。
一 国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作権、出版権若しくは著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
二 著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、国内において頒布する目的をもつて所持し、若しくは公衆に譲渡し、若しくは引き渡し、又は公衆に譲渡し、若しくは引き渡すことを申し出る行為
これに基づき、輸入業者が日本国内での販売や配布を目的として、著作権者の許諾なく作成された(あるいは日本国内で作れば侵害になる)商品を輸入した場合、その時点で著作権法違反とされる可能性があります。これを「みなし侵害」と呼びます。たとえ海外の現地の法律では合法的に作られたものであっても、日本国内の権利者が許諾を出していなければ、日本への輸入は違法となります。
3 具体例『海外製品の輸入と著作権の問題』の詳細分析
例えば、ある事業者が海外の市場で、アニメのキャラクターがプリントされたTシャツを仕入れ、日本国内で販売することを計画したケースを考えます。この業者は、現地では広く流通しているため問題ないと考えていました。しかし、日本国内では、そのキャラクターの著作権が特定の企業に帰属しており、許可なくそのデザインを使用することが著作権侵害に該当しました。このような場合、以下のような深刻な法的リスクが発生いたします。
(一)著作権者からの警告および差止請求
販売前であっても、著作権者から商品の輸入および販売の差止めを求められるケースがあります。これにより、仕入れた商品はすべて廃棄処分となるか、あるいは積み戻し(返送)を余儀なくされ、仕入れ代金がすべて損失となります。
(二)損害賠償請求
著作権者が損害賠償を請求し、輸入業者が損害を賠償する義務を負う可能性があります。著作権法第百十四条には、損害額の推定規定が存在し、侵害者が得た利益や、本来支払うべきライセンス料相当額が賠償額の基準となります。
(三)刑事罰
悪質な場合には、著作権法第百十九条に基づき、刑事罰が科されることもあります。
第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(中略)は、十年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
また、法人に対しては、著作権法第百二十四条に基づき、三億円以下の罰金刑が科されるという、極めて重いペナルティが存在いたします。
4 関税法に基づく輸入差し止めと認定手続
著作権侵害物品は、関税法においても「輸入してはならない貨物」として明確に規定されています。
一 (中略)
三 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
税関は輸入申告の際、著作権侵害の疑いがある貨物を発見すると「認定手続」を開始いたします。この手続きでは、権利者と輸入者の双方が意見を述べる機会が与えられますが、著作権の有無や創作性の判断は非常に高度な専門知識を要します。輸入者が「知らなかった」と主張しても、客観的に侵害品であると認定されれば、輸入は許可されません。
5 輸入ビジネスにおける著作権リスクの整理
輸入業者が直面するリスクを以下の比較表にまとめました。ワードデータ等に貼り付けて社内管理にご活用ください。
====================================
輸入取引における著作権侵害リスク一覧表
====================================
リスク区分|具体的な影響|根拠となる法令
----|----------------|----------------
水際阻止リスク|税関での没収、廃棄、積み戻し命令|関税法第六十九条の十一
民事賠償リスク|侵害利益の返還、ライセンス料の支払い|著作権法第百十四条
業務停止リスク|販売禁止の仮処分、ECサイトの閉鎖|著作権法第百十二条
刑事罰リスク|代表者の懲役刑、法人への高額罰金|著作権法第百十九条、百二十四条
信用喪失リスク|取引先からの解約、社名公表による損害|民法(不法行為)、契約書条項
====================================
6 リスク回避のための実務的ポイントと防衛策
著作権侵害リスクを防ぐために、以下の対策を講じることを強くお勧めいたします。
(1)丁寧な事前調査の実施
輸入予定の商品が日本国内で著作権を侵害しないことを確認することが重要です。特にキャラクター、ロゴ、イラスト、さらには独創的なテキスタイル(布地の模様)が含まれる商品は細心の注意が必要です。インターネットでの画像検索や、過去の類似裁判例の調査が有効です。
(2)正規のライセンスの確認と証拠収集
輸入元の業者や製造元が、正規のライセンスを取得しているかどうかを確認しましょう。必要であれば、ライセンス契約書の写しや、権利者からの製造・販売承諾書の提示を求めるべきです。また、これらを税関に提示できるよう、書面で保管しておくことが不可欠です。
(3)契約書の見直しと責任分担
輸入業者として、取引先との契約書に「著作権侵害が判明した場合の責任分担」について明記しておくことも有効です。具体的には、製造元が第三者の知的財産権を侵害していないことを保証し、万が一侵害が発生した場合には製造元がすべての損害(弁護士費用を含む)を補償するという「インデムニティ(補償)」条項を設けるべきです。
(4)専門家によるリーガルチェック
著作権の問題は、商標権のように登録制ではない(無方式主義)ため、誰が本当の権利者であるかを判断することが非常に複雑です。輸入予定の商品について不安がある場合は、著作権に詳しい弁護士や通関士に相談することで、リスクを事前に評価できます。当事務所は、代表弁護士が通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。
7 輸入実務におけるコンプライアンス・チェックリスト
B氏のような経営者が、日々の業務で活用できる確認表を提示いたします。
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輸入貨物著作権セルフチェック表
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確認項目|判定の基準|実施状況
----|----------------|--------
デザインの独創性|他社の既存作品を模倣したものではないか|
権利の帰属先|デザイナーやイラストレーターとの契約は適正か|
ライセンスの有効性|日本国内での販売権が含まれているか|
税関への疎明資料|真正品であることを証明する書類は揃っているか|
契約上の補償規定|サプライヤーによる知的財産保証があるか|
====================================
8 知的財産権侵害貨物の輸入に関する厳格な注意喚起
著作権侵害は、輸入業者にとって見過ごせない重大なリスクです。海外で合法的に取引された商品であっても、日本国内では著作権を侵害する場合があるため、慎重な対応が求められます。
企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。通関手続きや法的権利の確認について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
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執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入品の商標権侵害のリスク管理
はじめに:仮の相談者から寄せられた相談事例のご紹介
本日は、輸入ビジネスを営む上で警戒すべき法的リスクの一つである商標権侵害について、その法的構造から実務的な回避策までを網羅的に解説いたします。まずは、当事務所に実際に寄せられる相談内容を模した、以下の架空事例をご覧ください。グローバルな取引を志す企業様にとって、非常に示唆に富む内容となっております。
【相談者】
神奈川県内で海外ブランドの雑貨やアパレル製品の輸入販売を行うA社 代表取締役 B氏
【相談内容】
「当社はこの度、イタリアのセレクトショップから、現地で高い評価を得ているスニーカーブランド『ベローチェ』の商品を百足ほど買い付け、日本国内での販売を開始いたしました。現地ではもちろん正規に流通している真正品であり、仕入れの際の領収書もすべて保管しております。ところが、販売を開始してまもなく、日本国内で『ベローチェ』の商標を保有しているという日本企業C社から、商標権侵害を理由とする販売差し止めと、これまでの売上に対する損害賠償を求める警告書が届きました。B氏は、現地で正当に購入した本物の商品である以上、日本国内での販売も自由であると考えていましたが、法的にどのような問題があるのでしょうか。また、C社の請求には応じなければならないのでしょうか。もし輸入時に税関で止められた場合、どのような手続きが必要になるのかも含め、専門的な見地からの詳細な解説を求めています」
このような事例は、知的財産権の属地主義を正しく理解していない場合に、非常に多く見受けられます。合法的に購入した商品であっても、日本国内では商標権侵害に該当するケースがあります。事前の調査と適切な対応を通じて、トラブルを未然に防ぐことが不可欠です。本日は、商標権侵害の基本から、特許庁や税関での実務、そして損害賠償の算定根拠等を解説いたします。
1 商標権侵害の法的定義と属地主義の原則
輸入ビジネスを営む事業者は、商標権侵害のリスクに十分注意する必要があります。実際、輸入された商品が知らず知らずのうちに日本国内の商標権を侵害しているケースが多々あります。日本の商標法では、登録商標が他人の許諾なく使用されることを防ぐため、商標権が保護されています。商標権は特許庁への登録によって発生する独占排他権であり、その効力は日本国内全域に及びます。
この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
(中略)
このように、商標が付されたものを「輸入」すること自体が、商標法上の「使用」に該当いたします。したがって、日本国内で有効な商標権が存在する場合、その権利者の許諾を得ずに輸入を行うことは、原則として侵害行為を構成することになります。ここで重要なのが「属地主義」という考え方です。商標権は各国の法律に基づき、各国ごとに独立して成立いたします。イタリアで適法に販売されている商品であっても、日本国内で別の者が商標権を保有している場合、その日本国内での権利が優先されることになります。
商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。
この専有権を侵害する行為について、商標法第三十七条は以下のように侵害とみなす行為を規定しております。
次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
(中略)
事業者が意図せずに商標権を侵害するケースでは、これらの規定が問題となることが多いです。特に「類似」の範囲は広く、外観、称呼、観念のいずれかが似通っており、消費者が混同する恐れがある場合には侵害と認定されます。
2 真正商品の並行輸入が認められるための三要件
B氏の事例のように、偽物(コピー品)ではなく海外の正規店で購入した「本物」を輸入する場合、一定の条件を満たせば「真正商品の並行輸入」として適法と認められることがあります。日本の最高裁判所判例(フレッドペリー事件等)によれば、以下の三つの要件をすべて満たしている場合に限り、商標権侵害とはならないとされています。
====================================
真正商品の並行輸入適法性判定チェック表
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項目|判定基準の内容|実務上の確認ポイント
--|----------------|----------------
第一要件|当該商標が海外の商標権者により適法に付されたものであること|偽造品でないことの証明(仕入伝票等)
第二要件|海外の商標権者と日本の商標権者が同一、または密接な関係にあること|資本関係、代理店契約、ライセンス関係
第三要件|製品の品質が、日本の商標権者が管理するものと実質的に差異がないこと|仕様の違い、保管状況、保証内容の比較
====================================
B氏のケースにおいて、日本のC社がイタリアのメーカーと全く無関係に独自に日本で商標を登録していた場合、第二要件(同一権原の要件)を満たさないため、本物であっても輸入は差し止められることになります。これは、日本の商標権者が長年日本国内で築き上げてきたブランドの信用(業務上の信用)を保護するためです。一方で、C社が単なる日本総代理店であり、イタリアのメーカーからライセンスを受けているに過ぎない場合は、同一権原の要件を満たし、並行輸入が認められる可能性が高まります。
3 関税法に基づく水際での差し止めと認定手続
商標権侵害は、単なる民事上の争いのみならず、税関における水際阻止の対象となります。関税法第六十九条の十一に基づき、商標権を侵害する物品は「輸入してはならない貨物」として規定されています。
九 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品
税関は輸入申告の際、商標権侵害の疑いがある貨物を発見すると「認定手続」を開始いたします。
一 税関から輸入者及び権利者に対し、認定手続開始の通知がなされます。
二 輸入者及び権利者は、一定期間内に当該貨物が侵害品であるか否かについての意見を述べ、証拠を提出する機会が与えられます。
三 税関長が双方の意見を踏まえ、侵害の有無を認定いたします。
輸入者としては、前述の「並行輸入の三要件」を満たしていることを客観的な資料をもって証明しなければなりません。この手続きは極めて専門的であり、法的な主張が認められない場合、貨物は没収・廃棄されるか、あるいは積み戻しを命じられることになります。これによる経済的損失は計り知れません。
4 商標権侵害に伴う深刻な法的責任と損害賠償
もし侵害が認められた場合、輸入業者は多大な損害を被るリスクがあります。
(1)商標権者からの差止請求。輸入された商品の販売停止、廃棄、広告の削除などが求められます。これにより販売機会を完全に失うことになります。
(2)損害賠償請求。商標権侵害は、過失が推定されるため(商標法第三十九条、特許法第百三条準用)、知らなかったという言い訳は通用しません。商標法第三十八条には、損害額の算定根拠が規定されています。
商標権者(中略)が故意又は過失により自己の商標権(中略)を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、商標権者(中略)が受けた損害の額と推定する。
このように、侵害者の利益額がそのまま損害額とみなされる場合や、ライセンス料相当額を請求される場合があります。高額な賠償金が発生するケースも少なくありません。
(3)刑事罰
悪質な場合には、商標法第七十八条に基づき、刑事罰が科されることもあります。
商標権又は専用使用権を侵害した者(中略)は、十年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
法人に対しても、三億円以下の罰金刑が科されるという非常に重いペナルティが存在いたします。
5 リスク回避のための具体的ポイント
輸入業者として商標権侵害を防ぎ、安全なビジネス運営を実現するためには、次の対応策が有効です。
====================================
商標権リスク回避・実務管理表
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対策区分|具体的な実施内容|使用するツール・資料
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事前調査|日本国内の商標登録状況の確認|特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
権利関係確認|海外メーカーと国内権利者の関係性の把握|権利関係図、ライセンス契約の有無
仕入先精査|正規流通ルートであることの確認|インボイス、正規代理店証明書
契約の整備|侵害発生時の損害補償条項の導入|表明保証条項、インデムニティ
専門家相談|複雑な案件の事前リーガルチェック|弁護士、弁理士、通関士のアドバイス
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特に、特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を活用することは、輸入実務者にとって必須のスキルです。商品名だけでなく、ロゴの図形要素についても検索を行い、似通った商標が日本国内に存在しないかを徹底的に調査すべきです。少しでも不安がある場合は、そのまま進めずに、法律の専門家と連携しながら慎重に対応することを強くお勧めします。
6 輸入ビジネスにおける他法令との関連性
商標権のみならず、輸入実務においては関税法、外為法(外国為替及び外国貿易法)、不正競争防止法など、多角的な視点からのコンプライアンスが求められます。
一 不正競争防止法
商標登録がなくても、広く一般に知られている商品等表示と混同を生じさせる行為は、不正競争行為として差し止めの対象となります。
二 外為法(リスト規制・キャッチオール規制)
アパレル製品等であっても、その素材が特殊な高機能繊維である場合や、軍事転用可能な技術が含まれる場合には、経済産業大臣の許可が必要になる場合があります。
三 関税法(輸入事後調査)
輸入許可が下りた後であっても、税関は数年以内に事後調査を実施いたします。この際、適切な商標権使用料(ロイヤリティ)が課税価格に算入されているかが精査されます。もしロイヤリティを申告価格から除外していた場合、過少申告とみなされ、重加算税などのペナルティを受ける恐れがあります。
納税義務者がその税額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告をしていたときは(中略)不足税額の百分の三十五に相当する重加算税を課する。
このように、商標権は知的財産としての側面だけでなく、輸入時の税金(関税評価)にも深く関わっております。
7 専門家による法的サポートの重要性と当事務所の役割
商標権の問題は専門的で複雑です。輸入を検討している商品がある場合は、事前に弁護士等の専門家にご相談いただき、リスク評価を行いましょう。当事務所は、代表弁護士が輸出入や通関に関する唯一の国家資格である通関士資格を有しており、法務と実務の両面から強力なサポートを提供することが可能です。弁護士でありながら通関実務の深い知見を持つことで、単なる法令の解釈に留まらず、税関当局がどのような視点で調査を行い、どのような証拠書類を重視するかという実践的なアドバイスを提示することができます。
【当事務所が提供できる主なサポート】
一 輸入予定商品の商標権侵害リスクの精緻な事前診断
二 真正商品の並行輸入における適法性の立証および証拠資料の整理
三 税関での認定手続における意見書提出および代理交渉
四 商標権者からの警告書に対する交渉、訴訟対応
五 海外サプライヤーとの売買契約書における知的財産保護条項の策定
六 関税評価におけるロイヤリティ算入の適正性アドバイス
8 まとめ:適正な管理こそがグローバルビジネスの安定を支える
商標権侵害は、輸入業者にとって見過ごせない重大なリスクです。合法的に購入した商品であっても、日本国内では商標権侵害に該当するケースがあります。企業としては、輸入する貨物の内容や取引相手に支払う代金のみを気にしておけばよく、それ以外の手続面のことはほとんど気にしていない場合も多いものと思われます。しかしながら、このような姿勢には大きなリスクがあると言わざるを得ません。通関手続きや法的権利の確認について、専門家に任せることは非常に有用ですが、企業としてもそれらの点について最低限の知識を持ち、各手続において重要な点については逐一確認をとる等の対応が必要です。
正しい法令知識に基づき、一つひとつの取引を精査すること。その地道な努力が、貴社のグローバルビジネスを安定させ、不測の事態から会社を守ることに繋がります。当事務所は、貴社の良きパートナーとして、その専門性を最大限に発揮して、安定した海外展開をサポートし続けます。適正な通関こそが、グローバルビジネスを安定させる唯一の道です。
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該非判定の重要性
本日は、外国為替及び外国貿易法(以下、外為法)の概要と、「該非判定」の重要性について、経済安全保障の視点を交えてご説明いたします。
1 そもそも外為法とは?
外為法は、日本の国家安全保障や国際的な平和維持、経済的安定を目的として、外国為替や貿易を規制する法律です。特に、戦略物資や軍事転用が可能な技術・製品の輸出には厳しい管理が求められます。
外為法に基づく輸出管理制度では、輸出者に対して、自社の商品や技術が規制対象に該当するかどうかを確認する「該非判定」の義務が課されています。この判定を誤ると、重大な法的リスクが発生します。
2 該非判定とは?
該非判定とは、輸出しようとする製品や技術が、国際的な規制リストや日本独自の規制に該当するか否かを確認する手続きです。例えば、以下の2つの規制が代表的なものとなります。
①リスト規制
兵器転用可能な製品や技術を対象とした規制
②キャッチオール規制
特定の用途やユーザーに対する輸出規制
これらの判定が適切に行われないと、意図せず国家安全保障上のリスクを生じさせたり、国際社会からの信頼を損ねたりする可能性がありますので、慎重に行う必要があります。
3 具体的な事例
①事例1『技術輸出の誤判定による経済制裁』
ある企業が新型材料の輸出を行った際、該非判定を誤り、実際にはリスト規制に該当する製品を輸出していました。この製品は軍事用途への転用が可能であり、輸出先の国は国際的な制裁対象国でした。その結果、企業は罰則を受けたうえ、経済制裁違反として国際的な非難を浴び、取引先からの信用を失いました。
典型的なケースではありますが、該非判定が適切に行われないと、日本国内での法的責任だけでなく、そもそも将来的な事業継続にも大きな影響を及ぼすことがあります。
②事例2『技術提供の不適切な管理』
日本の企業が、海外の研究機関と共同研究を行う際、該非判定を怠り、規制対象の技術データを提供してしまいました。
その結果、当該技術が第三国の軍事計画に転用される可能性が浮上し、企業は日本政府から指導を受けました。
たまに勘違いをされている事業者の方がおりますが、外為法では物品の輸出だけでなく、技術情報の提供も規制対象ですので、技術に関しても慎重な確認が必要です。
4 該非判定を適切に行うためのポイント
①社内体制の整備
輸出管理に関する社内規程を整え、担当者の教育・訓練を徹底する必要があります。
②専門家の活用
該非判定は複雑なプロセスを伴うため、法律や技術の専門家によるサポートを活用することが有効です。
③最新の規制動向の把握
国際情勢や法改正に伴い規制内容は変化します。常に最新情報を入手し、適切に対応することが求められます。
5 適切な体制を整えることが重要です
外為法とそれを踏まえた該非判定は、企業が国際的な責任を果たし、事業を継続的に発展させるための重要な柱です。
経済安全保障の観点からも、該非判定を正確かつ慎重に行うことが求められます。このためには上記のとおり、輸出管理に関する社内体制の強化と最新情報の収集が不可欠です。
該非判定や外為法に関する疑問が少しでもある場合は、専門家にご相談いただくことを強くお勧めいたします。
何か問題が発生してからでは手遅れとなる場合も多く、事前の対応が非常に重要です。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
輸入事後調査の現状
本日は、輸入事業者の皆様にとって無視できない『輸入事後調査』についてご説明します。
この調査は、輸入事業者にとって避けて通れないものであり、正しく対応しなければ思わぬペナルティを受けるリスクがあります。以下では、輸入事後調査の概要、よくある指摘事項、また、適切な対応方法についてご説明いたしますので、ご参考となれば幸いです。
1 輸入事後調査とは?
輸入事後調査とは、輸入許可後に税関が輸入事業者の取引内容や書類を調査し、輸入申告内容が正確で適切であるかを確認する制度です。主に以下の目的があります。
①関税・消費税の適正な納付確認
輸入申告で申告した課税価格を踏まえて、納付した関税額や消費税額が正確かをチェックします。
②適法な輸入手続きの確保
禁制品や規制対象品が適切に取り扱われているかを確認します。
通常、税関は過去5年以内の輸入取引を対象に調査を行い、不適切な申告が見つかった場合には追加課税やペナルティが科されることがあります。
2 よくある指摘事項
輸入税関事後調査では、以下のような点がよく問題とされます。
①課税価格の過少申告
輸入品の価格を意図的または誤って低く申告し、関税や消費税を少なく納めるケースです。
たとえば、運賃や保険料を含めない形で価格を申告している場合や加算要素を適切に加算できていない場合には、課税価格が過少となる可能性があります。
②税率の誤適用
関税分類(HSコード)の誤りによる税率の適用ミスが挙げられます。
例えば、食品と工業用化学品で異なる税率が適用される場合、分類ミスが追加納税の原因となります。
③規制品の適正な取り扱い
輸入品が規制対象である場合、必要な許可や証明書を取得していないと指摘されることがあります。
⑤書類の保存不備
輸入事業者は、輸入取引に関する書類を5年間は保存する義務があります。保存が不十分だと、調査で適正な保存をするように指導される可能性があります。
3 税関事後調査への適切な対応
税関事後調査は、突然の通知で輸入事業者にとって大きな負担になることがあります。
しかし、適切に対応すれば負担やリスクを最小限に抑えることが可能です。
税関事後調査は法律的・技術的な知識が必要な場面が多くあります。関税法や輸入手続きに精通した弁護士や税関コンサルタントに相談することで、リスクを軽減できます。
改めてになりますが、輸入事後調査は、輸入事業者にとって避けられないプロセスですが、適切に準備し対応することでリスクを最小限に抑えることができます。不安や疑問を抱えたままでは、事業運営に支障をきたす可能性がありますので、ぜひ専門家にご相談ください。
輸入事業を安心して継続するためのサポートを全力で提供いたします。
お困りの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
該非判定は慎重に行いましょう
外国為替及び外国貿易法(以下、「外為法」といいます)は、国際的な平和と安全を維持するための重要な法律です。
特に、日本から貨物を輸出するに際しては、輸出する貨物が戦略物資や軍事転用可能な技術に該当しないかどうか等を適切に判断(いわゆる、該非判定)する必要があります。しかしながら、この該非判定を軽視し、誤った輸出行為を行った場合、単なる法的リスクだけでなく、昨今話題となっている経済安全保障の観点からも深刻な影響を及ぼします。
そこで本日は、外為法の規定の順守を疎かにすることのリスクについて、概要とはなりますがご説明いたします。
1 該非判定を怠る場合の様々なリスク
該非判定を適切に行わずに輸出を行う場合、以下のようなリスクが発生します。
(1) 法的リスク
外為法違反に該当すると、例えば、以下の厳しい罰則が科される可能性があります。
①刑事罰
外為法第70条では、無許可輸出が判明した場合、最高で10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は5億円以下)が科されます。
②行政処分
経済産業省から事業停止命令や輸出許可の取り消しを受けるリスクがあります。
(2) 経済的リスク
罰金や事業停止による直接的な経済的損失だけでなく、取引先からの信頼を失い、契約の破棄や市場からの排除といった二次的な損害も生じます。
(3) 国際社会での信用失墜
外為法違反が国際的に報じられると、日本全体の信頼を損ねる可能性があります。
特に輸出先国が敏感な技術や資材を輸入した場合、外交問題に発展する危険性すら存在することは改めて強調しておきます。
2 経済安全保障の観点からのリスク
経済安全保障は、近年注目を集めている分野です。
特に以下の点で、該非判定を怠る行為は日本の安全保障に直結する問題となります。
(1) 軍事転用のリスク
一見無害に見える技術や部品が、軍事目的で使用されるケースがあります。
たとえば、半導体や高精度機械は、ミサイルや監視技術の開発に利用される可能性があります。
(2) テロリストや制裁対象国への流出
該非判定を怠ると、意図せずにテロリストや国際的な制裁対象国に戦略物資を供与する結果を招きかねません。これにより、国際的な制裁や報復措置を受けるリスクがあります。
3 該非判定を怠らないための対策
輸出者としては、以下の対策を徹底することが求められます。
①適切な該非判定
対象物品や技術が輸出貿易管理令に定められた「リスト規制」に該当するかを確認し、必要に応じて専門家や弁護士の助言を受けること。
②社内コンプライアンス体制の整備
社内で輸出管理の専門部署を設け、該非判定を二重・三重にチェックする体制を整えること。
③定期的な教育と研修
社員に外為法の重要性を理解させ、違反行為を未然に防ぐための教育を徹底すること。
4 外為法のルールは非常に難しく、専門家も交えた体制作りが重要です
外為法に基づく該非判定を軽視する行為は、単なる法律違反にとどまらず、経済安全保障や国際的な信頼に深刻な影響を及ぼします。
輸出者は「知らなかった」「確認不足だった」という言い訳が通用しないことを認識し、法令遵守を最優先に行動すべきです。
万が一、該非判定に関する疑問や不安がある場合は、専門家に相談することを強くお勧めします。違法行為を未然に防ぎ、健全なビジネス活動を維持するために、法令の遵守を徹底していきましょう。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。
