【相談事例】海外での加工委託と三国間取引の落とし穴
相談者:国内のアパレルメーカーB社・物流担当責任者
お悩み:「当社では現在、日本から生地を輸出し、ベトナムの工場で縫製させた製品を日本に再輸入する『委託加工』を検討しています。また、将来的にその製品をベトナムから直接、アメリカの顧客へ転売する『仲介貿易(三国間貿易)』への拡張も視野に入れています。しかし、税関への申告価格(関税評価)の計算や、日本を介さない取引での代金回収、さらに契約書に盛り込むべき法的な防衛策が分からず、立ち往生しています。実務家として、どのような点に注意すべきでしょうか?」
このページの目次
1 結論:貿易スキームの成否は「事前のコスト試算」と「法令遵守」にあり
海外との取引を構築する際、単に「人件費が安いから」という理由だけでスキームを決定するのは極めて危険です。
2026年現在の検索エンジン技術や税関の監視能力は飛躍的に進化しており、小手先のテクニックは通用しません。結論から申し上げますと、委託加工貿易においては「再輸入時の関税減税制度の適用可否」が、仲介貿易においては「貨物と書類の不一致の防止」が、ビジネスの収益性を左右する決定的な要因となります。
本記事では、通関士資格を有する弁護士の視点から、これら2つの典型的な貿易類型について、実務上のポイントを解説いたします。
2 委託加工貿易:原材料提供と再輸入のメカニズム
委託加工貿易とは、日本の委託者が海外の受託者に対して原材料や部品等を提供し、加工や組み立てを行わせた後、完成した製品を日本へ輸入する形態を指します。
(1)順委託と逆委託の視点
①順委託加工貿易:加工の受託者(海外側)から見た呼称です。
②逆委託加工貿易:加工を依頼する委託者(日本側)から見た呼称です。
(2)実務上の最重要課題:関税定率法の活用
委託加工において最も留意すべきは、日本から輸出した原材料の価値に対する二重課税をいかに防ぐかという点です。ここで重要となるのが、関税定率法第11条(加工又は修繕のため輸出された貨物の減税)です。
「加工又は修繕のため本邦から輸出され、その輸出の許可の日から一年(一年を超えることがやむを得ないと認められる理由がある場合において、政令で定めるところにより税関長の承認を受けたときは、一年を超え税関長が指定する期間)以内に輸入される貨物(加工のためのものについては、本邦においてその加工をすることが困難であると認められるものに限る。)については、政令で定めるところにより、当該輸入貨物の関税の額に、当該貨物が輸出の許可の際の性質及び形状により輸入されるものとした場合の課税価格の当該輸入貨物の課税価格に対する割合を乗じて算出した額の範囲内において、その関税を軽減することができる。」
この規定を適用するためには、輸出時に「加工・修繕輸出申告」を正しく行い、輸入時に輸出時の書類との同一性を証明しなければなりません。この手続きを怠ると、せっかく日本から送った原材料の価格分にも関税が課されてしまい、コストメリットが消失してしまいます。
(3)委託加工貿易のメリット・デメリット比較
委託加工貿易を導入する際は、以下の要素を総合的に判断する必要があります。
①人件費抑制のメリット:海外の安価な労働力を活用し、製造原価を低減できる点
②品質管理の難易度:現場での指導が不十分な場合、歩留まりが悪化し、かえってコスト増となるリスク
③関税コストの試算:加工賃にかかる関税だけでなく、輸入時の消費税負担も含めたシミュレーションの重要性
3 仲介貿易:三国間取引の複雑な書類フロー
仲介貿易(三国間貿易)とは、海外の輸出者と海外の輸入者の間の売買契約を、日本の仲介者が介在して成立させる取引です。貨物は日本を通過せず、輸出路から輸入国へ直接送られます。
(1)基本的な取引構造
例えば、輸出者(A国)、仲介者(日本)、輸入者(B国)のケースを想定します。
①日本の仲介者は、A国の輸出者から商品を購入する契約を結びます。
②同時に、B国の輸入者へその商品を販売する契約を結びます。
③貨物はA国からB国へ直送されます。
④代金はB国から日本へ支払われ、日本からA国へ支払われます。その差額が日本の会社の利益となります。
(2)実務上の急所:スイッチ・インボイス
仲介貿易で最大の問題となるのが、「仕入先(A国)の情報を販売先(B国)に知られたくない」という点です。これを解決するために、仲介者は船会社に対して、荷送人を日本側に差し替えた「スイッチ・インボイス」の発行を依頼することが一般的です。しかし、この書類の差し替えミスや、パッキングリストにA国の情報が残ってしまう事態が発生すると、B国での輸入通関が止まり、様々なトラブルが発生するリスクがあります。
(3)外国為替及び外国貿易法(外為法)の遵守
日本を貨物が通過しない場合でも、日本の居住者が取引を仲介する以上、外為法第25条(役務取引等)や輸出貿易管理令の規制対象となる場合があります。特に、戦略物資や大量破壊兵器への転用が疑われる貨物(リスト規制対象品)の場合、経済産業大臣の許可が必要となるケースがあるため、貨物のスペック確認(該非判定)を怠ってはいけません。
4 通関士資格を持つ弁護士による「伴走型サポート」
貿易実務は、法律の条文解釈(デスクワーク)と、現場の通関実務(フィールドワーク)が密接にリンクしています。
当事務所では、代表弁護士が通関士資格を保有しており、以下の専門的なアプローチが可能です。
(1)貿易スキームのリーガル診断
「そもそもこの取引は関税定率法の減税対象か」、「仲介貿易において、どのインコタームズ(貿易条件)を選択すべきか」といった質問に対し、条文に基づいた正確な回答を提供します。
(2)税関事後調査を見据えた関係資料の管理
税関は輸入の数年後に「事後調査」にやってきます。
関税法第94条(帳簿の備付け等)に基づき、適切な資料を保存していなければ、不測のペナルティを課される恐れがあります。当事務所では、将来の調査に耐えうる管理体制の構築を支援します。
(3)相談者への実践的な回答
当事務所では、断片的な情報ではなく、一次情報(法令・通達)と実務経験(現場でのトラブル対応)を掛け合わせたアドバイスを行います。「教科書的な解説」ではなく、貴社のビジネスが「実際に回るか」という視点を最優先いたします。
5 まとめ:不安を解消し、グローバル展開を加速させる
委託加工貿易も仲介貿易も、正しく運用すれば貴社の利益を大きく押し上げる強力なツールとなります。しかし、知識不足による一歩の踏み外しが、大きな法的デメリットや損失を招くことも事実です。
「このビジネスモデルで法的に問題はないか?」「税関手続きで注意すべき点はどこか?」 少しでも不安や悩み、気になる点がある方は、ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせください。通関士の知見を持つ弁護士が、貴社の羅針盤となり、誠実かつ迅速にサポートさせていただきます。
【お問合せは、こちらから】
・・・・・・・・・・・
執筆:有森FA法律事務所 代表弁護士有森文昭(詳細プロフィールは、こちら)
(注)2026年3月時点の法令に基づき内容を改定
本記事は2026年3月現在の法令に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。個別の事案については、具体的な状況により判断が異なるため、必ず専門家にご相談ください。

有森FA法律事務所の代表弁護士、有森文昭です。東京大学法学部および法科大学院を卒業後、都内の法律事務所での経験を経て、当事務所を開設いたしました。通関士や行政書士の資格も有し、税関対応や輸出入トラブル、労働問題など、依頼者の皆様の多様なニーズにお応えしています。初回相談から解決まで一貫して対応し、依頼者の最良のパートナーとして、共に最適な解決策を追求してまいります。

