インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。
もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年11月27日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告と被告は夫婦関係にあったが、調停により離婚をした。その後、被告が離婚の経緯や条件、原告の不貞行為などを記載した電子メールを原告の勤務先の役員及び従業員全員が閲覧可能なメールアドレス宛てに送信した。これに対して、原告は、名誉毀損及びプライバシー侵害を理由として、被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①本件メールの内容のうち、不貞行為等に言及する部分は、原告の社会的評価を低下させるものであるとともに、訴訟や調停の経過及びその結果等について摘示する部分と併せて、原告のプライバシーに属する事実を摘示するものであると認められる。
②本件メールのような他人のプライバシー等に関わる電子メールを送信する場合、関係者の被害の大きさなどを踏まえて、送信先の選択に留意し、少なくとも送信先を誤ることのないよう注意すべき義務を負うというべきである。そのため、本件メールを本件アドレスに送信するに至ったことについて、故意と同視するに足りる重大な過失があったと認めざるを得ない。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
また、プライベートな内容であっても関係者に報告する必要が生じるケース等もある一方で、報告内容として名誉毀損やプライバシー侵害に該当するような内容を伝えることは出来ないことを踏まえると、なかなか第三者に伝えることは難しいものといえます。
不特定多数人に対して何らかの事情を伝える場合には、まずその内容が特定人の名誉毀損やプライバシー侵害に該当しないかどうかを十分に注意することが重要です。