ネット中継と肖像権・プライバシーの境界線

スマートフォンひとつでライブ配信やストリーミング中継が可能となった現代では、個人が街中やイベント会場でリアルタイムに撮影・発信を行う機会が増えています。便利で楽しい一方で、知らないうちに他人を撮影・配信してしまい、「肖像権侵害」や「プライバシー侵害」といった法的問題に発展するケースも少なくありません。今回は、ネット中継における法的リスクと許される範囲について解説します。

1 ライブ配信・中継におけるリスクの実例

①通行人が映り込んだままライブ配信

②飲食店内の様子を無断で中継し、他の客の顔や会話が映る

③自宅からの配信で、家族や同居人の姿・声が含まれている

④学校行事や会社のイベントを許可なくリアルタイム配信

⑤ストリートパフォーマンスの観客や演者を無断撮影

このような中継では、第三者の肖像や私生活情報が本人の同意なく公開されることが問題になります。

2 肖像権とプライバシー権の基本

肖像権とは、本人の承諾なく自己の容貌・姿態を撮影・公表されない権利です(判例上確立された人格権の一部)。
プライバシー権とは、私生活上の情報をみだりに公開されない権利を指します。

ネット中継では、「映った人物が誰か識別可能であるか」「プライベートな空間で撮影されているか」が、法的に重要な判断要素となります。

3 裁判例:ライブ配信による肖像権侵害の認定

ある裁判例では、街頭で配信された動画に通行人の顔がはっきり映り、SNSで拡散された事案について、「本人の同意なく肖像をインターネット上に公開したことは違法」として、配信者に対し20万円の損害賠償が命じられました。

この事案は、公共の場所であっても一定の配慮を欠いた撮影・配信は違法と評価され得ることを示すものです。

4 トラブルを防ぐためのポイント

①撮影・配信の前に「周囲の状況」を確認する

②第三者が映る可能性がある場合はモザイクや編集を施す

③プライベート空間での撮影は、同席者の同意を得る

④子どもや未成年者が映る場合は、親権者の同意を取る

⑤通報や削除要請には速やかに対応する

「公共の場所だから撮影しても大丈夫」と思われがちですが、ネットに投稿・配信することは「公表」という別の行為であり、個人の権利を侵害することがあります。

とりわけ、ライブ配信は“編集できない”という性質上、法的トラブルに直結しやすい点に注意が必要です。

自身の発信で第三者の権利を侵害していないか、事前に一度立ち止まって考える習慣が、トラブル防止の第一歩です。問題が起こった場合は、速やかに削除と法的対応を検討し、必要に応じて弁護士に相談しましょう。

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