インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。
特に、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年11月10日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
被告がツイッター(現X)において原告を揶揄する投稿を繰り返したことを踏まえて、原告が被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①被告が投稿した「統失」との用語は、統合失調症を意味すると解することができ、同記載は、原告が統合失調症に罹患していることを述べるものと解することができる。そして、統合失調症は、社会生活に支障を来し得る精神疾患であると理解されているということができ、これらを踏まえると、本件投稿は原告の社会的評価を低下させるものというべきである。
②慰謝料額を検討する上では、本件投稿の記載内容が精神疾患に関するものであり原告の社会的評価を相応に低下させ得るものであること、本件投稿は会員制オンラインサロンでされたものであり閲覧者は限定されるものの会員数が3200名を超えるサロンであることからすると相応の影響があると考えられること、他方、このようなサロンの主催者への批判はある程度受忍すべきものであること等を総合的に踏まえる必要がある。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけでなく刑事事件となる可能性もあり、刑事事件となった場合には、その後の人生にも大きな悪影響を与えますので、十分に注意することが必要です。
ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてあります。被害者の立場にせよ加害者の立場にせよ何らかのトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。