YouTube Live、Instagram Live、TikTok Liveなど、個人による「ライブ配信」が一般化した現代において、視聴者とのリアルタイムなやり取りの中で、思わぬ違法行為やトラブルが発生するケースが増えています。ライブ配信では、その場の勢いや軽い気持ちで発言・行動してしまいがちですが、その内容によっては刑事・民事の責任を負う可能性があります。本記事では、ライブ配信における主な違法行為と法的責任について解説いたします。
このページの目次
1 ライブ配信で問題となりやすい行為
ライブ配信中には、以下のような行為が法的問題を引き起こすことがあります。
①著作権侵害
BGMとして市販の楽曲を流したり、アニメ・映画などを画面に映したりする行為。
②名誉毀損・侮辱
特定の個人や企業を中傷・嘲笑する発言、虚偽の事実を語る行為。
③プライバシー侵害
無関係な第三者の顔や声、住所・氏名・電話番号などが映り込む行為。
④暴行・器物損壊などの実況
「迷惑系配信」と称して、飲食店での迷惑行為や他人への暴言・暴行を配信する行為。
⑤わいせつ・児童ポルノの配信
露出度の高い衣装や性的な言動を含む配信、未成年を出演させる行為。
これらは「エンタメ」として行われていたとしても、重大な法的問題となる場合があります。
2 裁判例:配信中の中傷行為による損害賠償
ある裁判例では、ライブ配信者がある個人について「犯罪者」「詐欺師」などと根拠なく言及し、配信のアーカイブ動画が残った事案で、裁判所は名誉毀損が成立するとして配信者に110万円の損害賠償を命じました。
本件は、ライブ配信であっても発言が後に保存・拡散されることを前提に、録画内容に基づく法的責任が生じることを示しています。
3 配信者が負う法的責任
①刑事責任
暴行罪・名誉毀損罪・著作権法違反・児童福祉法違反など、内容によっては刑事告発・逮捕の対象になります。
②民事責任(損害賠償)
配信によって名誉やプライバシーが侵害された場合、慰謝料や営業上の損害賠償を請求される可能性があります。
③プラットフォーム規約違反によるアカウント停止
YouTubeやTikTokなどでは、一定の違反行為を検知すると配信停止やアカウント削除が行われます。これにより収益機会を失うケースもあります。
4 被害を受けた場合の対応策
①録画・スクリーンショットの保存
配信内容が後に削除されても、証拠が残っていれば法的対応が可能です。
②削除申請と通報
プラットフォーム運営者に対して、規約違反を理由に動画削除を求めます。
③発信者情報開示請求
配信者が匿名の場合でも、動画の掲載者・ライブ主を特定する法的手段が取れます。
④損害賠償・刑事告訴の検討
悪質な内容の場合、民事・刑事の両面から責任追及が可能です。
ライブ配信の「リアルタイム性」は魅力である反面、法的トラブルに直結しやすい点でもあります。一度配信された内容は記録として残り、後から責任を問われる可能性が高いことを認識すべきです。
配信を行う際には、著作権や肖像権、名誉・プライバシーといった法的権利への配慮を忘れず、視聴者を巻き込む前に適切な判断を心がけましょう。

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