インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年12月9日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
ブロガーとして活動する原告が撮影した自身の子供の写真をブログに掲載したところ、被告がインターネット上の匿名電子掲示板において、原告の子供を揶揄する内容の投稿を行った。これに対して、原告が発信者情報開示請求において被告を特定した上で、被告に対して名誉権又は名誉感情を違法に侵害された旨主張して、不法行為による損害賠償請求権を行った事案です。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①本件各投稿は、本件掲示板内に書かれたコメントであるところ、原告が自身の娘の話題についてした投稿に対するコメントであること等からすれば、本件各投稿は、原告及び原告の娘に関する投稿であると評価するのが相当である。
②本件各投稿は、その表現内容、文脈及び本件掲示板が原告に対する批判的内容を掲載することが想定されているものと見受けられることに照らせば、これらの摘示事実は、原告の社会的評価を低下させ、社会通念上許される限度を超えて原告の名誉感情を害する違法なものであると認められる。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないと思ってのものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を低下させるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。名誉毀損は、民事上の問題となるにとどまらず刑事事件に発展するリスクもありますので、心持としては、第三者に対する否定的な評価を含む内容を不特定多数が閲覧する可能性があるインターネット上に投稿する場合には、最大限の注意を払い、可能であれば投稿することを控えるべきかということを改めて検討していただくことが余計なトラブルを回避するための最も効果的な方法です。
ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。